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7月, 2021の投稿を表示しています

■隈研吾展、新しい公共性をつくるための猫の5原則

■東京国立近代美術館,2021.6.18-9.26 ■5原則とは「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」を指すらしい。 「やわらかい」は分かった。 残りの四つは? 「孔」は法隆寺建築群の間のようなもので「粒子」はアフォーダンスに似ていて「斜め」は折衷ではなく止揚でもなく「時間」はループ量子重力理論に通じる・・!? クマの言うネコの5原則は難解ね。 でも神楽坂に住み着いている野良猫の行動を観察すれば分かるかもよ。 隈研吾の作品は一味違う。 建築家が避けていたものを形にしようとしている。 それは木材の活用にあるの。 風土や気候など環境に根差した身体及び精神への装飾として使っている。 木材を羽板や庇や格子に適用するので素人ぽく庶民ぽくなる。 例えば「アフォーレ長岡」「プザンソン芸術文化センター」。 「浅草文化観光センター」「南三陸のさんさん商店街」は基礎からまるごとね。 またガラスやアルミ、セラミックやカーボンをパネルや膜、綱にして木材と共用していく。 これで独特な軽さと表現が生れる。 たとえば「高輪ゲートウェイ駅」。 日本の風景にはスッキリ当てはまるけど、西欧のような石の街並みに木材混じりの建物が入ると異化効果が強くなってしまう。 例えば「The Exchange」「オドゥンパザル近代美術館」。 隈研吾の作品はノラネコに合うことが分かったわ。 小規模作品には彼の特長が発揮されているとおもう。 でも大規模作品、特にハイブリッドを好まない場所では木の評価は定まっていないはず。 それには作品の品質維持が大事かな?    *美術館、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kumakengo/ *「ブログ検索」に入れる語句は、隈研吾

■サーリネンとフィンランドの美しい建築展

■パナソニック汐留美術館,2021.7.3-9.20 ■「 アイノとアルヴァ展 」と比較をするとフィンランド四半世紀の二人の時代差が感じられます。 1873年生まれのサーリネン、1898年生まれアールトの二人が、1917年のロシアからの独立の影響をどれだけ受けたか?です。 今回の展示構成が民族叙事詩「カレワラー」で始まり、次のパリ万国博フィンランド館のナショナル・ロマンティズムで駄目押しをすることでもサーリネンの時代がみえます。 アール・ヌーボーの流れに沿って、どっしりした重みが漂う建物や室内装飾はなんとも言えないリッチな匂いが感じられます。 周囲に石をはめ込んでいる玄関の迫力が只者ではない。 建築に塔が付いているのは伝統でしょうか? 蒲鉾型の正面玄関を持つヘルシンキ中央駅が彼の作品だと今回初めて知りました。 労働者の住宅設計も多いですね。 「椅子は部屋から、部屋は家から、家は環境から、環境は都市計画から」。 彼は言葉通りに仕事を拡大していく。 渡米前後のシカゴ・トリビューン本社案はバットマンが出て来そうなゴシック的上昇感が素晴らしい。 「・・シカゴ派の目指す方向を指している」(ルイス・サリヴァン)。 サーリネンの作品は目が喜びますね。 映像紹介ではフランク・ゲーリーが彼をリスペクトしていたのが印象に残ります。 最期に息子エーロ・サーリネンの、彫刻的曲面が楽しいJFK空港やMIT校舎などの作品が付録として紹介されていました。 *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/21/210703/

