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10月, 2011の投稿を表示しています

■知られざる歌舞伎座の名画

■山種美術館,2011.9.17-11.6 ■(株)歌舞伎座や(株)松竹が所有している作品の展示会である。 劇場はもちろん会長室、貴賓室、楽屋などに飾られている絵、それに松竹大谷図書館の資料が展示されている。 芝居の切り口以外からも集めているのでテーマがバラけていて楽しい。 しかし楽しい理由は別にある。 画家は歌舞伎大好き、役者は絵が大好きという大好き同士の人間関係が表れているからだ。 だから会場は和やかで賑やかな雰囲気がある。 気に入った作品は鏑木清方の「さじき」。 この作品は芝居が好きになっていく途中の絵である。 画中の二人はまだ芝居の不思議さをどうしてよいのかわからない。 そして小林古径の「犬」はイヌ好きならひと目見てわかるはずだ。 速水御舟「花の傍」のイヌはオッパイが三つあるが古径のより劣る。 川合玉堂「早春漁村」の海の色は冷たくてブルッと来る。 歌舞伎ファンならいろいろ発見がある展示会だろう。 *美術館、 http://www.yamatane-museum.jp/exh/exh/doc/110917jp.pdf

■世紀末、美のかたち

■府中市美術館,2011.9.17-11.23 ■ガレやドーム兄弟のガラス世界に浸っていると急にルドン、ゴーギャンそしてドニまで登場するの。 ゴーギャンやドニは場違いにみえるわ。 横串はいくらでも刺せるからキリがないけど、世紀末に生きた人たちを強引に結びつけようとしている感じね。 ルドンとゴーギャンの宗教感の相違、ドニの家族愛の優位など差異のほうが目立つようだけどどうなのかしら? ガラスに戻るけど、草花や昆虫は人間からみて相容れない生き物に描いていて何回みても飽きが来ない。 北澤美術館はちょっと遠いいからこのように近くで頻繁に作品を見れるのはいいことよね。 ところでキャプションの文字が小さくて観客は読みづらいようだったけど大きくしてほしいわ。 小さいと緊張して文字を読むので心身が作品から一度離れてしまう。 これで感動が少なくなってしまうからよ。 *館サイト、 http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/seikimatsu.html

■感じる服考える服、東京ファッションの現在形

■東京オペラシティアートギャラリー ■ http://www.operacity.jp/ag/exh135/ ■ファッションの自由と制約がみえる展示ね。 思ってもみなかった形や色を提示された時の感動ってドキドキして素敵だわ。 次にそれを受け入れる時の葛藤、受け入れた時にやってくる世界の広がりがハッキリとみえるのがファッションの芸術かな。 囚人服をパジャマ化してカラフルにしたような「ミントデザインズ」はこの流れで気に入ったの。 「ソマルタ」はイッセイの光り輝くグレーを引継ぎ魑魅魍魎をした近未来の雰囲気があるわ。 でもイッセイの世界から逃れられない感じね。 「まとふ」の苔や枯木などの自然の無地は日本の美意識にハマり過ぎてるわ。 このような無地の美は裏で考え過ぎでいるから着ていて疲れるとおもうの。 「NAOTO」、「ケイスケカンダ」は世界を絞り込んで見直しをしているけど脱構築にはもう少しかかるわね。 会場は10台のヴィデオがあったけど面白いので全部見てしまった。 これを見ないと各デザイナーの全体像がよくわからないことも確かね。 展示会名と展示内容がピッタリ以上に合致していて気持ちがよかった。

