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■2020年美術展ベスト10

□ フランス絵画の精華,大様式の形成と変容   東京富士美術館 □ ハマスホイとデンマーク絵画   東京都美術館 □ 汝の隣人を愛せよ  □ 今井麗展   東京オペラシティアートギャラリー □ 宇宙の卵   アーティゾン美術館 □ もつれるものたち   東京都現代美術館 □ きたれ、バウハウス-造形教育の基礎-   東京ステーションギャラリー □ あしたのひかり   東京都写真美術館 □ 後藤克芳、ニューヨークだより   渋谷区立松涛美術館 □ 守山友一朗展   東京オペラシティアートギャラリー □ 石岡瑛子 血が,汗が,涙がデザインできるか   東京都現代美術館 *並びは開催日順。 選出範囲は当ブログに書かれた作品。 映画は除く。 *「 2019年美術展ベスト10 」

■琳派と印象派、東西都市文化が生んだ美術

■アーティゾン美術館,2020.11.14-2021.1.24 ■会場に入り琳派を何点かみたあとに印象派が数枚あった。 その時の違和感は尋常ではない。 ピサロやユトリロがまるで<雑音>に見えてしまった。 此れ程まで琳派が強いのか! 印象派が内包する太陽の光こそ雑音の王者だから? 次章は琳派で固めてあったので十二分に楽しめた。 そして再び交互に作品が展示されていたが、いつもの印象派に溶け込めない。 しかも前半に琳派、後半に印象派が占めていたので尻すぼみに感じた。 「都市文化」の違いと言えなくもない、が・・。 食合禁(食べ合わせ)があるように絵画にも観合禁が有るのかもしれない。 *館サイト、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/45 ■久留米をめぐる画家たち、青木繁・坂本繁二郎・古賀春江とその時代 ■新館でみる常設展はどうも落ち着かない。 旧館と比べて照明が明るすぎる? 天井も高くなり目に飛び込む白色が過剰な為かもしれない。 *館サイト、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/46

■1894Visions ルドン、ロートレック展

■三菱一号館美術館,2020.10.24-2021.1.17 ■「ルドン、ロートレック展」のつもりで行ったが予想が外れました。 両者の作品は多いが他の作家も負けていない。 1894年頃のパリ美術界動向を扱った展示会のようです。 解説に総合主義の語句が目に付きますね。 そして画家たちが御飯にかけるフリカケのように次々出てくる。 混乱しました。 でも2章はルドン3章ロートレックでまとめています。 しかし4章はタヒチそして5章は東洋・・!? 1894年を調べたら日清戦争が勃発している。 H・G・ウェルズの「タイム・マシン」「透明人間」が出版され全米オープン・ゴルフも初めて開催された。 チラシに三菱一号館竣工とあるが三菱銀行と住友銀行が設立されている。 それよりもディルタイからフロイトの心理学台頭の年と言ってよい。 ここに岐阜県美術館が誇るルドンの登場になったのでしょう。 納得しました。 終章「近代ー彼方の白光」のルドンの部屋は気に入りました。 2章のモノクロから離れてルドンの色でまとめています。 「小舟」(1904年)を除きすべて岐阜美術館所蔵ですね。 年の瀬に19世紀末へちょっと旅行してきた気分です。  *館サイト、 https://mimt.jp/visions/

■船越桂、私の中にある泉

■松濤美術館,2020.12.5-2021.1.31 ■「ビュフェ展」の帰り松濤に寄る。 船越桂も久しぶりね。 人物像は眼の高さが同じになると話しかけたくなる。 相手もそう思っているようにみえるから不思議。 地下1階の第一会場には楠木像が10体、2階第二会場には6体はあったかな? つまり16人と会話ができるという訳ね。 先ず気に入ったのは「森へ行く日」。 船越は実在人物を像にするらしい。 でもこの作品は違うの。 「・・次第に好きになっていった」と彼は言っている。 活発な精神性を内に込めることが出来たからだと思う。 2階では「言葉をつかむ手」、今回はこれが一番かな。 どういう対話ができるかで毎回好きになる作品が違ってくるの。 ここが船越桂の楽しいところかしら。 2020年の最新作「スフィンクスには何を問うか?」も展示されている。 スフィンクス・シリーズは彼の世界観が詰まっている。 だから手強い。 気軽に声を掛けられないからよ。 ともかく、この忙しい年末に多くの像と話ができて楽しかったわよ。 *館サイト、 https://shoto-museum.jp/exhibitions/191funakoshi/

■ベルナール・ビュフェ回顧展、私が生きた時代

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.11.21-2021.1.24 ■関心が遠のいていたビュフェ。 タイミングの良い回顧展だと思う。 副題の通り彼の通史が簡素だけど親密に20世紀に写像されている。 これで彼の全体像がはっきりと見えるのね。 そして他者との出会いで作品の流れが非連続になるのが興味深い。 一つ目は、ピエール・ベルジェとの出会い。 「椅子」(1950年)から画風が変化したのでわかる。 素人から玄人画家へ飛躍したようだわ。 「籠のある静物」「コトドリのある静物」、太い線の「食堂」「拳銃のある静物」「百合の花」。 やっとエンジンがかかったようね。 二つ目は、アナベルとの出会い。 でも愛が創作を遠ざけたのかな? 作品がつまらなくなったからよ。 「ニューヨーク」(1958年)は<実存の具象化>が見えなくなってしまった。 そして1960年代。 昆虫で子供の頃が甦った彼の姿がみえる。 でも昆虫で実存を蘇らせることはできない。 人間が造った対象でないと駄目みたい。 1970年代は名声が、でもアルコール中毒とは・・。 マンネリの中「ペロス・ギレック」(1973年)のように切れ味の良いのもある。 「楽器」(1988年)も気に入る。 写実は数枚あったけど<ビュフェ>らしくない。 アナベルと出会って得たものは多いが迷いも深くなった。 彼の性格にも原因がありそう。 三度目の他者との出会いはなかったようね。 1999年に自死。 20世紀の不安を見事に表現したとおもう。 *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_buffet/

■プラド美術館、驚異のコレクション

■監督:ヴァレリア・パリシ,ナビゲータ:ジェレミー・アイアンズ ■(イタリア・スペイン,2019年) ■いやー、リズムは有るがテンポが速い。 記憶を取りだす余裕が無いので観後は取り残された気分だ。 紹介される作品も半分は知らなかった。 スペイン15世紀から17世紀の黄金時代、そして20世紀前半までをカバーしている。 美術界を取り巻く当時の国王紹介から帝国の政治動向まで取り入れた速足の90分だった。 「国王と王女の好きなもだけを選んだ」とナビゲーターのジェレミー・アイアンズが解説している。 つまり戦略的でないところがプラド美術館の特徴なのか? ティツィアーノをプラドの父と呼んでいることも初耳だ。 「ベラスケスをみる喜びを!」、マネの言葉だ。 しかしゴヤの紹介に多くを割いている。 そして「フランドルがスペイン絵画を世俗化させた」ボスの紹介で締めくくったのが面白い。 調べるとフェリペ二世が彼の愛好者だったとは、まさに真の意味での世俗化だろう。 2015年に三菱一号館開館5周年「 プラド美術館展 」、2018年に日西外交樹立150周年記念「 プラド美術館展 」が開催されたから当分は来ない。 プラドを見たければマドリードへ行くしかない、コロナ収束後になるが・・。 *開館200周年記念作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92283/

■トライアローグ  ■柵瀬茉莉子展、いのちを縫う

■横浜美術館,2020.11.14-21.2.28 ■愛知県美術館と富山県美術館は行ったことが無い。 だから楽しみだわ。 トライアローグとは鼎談のこと。 会場は1900年からの30年単位で3章から成り立っているようね。 そして9人の作家を3美術館所蔵の作品で比較する「アーティスト・イン・フォーカス」が所々に入っているの。 このフォーカスで私が一番気に入った作品はどこの館のものか列記してみる・・・ <作  家><気に入った作品の所蔵館> ・ピカソ・・・愛知(青時代文句なし) ・レジェ・・・愛知(緑が最高) ・クレー・・・愛知(橙が素敵ね) ・アルプ・・・引き分け ・エルンスト・愛知(これも色の良さ) ・ミロ・・・・横浜(横浜最高の一品) ・デルヴォー・富山(汽車と裸婦に興奮) ・ダイン・・・引き分け ・ウォーホル・富山(迷ってマリリン) と言うことで4勝3敗2引分で愛知美術館が一番。 理由は色が決め手かな? 富山美術館は1950年代以降に力を入れているようね。 でもこの2館は一度足を運ばないと全体は分からない。 今回の鼎談は楽しかったわよ。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/special/2020/trialogue/ ■横浜美術館コレクション展,横浜ポリフォニー1910年代から60年代の横浜と美術 ■ざっ、と観る。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20201114-568.html ■柵瀬茉莉子展,いのちを縫う ■葉っぱや木の幹を糸で縫っている! 「祖母の影響が強い」と作者は言っている。 しかも素材の植物は枯れているから秋の匂いと冬の気配を感じる。 でも暖かさに包まれているから寒くない。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20201114-555.html

■吉村芳生展、超絶技巧を越えて

■そごう美術館,2020.10.24-12.6 ■「機械が人間から奪った人間の感覚を取り戻す!」。 写真を基に数ミリの升目を引き1マスごとに模写していく過程は人間機械と言っていいわね。 吉村芳生の作品はよく目にするようになった。 情報処理の仕組みを身体で挑んだからだと思う。 「ありふれた風景」には処理から漏れた微かな雑音にヒトの気配がする。 カラーになった芥子や秋桜の「百花繚乱」ではこのノイズが現代的な詫錆に感じられる。 未来の人間=アンドロイドは現実世界がこのように見えると思う。 「自画像の森」になると情報の古典商品である新聞に自画像を埋め込む。 顔表情を変えることで処理を越えて関係を構築しようとしたのね。 現代の超絶技巧は情報技術から落ちこぼれる雑音を拾うことができるか否かで決まる。 「コスモス(絶筆)」が最後に展示されていたけど、今日は6枚のコスモスが一番だったわよ。 さてっ、と・・、デパート回りはやめて横浜美術館へ寄り道しよっ! *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/20/yoshimura_yoshio/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 吉村芳生

■建築と時間と妹島和世

■監督:ホンマタカシ,出演:妹島和世 ■建築ユニットSANAAは知っています。 今回はユニットから離れて、大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎を設計・施工から完成までを追った妹島和世のドキュメンタリー映画にしています。 妹島が仕事をしているところを映像で観るのは初めてです。 彼女は模型を重視している。 紙で作り続ける。 模型が身体を納得させないと先へ進まない。 現場で違和感があっても模型に戻り良し悪しを判断する。 視覚と触覚の統合が重要にみえます。 でも「ロレックス・ラーニング・センター」(2009年)では模型だけでは見落としがあったらしい。 それだけ複雑だったのでしょう。 出来上がった新校舎は自然体が素晴らしい!、・・実際に見学していないので中身は何とも言えないのですが。 周囲環境との融合を重視している。 今回はコンペとは違い予算処理がいつもと違ったようです。 このため1枚屋根から数枚屋根に変更したことも語られる。 師匠伊藤豊雄よりしなやかな作品が多い。 曲がりくねった薄い屋根と柱に重量感が無いからでしょう。 弱々しくみえてしまう時もある。 同時期の作品では西武鉄道「ラビュー」(2018年)があります。 丸みのあるシルバー色で蜻蛉のような大きな青目の運転窓を持つ列車は親しみがある。 その姿は風景にピッタリ納まる。 新校舎も同じです。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93612/

■石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか  ■透明な力たち MOT ANNUAL 2020