■レンブラントは誰の手に  ■レンブラントの夜警

□レンブラントは誰の手に ■監督:ウケ・ホーヘンダイク,出演:ヤン・シックス,エリック・ド・ロスチャイルド,ターコ・デヴィッツ他 ■WEB,(オランダ,2019作品) ■「2018年、レンブラントが描いた肖像画を44年ぶりに発見!」。 それは本物なのか? 並行して富豪が所有する夫婦の対肖像画が売りに出される話が進む。 税金対策のようです。 どちらも画商や美術史家、美術館が入り混じり資金調達や競売での駆け引きに策略を練る。 そしてレンブラントファンにもカメラは入っていく。 旧貴族など個人所有者たちです。 レンブラントへの愛し方は様々ですね。 実を言うと、レンブラントは苦手な画家の一人です。 西欧の近寄りがたい靄が覆っているのを感じるからです。 登場する愛好家たちが羨ましいとも思えません。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94330/ □レンブラントの夜警 ■監督:ピーター・グリーナウェイ,出演:マーティン・フリーマン,エバ・バーシッスル他 ■DVD,(オランダ・イギリ他,2017作品) ■グリーナウェイらしい変わった映画ですね。 「夜警」に画かれた人物を物語に生き返らせてレンブラント自身が「夜警」を画いていくストーリーのようです。 モデルを描く場面もあるがそのキャンバスは写さない。 作品そのものを論じることはない。 人間関係を描いた映画と言えます。 彼の3人の妻、サスキア、ヘルーチェ、ヘンドリッキエはもちろん、親戚なども多く登場し混乱するほどです。 そこに性や犯罪をあからさまに語って盛り上げようとしている。 また貿易や新大陸が話題になることからオランダ黄金時代が背景に感じられる。  しかしリアリズムからは程遠くどこまでが歴史的事実なのか怪しい。 夜警が描かれた当時の混乱は当にグリーナウエイ好みと言ってよいでしょう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/53123/

■新・晴れた日、篠山紀信  ■世界報道写真展2021

□新・晴れた日,篠山紀信 ■東京都写真美術館,2021.5.18-8.15 ■「天井桟敷一座」をはじめの1枚に持ってきたことに驚く。 次の「日米安保条約反対デモ」をみてその位置づけが分かる。 劇団をデモ隊と同列にしたかったのかもしれない。 しかしデモに向かう女性たちの笑顔がいい。 そのまま、晴れた日のような作品が続く・・。 特に「「明星」表紙」(1972-81)は言うことなし。 ピンクレディー、沢田研二、山口百恵、郷ひろみ、キャンディーズ、西郷秀樹、天地真理、野口五郎、・・。 彼らの最高の笑顔に出会った。 当時でも見ることができない素晴らしい顔だ。 しかし人物画と比べて風景はいただけない。 また後半の人形も時代に追いついていない、四谷シモンの頃は新鮮だったが。 この美術館では珍しく2,3階を使っての展示だが余裕がみえる。 解説書も見易い読み易い。 作品を含め、コロナを寄せ付けないほどの晴れた日差しが気持ちいい。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4019.html *「ブログ検索」に入れる語句は、篠山紀信 □世界報道写真展2021 ■写真技術の進歩で多くが美しい色彩だ、ただし被写体はその逆で複雑だが。 この1年の大事件を思い出させてくれる。 例えばレバノンの爆発事故、いまも続くコロナ状況下の世界、イタリアに留まっている難民の日常、多発する山火事などなど。 イスラエル刑務所の存在も記憶に残る、そしてLGBTや自閉症の人々も。 今年の展示は楽しい写真が少ない、大きな戦争はなかったようだが・・。 世界を振り返るのにもってこいの写真展だ。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4021.html

■イサム・ノグチ、発見の道  ■都美セレクショングループ展2021

□イサム・ノグチ,発見の道 ■東京都美術館,2021.4.24-8.29 ■1章「彫刻の宇宙」の入り口にはブランクーシの垂直性とミロの丸みを重ね合わせたような2mあまりのブロンズ抽象像が立ち並ぶ。 1940年代の彫刻は初めて出会う。 階をのぼり2章「かろみの世界」でのシートメタルを折紙にした1980年代彫刻群も初めてみる。 イサム・ノグチといえば石と提灯しか浮かばなかった。 この2つを新しく加えて彼の全体がみえた感じだ。 「照明は明かりを入れた彫刻だ」と彼は言っているが、しかし提灯は異質にみえる。 空間を追求した結果と聞いているがすっきりしない。 再び階を登り3章「石の庭」に入った途端、その作品群に圧倒されてしまった。 イサム・ノグチは石の彫刻家だとあらためて確信した。 玄武岩の多彩な表面処理も素晴らしい。 「・・石が話しはじめる。 ・・その手助けをするだけだ」。 彼の言葉はミケランジェロに通ずる。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_isamunoguchi.html *「ブログ検索」に入れる語句は、ノグチ □都美セレクショングループ展2021 ■東京都美術館・ギャラリー,2021.6.10-6.30 ■ついでに入ったのだが・・、多様なジャンルの作品が一杯で混乱してしまった。 しかし上野を後にしてもイサム・ノグチの石は離れない。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_groupshow.html