■松岡映丘、やまと絵復興のトップランナー

■練馬区立美術館 ■絵中の人物は引目鉤鼻のため、観客がどのように解釈しても人物表情は絵中の物語に合わせてくれるようです。 でも限界があって人生の痛みや苦しみはみえてこない。 さっぱりしすぎてる。 「右大臣実朝」も解説がなければ現場状況を見逃しますね。 そして映丘の絵は近代漫画のルーツではないかと考えてしまいました。 作品の至る所でそれを感じます。 「鵯越」や「矢表」は昭和初中期の少年少女漫画には必ず載っているし、「千草の丘」や「伊香保の沼」の目の表情は現代漫画でもよく見かけます。 「さつきまつ浜村」はまるで南アジアの島々のようです。 松が椰子の木にみえます。 それでも懐かしさがあるのはやまと絵が持っている物語とそれに感情移入できる映丘の淡い絵のおかげかもしれない。 *館サイト、 http://www.neribun.or.jp/web/01_event/d_museum.cgi?id=10221

■大雅・蕪村・玉堂と仙厓  ■池大雅、中国へのあこがれ

■大雅・蕪村・玉堂と仙厓 ■出光美術館,2011.9.10-10.23 ■「笑いのこころ」が副題だけどこれは解放から来る笑いね。 桃山から続いているコッテリ美術は見たくもない、武士・町人の堅い生活は嫌、明清文化を好きなように解釈したい、酒は飲みたい、・・・。 墨画は酒好きを連想させるわ。 仙厓が多くて危うく飲み過ぎるところだったけど、ほか3人は程好い作品数で観た後はほろ酔い気分で会場を後にしたわ。 *美術館、 http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/past/ ■池大雅,中国へのあこがれ ■ニューオータニ美術館,2011.10.18-11.20 ■出光で気に入った「秋社之図」「十二ヶ月離合山水図」はどちらも六曲一双。 ニューオータニは詩書画三絶の作品が主ね。 おおらかさが出始める30代後半からの作品、特に「沈香看花図・楓林停車図屏風」は行書体とマッチしていて素敵よ。 そして「己行千里道 未読萬巻書」は蕪村や玉堂にも当てはまる言葉ね。 心身ともに人生を楽しんでいる彼らに出会えて嬉しいわ。 *ニューオータニ、 https://www.newotani.co.jp/tokyo/

■石踊達哉展

■日本橋三越本店ギャラリー ■ http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/ishiodori/ ■妙法院障壁画の完成記念展である。 ・・多くの作品は弱々しく見える。 小さい草花が多く、蔦も神経質な絡み方をしているからだ。 「断雲四季草花図」の梅も痩せ細っている。 柳の葉も力が無い。 これでは玄関にある永徳?のデカ松に対抗できない。 しかし普賢菩薩騎象像の背を飾っている既存の「清浄蓮華」はとてもいい。 蓮の葉が大きいく像に負けていない。 逆に緑色と共に像を引き立てている。 この1枚で妙法院住職が石踊に再依頼したのも肯ける。 会場出口のヴィデオを見ると、展示作品は10畳前後の二間に置かれるという。 この空間なら絵の弱々しさが薄められ、細かさが生きてくる気がしてきた。 狩野派のように畳の上でノケゾルことも無い。

■ウィーン工房1903-1932

■汐留ミュージアム ■ http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/11/111008/img/pamphlet.pdf ■家具や食器はとても使い難いデザインね。 サナトリウムの建物もシンプルというかスッカラカンな感じみたい。 創設者の3人は総合力を目指しながら空回りしているようだわ。 その結果の財政圧迫かな。 後半のモード部門は目が喜びそう。 リックスの壁紙は素敵ね。 緑地の「そらまめ」、そして「夏の平原」は最高。 結局は日本の文化と混ざり合った作品が一番ということかしら。 会場に敷かれていた絨毯は合格よ。 「ウィーン工房」は知っているようで何も知らなかった。 人と方針がころころ替わったことや、次に続くバウハウスに目がいってしまったことが理由かもしれない。 激動の時代、経営からみた工房をもっと前面に出したら面白い展示会になったかも。