■東京都現代美術館,2020.11.14-2021.2.14 □石岡瑛子展 ■作家:石岡瑛子,レニ・リーフェンシュタール,アーヴィング・ペン,ヴェルナー・ヘルツォーク,フランシス・フォード・コッポラ,ターセム・シン,チャン・イーモウ他 ■会場には石田瑛子の声が響いている。 安定感ある渋い声だ。 政治家が話しているように聞こえる。 瑛子と言えば資生堂とパルコだろう。 前田美波里のデッカデカ、リサ・ライオンのムッキムキ、沢田研二のアァアアア、アップ全盛の野生時代である。 そこにはタイムレス、エイジレス、ジェンダーレス、クラスレスに沿いながら副題の通り、血が、汗が、涙が息づいている。 しかしレニ・リーフェンシュタールの「ヌバ」を最後に彼女の動向は追っていない。 今日、初めて1980年以降の彼女の活動を知った。 なんと音楽、映画、演劇、オペラ・・。 あらゆる分野に進出している。 粗さが目立つのはデザイナー領域を広げ過ぎた為かもしれない。 それにしてもこのパワーはどこから湧き出てくるのか? 野生時代の精神は失っていない。 しかしターセン・シムは凝り過ぎ、ミシマや忠臣蔵は象徴過ぎ、シルク・ドゥ・ソレイユは三宅一生に似過ぎ、指輪はキャラ化し過ぎ、・・・。 過剰はデザイナーとしての組織との葛藤の現われか?  癖の強いヘルツォークやコッポラとのコラボや、三島由紀夫遺族からの上映拒否を知れば彼女の声や喋り方が政治家に聞こえたのも不思議ではない。 パワーとは政治力かもしれない。 *館サイト、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/ □MOT ANNUAL 2020 透明な力たち ■作家:片岡純也,岩竹理恵,清水陽子,中島佑太,GohUozumi,久保ガエタン ■これは変わった展示会だ。 「不可視の力に着目する・・」って? 科学技術を取り入れたものが多い。 電磁気はもちろんDNAも普段は見えない。 実行中のプログラムにも言える。 刺激されたのは久保ガエタンの声に関する作品。 蓄音機や電話を前にして声とは不思議な現象だとあらためて考えてしまった。 エジソンは死者の声と言ったらしいが、当時の人々にとってその人がまさに眼前に蘇ったと思う。 現在の最新科学を前にして狼狽えることができるか? もしできれば芸術として

■生きている東京展

■作家:島袋道浩,張洹,寺山修司,齋藤陽道,JR(ジェイアール),オラフ・ニコライ,デイヴィッド・ハモンズ,ファブリス・イーベル,ナウィン・ラワンチャイクン,バリー・マッギー,マリオ・ボッタ,ナムジュン・パイク ■ワタリウム美術館,2020.9.5-2021.1.31 ■ワタリウムは開館30周年記念を迎える。 この期間の活動をまとめた展示会のようです。 作家12人(組)を選んでいますが過去の展示会映像が多い。 4階には当館を建築したマリオ・ボッタの資料がナムジュン・パイクのインタビュー映像などを交え展示されています。 ここの館は独特の形をしている。 銀色ストライプ模様の特徴あるファサードを持っているが急激に収束してく奥行きの無さに戸惑います。 それはチケット購入後わき目もふらず棺桶のようなエレベータに乗る忙しさに表れている。 ・・にもかかわらず喫茶店が2点(半地下と地下1階)、売店が2点(1階と地下1階)も有るとは驚きです。 東京の美術館の中では窮屈さで1番でしょう。 この狭さが逆に観客身体に密着するような乾いた下町感覚を呼び覚ます。 現代美術がこの感覚に染まっていく・・。 奇妙な混沌が現れる。 これこそが<生きている東京>かもしれない。 今回の12人(組)もこの線に染まり易い作品を展示しているのが分かります。 *館サイト、 http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202009/

■式場隆三郎「脳室反射鏡」

■練馬区立美術館,2020.10.11-12.6 ■式場隆三郎の名前は聞いたことがある。 でも何者か? 主催者挨拶文にも「彼を知ってほしい・・」と書いてある。 これが彼の活動経歴書のような展示にしたのね。 若い時は白樺派精神科医のような人だった。 文学に突っ込み過ぎて医学生として疎かになったと彼自身振り返っている。 でも専門の精神科は文学と相思相愛の時代だった。 ゴッホや山下清への接近は天才や狂気としての病理学と白樺精神の融合かな。 三島由紀夫が彼の隠れファンだったのも興味津々ね。 「イット解剖学」の章にもあるように文学者にとっては性の科学的知見は必須だから。 「草間彌生デビュー」章で彼女を「分裂性女性天才画家」と紹介しているのは当時の病理学として言い当てている。 「可視(科学)と不可視(芸術)の両極を往還した」と解説されていたけど、<医学と芸術の結婚>を求めていたのではないかしら? 彼は不断の生活が重要だったはず。 それは民藝への接近でも分かる。 自宅や病院の間取りや家具などから生活の質の良さが窺えるからよ。 会場は共時的に作品が並べられていたけど、式場の脳内構造に近づけたとおもう。 彼の脳の動きに合わせて観ていくようで戸惑いと眩暈があってとても楽しかった。 ところでホールに組み立てられていた「二笑亭の光2」の建物入口はとても劇的にできていた。 灰色が不気味を持ち込んでいる。 これは舞台美術として使える。 物語が湧き出てくるようだわ。 見ながら色々な舞台作品を当て嵌めてしまった。 *館サイト、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202008231598163149

■生命の庭、8人の現代作家が見つけた小宇宙

■作家:青木美歌,淺井裕介,加藤泉,康夏奈,小林正人,佐々木愛,志村信裕,山口啓介 ■東京都庭園美術館,2020.10.17-2021.1.12 ■8人の作家がジワジワと混ざり合っていく展示方法を取っています。 8人が何度も登場するような作品配列をしているからです。 小部屋を沢山持った館の特徴も巧く利用している。 各部屋に合う作家を選んでいる。 次の部屋は誰か? 旧館そして新館を観て回った後に、「生命の庭」の全体像が浮かび上がってくる。 作家たちの個性の違いをそのまにして複雑さや混沌を内包した一つの宇宙の姿です。 久しぶりにこのような面白い感覚を持つことができました。 副題は「8人の現代作家が見つけた小宇宙」のバラバラ宇宙より「8人の現代作家が混ざり合って作った一つの宇宙」が似合うでしょう。 8人も妥当でした。 6人では少ないし10人では多過ぎて一つの宇宙を造れなかった。 *館サイト、 https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html

■ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ

■ソニーミュージック六本木ミュージアム,2020.10.9-2021.1.11 ■会場は活気が無い。 ビートルズ4人が揃わない為かな? ジョン・レノンとオノ・ヨーコの出会いはよく語られる。 あの「YES」だ。 展示はそのあたりから始まる。 フルクサス系のヨーコの作品は(観客の)好みが激しくでる。 ジョンの芸術表現と似ているところがある。 二人は似た者同士だ。 顔も似ている。 そして実両親に育てられなかったジョンはヨーコの姉さん女房振舞いにすっかりイカレテしまったのではないだろうか? 「僕がそれまでずっと抑制していたイカレタ部分を引き出してくれた」とジョン自身も言っている。 会場は高校の文化祭のようだ。 ギターやベッドも置いてあるが会場は文字が多い。 二人の作品や行動は意味を重視している。 これを言葉に置き換えた為だろう。 その中でビデオは初めてのものが多くて楽しい。 20本以上はあった。 数分の長さが多いので残さず観てしまった。 ベトナム反戦の「ベッド・イン」以降はより過激な運動に二人は深入りしていく。 しかしヨーコは強い。 多くの非難中傷に耐えるどころか逆に社会へ立ち向かっている。 会場はこの頃のビデオが1本も無い(?)。 エルトン・ジョンとの共演など沢山有るはずだが。 終章近くにジョンのグリーンカードが展示されていた。 FBI監視や米国入国禁止などを経験してきた二人の喜ぶ姿がみえるようだ。 この愛と激動の70年代を乗り越えた矢先に彼は凶弾に倒れてしまった! 無念だったろう。 *展示会サイト、 https://doublefantasy.co.jp/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 ジョン・レノン、 オノ・ヨーコ *2020.12.28追記・・録画しておいた下記の2本を観る。  □オノ・ヨーコ&ショーン・レノン  ■NHK2020.12.23(2017.8作成)  ■オノ・ヨーコの出自は聞いてはいたが,この番組では彼女の兄弟従兄も登場し祖父母まで遡り家系を調べている. 興味あるファミリーヒストリーだ.  *NHKサイト、 https://www.nhk.jp/p/famihis/ts/57RY735RG4/episode/te/GQWWMW1LNN/  □イマジンは生きている ジョンとヨーコからのメッセージ  ■NHK2020.11.21

■石元泰博写真展、生命体としての都市  ■琉球弧の写真  ■写真新世紀

■東京都写真美術館,2020.9.29-11.23 □石元泰博写真展 ■・・ということで、オペラシティーからの続きです*1。 ここ恵比寿ではシカゴ、東京そして桂離宮と続く。 前館と重なっていますね。 「シカゴ」初めの「雪と車」をみると粒子が細かい。 繊細に感じます。 これで全体がシットリしている。 次の「東京」はゴチャゴチャしていて楽しい。 副題「生命体としての都市」の意図がみえる。 建物自体から街角や駅の人混みを選んでいる。 でも東京は撮り難いと作家は言っていますが。 桂離宮はやはり平凡に感じる。 驚きは次章「多重露光」です。 「色とかたち」は目が喜びました。 モホリ=ナジ賞受賞の理由が分かりますね。 終章の「シブヤ、シブヤ」はファインダーを覗かない方法を取っています。 オペラシティーで得た判断はイイ線いってますね。 <白黒の人物画、非人物画はカラー>が作者の一番です。 この館では「多重露光」をカラーに追加します。 *1、「 石元泰博写真展,伝統と近代 」(東京オペラシティアートギャラリー) *生誕100年展 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3836.html □琉球弧の写真 ■作家:山田實,比嘉康雄,平良孝七,伊志嶺隆,平敷兼七,比嘉豊光,石川真生 ■1960年代から70年代の作品が多い。 この時期は濃い政治の時代ですが、特に沖縄は政治から離れた時期を知らない。 しかし7人の作家をまとめると島の生活まで含めての琉球が立ち現れてくる。 期間は20年ですが。 全体をみると雑念とした感じがします。 それが生活というものでしょう。 緊張感は有りますが、ある意味ホッとします。 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3838.html □写真新世紀 ■作家:金田剛,後藤理一郎,セルゲイ.バカノフ,立川清志楼,樋口誠也,宮本博史,吉村泰英ほか ■「自由で独創的な写真表現を応援」する新人写真家の支援を目的とした展示会です。 写真の他には映像(含む音響)が多い。 それは実験映画を観ているようですね。 レイアウト等を凝らして展示空間全体を一つの作品としてみることができる。 写真芸術から飛び出ようとしています。 今回の3展示で一番面

■東京好奇心  ■寺山修司の言葉

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.10.20-11.12 □東京好奇心 ■近頃は写真展が多いわね。 コロナ禍、絵画と比べて開催が容易だからかな? これも当初、写真展とは知らなかった。 タイトルが東京好奇心、しかも100人作家展よ。 古い写真家も多そう。 100人を追っていくと知っている作家は10人台しかいない。 でも会場を歩くと多くの作品に出会っていることが分かる。 それでも2割程度かな? 作品に時間幅があるので最新の東京とは言えない。 それにしても100人200枚は目まぐるしい。 東京の断片しかみえない。 そこに好奇心が芽生えれば良いかもね。 それが東京時空を超えられれば最高! *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_curiosity/ □イラストレーターが挑む寺山修司の言葉 ■寺山修司記念館に行ったことが無いの。 青森は青山へ行くのとは訳が違う。 展示をみて決心したの。 来年こそ青森へ。 *寺山修司記念館特別企画展in Tokyo *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/box_201016terayama.html

■守山友一朗展  ■石元泰博写真展、伝統と近代

■東京オペラシティアートギャラリー,2020.10.10-12.20 □守山友一朗展 ■入館して二階の若手作家展へ誘導されるのは初めてです。 ・・ぉぉっ、これは明るい。 水面が動き光っているからでしょう。 テーブルの小物を観ていると心がウキウキしてきますね。 水彩のようですが質感が油彩です。 初台へ来た甲斐があった!と頷いてしまう内容でした。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh235.php □石元泰博写真展 ■この写真展は高知美術館、写真美術館と連携しているらしい。 3館共同開催を会場で知りました。 作者については何枚かの記憶は有る。 もちろんまとめて観るのは初めてです。 彼は農業を学ぶため米国へ渡米、日系強制収容所で写真に興味を持ち、シカゴのニューバウハウスで写真を学んだ興味ある経歴を持っている。 自ずとシカゴと東京の作品が多い。 初期は高層建築など被写体の多くがバウハウスを感じさせるような手法で取っている。 しかし思ったより緊張感が無い。 これは4章「桂離宮」でも言えます。 3章「東京1」でヌードが数枚ありましたが気に入りました。 人物画はどこか面白味があります。 9章「ポートレート」も同じですね。 「唐十郎と李礼仙」は初めてで、「土方巽」のオートバイは見覚えがある。 そして12章「両界曼荼羅」は素晴らしい。 これだけ拡大すると壮観ですね。 次の13章「歴史への遡行」の仏像はカラーに味があります。 ・・。 まとめると、白黒なら人物画、非人物画ではカラーでしょう。 再確認のために写真美術館へ行くしかない。 高知はちょっと遠いですね。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh234/

■後藤克芳、ニューヨークだより

■渋谷区立松濤美術館,2020.10.3-11.23 ■絵画と言うより彫刻に近い。 スーパーリアリズムに属するが、これは日本工芸の延長でしょう。 丁寧に造られている。 工芸の精神が感じられます。 もちろん素材やテーマは違いますが、それは木材とアクリルのみで、濃くのある作品が多く、しかも味があります。 作品の前では一つ一つジックリ見てしまった。 作品名一文字の「A(アティーチョーク)」「E(茄子)」が気に入りました。 Aの立体感、Eの色艶・・、飽きないですね。 続いて「YOKO」の赤い唇の形、「UNTITLED」でキース・ヘリングの鍵の輝き、・・などなど切が無い。 ところで焼焦げたハートが数点あったが作家の失恋が長引いたのでしょうか? 後藤は1964年に渡米しています。 現地では荒川修作や篠原有司男たちと交流があったようです。 活気に満ちた時代をニューヨークで活躍したのは御見事!、羨ましい限りです。 *館サイト、 https://shoto-museum.jp/exhibitions/189goto/

■分離派建築会100年展、建築は芸術か?

