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■アルマーニ

■監督:ジュリアン・オーザンヌ ■アルマーニ帝国の頂に立つジョルジオ・アルマーニの素顔を追うドキュメンタリーなの。 無彩色のピュアでシンプルなコレクションを思い浮かべるけど、繊細で内省的な面もあるのよね。 作品がそのままアルマーニ自身の内側を語っている。 彼はシャイな性格なのよ。 紳士服というのは普遍化を目指すでしょ。 完璧主義者アルマーニはこの目指す方向がブレナイ。 映画界に近づいたことが彼の成功だったようね。 A・シュワルツェネッガ、J・レノ、S・ローレンの顔も見えたけど映画スターが着れば文句なし。 休みを取らず働き過ぎのようだけど、島の別荘に毎年1ヶ月間引き籠るのが再生の秘密だったのね。 よくわかる。 でも将来の帝国をどうするのか?悩んでいる。 彼は孤独なの。 近頃はホテル経営まで乗り出しているようだけどだいじょうぶかしら? この映画をみて森美術館のアルマーニ展(*1)が素晴らしかったのを思い出したわ。 2000年作品。 *1、2005年 「アルマーニ展」 *写真、 http://ecx.images-amazon.com/images/I/41bTEIRWnSL.jpg

■鈴木信太郎展-親密家アンティミストのまなざし-

■そごう美術館,2015.10.10-11.15 ■素人が観ても肩が張らないので親密家というのかもしれない。 「冬の山川」(1946年)、「桐の花」(1964年)が並べてあったがどちらも力強い。 波があるようにみえる。 志向性のある作品が周期的に登場している。 そして梅原龍三郎やセザンヌやボナールが所々顔を出している。 違うのは「緑の構図」、「青い庭」(1936-7年)からくるモンスーンの濃い緑だろう。 人物は苦手のようだ。 人形に向かったのも分かる気がする。 「素材の中から喜びを発見して自分らしい表現を生かし育てる・・」と彼は言っている。 この喜びが観る者にも伝わってくる。 *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/15/suzuki_shintaro/index.html

■ミース・ファン・デル・ローエ

■監督:ジョセフ・ヒレル ■ミースの鉄骨とガラスのビルはやはり美しい。 材料間の比率や面積、形や色など隅々まで熟慮されているからです。 洗練されていて職人気質の美学がみえます。  付近の住民にとってガソリンスタンドは存在感をなくす方がよい。 そのため利用する人に最低限の目立つ方法を取ります。 広告塔を地面近くに設置し、屋根を低くして暗色にします。 引算建築技法の一つですね。 当時のシーグラム・ビルは画期的な建物だったのでしょう。 このビルは周囲に開かれているのが特長です。 これはガラスの開放性にもよるがミースの考え抜いた関係性の美学の成果だとおもいます。 でもミースのような建物ばかりだと都市の猥雑さがなくなり面白くないでしょうね。 「2001年宇宙の旅」のモノリスに囲まれてしまった船長デビット・ボーマンの心境に近づいてしまいます。 2004年作品。

■LAVYRINTH OF UNDERCOVER  ■笑いとユーモア  ■鈴木星亜展

■LABYRINTH OF UNDERCOVER ■東京オペラシティアートギャラリ,2015.10.10-12.23 ■UNDERCOVERの25周年展示会です。 1995年頃からを網羅していますが内容はビデオと迷路になっています。 ビデオは年代・シーズンごとの45本で合計15時間くらいですか。 気に入っているシーズンを選べばよいのですが迷ってしまう場合は次の迷路を一周すればほぼ全体像が見えてくる。 シーズンごとのテーマでデザインが違っているので、この差異が物語を引き寄せラビリンスを彷徨うことが出来るのです。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh181/ ■笑いとユーモア-寺田コレクションより- ■常設展ですが毎回違う作品に出会えるのがいいですね。 過去に出会った作家が展示されていると懐かしさがある。 落合洋子や河内良介の作品がこれにあたります。 天野裕夫のブロンズ群は初めてみましたがオモシロイ。 相笠昌義を沢山みることができたのは予想外でした。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh182.php ■鈴木星亜展 ■波の描き方が独特ですね。 メロンやワッフルの表面にもみえる。 作者は食いしん坊ですね。 水の表面は感慨深い形だと思います。 これを美しく具体的に描き出しているのは素晴らしい。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh183.php

