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■2020年美術展ベスト10

□ フランス絵画の精華,大様式の形成と変容   東京富士美術館 □ ハマスホイとデンマーク絵画   東京都美術館 □ 汝の隣人を愛せよ  □ 今井麗展   東京オペラシティアートギャラリー □ 宇宙の卵   アーティゾン美術館 □ もつれるものたち   東京都現代美術館 □ きたれ、バウハウス-造形教育の基礎-   東京ステーションギャラリー □ あしたのひかり   東京都写真美術館 □ 後藤克芳、ニューヨークだより   渋谷区立松涛美術館 □ 守山友一朗展   東京オペラシティアートギャラリー □ 石岡瑛子 血が,汗が,涙がデザインできるか   東京都現代美術館 *並びは開催日順。 選出範囲は当ブログに書かれた作品。 映画は除く。 *「 2019年美術展ベスト10 」

■琳派と印象派、東西都市文化が生んだ美術

■アーティゾン美術館,2020.11.14-2021.1.24 ■会場に入り琳派を何点かみたあとに印象派が数枚あった。 その時の違和感は尋常ではない。 ピサロやユトリロがまるで<雑音>に見えてしまった。 此れ程まで琳派が強いのか! 印象派が内包する太陽の光こそ雑音の王者だから? 次章は琳派で固めてあったので十二分に楽しめた。 そして再び交互に作品が展示されていたが、いつもの印象派に溶け込めない。 しかも前半に琳派、後半に印象派が占めていたので尻すぼみに感じた。 「都市文化」の違いと言えなくもない、が・・。 食合禁(食べ合わせ)があるように絵画にも観合禁が有るのかもしれない。 *館サイト、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/45 ■久留米をめぐる画家たち、青木繁・坂本繁二郎・古賀春江とその時代 ■新館でみる常設展はどうも落ち着かない。 旧館と比べて照明が明るすぎる? 天井も高くなり目に飛び込む白色が過剰な為かもしれない。 *館サイト、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/46

■1894Visions ルドン、ロートレック展

■三菱一号館美術館,2020.10.24-2021.1.17 ■「ルドン、ロートレック展」のつもりで行ったが予想が外れました。 両者の作品は多いが他の作家も負けていない。 1894年頃のパリ美術界動向を扱った展示会のようです。 解説に総合主義の語句が目に付きますね。 そして画家たちが御飯にかけるフリカケのように次々出てくる。 混乱しました。 でも2章はルドン3章ロートレックでまとめています。 しかし4章はタヒチそして5章は東洋・・!? 1894年を調べたら日清戦争が勃発している。 H・G・ウェルズの「タイム・マシン」「透明人間」が出版され全米オープン・ゴルフも初めて開催された。 チラシに三菱一号館竣工とあるが三菱銀行と住友銀行が設立されている。 それよりもディルタイからフロイトの心理学台頭の年と言ってよい。 ここに岐阜県美術館が誇るルドンの登場になったのでしょう。 納得しました。 終章「近代ー彼方の白光」のルドンの部屋は気に入りました。 2章のモノクロから離れてルドンの色でまとめています。 「小舟」(1904年)を除きすべて岐阜美術館所蔵ですね。 年の瀬に19世紀末へちょっと旅行してきた気分です。  *館サイト、 https://mimt.jp/visions/

■船越桂、私の中にある泉

■松濤美術館,2020.12.5-2021.1.31 ■「ビュフェ展」の帰り松濤に寄る。 船越桂も久しぶりね。 人物像は眼の高さが同じになると話しかけたくなる。 相手もそう思っているようにみえるから不思議。 地下1階の第一会場には楠木像が10体、2階第二会場には6体はあったかな? つまり16人と会話ができるという訳ね。 先ず気に入ったのは「森へ行く日」。 船越は実在人物を像にするらしい。 でもこの作品は違うの。 「・・次第に好きになっていった」と彼は言っている。 活発な精神性を内に込めることが出来たからだと思う。 2階では「言葉をつかむ手」、今回はこれが一番かな。 どういう対話ができるかで毎回好きになる作品が違ってくるの。 ここが船越桂の楽しいところかしら。 2020年の最新作「スフィンクスには何を問うか?」も展示されている。 スフィンクス・シリーズは彼の世界観が詰まっている。 だから手強い。 気軽に声を掛けられないからよ。 ともかく、この忙しい年末に多くの像と話ができて楽しかったわよ。 *館サイト、 https://shoto-museum.jp/exhibitions/191funakoshi/