■パナソニック汐留美術館,2020.10.10-12.15 ■建築圏から分離を宣言した分離派が先ずは彫刻に次に田園そして家具に向かったことを知った。 ・・民芸の影響を強く受けていたようにみえる。 生活に係わる民芸と比すれば「建築は芸術か?」の答えも見つけ易かったのだろう。 粘土をネリネリして造ったような1920年代の建築物模型をみていると母体に包まれた感触がやって来る。 このような住居に住んでみたいと思う。 関東大震災で公共建築を手がけたのは時の都合だが、これは民芸圏からの再分離と言える。 初めての公共で苦労しているのがわかる。 それは社会性を持たせるために芸術を抑える必要があったからだと思う。 それでも永代橋や聖橋、電信局や新聞社などの曲線は記憶に残る。 「我々は起つ!」「建築は芸術か?」。 大袈裟にもみえる言葉の終章はモダニズムの波に飲み込まれて離散したとある。 しかし材料や構造革命を経た現在からみると時代は一回りした感がある。 再々分離をして粘土をクネクネさせたような建築を又みたいものだ。 ところで文章で埋まりそうな会場構成だった。 この為か観終わったときには文字で腹一杯になってしまい具体展示物が思い出せなかった。 たしか椅子や机が置いてあったことは覚えているが・・。  *館サイト、 https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/201010/index.html

■トランスレーションズ展

■ディレクター:ドミニク・チェン ■2121デザインサイト,2020.10.16-2021.3.7 ■・・翻訳展? ヒトは勿論、動物や植物まで対象を広げ「関係の橋渡し」としてのトランスレーターを紹介している展示会のようね。 先ずは、聴覚や視覚障がい、あるいは失読症等々の人が世界とコミュニケーションを取る手助けをする変換器が並べられている。 例えば蝉の鳴き声を振動に置換し聴覚障がい者に蝉時雨を現実世界で体験してもらうとか・・。 ヒトと動物や植物では、例えば鮫が好みの科学物質を介入させ鮫と対話する、発酵食品の微生物にセンサーを取り付け発酵状況を知る、植物の気功の開閉を読唇術や人工知能を用いて植物の言葉を読み取る。 等々・・。 しかし似たようなものはどこかで見聞きしていた記憶があるわね。 トランスレーション研究は爆発的に広がっているからよく出会うのよ。 面白かったのは「見えないスポーツ図鑑」。 アスリートの体感を追体験できるの。 例えばフェンシングは剣の代わりに文字の形をした破片で、柔道では柔道着の替わりに手拭を、野球のバッターは紐の動きで球を打つ追体験する。 ・・うーん、上手く言えないから会場で見て頂戴。 コミュニケーション手段としてのトランスレータをどう考えどう作るか?に絞った展示だったが、ヒトの複雑な気持ちを表現する「モヤモヤルーム」をみても、その先にあるコミュニケーションに行き着くには時間がかかりそう。 *館サイト、 http://www.2121designsight.jp/program/translations/

■ニューヨーク公共図書館、エクス・リブリス

■監督:フレデリック.ワイズマン ■(アメリカ,2017年) ■「 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ 」の続編ですね。 図書館職員や館内市民を撮る間に街の風景を挿入し淡々としたリズムでワイズマン監督の特徴ある撮影が続いていきます。 税金と寄付で運営する私立図書館だとは知りませんでした。 しかも100近い分館を持っている。 そこには「黒人文化研究図書館」「点字・録音図書館」「舞台芸術図書館」なども含まれる。 この作品も移民や障碍者、貧困者に図書館をいかに利用してもらうかの話が多い。 書籍と共にセミナーや講習会、演奏会、ダンス、朗読等のプログラムが用意されていて活動の広さが分かります。 特にIT技術には気を配っていますね。 市民をITから孤立させない! 電子書籍や映像、ネットワークの課題も多く図書館は大変です。 それにしても上映時間3時間半は長い。 この為か私もニューヨーク市民になり切って観てしまった。 これこそが監督の狙いでしょう。 図書館の紹介と言うよりコミュニティの一つとしてニューヨーク都市生活を描いている。 今は  NYPL分館が近くにあるジャクソンハイツ 住民の気分です。 *作品サイト、 http://moviola.jp/nypl/

■あしたのひかり  ■エキソニモ、インターネットアートへの再接続

 ■東京都写真美術館,2020.7.28-9.22 □あしたのひかり ■作家:岩根愛,赤鹿麻耶,菱田雄介,原久路,林ナツミ,鈴木麻弓 ■日本の新進作家5人(組)の写真展です。 充実した内容でした。 5人(組)の違いの面白さが飽きさせない。 岩根愛は東北桜と郷土芸能や墓地風景が「象徴としての光」と「いまここを超えていく力」の2テーマをジワッと融合させて迫ってくる。 菱田雄介のビデオは写真の延長ですね。 人物を数十秒動かさないで録る。 その映像は写真を見続けていたような錯覚を残す。 微妙に動く人物の表情や衣服が観る者の心までしっかり届く。 特に北朝鮮や韓国の人々は日々背景まで想像できる。 原久路と林ナツミは少女たちがとても新鮮です。 写真は少女と風景で一組ですが動静の差異に味わいがある。 鈴木麻弓は写真館を営んでいた家族の記録です。 東日本大震災の遺品はバラバラになっても家族がまとまっている。 強い力が働いているのを感じます。 赤鹿麻耶は作品過程も壁に貼り付けている。 メモに肝心なことが隠れているようです。 でも読む気がしない。 なんとか読ませたいですね。 *日本の新進作家vol.17展 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3815.html □エキソニモ ■作家:千房けん,赤岩やえ ■「エキソニモ」とは千房けんと赤岩やえのアート・ユニット名です。 ネットワークに接続されたソフトとハードの隙間を対象にしている。 多くはパソコンやスマホの誤動作現象を作品に取り込んでいます。 マウスやキーボードを破壊したりキツイ表現が多い。 最新作「UN-DEAD-LINK」はゲーム内キャラクタとピアノが連動しているが、坂本龍一が協力していると聞いて妙に納得。 面白かったのは「HEAVY BODY PAINT」。 これはビデオとペイントを連係させた作品で、微妙な動きがリアルに迫ってくる。 2階展示場「あしたのひかり」の菱田雄介のビデオ作品と手段は違うが方向が似ている。 写真とペイントの違いはあるがビデオの面白い性質を知りました。 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3817.html

■DRAG QUEEN、ヨシダナギ

■西武渋谷店,2020.8.13-30 ■ヨシダナギの写真はプラスチックの触感がある。 ペインティングかしら?と作品にズズッと近づいてしまうわね。 しかも、たっぷり時間をかけた厚塗りの化粧は絵画と相性が良いから。 アヤフヤな性の境界を超える衣装と化粧はさすがヘビー級だわ。 でも彼らの映像インタビューを聞いているとパフォーマンスとしてのドラッグクイーンを目指しているようにみえるの。 漫画のキャラクターのようで、これではディズニーランド化は避けられない。 でも何人かは人生を感じ取れたけどね。 ダークさを散りばめたらより深みが出たと思う。 *館サイト, https://www.sogo-seibu.jp/shibuya/yoshidanagi/

■近代日本画の華、ローマ開催日本美術展覧会を中心に

■大倉集古館,2020.8.1-9.2 ■1930年ローマ開催の「日本美術展覧会」に出品した20点弱と関連作品で飾られている。 当時の団長は横山大観。 大観の「ローマ展ポスター」の威勢の良さが目立つ。 もちろん富士に太陽だ。 「ローマ展図録」も貫禄十分。 ムッソリーニも観に来たらしい。 比べて玉堂の風景、清方の人物、関雪の動物がいかにも長閑に感じる。 ムッソリーニの感想を聞きたいところだ。 リニューアル後の館は初めてだ。 館とホテルの間には無機質な池が造られている。 以前は心落ち着く庭があったことを記憶している。 今や雑草1本生えていない。 近頃の東京は逃げ隠れする場所がどんどん消えている。 *館サイト、 https://www.shukokan.org/exhibition/

■スーパークローン文化財展  ■日産アートアワード2020

□スーパークローン文化財展 ■制作:東京芸術大学ほか ■そごう美術館,2020.8.1-31 ■日本に近づいてくる展示順序がいいですね。 アフガニスタンから始まりウズベキスタン、タジキスタンそしてキジル、敦煌、高句麗、バガンと来ます。 日本に入って醍醐寺、法隆寺で終わりになる。 遥かシルクロードの旅をしてきた気分です。 おまけに「謎解きゴッホと文化財展」の予告もある。 クローンも制作直後の姿には遡れない。 起点として現時点の本物と同じ姿のクローンを造ると言うことです。 次に時間と空間をどこまで遡り再現するのか? このあたりがよく分からない。 文化財の多くは本物を見ることは不可能に近い。 素人からみるとクローンを本物にしてもまったく違和感がない。 制作中のビデオ映像、特に法隆寺釈迦三尊像再現工程、はクローン技術・技能の高さを教えてくれます。 ゴッホが4枚ほど展示されていたが「自画像」は感動しました。 もちろんクローンですが。 本物を並べられても分からないでしょう。 弱りましたね。 本物とは何か? *美術館、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/20/superclone2020/211001_superclone2020.pdf □日産アートアワード2020 ■作家:風間サチコ,三原聡一郎,土屋信子,和田永,潘逸舟 ■ニッサン.パビリオン,2020.8.1-9.22 ■そごう美術館を出て・・、日産グローバル本社内を通り、富士ゼロックスを横切ると日産パビリオンが見えてきます。 結構混んでいます。 この一角で美術展を開催しているが、ここだけはガラガラです。 地味だからでしょう。 5人の作品はどれも一癖あります。 配られた解説を読むと想像が膨らみます。 電化製品を楽器にして演奏する作品は楽しかった。 次にパビリオン内をみて回りました。 シアターではカーレースに参加したり大坂なおみとテニスができます。 新車「アリア」の試乗もできる。 車の未来のイメージを幾つかの空間に作っています。 美術展よりこちらの方が楽しかったですね。 帰りの本社ショールームで新車「キックス」にも触ってきました。 車は社会・経済への裾野が広いため革命的な飛躍ができない。 パビリオンも現在の車をそのまま生かした未来社会を描いている。 例え