■トゥールーズ・ロートレック展

■三菱一号館美術館,2011.10.13-12.25 ■ロートレック展は企画が難しいとおもうの。 リトグラフだけでは飽きてしまうから。 いつものモンマルトル生活を前面に出すしかない。 今回もこれに沿った展示で新鮮味が無いようにみえる。 だから作品の周辺まで視野を広げないといけないようね。 最初にユネスコ世界遺産に登録されたアルビから持ってきた作品でまとめているのがそれ。 これでアルビへ一度行ってみたい気持ちが出ればまずまずね。 次にモンマルトルの人物や文芸にどれだけ親しみがあるか。 例えば茅ヶ崎美術館「音二郎・貞奴展」で登場した「ロイ・フラー嬢」が2枚あったけど、ロートレック?フラー?音二郎の流れをいろいろ想像しちゃったわ。 ロートレック展はいつも頭の中がゴッタ煮ね。 *館サイト、 http://mimt.jp/lautrec2011/

■ダムタイプ「S/N」と90年代京都

■早稲田大学演劇博物館,2011.9.21-2012.2.4 ■博物館2階廊下でのヴィデオや資料だけの小さな展示構成。 なぜ京都にダムタイプのような特異なパフォーマンスグループが発生したのか?を論じているの。 会場は同時開催の市川團十郎展が混んでいたせいかいつもと違って落ち着けなかったわ。 ①大学に囲まれている河原町近辺の特異性②ゲイ文化の影響③90年代バブル崩壊のダメージが少なかった。 これらが混ざり合ってグループが発展したのが背景にあるようね。 多分東京でいうと60年代前半の神田周辺に近いイメージかも。 そして組織としての進め方に核心的秘密があるのかもしれない。 フラットな組織でのコミニュニケーションや意思決定方法にね。 ダムタイプに興味を持っている人はよいとしても、持っていない人には最悪の展示会よ。 *現代演劇シリーズ第38弾 *館サイト、 https://www.waseda.jp/enpaku/ex/1249/

■アジアを視野に、安藤忠雄建築展

■GAギャラリー,2011.9.17-11.6 ■北京でホテル、上海で大劇場と博物館、台湾と韓国で美術館。 以上の建築中5点の展示会よ。 でも安藤忠雄の作品は好きになれないわ。 打放コンクリートに方形鉄枠窓ガラスの禁欲的な建築ばかり。 こんな住宅には住みたくない! よく行くミッドタウン21_21デザインサイトの入口に立ちはだかるあのコンクリートの壁は全ての感情を閉じ込めてしまう。 中に入り階段を降りていく時の冷たさはいつも嫌な記憶として残るわ。 もっと建物に生物的な何者かを取り込む必要があるとおもうの。5点の建築中でいいのは北京のホテルだけ。 これは中国風意匠の低建築でリゾート機能を取り込んでるので柔らかさがあって落ち着けるわ。 あとの4点はダメね。 上海の大劇場は魔界性を取り込むと言ってるけど、今の安藤に魔界建築はできない! *館サイト、 http://www.ga-ada.co.jp/japanese/ga_gallery/2011/1109-1111_ando/gallery_2011ando.html

■モダン・アート、アメリカンー珠玉のフィリップス・コレクション-

■国立新美術館,2011.9.28-12.12 ■会場前半は自然、後半は都市の流れで構成されている。 アメリカ人は絵が本当に下手だ。 結局はオキーフとホッパーの二人に頼わざるを得ない。 チラシもこの二人の絵が大きく印刷してあるから誰もがそう思っているのだろう。 しかしフィリップス・コレクションはアメリカ人にとってのアメリカ史が凝縮しているはずである。 多くの物語や懐かしさが一杯詰まっているはずである。 だから絵画的にどうこうと言うだけでは不足なのかもしれない。 ところで前半の終わりに4枚のオキーフが飾ってあった。 「私の小屋」はのっぺりとした抽象画に見えるが草や土の匂いを感じる。 自然から多くを省いても本質を残すリアルな絵である。 オキーフのリアルさに初めて気付いたのも周り絵が下手糞だからだ。 *館サイト、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/american/index.html