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3月, 2019の投稿を表示しています

■ラファエル前派の軌跡展

■監修:クリストファー.ニューオル ■三菱一号館美術館,2019.3.14-6.9 ■中身の濃い展示会だった。 それは1章「ターナとラスキン」2章「ラファエロ前派」で彼らに堪能し、次の3章「ラファエロ前派周辺」で咀嚼し直し、4章「バーン=ジョーンズ」で前へ進みながらも振り返る。 行ったり来たりするから濃くなったのね。 まずはターナーに心から挨拶した後にラスキンの作品をまとめてみる流れなの。 彼の「緻密な観察」「主題への誠実さ」を実験しているのが分かる。 そしてミレイ、ロセッティ、ハント、ヒューズへ。 味わい深い色彩は英国の寂に通ずる色合いだと思う。 ロセッティ「クリスマス・キャロル」は気に入ったわよ。 ホルマン・ハントの2枚もね。 小品の「・・ランスロット卿」「・・ガラハッド卿」等々はアーサー王からシェイクスピアを連想させてくれる。 ヒューズの「音楽会」「マドレーヌ」「ジェイムズ・リサート家」は微笑ましい。 時を忘れて眺めていたい。 ところでハントが3人もいて混乱してしまった。 精密画を描くヘンリー・ハントは前派では珍しい。 でもラスキンの原則に従っている。 ワッツ「オルペウスとエウリュディケー」はウーン・・、劇的だわ。 冥界に引き込まれていくエウリュデケーをこんなにも強く掴んで離さないオルペウスをみたのは初めてよ。 そしてバーン=ジョーンズで英国風のコクの在る寂で完成ね。 5章の「ウイリアム・モリスと装飾芸術」は悪くないけど前派の味わいを壊している一面もある。 ラファエル前派は観るほどに好きになっていくわね。 これは中毒かしら? *ラスキン生誕200年記念 *館サイト、 https://mimt.jp/ppr/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 ラファエル前派

■ザ・ローリング・ストーンズ展

■TOC五反田メッセ,2019.3.15-5.6 ■ビートルズを初めて聴いた時、メンバーが演奏と歌唱を同時に受け持つこと、かつ詞と曲の多くが自作ということに驚いたのを覚えている。 ストーンズはまだ知らなかった。 情報源のラジオはビートルズが席巻していたからである。 ・・それはクラスメイトに薦められた「テル・ミー」が最初だった。 シンプルでワイルドなこの曲が気に入りローリング・ストーンズの名をこのときに知った。 しかし当時はストーンズが不良に見えたのは言うまでもない。  1960年代ツアーの映像はとても懐かしい。 すべてが手作りで良き不良だ。 これが70年に入ると変わっていった。 「・・数千数万の観客の前でボロは着れない」(ミック)と。 ストーンズがより強くなれたのはバンドが持っている「結束力」だろう。 会場の至る所でこの力に出会える。 使用したギターがギラリと並んでいる光景は壮観だ。 それは衣装にも言える。 「レコーディングは実験だ!」(キース)。 創作の楽しさが伝わってくる。 自筆の日記や作詞をみると想像が膨らむ。 会場を出て振り返ると4人が笑っていた。 ちなみに好きな曲ベスト3は「ハート・オブ・ストーン」「ダンデライオン」「アンジー」。 *FASHION PRESSサイト、 https://www.fashion-press.net/news/46794

■FACE展2019

■損保ジャパン日本興亜美術館,2019.2.23-3.30 ■「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募した入選71点の展示会です。 初めての作家が多い。 でも観たことのある筆感の作家もチラホラみえる。 最初の部屋に受賞作9点がズラーッと並んでいます。 次の部屋から入選60展あまりが続くのですが受賞作と入選作の違いが分かりました。 入選作は個人的な絵にみえる。 作家自身の身の上話から抜け出ていない。 受賞作は作家の身上を他者まで広げるチカラを持っている。 一言でまとめるとそんな感じですかね。 会期中、観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出を行うそうです。 早速投票してきました。 もちろん入選作からです。 誰に投票したか? ・・出品リストを眺めているのですが忘れてしまいました。 *損保ジャパン日本興亜美術賞展 *「 絵画のゆくえ2019,FACE受賞作家展 」(2019年1月) *館サイト、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2019/face2019/

■千住博ー日本の美を極め、世界の美を拓くー

■そごう美術館,2019.3.2-4.14 ■金剛峰寺開創1200年を記念して「茶の間」「囲炉裏の間」に千住博の瀧図と断崖図が奉納される。 会場にはその一部が展示されている。 ・・千住博の作品は生き物の匂いがしない。 まるで鉱物のようだ。 ある人は霊魂がみえるというが・・、人によって微妙なところかな。 千住自身が言っている。 「瀧が落ちる水と水の間の暗闇の奥に空海がいる!」と。 金剛峰寺襖の模型が置いてある。 会場でみるより畳の緑と壁の白さが絵に合いそうだ。 彼の作品は明るさを求めるのかもしれない。 軽井沢千住博美術館のビデオが上映されていた。 建築家西沢立衛の設計である。 窓を広く取り室内は白一色である。 西沢も明るい中で千住の絵をみるのが最良と感じたのだろう。 瀧図ではヴェネツィア・ビエンナーレ展の「瀧神Ⅰ・Ⅱ」(2015年)が目立った。 蛍光塗料を塗ってあるので青白く光る。 これなら文句なしに神秘的だ。 初期の作品も展示してある。 多くはどこかギコチナイ。 この中で「終着駅」(1985年)は昔みたことを思い出した。 当時はもちろん千住博は知らない。 ビルシリーズは彼の青春が詰まっているのではないだろうか? 今回も初期の中では一番である。 *高野山金剛峰寺襖絵完成記念 *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/19/senju_hiroshi/

■アルヴァ・アアルトーもうひとつの自然ー

■東京ステーションギャラリー,2019.2.16-4.14 ■アルヴァ・アアルトは知りません。 作品も記憶がない。 フィンランドでは有名らしい。 住宅マイレア邸、ルイ・カレ邸の平面図と遠景写真をみても想像できない。 それだけ印象が薄い。 建物上半身の体積のある壁面くらいですか。 それは「多感覚的空間」と呼ぶものかもしれない。 つまり多くの感覚が調和して印象が薄いということです。 それは「融通性のある規格化と再構築」「照明ー合理性と人間性」そして「総合的建築」へと向かったことでもわかります。  家具も同じように印象は薄い。 それは「よりよいものを毎日の生活に」に現れています。 たとえば「三本足のスツール」は我が家にもあります。 激安家具店で購入したのですが・・。 彼の生きた時代と国が見えないこともある。 でもニューヨーク万博フィンランド館でアアルト夫妻が上映したドキュメンタリー映像(22分、1939年)で少し見えてきました。 これは20世紀初頭のフィンランドの農業、林業、鉱工業に従事する労働者を映したものです。 都市の街並み、市民の日常風景も素晴らしい。 両大戦の混乱はありましたがやはり自然の豊かさが彼の建築を支えているようです。 ところで万博フィンランド館のアアルトが設計したオーロラの壁は圧巻です。 彼は壁面の建築家だと思います。 *ヴィトラ・デザイン・ミュージアム+アルヴァ・アアルト美術館国際巡回展 *館サイト、 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201902_aalto.html