■銀座線渋谷駅  ■宮下公園 MIYASHITA PARK

□銀座線渋谷駅 ■設計:メトロ開発,内藤廣建築設計事務所,東急設計,施工:東急.清水.鹿島共同企業体 ■銀座線渋谷駅の利用は仕事でも遊びでも少ない。 半蔵門線を選んでしまうからだ。 不要不急の銀座線だ。 「外苑前駅」に行くときぐらいだろう。 新しくなった渋谷駅に初めて降りた。 ・・鯨の背骨で覆われている。 ピノキオになった気分だ。 ホームは東地区中心に位置しているのがわかる。 明治通りの上に浮かんでいるからだ。 「 スクランブルスクエア 」との関係も通路を歩き回り身体的に解決した。 ハチ公へ行くには解体前の旧ホームを通っていく。 この周囲はやはり懐かしさがこびり付いている。 井の頭線だけが離れてしまった。 全ての工事が完了するまで西との行き来は混み合うはずだ。 *東急建設、 https://www.tokyu-cnst.co.jp/works/major/ginza.html □宮下公園 ■建築主:三井不動産,設計施工:竹中工務店 ■早速予約をして入る。 屋上の公園に行ったがもはや見る影もない。 スケートボードは半分以下になり、クライミングやビーチバレー場が出来ている。 公園ではなく、どこにでもある屋上庭園だろう。 見下ろすと「のんべい横丁」が身を縮め合っているのがみえる。 四面楚歌だ。 1階2階3階は商店・レストランになっている。 2階3階には通路は有るが、1階は歩道から店へ出入する構造だ。 壁はトタン、天井は剥き出しで、公園を意識しているのか内外の差を小さくしている。 地下は駐車駐輪場、北端にはホテルが連係している。 もはや隠れる場所がない。 地に根を下ろした<公園>を残していれば渋谷の風景はずっとリッチになったはずだ。 *MIYASHITA  PARK、 https://www.miyashita-park.tokyo/

■STARS展:現代美術のスターたちー日本から世界へ

□STARS展 ■作家:草間彌生,李禹煥,宮島達男,村上隆,奈良美智,杉本博司 ■森美術館,2020.4.23-9.6 ■広いスペースでゆっくり観ることができたわよ。 真夏を感じさせない。 作品も大きいし・・。 みたことのあるのも何度みてもいいわね。 「Sea of Time」(1998年?)のビデオ解説で宮島達男の顔を初めて知ったけど、どこかオジサン風だった。 その発光ダイオードが一人一人と繋がっているとは、やるわね。 同じように奈良美智の本棚の一冊一冊をみて彼が1950年代の生まれだと初めて知ったの。 やはりスターだから相応の年齢かな。 杉本博司「時間の庭のひとりごと」(2020年?)は「江之浦測候所」を背景に彼の言葉を綴っていくビデオ作品。 先週まで日経夕刊の連載を欠かさず読んでいたから身近に感じる。 舞踏家田中泯を登場させたのはモノゴトをみる眼が二人は近くなってきたからよ。 でも二人の作品は遠い。 そうそう、会場入口の村上隆「原発をみにいこう」(2020年)は事故現場とその周辺が気さくな日常にすっかり溶け込んでいたわね。 コロナの未来を描いたとも言える。 *館サイト、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/stars/index.html □音を消したチャイコフスキー交響曲第5番 ■作家:楊嘉輝サムソン.ヤン ■演者の楽器を動かす、息遣い、床の振動だけが聞こえてくる奇妙な感覚が楽しい。 楽器の音は消音させてある。 演奏者が作品をみれば何かを感じること大だとおもう。 *NAMコレクション012 *館サイト、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection012/index.html □ムニーラ.アル.ソルフ映像特集 ■上映時刻が合わないので観なかった。 *NAMスクリーン013 *館サイト、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen013/index.html □シオン ■韓国作家はキリスト教作品が多い。 ある意味不思議ね。 *NAMプロジェクト028 *館サイト、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamproject028/i

■ヨコハマトリエンナーレ2020

■横浜美術館,2020.7.17-10.11 ■日時指定のため11時半に入場しました。 でも半日では回り切れなかった。 映像作品が多いからです。 プロット48会場は諦めました。 勝手ながらテーマは原子力とみました。 記憶に残った4作品の為です。 ローザ・バルバ「地球に身を傾ける」の核廃棄物を埋めた敷地を上空から映した作品で原子力と人類は共存できないことを不気味な地形が教えてくれます。 キム・ユンチョル「クロマ」は素粒子まで分解し原子をなんとか無害にしている。 パク・チョンキン「遅れてきた菩薩」はネガ映像のため緊張感があります。 インド核実験や日本の原子力発電に仏教用語を多く使用しているのは何故なのか? ここに釈迦入滅を現代に再現する意味がある。 釈迦の弟子の一人は防護服にガイガーカウンターを身につけている。 火葬では釈迦の灰がまるで<黒い雨>のように降り注ぐ作品です。 作者作名は知りませんが「ビキニ環礁」の米国核実験の影響で島民はいまだ故郷に帰れない。 マーシャル諸島の海と空が何とも美しい。 ところでキャプションが独特ですね。 詩的過ぎて作品にストレートに近づけないのがもどかしい。 ディレクターはコロナのことは話していましたが・・、原子力もそうですが「作品を並び替え、境界を引き直し、泳ぎ回ること」ができる展示会は楽しい。 *館サイト、 https://www.yokohamatriennale.jp/2020/ *2020.8.9追記・・8月8日朝刊記事「核実験・原発事故 写真が伝える被害の実相」写真をみて横浜会場「ビキニ環礁」に映っていたドームが何であるのかが分かりました。 それは「ルニット・ドーム」です。 ルニット島で放射性物質を投棄しコンクリートで固めたものだが、劣化が激しく2019年5月に高レベル放射能に汚染された貝が見つかったようです。

■メルセデス・ベンツ、アート・スコープ2018-2020

■作家:久門剛史,ハリス.エパミノンダ,小泉明郎 ■原美術館,2020.7.23-9.6 ■日独アート交流招聘作家3名の展示会。 コロナで窓を開けているので蝉の声の中を観て回るようになる。 作品数は5点前後で控えめな感じがする。 どこに作品があるのか迷う室もある。 館と周囲と作品が混ざり合った展示だ。 気に入ったのは久門剛史の「Resume」。 部屋中にキャンバスを裏返して壁に立て掛けている作品だが絵具の色が白壁に微かに映っている。 開店休業のギャラリーのようだ。 気を吐いているのが小泉明郎だ。 「抗夢」はサーチライトを回しながら忙しい台詞で追い立ててくる。 しかし館全体は湿りのある梅雨空に囲まれて何とも言えないゆっくりとした時間が流れていた。 *館サイト、 http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/741/

■古典X現代2020、時空を超える日本のアート

■作家:川内倫子,鴻池朋子,しりあがり寿,菅木志雄,棚田康司,田根剛,皆川明,横尾忠則 ■国立新美術館,2020.6.24-8.24 ■「新旧アートくらべて魅せる」。 「比べる」とは「繋がり」を意識することですね。 先ずは仙厓X菅木志雄です。 仙厓は仏教的な円ですが、菅は人類史のようなゴツゴツした時間の流れを円に感じます。 石という物質がそうさせる。 花鳥画X川内倫子は写真の新鮮な生命の前に花鳥がくすんでしまった。 表裏の違いだと思います。 花鳥画は裏に生命を潜ましている。 円空X棚田康司。 彫像と目を合わせ無言の対話をすることができる。 棚田の等身大に近い像はこの対話が特に楽しい。 作品の前に長く居続けても飽きません。 刀剣X鴻池朋子は激しい。 天井で動物の皮を切り裂いている。 刃先をみると睾丸が縮みます。 同時に背筋がゾッとします。 日本刀で切られたら痛みを感じないでしょう。 痛みを超えた鋭さを持っているからです。 仏像X田根剛は旧=仏像だけで新が展示されていない。 光から現れる、そして光へ消えていく仏像を見ていると無の境地に入れます。 北斎Xしりあがり寿は楽しいですね。 でも漫画に近いと見慣れた作品になってしまう。 漫画は不利にみえます。 乾山X皆川明は思考の跡がみえます。 乾山と皆川明は似た者同士だからでしょう。 天井から吊るした作品などに苦心が見られます。 蕭白X横尾忠則も似た者同士ですがどちらも我が道を行くという感じですね。 ハハハハ。 横尾の笑い声が聞こえてきました。 *館サイト、 https://kotengendai.exhibit.jp/index.html

■JR横浜タワー  ■春の院展

□JR横浜タワー  ■建築主.設計:東日本旅客鉄道(株),施工:竹中工務店 ■開業,2020.5 ■6月に開業したJR横浜タワーを散策する。 低層部は旧横浜ステーションビルを改装し、その上に高層部オフィスを新たに加えたような建物になっている。 低層部にはJRビル「 新宿ミライナタワー 」と同じ「NEWoMan」が入居している。 「CIAL」と映画館「T・ジョイ」も一角を占めている。 敷地面積が十分な為かゆったりして気持ちの良いフロアだ。 このためエスカレータの配置も人の動きに合わせるように巧く分散されている。 アトリウムは「クインズスクウエア」に似て空間を意識させる。 レストラン街も壁を少なくして広場型を採用している。 緑が多いのも特長だ。 余裕の無い新宿タワーとは違う。 店舗通路の床タイルや壁紙の一部デザインが中東イスラム系のような柄を使っているのは珍しい。 屋上庭園に登ると「ベイクォーター」と「そごう」の間から横浜ベイブリッジが近くに、東には東京タワーやスカイツリーが微かに見える。 裏にまわると西口広場に「シュラトンホテル」がドカンと建っている。 高層部のオフィスは26階しかない。 高層にしては低い。 12,13階にはサービスオフィスが入っている。 2階からJR横浜鶴屋町ビルへ通路がのびている。 同時開業したビルだがホテルと駐車場になっている。 途中の通路は結構長い。 「日本のサグラダファミリア」横浜駅の工事もやっと終わったようだ。 *出店ウォッチ, https://shutten-watch.com/kantou/3458 *追記・・店内デザインは田根剛の作だと後から知った。 *「ブログ検索」に入れる語句は、田根剛 □春の院展 ■そごう美術館,2020.7.17-26 ■ついでに寄る。 今回は200点近くもあり量的見応えがあった。 これだけあると似たような作品が多い。 日本美術院内での流行があるのかもしれない。 *第75回展 *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/20/75-spring-inten/

■和巧絶佳、令和時代の超工芸

■パナソニック汐留美術館,2020.7.18-9.22 ■工芸作家12人の展示会、でも知っている名前はいない。 会場入口の「Heel-less Shoes」を見て、あっ、この作品が舘鼻則孝だったのね・・、という流れなの。 何度かみているが作家名を覚えていない。 工芸系展示会に足を運ぶのが少ないかな?・・反省! しかも初めてらしき作家もいる。 安達大悟、佐合道子、新里明士、橋本千毅、山本茜。  使っている技法は、梅華皮、蒔絵、高蒔絵、九谷焼、赤絵細描、漆工、螺鈿、象嵌、截金、融着、研磨、金彩、鋳造、キャスト、鍛金、スランプ、彫漆、板締絞。 フロッタージュやイッチンも登場する。 工芸教科書を開く必要もありそう、「和巧絶佳」を堪能するにはね。 12人は1970年以降生まれの作家だから一番脂が乗っている時期かな。 現在の工芸状況を知るにもいいわね。 要単眼鏡。 *館サイト、 https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200718/index.html *追記・・ブログのレイアウトを変更したけどどうかしら? Blogger提供の出来合い部品を使って組み立てたが微調整に時間がかかってしまった。 PCとスマホの連携が悪いわね。 まっ、これでよしとしましょ。 広告は入れないことにする。 匿名で運用しているからよ。

