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2月, 2017の投稿を表示しています

■オルセーのナビ派展、美の預言者たち

■三菱一号館美術館,2017.2.4-5.21 ■ゴーギャンから影響を受けたナビ派たち、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジエ、ヴァロットンたちの展示です。 彼らは象徴や神秘を対象にしていても日常から出発しているので見慣れた風景が並びます。 そしてナビらしい展示構成ですね。 2章から「庭の女性たち」「親密さの詩情」「心のうちの言葉」「子ども時代」「裏側の世界」。 でも同じような作品が繰り返し現れるので会場が均一になりぬるま湯に浸かった感になります。 少し飽きてしまいました。 ナビ派の画家は一人ずつの展示形式がインパクトを出せます。 たとえばヴァロットン、ドニの個展*1は強く記憶に残っている。 総合主義やアンティミストを謳いますが、彼らは都市生活者として近代末期を生きたのでナビだけでは捉え切れない心の複雑さを持っているからだと思います。 *1、 「ヴァロットン展,冷たい炎の画家」(2014年) , 「モーリス・ドニ,いのちの輝き 子供のいる風景」(2011年) , 「ゴーギャン,ポン=タヴァンの画家」(2015年) *館サイト、 https://mimt.jp/exhibition/#les-nabis

■ティツィアーノとヴェネツィア派展

■東京都美術館,2017.1.21-4.2 ■会場に入ると古いヴェネツィアの地図が出迎えてくれて嬉しい。 一っ飛びで15世紀の水の都ね。 ベッリーニの「聖母子」を含む工房作品を20枚くらい観た後に「フローラ」が現れる。 うーん、劇的な出現だわ! 肌に吸い込まれていくように感じる。 この1枚で上野に来た甲斐があるということね。 ティツィアーノは5枚展示されていたけど満足度100%よ。 彼の作品には師匠ベッリーニやジョルジョーネも感じられる。 油彩とカンヴァスの力を借りられたのも大きい。 時の政治家との出会い、そしてミケランジェロへの対抗心を含め切磋琢磨できる人々が周囲にいたから豊かな変化球が投げられたのね。 日伊国交樹立150周年記念展。 * 「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」(国立新美術館,2016年) *展示会サイト、 http://titian2017.jp/

■増田彰久写真展、アジアの近代建築遺産

■横浜ユーラシア文化館,2017.1.28-4.9 ■「フィーバー・ルーム」を観た帰り日本大通駅前の文化館に寄る。 展示は藤森照信、増田彰久などの30年にわたる建築調査・撮影の成果物である。 1840年アヘン戦争以降の租界に造られた中国南岸沿いの建築を主に展観できる。 イギリス等の上海租界、青島のドイツ租界、天津のフランス租界、そして満州国首都長春や瀋陽、ロシアから日本に租界譲渡された大連、鎮江のイギリス、ハルピンや旅順の帝政ロシア建築などである。 侵略国の建築家たちは威信を賭けて作り上げたことが分かる。 どれも西洋文明の歴史が凝縮されている。 ギリシャ、ルネサンス、バロック、アールヌーボ、天津のアールデコ、青島のユーゲンシュテール、コロニアル・・、日本なら天守閣・・。 当時の日本人建築家の留学先が米国というのも面白い。 そして現代中国は歴史を直視し残っている建物保存に力を入れているらしい。 実際に見た建物は少ない。 上海の和平飯店くらいだ。 このホテルは昔のことだが何回か泊まった記憶がある。 1階ホールで毎晩ジャズの生演奏をしていた。 建築写真40枚だけの展示だが背後にある近現代史の一端がハッキリと写し出されている。 *館サイト、 http://www.eurasia.city.yokohama.jp/exhibition/index.html

■フィーバー・ルーム

■演出:アピチャッポン・ウィーラセタクン ■神奈川芸術劇場・ホール,2017.2.11-15 ■映像パフォーマンスと言ってよい。 複数スクリーンを使った映像で始まるが途中でスモークと指向性照明を使った舞台が現れる。 終幕再び映像に戻る。 映像には日常のタイ風景が映し出される。 病院や患者、犬、川、船、生活している人々、海、最後は洞窟へ・・。 そして舞台上のスモークと照明の効果で宇宙船か飛行機に乗って雲の中を飛んでいるような感覚に陥っていく。 幻想的だが前後の映像との結びつきが弱い。 作者は夢について語っているようだが覚醒と睡眠の中間である夢は上手に表現されていない。 「歳を取ると夢を忘れる」と画中の役者に語らせているがそのまま作品にも表れている。 全体を通してみると彼の映画作品と同じリズムを持っている。 初めての実験作だが舞台と映像を切り離し別作品にしても面白いと思う。 *TPAMディレクション公演参加作品 *TPAMサイト、 https://www.tpam.or.jp/2017/?program=fever-room