■ベルナール・ビュフェ回顧展、私が生きた時代

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.11.21-2021.1.24 ■関心が遠のいていたビュフェ。 タイミングの良い回顧展だと思う。 副題の通り彼の通史が簡素だけど親密に20世紀に写像されている。 これで彼の全体像がはっきりと見えるのね。 そして他者との出会いで作品の流れが非連続になるのが興味深い。 一つ目は、ピエール・ベルジェとの出会い。 「椅子」(1950年)から画風が変化したのでわかる。 素人から玄人画家へ飛躍したようだわ。 「籠のある静物」「コトドリのある静物」、太い線の「食堂」「拳銃のある静物」「百合の花」。 やっとエンジンがかかったようね。 二つ目は、アナベルとの出会い。 でも愛が創作を遠ざけたのかな? 作品がつまらなくなったからよ。 「ニューヨーク」(1958年)は<実存の具象化>が見えなくなってしまった。 そして1960年代。 昆虫で子供の頃が甦った彼の姿がみえる。 でも昆虫で実存を蘇らせることはできない。 人間が造った対象でないと駄目みたい。 1970年代は名声が、でもアルコール中毒とは・・。 マンネリの中「ペロス・ギレック」(1973年)のように切れ味の良いのもある。 「楽器」(1988年)も気に入る。 写実は数枚あったけど<ビュフェ>らしくない。 アナベルと出会って得たものは多いが迷いも深くなった。 彼の性格にも原因がありそう。 三度目の他者との出会いはなかったようね。 1999年に自死。 20世紀の不安を見事に表現したとおもう。 *館サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_buffet/

■プラド美術館、驚異のコレクション

■監督:ヴァレリア・パリシ,ナビゲータ:ジェレミー・アイアンズ ■(イタリア・スペイン,2019年) ■いやー、リズムは有るがテンポが速い。 記憶を取りだす余裕が無いので観後は取り残された気分だ。 紹介される作品も半分は知らなかった。 スペイン15世紀から17世紀の黄金時代、そして20世紀前半までをカバーしている。 美術界を取り巻く当時の国王紹介から帝国の政治動向まで取り入れた速足の90分だった。 「国王と王女の好きなもだけを選んだ」とナビゲーターのジェレミー・アイアンズが解説している。 つまり戦略的でないところがプラド美術館の特徴なのか? ティツィアーノをプラドの父と呼んでいることも初耳だ。 「ベラスケスをみる喜びを!」、マネの言葉だ。 しかしゴヤの紹介に多くを割いている。 そして「フランドルがスペイン絵画を世俗化させた」ボスの紹介で締めくくったのが面白い。 調べるとフェリペ二世が彼の愛好者だったとは、まさに真の意味での世俗化だろう。 2015年に三菱一号館開館5周年「 プラド美術館展 」、2018年に日西外交樹立150周年記念「 プラド美術館展 」が開催されたから当分は来ない。 プラドを見たければマドリードへ行くしかない、コロナ収束後になるが・・。 *開館200周年記念作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92283/

■トライアローグ  ■柵瀬茉莉子展、いのちを縫う

■横浜美術館,2020.11.14-21.2.28 ■愛知県美術館と富山県美術館は行ったことが無い。 だから楽しみだわ。 トライアローグとは鼎談のこと。 会場は1900年からの30年単位で3章から成り立っているようね。 そして9人の作家を3美術館所蔵の作品で比較する「アーティスト・イン・フォーカス」が所々に入っているの。 このフォーカスで私が一番気に入った作品はどこの館のものか列記してみる・・・ <作  家><気に入った作品の所蔵館> ・ピカソ・・・愛知(青時代文句なし) ・レジェ・・・愛知(緑が最高) ・クレー・・・愛知(橙が素敵ね) ・アルプ・・・引き分け ・エルンスト・愛知(これも色の良さ) ・ミロ・・・・横浜(横浜最高の一品) ・デルヴォー・富山(汽車と裸婦に興奮) ・ダイン・・・引き分け ・ウォーホル・富山(迷ってマリリン) と言うことで4勝3敗2引分で愛知美術館が一番。 理由は色が決め手かな? 富山美術館は1950年代以降に力を入れているようね。 でもこの2館は一度足を運ばないと全体は分からない。 今回の鼎談は楽しかったわよ。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/special/2020/trialogue/ ■横浜美術館コレクション展,横浜ポリフォニー1910年代から60年代の横浜と美術 ■ざっ、と観る。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20201114-568.html ■柵瀬茉莉子展,いのちを縫う ■葉っぱや木の幹を糸で縫っている! 「祖母の影響が強い」と作者は言っている。 しかも素材の植物は枯れているから秋の匂いと冬の気配を感じる。 でも暖かさに包まれているから寒くない。 *館サイト、 https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20201114-555.html

■吉村芳生展、超絶技巧を越えて

■そごう美術館,2020.10.24-12.6 ■「機械が人間から奪った人間の感覚を取り戻す!」。 写真を基に数ミリの升目を引き1マスごとに模写していく過程は人間機械と言っていいわね。 吉村芳生の作品はよく目にするようになった。 情報処理の仕組みを身体で挑んだからだと思う。 「ありふれた風景」には処理から漏れた微かな雑音にヒトの気配がする。 カラーになった芥子や秋桜の「百花繚乱」ではこのノイズが現代的な詫錆に感じられる。 未来の人間=アンドロイドは現実世界がこのように見えると思う。 「自画像の森」になると情報の古典商品である新聞に自画像を埋め込む。 顔表情を変えることで処理を越えて関係を構築しようとしたのね。 現代の超絶技巧は情報技術から落ちこぼれる雑音を拾うことができるか否かで決まる。 「コスモス(絶筆)」が最後に展示されていたけど、今日は6枚のコスモスが一番だったわよ。 さてっ、と・・、デパート回りはやめて横浜美術館へ寄り道しよっ! *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/20/yoshimura_yoshio/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 吉村芳生