■開校100年 きたれ、バウハウスー造形教育の基礎ー

■東京ステーションギャラリー,2020.7.17-9.6 ■学校教育を切り口にしたバウハウス展は珍しい。 カリュキュラム図にはBAU=建築が中心に描かれています。 「・・造形活動の最終目標は建築である!」と。 会場では建築に行く迄の造形作品が並べられている。 例えば家具や食器など建築内部で使うモノたちです。 そして終章近くで建築作品が登場する。 会場構成が「建築の下に統合する・・」体系に沿っています。 でも説明がなければ建築が他分野と並列関係にあると見えてしまう。 7人の教師と専門科目の紹介で教育内容がある程度わかります。 7人とはイッテン、ホモイ=ナジ、アルバース、クレー、カンディンスキー、シュレンマー、シュミット。 科目は家具、彫刻、織物、壁画、印刷・広告、版画、陶器、金属、舞台、建築の10科目(工房)。 徒弟やマイスター制度の影響が強く感じられる。 これ以上に「実験精神に満ち溢れ」た生徒の身体を活かす実践教育が重要だったことが分かります。 途中「三つ組のバレエ」(オスカー・シュレンマー作、1922年初演)を上映していました。 色と形の饗宴ですね。 ダンサーのシンプルでリズミカルな動きも飽きがこない。 「道化、祝祭、神秘」三部構成の30分を楽しく観てしまいました。 そしてバウハウスの建築群はいつ見てもスカっとした直線が気持ちいい。 今でも衰えていないこの感覚は自然とは違った人間味を持つ幾何学的崇高さを感じますね。 そして6人の「バウハウスの日本人学生」の記録で会場は終わる。 美術学校の学園祭へ行ってきたような後味も残りました。 *館サイト、 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202006_bauhaus.html

■ドレス・コード?  ■糸川ゆりえ

■東京オペラシティアートギャラリー,2020.7.4-8.30 □ドレス.コード? ■ドレス・コードは服装規定と訳し、フォーマルからスマートカジュアル迄の7種類に分類されている。 でも、この展示会ではドレス・コードを再構築して新たなゲームをしようとしているの。 コードが強くなればなるほどゲームに近づくからよ。 ファッションはゲームなのね。 会場では13の新コードを疑問文にして観客に答えを委ねている。 質問のヒントとして現コードを揺さぶる作家やデザイナーの作品が展示されている。 と言うような展示構成かしら? 新コードは部品や素材を含め旧コードとの交通が激しい。 摩擦もある。 「組織のルールを守らなければいけない?」ではスーツや学生服から逃れられないし、「働かざる者、着るべからず」は労働着のジーンズは今も現役、「教養は身につけなければならない?」では有名画家をコピープリント!、「生き残りをかけて闘わなければならない?」は軍服の素材を再利用している。  留まったのは「他人の眼を気にしなければならない?」の「フォト・ノート」(ハンス・エイケルブーム)かな。 街ゆく人々を隠しカメラで、ヤンキーズの帽子を被っている人々、ストーンズのベロ・マークシャツを着ている人々、などなどを撮っていく。 そして同じキーを持つ人々を12枚=12人づつにまとめ展示しているの。 一人一人の全身まで眺めてしまったわ。 新コードが造られていく現場を見ることができるからよ。 「誰もがファッショナブルである」、これは笑っちゃった。 「ファッションは終わりのないゲームである」「与えよ、さらば与えられん」は2階展示場まで広げて劇団マームとジプシー、劇団チェルフィッチュを持ってきているけどよく分からない。 舞台衣装との関連かしら? 藤田貴大は皆川明「 書を捨てよ街へ出よう 」などで近づいているが岡田利規は聞いたことがない。 ドレス・コードに掛けるのは強引かもね。 ドレス世界の再分節化を試みた展示会だった。 表層の多様性は広がっているが現コードの堅牢さも感じられた。 アートだけでは決められないと言うことかな? *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh232/ □糸川ゆりえ ■侘び寂びを感じさせるわね。  *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag

■SOMPO美術館

■設計:大成建設,施工:大成.清水.鴻池建設共同企業体 ■2020.5開館 ■遠くから眺めるとモコモコした感じの建物だ。 ひとかじりした最中を地面に立てたようにみえる。 モナカだからモナモナ感と言える。 風変わりな駐車場と間違える人もいるはず、でも形は損保本社ビルに合う。 高層との比率もちょうど良い。  エントランスホールはコロナ対策で開店休業中のようだ。 展示会場を5,4,3階と下ってくる。 それにしても安っぽい建築材料を使っている。 プレハブ風の壁や階段だ。 窓がないので倉庫に近い。 2階ミュージアムショップもその延長だろう、窓はあるが・・。 先日の「 アーティゾン美術館 」は石材を利用した保守的な重さが気になったが、この「SOMPO美術館」は逆に軽さが気になる。 でも狭い敷地にモナモナ館を出現させたのだから日常的傑作に違いない。 *館サイト、 https://www.sompo-museum.org/about-us/concept/ □珠玉のコレクション ■開館記念展を観て回る。 多くは館所蔵品だが、「FACE」グランプリ作品も展示している。 *館サイト、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/opening_exhibition2/

■オラファー・エリアソン、ときには川は橋となる  ■もつれるものたち  ■いまーかつて、複数のパースペクティブ

■東京現代美術館,2020.6.9-9.27 □オラファー.エリアソン,ときには川は橋となる ■「二酸化炭素排出量を抑制しながらベルリンから日本まで作品を運ぶには・・?」。 最初の作品「クリティカルゾーンの記憶」をみて環境維持をここまで徹底するのか!と呆れてしまった。 いや、エリアソンは本気だ。 この流れが最後まで続くからだ。 途中の作品「サステナビリティの研究室」ではモノの再生可能性をこれでもかと追及している。 並行して光を取り込んだ作品が多いのに気付く。 幾何光学や波動光学の利用だ。 これは大気光学にも広がり、霧や氷そして氷河も対象にしている。 もちろん環境問題に繋がっている。 エリアソンを知ったのは「ニューヨーク・ウォーターフォール」に感動してからである。 副題「ときには川は橋となる」から巨大な滝を期待していたのだが、・・! 都市を利用する作家に梱包芸術のクリストがいるが環境アートとしてはエリアソンが直截だ。 彼の環境への本気度を知ることができて嬉しい。 *館サイト、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/ □もつれるものたち ■見当の付かない展示会だったが、配布資料を読みながらゆっくり進んでいくと作者と作品が現れてくる。 国家・政治・経済・自然を見つめ直す作品が多い。 考えさせられる内容ばかりだ。 例えば・・、①「進化する植物」②「ビットコイン採掘と少数民族のフィールド・レコーディング」③「ポーセリン(磁器)」④「解剖学教室」の映像4作品に絞ってみると・・。 ①は韓国の共同体批判を自然や高齢者に語らせている。 ②は中国の情報・エネルギ獲得が少数民族の犠牲で成り立ってきたこと、③はベトナム植民地時代の歴史文化の解釈問題を扱っている。 ②③は面白い出来栄えだった。 ④は福島にある博物館が原発事故に遭遇した後の文化的危機を議論する作品。 これは方向性が多様で内容が掴めなかった。 4映像をみるのに100分かかったが充実度も100%だ。 政治経済に関連付けると思いもよらない姿が作品に表れてくる。 *館サイト、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/kadist-art-foundation/ □いま-かつて,複数のパースペクティブ ■「もつ

■ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

■国立西洋美術館,2020.6.18-10.18 ■1章「イタリア・ルネサンス」、2章「オランダ黄金時代」はリズムに乗れないまま観てしまいました。 準備が出来ていないと時空を飛べない。 いきなり聖ゲオ・・、聖エミ・・、聖ボシ、聖ゼノ・・ですから。 でも3章「イギリス肖像画」に入ると呼吸が合ってきましたね。 絵画と一体化していくのがわかる。 最高のコンデションで後半は観ることができました。 観客が少ない為もある。 コロナの効用ですか。 この展示会はイギリスがヨーロッパ絵画を如何に咀嚼・容認・展開していったのかが語られます。 各章名にイギリスの能動的な言葉が記されている。 例えば4章「グランドツアー」、6章「ピクチャレス」は当に直接的ですし、5章「スペイン絵画」は「発見」、7章「フランス近代美術」は「受容」、1章に戻ると「収集」というように・・。 これにロンドン・ナショナル・ギャラリーの歴史も重ねて弁証法的にイギリス絵画を形作っていきます。 今回の目玉の一つ、ゴッホの「ひまわり」が終幕近くに展示されていました。 SOMPO美術館の観慣れた「ひまわり」とは一味違います。 黄色が眩しかった。 *館サイト、 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2020london_gallery.html

■鴻池朋子、ちゅうがえり  ■宇宙の卵  ■パウル・クレー  ■印象派の女性画家たち

■アーティゾン美術館,2020.6.23-10.25 □鴻池朋子,ちゅうがえり ■「 ミュージアムタワー京橋 」を一周してから美術館に入る。 コロナ対策が厳しい。 6階に行くと先ずは工事中のような櫓が目に入る。 周辺の壁には熊や鹿を描いた作品が並べられ、本物の毛皮も吊るされている。 人間と動物の霊媒関係を描こうとしているようだ。 「人間は一匹の動物として・・世界を眺めている」。 昔話にも力を入れていることを初めて知った。 映像もその延長に感じられる。 より周縁へ、より境界へと仕事が広がっているようだ。 将来の鴻池朋子は美術界のイタコを目指しているのではないだろうか? *館サイト、 https://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/2 □宇宙の卵,Cosmo-Eggs ■キューレーター:服部浩之,アーティスト:下道基行,安野太郎,石倉敏明,能作文徳 ■5階にダンボールや合板で建物を造り、映像・音楽・言語・建築・美術を駆使して一つの作品にしている。 「人間と非人間の共存・共生をテーマにしたインスタレーション」である。 石垣島の津波石の映像、リコーダを使い宮古島の鳥声をモチーフにしたゾンビ音楽、壁には琉球から台湾までの神話伝承が書かれ、中央にはオレンジ色の空気ソファが置いてある。 5分野が緻密に計算されて一つの卵として出来上がっている。 黄身が映像、卵白が音楽、殻が人類学、構造が建築と美術で出来た卵だ。 「卵の宇宙」だ。 <クール>と言ってよい。 ビエンナーレ出展作だけあって世界基準に達している。 6階の鴻池朋子展とテーマは接しているが表現の方向性が真逆だ。 2展をみて文化人類学の再流行を予感した。 *第58回ヴェネチア.ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 *館サイト、 https://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/3 □パウル・クレー ■「新収蔵作品24点一挙公開!」。 24点は見応えがある。 嬉しいオマケだ。 *新収蔵作品特別展示 *館サイト、 https://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/4 □印象派の女性画家たち ■画家

■ミュージアムタワー京橋(アーティゾン美術館)

■設計:日建設計,施工:戸田建設 ■2019.6竣工 ■開館5カ月目にやっと行くことができた。 地上23階、地下2階のビルは10階から22階がオフィス、低層部1階から6階にアーティゾン美術館が入る。 隣に建つ高層ビルは2024年完成で工事が始まったばかりだ。 両ビル併せて「京橋彩区」と名乗りアート系イベントエリアが計画されている。 1階カフェを八重洲通りに作らなかったのは4年後を意識したからだろう。 美術館に入る。 ビル内美術館は数階に分かれるのでわかり難い。 フロアガイドを見ながらロビー・ショップ・カフェ・トイレ・エレベータなど隈なく歩く。 建物中央の壁や階段は石を多用して重たい感じがする。 でも窓周辺のガラスと鉄のコンビネーションがそれを跳ね除けている。 展示室のフローリングが焦げ茶色で気に入った。 美術館床板の質や色は作品に影響するので重要だ。 早速6階の「 鴻池朋子展 」から観て回る・・。 *高層ビルサイト、 https://skyskysky.net/construction/201916.html

■画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン

■三菱一号館美術館,2020.2.15-9.22 ■「ナビ派が見たこども展」ですね。 この美術館はナビ派が多い。 親密さ、その延長にいる子供の絵は作品寸法も小さいので当館の部屋構造に合っている。 「 オルセーのナビ派展 」(2017年)の裏通りを歩いている感じです。 会場に入るとナビ派の誕生にかかわったゴーガンが出迎えてくれます。 ゴッホもいますね。 「路上」「散策」「都市」「公園」「家族」「庭」をタイトルに入れての日常の小作品が続く。 そこにヴァロットンの即物的表現を含めて都市市民の裕福さが感じられる。 エピローグの「永遠の子ども時代」のボナールは見応えがありました。 結局はボナールとドニが残った展開でした。 当展示会はボナール美術館が主催ですし、ドニは子沢山だったのが理由(?)でしょう。 *開館10周年記念展 *ARTAgenda、 https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/3979