■Who Dance ? 付のアクチュアリティ  ■映画女優京マチ子展

■Who Dance ? 振付のアクチュアリティ ■早稲田大学演劇博物館,2015.10.1-2016.1.31 ■誰が・どこで・どのように踊るのか? 新人・玄人振付家の作品をビデオ30本くらいで紹介しているの。 コレオグラフィとは何かを考えるんだけど、ビデオを見て自分で考えなさいという構成にみえる。 初めて聞く振付家も多い。 例えばアオキ裕キ、ポリス・シャルマッツ、レミ・エリティエ、ロジェ・ベルナット・・。 気に入ったのボリス・シャルマッツの「子供」かな。 知っている室伏鴻、近藤良平、伊藤キム、田中泯、フォーサイス、ローザス・・は除いてだけど。  でも川村美紀子の「へびの心臓」が一番良かった。 時系列からみても序破急が整っていて新人賞受賞作品だけはある。 先日観た「 まぼろしの夜明け 」だけでは彼女の一面しか見えなかったけどまた少し近づけたわね。 *館サイト、 http://www.waseda.jp/enpaku/ex/3628/ ■映画女優京マチ子展 ■京マチ子の「日本人離れした豊満な肉体・・」には誰もが参るわね。 でも彼女の映画はすっかりご無沙汰している。 「羅生門」「源氏物語」「雨月物語」「地獄門」・・は観た覚えがあるけど、その中でも「赤線地帯」と「あにいもうと」が一番かな。 でも「浮草」はだめ。 彼女は小津安二郎とは合わない。 *館サイト、 http://www.waseda.jp/enpaku/ex/3718/

■オットークンツリ展

■東京都庭園美術館,2015.10.10-12.27 ■クンツリのジュエリーはゴッツイわね!? 日本人が付けるとブラサゲテイルように見える。 でもクンツリが赤いハートを胸にしているチラシをみると似合っている。 ギリギリで彼女の身体に納まっている。 精神的・社会的な関係までジュエリーが求めるからだとおもう。 この延長で考えさせられた作品があるの。 それはブローチやペンダントを付けた掛け軸。 とても新鮮にみえたわ。 そして本物のアメリカ国旗を少しだけ見せる作品、「おはようアメリカ」。 タイトルもいいわね。 アボリジニの顔写真が首飾りの平ビーズに貼られている「オーストラリア日記」。 一つ一つ違う顔を日記帖を捲るように見ていくの。 でも多くの作品は古臭い感じがする。 今回は作品が小さいので美術館内の細かいところに目が届いたわ。 書庫は初めて入ったし各部屋の窓枠や取っ手もジックリ見ることができた。 中庭に四角いプールのような池があるでしょ? そこに鷺が来ていて鯉を狙っているの。 ウーン、飛んでいっちゃった! ここは自然教育園の中だから鳥や虫が沢山いるのよ。 でも新館は教育園の自然を無視している。 ここから見る庭も芝生ばかりで最悪の景色ね。 避難場所かもしれないけれど、もっと良いデザインに出来たはずよ。 *館サイト、 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/151010-1227_kunzli.html

■ニキ・ド・サンファル展

■国立新美術館,2015.9.18-12.14 ■ナナは見たことがあったが作者には関心がなかった。 おおらかで色彩豊かな解り易い作品のためか深い興味が湧かなかったからである。 今回初めてニキの全体像を知った。 娘が父の解体を進めるのは、父が母を捨て他の女へ行ってしまうか、その逆に父が家族にへばり付き厳格になるかの二つである。 ニキは後者を心の傷としてしまったのか? アルジェ戦争や「射撃絵画」を越えて父の総括をするのが「大聖堂」だろう。 ここから<女性>にも関心が広がる。 ボーヴォワールの影響も解説にあったが心にも余裕が出てきたのかもしれない。 ポスターや陶器・貴金属類もなかなか楽しい。 後半はヒンズー教・仏教そして占へと接近していく。 これも女性精神の特徴と捉えて芸術に昇華しているのは素晴らしい。 全てを観終って、彼女の作品は男性への深層葛藤を解決するための箱庭療法から生まれ出たものだと理解した。 *展示会サイト、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2015/niki2015/

■イサム・ノグチ-紙と石-

■監督:ヒロ・ナリタ(日本,2005年作品) ■「彫刻より空間そのものに興味がある」。 ノグチの言葉から提灯や庭の作成を手掛けたのは納得できます。 M・グラハムの舞台装置も同じでしょう。 そしてC・ブランクーシとの出会いが方向を決めた。 「自然から抽象の手順を踏まない時代が来た」とノグチに言います。 戦後、彼は硬さのある自由を選んだのだとおもいます。 この硬さが庭師や建築家、山口淑子と軋轢を生じたのでしょう。 これは父との関係もあるのではないか? 晩年、堅い石を材料に選んだのもこの延長です。 「ノグチは旅人だ」と武満徹は言っていましたが、当に彼は「空間の旅人」でした。 *GEOサイト、 https://rental.geo-online.co.jp/detail-325794.html

■メイプルソープとコレクター

■監督:J・クランプ,出演:R・メイプルソープ,S・ワグスタッフ,P・スミス ■ロバート・メイプルソープではなくてサム・ワグスタッフが主人公のドキュメンタリでした。 ワグスタッフは写真コレクタでありキュレータとして活躍した。 彼は歳を取るとともに知性を否定し直観と感動を信じた人らしい。 キュレータとしての彼の才能はコレクタから得たのかもしれません。 ヒト・モノ・カネを見抜ける力がなければ務まらないからです。 ここで毛色の違う「 ヘンリー・ゲルツァーラ 」と比較してしまった。 芸術と人生を同等にみていた彼は性と死も同じであると考え行動していたはずです。 それでも当時のエイズは二人にとって衝撃的来訪者だったことでしょう。 2007年作品。 *解説、 http://www.cinemarise.com/theater/archives/films/2009004.html