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■イケムラケイコ、うつりゆくもの

■東京国立近代美術館、2011.8.23-10.23 ■ http://www.momat.go.jp/Honkan/Leiko_Ikemura/sideb/ ■絵画より彫刻が面白い。 最初の作品「きつねヘッド」がイケムラ世界への入り口である。 横たわる人物像の多くは頭が無かったり欠けている。 自身の手を目や口に突っ込んでいる像が少しばかり衝撃的だ。 そして会場出口の「白い眠り」で終わる。 作者の身体感覚の有り様をそのまま作品に投影しているようである。 血管や皮膚の存在をおもう静かな日常生活の延長にある。 生活と芸術が分離していない時代からやってきたような匂いもする。 だから作品は芸術としては弱い。 この中で「うさぎの柱」は唯一日常を昇華していて違った面白さがあった。 これは作者のトーテムポールだ。 ところで会場にはキャプションが1枚も無い。 無いと作品がベールを剥ぎとったようにみえる。 題名の言葉は観る者をがんじがらめにするらしい。

■GLOBAL NEW ART展

■損保ジャパン東郷青児美術館,2011.7.12--8.31 ■特別展らしいがセガンティーニ展の遅れをカバーするための繋ぎのようだ。 田口弘氏のコレクションだが有名画家ならなんでも受け入れるという感じだ。 ニューヨーク自宅の写真があったが絵が好きなようにはおもえない。 リキテンスタイン「二つのかたち」、ホックニー「ホテルの壁の眺め」の二点が気に入る。 リキとしてはとても知的な感じがするし、ホックは建物構造と眺めた角度がとてもいい。 他には韓国、ケニア、ブラジルの知らない画家に出会えたことが収穫かもしれない。 題名は誤っていなかった。 期待しないで行ったらやっぱり期待外れで納得できる展示会だ。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/past/2011/

■鬼海弘雄写真展

■東京都写真美術館、2011.8.13-10.2 ■ http://syabi.com/upload/3/1384/2011_006_b_1.pdf ■多くの人物像は演出家から指示された同じような表情をしている。 それは現代口語演劇からセリフを取ってしまった役者のようだ。 はたして、作品をみていると聞き取れないくらいのボソボソしたセリフが聞こえてくるようだ。 しばらくすると、ただ日常を淡々と生活している人間の存在感がじわりとやってくる。 5年後に会った労働者や2年後の清掃員のポートレイトがあるが、再び会えるなど不可能である。 鬼海は計算し尽くしている芝居の演出家のようだ。

■濱田庄司スタイル展、理想の暮らしを求めて

■汐留ミュージアム,2011.7.16-9.25 ■会場は黒や柿色の渋い色の作品が多くて暗い感じがするの。 しかし古い家具に置かれた器群はとてもマッチしている。 整えられた北欧デザインと違って全てがオジサンぽい感じね。 「落ち着きは良き生活の支えがなければ得られない・・」 と言っているように急須のゴッツイ形は生活にゆとりがある証拠かも。 自然に対するオジサンぽい感じはたぶんイギリス風かもしれない。 つまりジェントルマンということね。 このようなスタイルはめったに出会えない。 知らなかった理想の暮らしが感じ取れて嬉しいわ。 *館サイト、 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/11/

■保田井智之、長円の夜

■東京オペラシティアートギャラリ、2011.7.16-10.2 ■ www.operacity.jp/ag/exh133.php ■ブロンズと木々の組み合わせの人物像が多い。 木や金属の錆のような汚れ、塗り残しの白色が彫刻の表面を複雑にしている。 この複雑さが絡みあって言葉が聞こえてくるの。 作品の人物が小声でセリフを喋っているように聞こえるのよ。 周囲の空気は微妙に振動している。 静寂さのある舞台を観ているような感覚に陥るの。 「仮の宿」「見つめる人」「ネガ・チャイルド」「アイム・フロム・ザ・クラッド」。 静かな役者たち。 このような役者の芝居を劇場でも観たいという気持ちが湧き出てくる作品群よ。