■高輪ゲートウェイ駅

■設計:JR東日本,隈研吾建築事務所ほか,施工:大林組,鉄建JV ■2020.3.14開業 ■ホームに降りると解放感がやってくる。 天井が高いからだ。 駅構内を歩き回る。 膜屋根を通過する光と側壁ガラスから入る自然光が構内を柔らかくしている。 木材を使用していると聞いていたが目立たない。 たぶん天井が肌色の為だろう。 床の木目調コンクリート(?)も本物の木材を見え難くしている。 全体に冒険心が無い色彩だ、飽きは来ないかもしれないが・・。  1階はホーム、2階は線路に沿って長い通路がぐるっと取り囲んでいる。 3階にコーヒー店がある。 シンプルな構造だ。 自動案内板が目立つ。 ロボットもいる。 無人売店があったが入っても何も買わない場合の細かい遣り取りはどうなるのだろう? 駅周囲は工事中だ。 泉岳寺方面へ行くにも遠い。 海側方面通路は将来伸びるのかな? 4棟の高層ビル完成は3年先だ。 2024年まで使い勝手の悪い駅かもしれない。 *出店ウォッチ、 https://shutten-watch.com/kantou/1133

■ピーター・ドイグ展

■東京国立近代美術館,2020.2.26-6.14 ■「なつかしくて、あたらしい」。 その懐かしさと新しさが1枚1枚違うの。 ゴーギャンやゴッホ、ムンクやマティス、そしてホッパーや横尾忠則を次々と思い出しながら観ていったからよ。 でも物語の出処がよくみえないから懐かしさは表面的なの。 ここが横尾忠則とは違うのね。 そして3章「・・スタジオフィルムクラブ」で表面的な理由が分かった。 映画の物語を借用していたからだと思う。 「13日の金曜日」や小津安二郎の名前もあがっていたし・・。 40枚近い映画ポスターをみてドイグがやっとみえてきた。 D・リンチ、F・トリュフォー、F・フェリーニ、M・アントニオーニ、J=L・ゴダール、P・P・パゾリーニ、小津安二郎、R・ブレッソン、北野武、L・ヴィスコンティ、黒澤明、S・レイ、L・ブニュエル、J・ジャームッシュ・・・。 一歩踏み込んだ映画好きにみえる。 「ターナー賞」にノミネートされた理由は幾つかの作品で暈しを使った湿度ある空気感を描いた為かしら? ところで、久しぶりの美術館でみる絵はヤッパ最高ね。 *館サイト、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/peterdoig/ ■北脇昇、一粒の種に宇宙を視る *館サイト、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kitawaki2020/

■森山大道の東京、ongoing  ■写真とファッション、90年代以降の関係性を探る

■東京都写真美術館,2020.6.2-9.22 □森山大道の東京 ■久しぶりの美術館です。 森山大道は美術館で観るのが一番でしょう。 迫力が違う。 過去シリーズを取捨し再構成しているらしい。 新作もあるのが嬉しいですね。 作品の中の東京は見慣れているが一瞬動けなくなります。 それは「アレ・ブレ・ボケ」と言われている手法がその場所と人を異化して新しいリアルを出現させるからです。 特に白黒作品はそう思います。 カラー作品もいいですね。 色彩のドギツさがギリギリのところで止めてある。 白黒とは違った物語が見えてきます。 20世紀を強引に未来へ持っていこうとする力が働いている。 都市も肉体も20世紀が、大道の作品には、染みついているからでしょう。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3813.html □写真とファッション ■監修:林央子,作家:アンダース.エドストローム,高橋恭司,エレン.フライス,前田征紀,パグメント,ホンマタカシ ■副題の通り、90年代以降のファッションとその周辺を回想するため、 「here and there」やエレン・フライスの「Purple」など当時の雑誌を広げながら、「花椿」は登場しませんが、ファッションブランド「PUGMENT」で現代に繋げていく流れです。 高橋恭司、前田征紀、ホンマタカシなど作家との関係も初めて知る。 戸惑いました。 この時代のファッションは(私事多忙で)記憶からスッポリ抜けているからです。 マルタン・マルジェラくらいです。 前田征紀や安田都乃の作品も全体との繋がりが見えない。 結局は混乱したまま館を後にしました。 20世紀末を20歳前後で通過した人には分かるはずです。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3451.html

■ゴッホとヘレーネの森、クレラー・ミュラー美術館の至宝  ■永遠の門、ゴッホのみた未来

□ゴッホとヘレーネの森 ■監督:ジョヴァンニ.ピスカーリオ,脚本:マッテオ.モネータ,案内人:バレリア.ブルーニ.テデスキ ■(イタリア,2018年) ■「コレクターであるヘレーネ・クレラー・ミュラーを通してゴッホを描いたドキュメンタリー・・」とある。 クレラー・ミュラー美術館は行ったことがないしヘレーネもよく知らない。 ヘレーネの生い立ちやゴッホの出会いなどを挿入しながら作家や研究者の解説で進んでいく前半は面白い。 「ヘレーネのベッドは質素で小さかった」「大戦では看護に従事した」。 彼女にゴッホの影響が見える。 宗教の疑問からくる信仰の危機も同じだ。 しかし後半はヘレーネから離れていく。 ゴーギャンとの共同生活以降は死に急ぐゴッホを後押しするかのような流れになっていく。 それはゴッホの言葉で満たされながら終幕まで続く。 なかなか劇的だ。 ゴッホと人生観を重ねていたヘレーネのことをもっと知りたかった。 ヘレーネと後半の結びつきがぼやけていた。 美術館も遠くなってしまった。 最期まで彼女に寄り添えば統一感のある作品になっていただろう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/91633/ □永遠の門 ■監督:ジュリアン.シュナーベル,   出演:ウィレム.デフォー,ルパート.フレントド,オスカー.アイザック他 ■(イギリス.フランス.アメリカ,2018年) ■先日、レンタルで観た「マザーレス・ブルックリン」に登場していたウィレム・デフォーが今回のゴッホ役だ。 どの役も同じにみえる役者だから気にならない。  「永遠の門」は1886年のパリから始まるが直ぐにアルルへ飛ぶ。 ゴッホの喋る言葉はしっかりしている。 この為か後半に入ってからのゴッホと4人の対話が面白い。 それは、耳を切り落とした直後の医者との問答、サン=レミ療養所入浴場面の兵隊との昔話、療養所を出る直前に交わす神父との論争、そして「医師ガシェの肖像」を描きながらのガシェとの会話。 ゴッホをイエス・キリストに近づけようとしているのが分かる。 ゴッホはキリストのように未来を語る。 彼の死姿は十字架から降ろされた時のようだ。  作品タイトルもそれに呼応している。 変わった映画だ。 ところで「リチャード三世」を読むゴッホの持つ本が小さ過ぎて気になった。 7センチくらいの

■有元利夫展、花降る空の旋律しらべ(中止)

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.6.25-8.30 ■「新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、開催を中止することになりました・・」。 「東京好奇心」と違って延期は難しかったのね。 東京10年ぶりの回顧展だったのに残念! *有元利夫没後35年展 *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_arimoto/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 有元利夫

■REM  ■二人のイームズ、建築家チャールズと画家レイ

□REM ■監督:トーマス.コールハース,出演:レム.コールハース他 ■(アメリカ,2017年) ■建築家レム・コールハースの「中国テレビ局」「ザ・ロッテルダム」の写真を見たときは声が出なかった。 ゴッツイ感が充満している。 当監督はレムの息子らしい。 スケートボードで走り回る「シアトル図書館」の幕開きは素晴らしい。 しかしレムの語りには混乱してしまった。 独り言のようで何を語っているのかさっぱり理解できないからだ。 後半は慣れてきたが70分のドキュメンタリーはそのまま終わってしまった。 建築展は一度も観た記録がない。 「錯乱のニューヨーク」も読んでいない。 レムへのキッカケは不発だった。 又を期待しよう。 *アーキテクチャフォト、 https://architecturephoto.net/54021/ □二人のイームズ,建築家チャールズと画家レイ ■監督:ジェイソン.コーン,ビル.ジァージー,出演:チャールズ.イームズ,レイ.イームズ他 ■(アメリカ,2011年) ■椅子以外のことをすっかり忘れていた。 1959年の「モスクワ文化交流展」場面をみて二人の姿が甦ってきた。 幾つかの展示会も記憶があるのだがキーがマッチングしなくて記録から引き出せない。 チャールズが製造系企業(ボーイング、ポラロイド、IBM等)へ接近した頃からレイとの関係が薄くなったことを今知った。 作品「パワーズ・オブ・テン」を見て宇宙の大きさが何であるかを把握したことを覚えている。 超弦理論でいうプランク長(10マイナス30乗メートル)の世界からみた1メートルは、その世界(1メートル)にいる我々が宇宙の果てを見た距離(10の30乗メートル)と相対的に同じである。 この作品は、世界の極小と極大を比較することにより距離概念に新たな視点を与えてくれた。 針の穴ほどから爆張したビックバン理論も宇宙140億光年の果ても恐れることはない、と言うことを。  *映画com、 https://eiga.com/movie/77947/

■デヴィット・リンチ、アートライフ

■監督:ジョン.グエン他,出演:デヴィット.リンチ他 ■(アメリカ・デンマーク合作,2016年) ■映画監督デヴィット・リンチの作品は欠かさず観て来たが彼の経歴はよく知らなかった。 ギャラリー等で彼の絵画・版画に何度か出会ったことがある。 この映画は1946年リンチ誕生から「イレイザーヘッド」(1976年)デビュー迄の30年間を撮ったドキュメンタリーである。 作品を作りこむ近況のリンチを映しながら、随所に過去の写真を入れインタビュー音声を被せた構成だ。 リンチの青春は美術一筋だったことが判明した。 「画家になる!」と、電流が流れるように決めたと彼は語っている。 絵画や版画の出来が素人を越えていた理由が今わかった。 そしてAIF奨学金を得てから映像へと方向を切っていく。 彼の子供時代が活き活きと描かれている。 両親や弟妹、学校や近所の友人と豊かな人間関係を形成したらしい。 子供時代を人生の宝として彼は持ち続けているのだろう。 作品に<手作りの楽しさ>があるのは宝の一つだとおもう。 苦しい1960年代に絵画を描き続けられたのも宝の貯金かもしれない。 カルトの帝王であるリンチの作品が持つ豊かさの源泉に遡ることができた。 *映画com、 https://eiga.com/movie/87079/

■炎の人ゴッホ  ■ゴッホ、真実の手紙

□炎の人ゴッホ ■監督:ビンセント.ミネリ,出演:カーク.ダグラス,ジェームズ.ドナルド,アンソニー.クイーン他 ■(アメリカ,1956年) ■これは西部劇だ。 拳銃はぶらさげていないが・・。 ゴッホ役カーク・ダグラスはもちろんのこと、風景や音楽の全てに19世紀後半のアメリカ西部の匂いが漂う。 ゴーギャンがメキシコから流れてきたガンマンに見えてしまう。 ゴッホの孤独とはどういうものなのか? 弟テオやゴーギャンとの関係からみると人恋しさが人一倍強い感じがする。 でも彼の精神状況はこの作品ではよくわからない。 描き方が粗い。 コロナ在宅が短ければこの作品に出会わなかった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/49437/ □ゴッホ,真実の手紙 ■監督:アンドリュー.ハットン,出演:ベネディクト.カンバーバッチ,ジェイミー.パーカー他 ■(イギリス,2010年) ■これは面白い。 ゴッホの書簡を抜粋して物語が組み立てられている。 全902通の多くは弟テオとの遣り取りだ。 カンバーバッチもゴッホ役が似合わない。 カーク・ダグラスとは真逆だが。 しかしドキュメンタリー風のため気にならない。 ゴッホはロンドンでディケンズの作品に出会っている。 農民を描く時の血肉になっているようだ。 ゾラの影響もみえる。 左耳を切り落とした頃はシェイクスピアに夢中になっていたらしい。 ヘンリー四世や五世、リア王のことが語られる。 ゴッホは結構な読書家にみえる。 彼の新しい一面を知った。 *Filmarks、 https://filmarks.com/movies/61644

■ボストン美術館展、芸術x力(中止)

■東京都美術館,2020.4.16-7.5 ■「・・5月中旬の開幕を目指し、調整を続けておりましたが、日米両国の新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、現段階で作品輸送の目途が立たないことから、開催は困難と判断し、展覧会の中止を決定いたしました」。 多くが延期のなか中止は初めてかな? *館サイト、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2020_boston.html *「このブログを検索」に入れる語句は、 ボストン美術館

