■アンドリュー・ワイエス展
■作家:アンドリュー・ワイエス,所蔵:丸沼芸術の森ほか ■東京都美術館,2026.4.28-7.5 ■1974年、国立近代美術館で開催された「アンドリュー・ワイエス展」の衝撃はいまも忘れがたい。 その記憶があるからこそ、東京都美術館での今回の展覧会にも胸が高鳴った。 鑑賞を進めるうちに、今回はとりわけ第3章「オルソン・ハウス」に焦点を当てた構成であることが分かってくる。 「丸沼芸術の森」所蔵の水彩画や鉛筆画がずらりと並び、さらにオルソン・ハウスの建築図面まで展示されているのが興味深い。 会場には「境界の深淵に迫る」というテーマが掲げられていた。 ワイエスは屋根や壁、ドアや窓といった建物の境界を丹念に描き込み、そこに人の気配を重ねていく。 水彩・テンペラ・ドライブラッシュ水彩を自在に操る筆致によって、建物そのものがワイエス的な〈境界〉として静かに立ち上がってくる。 ハウスに暮らした姉弟の姿も描かれているが、作品数は多くない。 それでも人物を描かずとも、空間には濃密な気配が満ちている。 なぜワイエスの境界は「深淵」なのか。 そこには<喪>の気配が漂っているからだ。 ここでいう喪とは、すでに訪れた死ではなく、姉弟がこれから迎えるであろう「人間の定めとしての死」の影である。 その予兆が画面に沈殿し、ワイエス作品特有の衝撃力を生み出している。 テンペラによる人物画は「クリスティーナ・オルソン」(1947年)の一枚のみで、やや物足りなさも残った。 ハウスから離れた作品としては「自画像」(1945年)など数点が展示されていた。 久しぶりにワイエスの世界に浸ることができたが、焦点を絞った展示構成であったため、感動もまた限定的なものとなった。 *東京都美術館開館100周年記念 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2026_wyeth.html