■超写実絵画の襲来

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.3.18-5.11 ■28作家が揃うと写実の違いが分かって面白い。 世界をそのまま描いているにも拘らずこれだけ違って見えるとは驚きです。 「ディティールは描きこまない」「細部にこだわらない」。 作家もいろいろですね。 それを越えて写実絵画に共通しているものとは何でしょう? 「存在感がある」「美意識が滲み出ている」。 やはりいろいろです。 展示会場を一回りして、記憶に残った作家は静物の五味文彦、風景の原雅幸です。 彼らの作品を前に「息をのむ」のは確かです。 息をのむことができるか!?が写実絵画の必要条件かもしれない。 「いきをのむ」は世界の歪みに出会った時の身体動作です。 現実世界が歪んでいることを教えてくれるのが写実絵画とも言えます。 *ホキ美術館所蔵展 *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_choshajitsu/ ■金子国義展、聖者の作法 ■没後5年を迎えての金子国義です。 油絵も展示されていて見応えがあります。  *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/200311kaneko.html ■英国・米国作家によるフィギュラティウブアート展 ■「フィギュラティブアートとは、空想や逸話から生まれるものではなく、現実にある人物や動物、建物などを題材に制作されたアートのこと」。 初めて聞く言葉ですが意味が広いですね。 英米画家のこの種の作品をみると、いつもアンドリュー・ワイエスに繋がっていく。 *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/box_200325figurative.html

■深井隆、物語りの庭

■板橋区立美術館,2020.3.7-5.10 ■深井隆の作品は西洋形而上学を彫刻で表現したようにみえる。 日本の美も微かに感じる。 この絶妙さがいい。 「・・彫刻の展示空間に物語が存在する・・」とチラシに書いている。 まさに彼の作品はその空間と一体化しないと物語が熟成しない。 でも、この美術館は相性が悪いようだ。 受付の騒めき、入ってくる外光が物語を遠ざける。 場内職員の動きも雑だ。 館内に日常が充満している。 奥の部屋は外から遮断されるが窮屈に感じる。 空間が狭すぎる。 「青空2020」の翼が伸び切っていない。 「王と王妃」の椅子たちの後空間に余裕が無い。 部屋を二つにした「月の庭」は一つが妥当だろう。 近づいていく時に、作品の後ろ空間から物語がやって来くるような出会い方をするからだ。 立ち止まって、周辺の空間と共に作品が物語を紡ぎだしていく。 小作品は暗めの部屋に、大作品は数を半分にすれば密な対話が近づくはずである。 *館サイト、 https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4000017/4000024.html *「このブログを検索」に入れる語句は、 深井隆

■ジェイン・ジェイコブズ、ニューヨーク都市計画革命  ■ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

□ジェイン.ジェイコブズ,ニューヨーク都市計画革命 ■監督:マット.ティルナー,制作:ロバート.ハモンド,声:マリサ.トメイ他 ■(アメリカ,2016年作品) ■ジェイコブズを初めて知りました。 1916年米国生まれのノンフィクション作家である彼女は1960年代の都市開発、特にニューヨーク再開発を批判する活動家でもあった。 作品では次の反対運動を取り上げています・・ 1.ワシントン広場公園道路計画 2.ウェスト・ビレッジ公営住宅計画 3.サウス・ブロンクス高速道路計画(運動は失敗?) 4.ローワー・マンハタン道路計画 そして彼女が進めた「街を元気にする4大原則」とは・・ 1.街路は幅が狭くて曲がっている(歩行優位と風景濃密化) 2.古い建物をできるだけ残す(低家賃で学生や芸術家の呼込) 3.二つ以上の働きを持たせる(多様な目的と人材の獲得) 4.人口密度が十分高い(コミュニティの活性化) この4大原則は具体的に語られません。 彼女の思想は表面的にとどめている。 むしろ当時の彼女の力強い行動力が前面に滲み出ています。 今のニューヨークは戦後再開発と反対運動のせめぎ合いの結果を眺めているのですね。 南下してユニオン・スクエアを過ぎると、いつもホッとできるのは彼女の運動成果でしょうか。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/88380/ □ニューヨーク,ジャクソンハイツへようこそ ■監督.録音.編集.制作:フレデリック.ワイズマン ■(アメリカ.フランス,2015年作品) ■ジャクソンハイツを地図で探しました。 都心から30分のクイーンズ地区ですか。 ここも再開発に巻き込まれている。 大都市の宿命ですね。 コミュニティの場を多く撮っています。 例えば教会・誕生会・老人会・寺小屋・教育委員会・床屋・レストラン・ダンス教室・タクシー講習会等々の集会所で住民同士の世間話を映し出し、その隙間に街の風景を流す方法です。 このリズムが3時間も続くところが作品の特長と言える。 長く見ていると街の雰囲気が身体に沁みつくからです。 この町で167の言語が話されているとは驚きです。 アメリカ国民としての拘り、役所や警察など権力組織との緊張などなど移民の街としての特徴が描かれていく。 同時にLGBTなどの少

■縛られたプロメテウス Prometheus Bound

■感想は、「 縛られたプロメテウス 」 *話題は,「小泉明郎」「VR」.

■瑠璃の舞台ー杉本博司オペラ座への挑戦ー

■感想は、「 瑠璃の舞台-杉本博司オペラ座への挑戦- 」 *話題は,「杉本博司」「鷹の井戸」.

■白髪一雄  ■汝の隣人を愛せよ  ■今井麗

■東京オペラシティアートギャラリー,2020.1.11-3.22 □白髪一雄 ■フット・ペインティングへ移ったのは作者の身体が疼いたのだろうか。 それにしても足描画は荒々しい。 しかも似たような作品が多い。 映像を観て理由が分かった。 綱にぶら下がっても滑ってしまい体の制御が効かないのだ。 J・ポロックの制作映像を思い出してしまった。 ポロックは制御ができた(はず)。 この違いは大きい。 白髪一雄が途中からスキー板やスキージを使いだしたのも無制御が不安になったのかもしれない。 また宗教への接近から曼荼羅が持つ規則性を描こうとしたのかもしれない。 それでも泥遊びやチャンバラに夢中な彼の写真をみるとやはり身体作家だとおもう。 彼の作品は即興ダンスと同じく一回限りの行為で会場の展示はその記録である。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh229/ □汝の隣人を愛せよ ■20人強の画家たちを一同にみることができて嬉しい。 小作品が多いがタイトル名と同じく凝縮力の強い作品が多い。 じっくり見ていると味がでてくる。 キリスト教系の作品は見応えがある。 小嶋悠司の母子象や坂部隆芳のピエタ像は宗教の深みへ誘われる。 開光市や加藤清美、落田洋子、吉岡正人など普段みることができない個性豊かな作品も楽しい。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh230.php □今井麗 ■湿気を含んだ梅雨時のような青系の作品が多い。 その滑らかな描き方が目に入る全てのモノを肯定しているように感じられる。 作品の「テラス」「静物」などなど、木々草々や果物の率直性が単純化した中にみえる。 観る者もその清々しさに心打たれる。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh231.php

■それは本当に必要か。 Is It Truly Necessary?

■作家:増田信吾,大坪克亘 ■TOTOギャラリー・間,2020.1.16-3.22 ■密集する住宅街が貧しくみえるのは垣根が一因だと思います。 多くはアルミ棒や網でできていて安っぽい、空間がより狭くなってしまい身動きが取れない。 植木なら未だ見るに耐えられますが。 全ての垣根を取り払って想像する風景は余裕があります。 今回の増田信吾と大坪克亘は垣根や壁が対象ですが、外部と内部の関係や周囲の環境から考えようとしている。 先ずは3階住宅の1階を土間にして商店街の流れの一部にしてしまう「街の家」。 大人たちは一瞬躊躇うが子供たちには入り易い微妙な構造です。 壁の無い客間ですね。 気に入ったのは普通の個人住宅ですが2階テラスを独立に作る「庭先のランドマーク」です。 小さな通路を通り庭に浮いているテラスに入るのですが未知の驚きがありそうです。 テラスに居ると気持ちが一新するのは間違いない。 二人の傑作「リビングプール」は個人的にはイマイチでしたがその場に居れば視野感が浮き沈みするはずです。 精神状況で良くも悪くもなりそうですね。 小規模建築が多いため住居への気付きを教えてくれる展示会でした。 ところでセラトレーディングルームの続きの展示(写真紹介)を見忘れてしまった。 六本木に行った時に再度寄ることにします。 *館サイト、 https://jp.toto.com/gallerma/ex200116/index.htm

■モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展

■構成:前田尚武,作家:ブルーノ.タウト,井上房一郎,アントニン&ノエミ.レーモンド,剣持勇,ジョージ.ナカシマ,イサム.ノグチ ■パナソニック汐留美術館,2020.1.11-3.22 ■6人の作家が時代に揉まれながら日本で出会い、暮らし風土に根差した家具や工芸品を造り、戦後に再会する流れで構成されているの。 6人(組)とはブルーノ・タウト、井上房一郎、アントニン&ノエミ・レーモンド、剣持勇、ジョージ・ナカシマ、イサム・ノグチよ。 6人の関係を要約すると・・、亡命来日のタウトを支援した井上、師弟のタウトと剣持、同じくレーモンドとナカシマで略すっきりする。 戦後になり、タウトとレーモンドは井上が銀座に出店した家具工芸店「ミラテス」で繋がるの、既にタウトは亡くなっているけどね。 インテリアに興味を持ったノグチは来日してレーモンドと知己になる。 分かった? うん! ところで戦前の民芸運動との繋がりは論じていない(見落とした?)。 モダンデザインとは切り口がズレているし・・、中心に居た井上がパリ留学経験もある企業人として建築家タウトを受け入れ建築からみた家具を意識したからだと思う。 それにしても解説が多い会場だわ。 最初から読んでいく展示になっている。 でも細部まで巧くまとまっていた。 学者同士の関係の著書は多いけど、このように建築デザイン作家の結び付きから物語を展開していく美術展も面白い。 その関係の深浅は目の前にある作品を見るしかないけどね。 ところで一つ質問があるの。 タウトの「旧日向別邸」(1936年作)の応接や居間に幅のある階段が造られている。 主人と客の親密さを演出すると解説にあったけどタウト本人はどう位置付けていたのか理解できなかった。 むしろ上下関係が強くならないかしら? *館サイト、 https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/

■石宮武二、京のいろとかたち  ■美しい風景写真100人展

■フジフィルムスクエア,2020.1.4-3.31 □石宮武二,京のいろとかたち ■作品の前で思わず動けなくなってしまった。 画面構成、色合い質感どれをとっても完璧に近い。 作品28枚の展示だが全てに日常非日常を越えた存在感が宿っている。 久しぶりに写真を観る喜びがやってきた。 ところで近頃の写真展の多くは凝縮感がない。 パチパチ撮って味噌も糞も一緒に展示してしまうからだろう。 写真環境の劇的な変化もある。 素人でも年に数千枚は撮る時代だ。 プロの推敲を欠かさないで欲しい。 展示会の在り方も考えさせられた。 *館サイト、 http://fujifilmsquare.jp/detail/20010404.html □美しい風景写真100人展 ■ついでに入る。 どれも銀塩プリントの為か回転寿司屋で回っている鮨を眺めているようだ。 風景と鮨は違うが、鮨100枚を展示しても感動の質は変わらないだろう。 それだけ写真が均一化されてしまっている。 *第15回展 *館サイト、 http://fujifilmsquare.jp/photosalon/tokyo/s123/2001040123.html

■ハマスホイとデンマーク絵画  ■第68回東京藝術大学卒業・修了作品展

■東京都美術館,2020.1.21-3.26 □ハマスホイとデンマーク絵画 ■デンマーク絵画の黄金期を初めて知ったの。 それは19世紀前半よ。 知らない画家たちの風景画はなるほど心地よい。 「ほっこり幸せな雰囲気をあらわすデンマークの言葉hygge(ヒュゲ)」のある日常礼賛の世界を描いている。 ヒュゲを掲げる絵が黄金期と称するところが凄いわね。 さすが世界幸福度ランキング上位の国は違う! でも19世紀中頃にナショナリズムが湧き起こるの。 漁師たちを英雄的に描く風景画が増える。 スケーイン派よ。 スケーイン地方はフランス印象派のノルマンディのような位置づけにみえる。 そして19世紀末、愛国主義調「シャロデンボー春季展」に対抗する「独立展」が開催されヨーロッパの流れに乗りながらヒュゲに親密さが加わる室内画へ進む流れかな。 会場はここからハマスホイ。 1890年代の彼の作品は助走段階にみえる。 2階へ上がり1900年代に入った途端、作品の様変わりに圧倒! 10枚以上ある風景画に感嘆! 親密さのある自然とはこういうことだったのね。 そして室内画へ。 「室内」「背を向けた若い女性のいる室内」などを堪能! 人物はやはり後ろ姿がいいわね。 最後の「カード・テーブルと鉢植えのある室内」が素晴らしい。 無機質と言うより昇華した親密さが出ている。 ・・文句のない展示だったわよ。 *館サイト、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_hammershoi.html *wikiではハンマースホイと書いている □第68回東京藝術大学卒業・修了作品展 ■ハマスホイ会場からチラッと見えたので入る。 会場入口から日本画、建築、デザイン、表現、油絵、ギャラリーでの彫刻、工芸と続く。 下町商店街の縁日ような雰囲気だわ。 ごった煮のような内容と量に圧倒される。 大学構内でも展示しているらしい。 7学科もあるなんて知らなかった。 建築科のシラバスには(調べると)構造材料演習もある。 まるで工学部ね。 演習科目をみれば学科が何を求めているのか分かるのよ。 会場を一回りしたら脳ミソがオーバーフローしてしまい学内展示は無理。 でも作品全体の出来具合から学生たちの素顔も見えてきた。 混沌の卒業作品でハマスホイを忘れそう。 *大学サイト、 https://

■DOMANI・明日2020、傷ついた風景の向こうに

■作家:石内都,畠山直哉,米田知子,栗林慧,栗林隆,日高理恵子,宮永愛子,藤岡亜弥,森淳一,若林奮,佐藤雅晴 ■国立新美術館,2020.1.11-2.16 ■いつものDOMANIと会場雰囲気が違いますね。 キャプションも新人紹介がない。 ・・知っている画家が多い。 「日本博2020」へ参画する特別版らしい。 海外研修を経験した中堅作家を集めてテーマを絞り「20世紀以降に我々が経験した人災や天災で生じた傷痕から時間を経て生まれた作品」を集めたとのことです。 広島・長崎原爆投下、サイパン島玉砕そして東日本大震災、ゴミ問題を9人の作家が取り上げています。 その中で異色なのは栗林親子の昆虫を撮った作品でしょう。 野山で昆虫を接写した映像ですが餌の食べっぷりが豪快です。 昆虫の食事は無関心を装っているが喜びが伝わってくる。 人間と変わりませんね。 一生懸命に生きる昆虫たちのコラボのお陰で他の作家作品がより深く心に響いてきました。 *館サイト、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/domani2020/

■品川工展、組み合わせのフォルム

■練馬区立美術館,2019.11.30-2020.2.9 ■品川工が人の名前かどうか一瞬迷ってしまった。 地名や組織の名前にも見えたからよ。 会場に入ると明るい抽象木版画が迎えてくれる。 直ぐに気に入る。 彼の経歴は面白い。 兄弟で洋食レストランや本屋を経営していた時期もある。 当時の写真をみると服装や髪型からモダンな家族にみえる。 父はクリスチャンでその影響は後々の作品にも見受けられるわね。 版画の種類を増やせたのは光村印刷所へ勤めたことにあるらしい。 木版から紙、板ガラス、樹脂そしてシルクスクリーンへと進む。 でもシルクスクリーン作品は過剰さが目立つ。 結局は木版画が一番かな。 彼の作品にはネガとポジ、彫ると彫らない、付けると付けないなど反転の面白さを重視している。 またモビールやオブジェも制作し、子供向きのような楽しい本も書いている。 彼を知らなかった理由は作品分野を広げてしまい一つ一つが薄くなってしまったからだと思う。 薄いとは趣味が作品に入り込んでしまったからよ。 もう一つはテーマの二項対立を深めなかったから。 でも作品を作る楽しさは伝わってくる。 彼の名前と木版画は記憶に残りそう。 *品川工没後10年展 *館サイト、 https://neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201908121565593487

■永遠のソール・ライター  ■急がない人生で見つけた13のこと

□永遠のソール・ライター,ニューヨークが生んだ伝説の写真家 ■Bunkamura.ザミュージアム,2020.1.9-3.8 ■ソール・ライターは2017年にも開催している。 再び開く理由は?「膨大なアーカイブから世界初公開を・・、知られざる一面を・・」にあるらしい。 初期ピクトリアリスム的な風景の一部を暈しているような作品が中心に置いてある。 濃密な時間・空間がそこには無いが、雨や雪の都会風景は心が和む。 旅行先のローマやパリの作品もイーストヴィレッジの延長だ。 でも作品の多くは日曜画家が、ここでは写真家だが、撮ったようなものを感じる。 彼は写真家H・C=ブレッソンに感激し、画家P・ボナールを敬愛していたらしい。 自宅が紹介されていたが室内にボナール風らしき絵が飾ってある。 絵画は今でも描くのかな? ブレッソンとの関係は見えなかった。 いろいろ気になったので帰宅して関連ビデオを見ることにする。 *「 写真家ソール・ライター展 」(Bunkamura,2017年) *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter/ □写真家ソール・ライター,急がない人生で見つけた13のこと ■監督.撮影:トーマス.リーチ,出演:ソール.ライター ■(イギリス&アメリカ,2012年作品) ■自宅ではWi-Fi経由のストリーミングで容易にビデオが観られる。 早速目当ての作品を探し出したが、この数年で映像の観方が大きく変わってしまった。 写真などは撮方も劇的に変わった。 このドキュメンタリーは13章から成り立っている。 副題にもあるように彼の人生観が前面に出ている。 写真論や技術論は敢えて避けている。 彼は宗教世界から逃げて20世紀芸術の時代に上手く乗った人にみえる。 美術展会場では彼のアパートが古めかしく厚みのある姿にみえたが、映画ではゴミ屋敷の二歩手前だ。 「終わることのない、ソール・ライターの仕事場をたずねて」の意味が分かった。 「膨大なアーカイブ」とはゴミの山のことだった。 彼の性格もある。 ゴミのように写真を撮る。 現代の日曜写真家の方法だ。 時代がやっと彼に追いついた。 芸術家という仕事柄、この性格と量が上手く働いたのだと思う。 *映画comサイト、 htt

■ヒトラーVS.ピカソ、奪われた名画のゆくえ

■監督:クラウディオ.ポリ ■(伊仏独合作,2018年作品) ■ナチスが略奪した美術品は60万点もあり10万点が現在も行方不明です。 今でも発見が相次いでいる。 法廷闘争も続いているが所有者の奪還は困難を極めているらしい。 当時は「・・強制収容所から戻った所有者に聞くこともできない」し、今では所有者だったことを証明するのが難しくなっているからです。 A・ヒトラーとH・ゲーリングが競って美術品を略奪する場面が多く映し出される。 特にゲーリングが中心人物のようです。 二人の周囲には多くの美術史家、画商や批評家が取り巻いていた。 その芸術は「ナチスの威厳と美、アーリア人の純粋と幸福をもたらす」しかし「危険のため統制する必要もある」。 この相反する言葉に「大ドイツ芸術展」と「頽廃芸術展」の二つの展示会が対応していたことは言うまでもない。 当時のフィルムで構成されているので迫力があります。 有名な作品が幾つも登場しますが戦禍で消滅する危機にあったことを再認識しました。 それは形を変えて今も続いている。 「芸術家は敏感な政治家であるべきだ。 悲劇に無関心でいてはならない」。 ゲシュタポと向かい合ったピカソの言葉でドキュメンタリーは終わる。 プロパガンダを作らないことが芸術家の一つの条件かもしれない、ピカソのように。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/90453/

■奈良原一高のスペイン、約束の旅

■世田谷美術館,2019.11.23-2020.1.26 □奈良原一高のスペイン、約束の旅 ■1962年夏、初めてのヨーロッパ旅行は感動を抑えて客観的になろうとする奈良原の姿が写真に現れている。 「老婆のような街・・」・・、パリでの彼の言葉だ。 重厚なドアの前で飛ぶ鳥の影が写るヴェネツィアは一度みたら忘れられない。 「静止した時間」の石の街々。  それが「偉大なる午後・フィエスタ」で一転して感情を解き放つ。 彼は羽目を外し祭りに溶け込んでいく。 祭りが終わって町や村で撮った「バヤ・コン・ディオス」。 「さようなら」と訳すが意味は「神とともにお行きなさい」らしい。 「グアディクス」や「グラナダ」の風景はルイス・ブニュエル1950年代の映画作品を思い出す。 しかし奈良原がスペインの街々の何を撮りたかったのか伝わってこない。 人々の生活の匂いも感じられない。 そして再び祭へ・・、だが「闘牛」にカルメンはいない。 牛のように周囲を駆け回っているだけだ。 祭りが彼の目をシャッターを狂わせてしまったようにみえる。 *館サイト、 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00196      □受け継がれる工芸の技と心そして現代へ *ミュージアムコレクション3 *館サイト、 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00105 □能面師入江美法の世界 ■生身の役者が己の身体を昇華させるのが舞台だ。 しかし面を付けると生身の身体は瞬時にみえなくなる。 シテは昇華された身体で登場し演じ退場する。 能面をみているだけでもそれを追体験できる。 *コーナー展示 □群馬直美,神の仕業-下仁田ネギの一生- ■下仁田葱の甘みまで伝わってくる。 *木の葉の美術館サイト、 https://wood.jp/konoha/index.html

■青木野枝、霧と鉄と山と

■府中美術館,2019.12.14-2020.3.1 ■空間を内に取り込み、外に溶け込んでいるから鉄の重さを感じさせない。 「作品のほとんどが展示場所に合わせて作られる・・」。 室内版ランドスケープとして効果が出ているのね。 気になった作品は「untitled」(1981年)。 鉄棒は太くなく細くなく絶妙な径で大きさも人に近いし尖っていて弛緩と緊張を同時に感じてしまう。 「原形質」(2012年)を間に置いて遠くに眺めるのも味があるわね。 他の作品が丸みがかっているから余計に目立つ。 作者も当時は尖がっていたのかしら?  設計図であるスケッチブックを見ると活き活きしていて動きがある。 現実は鉄の重さや溶接の生々しさから逃げられない。 しかも下町工場の溶接工のような肉体の記憶も作成過程で付着してしまう。 でも置かれた空間の中でみると、それらを跳ね除けて立ち現れるところが清々しい。 *館サイト、 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/noeaoki_kiritotetsutoyamato.html

■ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華、大様式の形成と変容

■東京富士美術館,2019.10.5-2020.1.19 ■フランス絵画史の教科書を読んでいるような流れですが面白く観ることができました。 しかもルネ・ユイグが当館コレクションに係わっていたことを初めて知りました。 展示会タイトルはこの美術館の特色を簡素に表しているようです。 初めに「大様式」を語っているが、ルイ14世時代「フランス古典主義」が生れる直前を指しているようです。 ここから「王立美術アカデミー」が生れ、次のルイ15世に入って「ロココ美術」、ナポレオン時代の「新古典主義」、その後の「ロマン主義」へと続いていく。 当館所蔵の絵を核にして海外美術館作品を周囲に配置する構成になっている。 例えばクロード・ロラン「小川のある森の風景」の隣に海外所蔵のロラン2作品を置くようにです。 これがヴァトー、パテル、ブーシェ、ロベール、ルブランなどが同構成で続いていく。 厚みと広がりが出ていますね。 上記画家たちのデッサンが4章にまとめられている。 特にヴァトーのデッサンは素晴らしい。 ドラクロアなどのロマン主義で終わりになるが十分に堪能できました。 最後にマネ?が1枚あったようですが出口付近の構成が雑に感じました。 ピエール・ミニャール「眠るアモル姿のトゥールーズ伯爵」が気に入りました。 ブーシェ「ヴィーナスの勝利」をみた途端、宮崎駿「崖の上のポニョ」に繋がっていると直感しました。 キューピットの目がポニョに登場する魚たちにそっくりだからです。 *館サイト、 https://www.fujibi.or.jp/exhibitions/profile-of-exhibitions/?exhibit_id=1201910051