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■2022年美術展ベスト10

■ 楳図かずお大美術展   東京シテービュー ■ 特別展ポンペイ   東京国立博物館・平成館 ■ メトロポリタン美術館展、西洋絵画の50年   国立新美術館 ■ ミケル・バルセロ展   東京オペラシティアートギャラリー ■ 2121年Futures InーSight展   21_21 DESIGN SIGHT ■ 奇想のモード、装うことへの狂気またはシュルレアリスム   東京都庭園美術館 ■ 写真と絵画、柴田敏雄と鈴木理策   アーティゾン美術館 ■ クリストとジャンヌ=クロード、包まれた凱旋門   21_21 DESIGN SIGHT ■ ガブリエル・シャネル展   三菱一号館美術館 ■ 星野道夫、悠久の時を旅する   東京都写真美術館 *並びは開催日順. 選出範囲は当ブログに書かれた展示会. 映画は除く. *昨年のベスト10・・「 2021年美術展ベスト10 」. 

■fire&water ■野口里佳、不思議な力 ■星野道夫、悠久の時を旅する

*次の□3展を観る。 □fire&water,PRIX PICTET Japan Award プリピクテジャパンアワード,写真とサステナビリティに関する国際写真賞 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4313.html □野口里佳,不思議な力 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4270.html □星野道夫,悠久の時を旅する *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4311.html ■東京都写真美術館,2022.10.l7-23.1.23 ■プリピクテジャパンアワード2022に岩根愛を選出したようです。 ハワイのボンダンスと日本人墓地を繋げる作品は日本人移民の喜怒哀楽史が詰まっている。 小笠原原人を撮った長沢慎一郎もこの延長線にあるでしょう。 野口里佳「不思議な力」は力の入っていない力作です。 日常世界は実は不思議だらけです。 それを発見した時、身体はカメラになっていく。 星野道夫のアラスカは一枚一枚に物語がある。 自然と人間の関係を考えさせられます。 「悠久の時を旅する」を観終わった時、直前に観た2展をすっかり忘れてしまった。 それだけ自然の豊かさは全身に食い込んできます。 「DOMANI明日展」で今年の見納めにしようとしたが、この3展を追加します。

■DOMANI明日展、百年まえから百年あとへ

■国立新美術館,2022.11.19-23.1.29 ■2年ぶりの本展は10名の作家が登場します。 中堅が4名含まれている。 そのためか充実した内容でした。 絵画系では小金沢健人のドローイング作品が面白い。 重ねた紙をずらしながら色鉛筆を塗っていく。 W・カンディンスキー風の構成・色彩です。 紙と紙の境に見えない直線が在る。 構造の強さがみえる。 丸山直文は水の上に描いていく・・? 抽象風景や田圃をみていると牛島憲之を思い出させてくれます。 彫刻系では、伊藤誠のどこかユーモアのある、谷中佑輔の手首や足首を繋げ器官に訴えてくる、北川太郎のいかにも手で考えている、これらの作品は見て触れることで身体が喜びます。 写真系の石塚元太良の青い氷河はインパクトがありますね。 そして近藤聡乃のニューヨーク生活は世界に繋がっていることが分かる。 今年最後の美術展だが期待以上に楽しく観ることができました。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/domani2022-23/

■京都・智積院の名宝

■サントリー美術館,2022.11.30-23.1.22 ■京都旅行では智積院に寄ったことがなかった。 ということで六本木の智積院展に足を運んだ。 やはり長谷川派が目当てだ。 2章「桃山絵画の精華、長谷川派の障壁画」では等伯が4枚、息子久蔵が1枚、他1枚の計6枚がズラッと並んでいる。 壮観だ。 等伯では「楓図」が一番かな。 それと長谷川派「雪松図」がリズムの良さで気に入る。 しかし思っていた以上にくすんでいる。 写真とは比べ物にならない。 照明も絞っている。 ちょっと残念な気分だ。 修復すればずっと良くなるだろう。 当院は近代画家との縁もあるらしい。 土田麦僊や堂本印象の作品も展示してある。 堂本の「婦女喫茶図」「松桜柳図」はシッカリしていて長谷川派に負けていない。 現場に似合っているはずだ。 多くの人物像や名宝も展示されていて院の全体像が見えてきた。 しかし現地へ行って観ないと良さがわからない。 京都へ行きたくなってきた。 *美術館、 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_5/index.html

■パリ・オペラ座、響き合う芸術の殿堂

■アーティゾン美術館,2022.11.5-23.2.5 ■「新章パリ・オペラ座、特別なシーズンの始まり」を見逃してしまった。 でも映画はいつか観ることができる。 それにしてもこの美術展は分かり難いわね。 解説の文字数が半端でない、17世紀から21世紀迄の400年間を詰め込んでいるの、しかもオペラ座は複雑な歴史を背負っているからよ。 取っ付き難い理由はもう一つある。 それは美術展というより資料展と言ってよい。 250作品の多くは美術品だがパリ・フランス国立図書館から借りてきたものだから。 展示も解説も図書館的になってしまった。 もちろんバレエとオペラには日々接していないとツマラナイはず。 それでも知らない舞台作品は多い。 スタッフの役割、衣装の変遷、バレエとオペラの区分け等々ある程度は掴むことができる。 オペラ座の上演形態が特殊なためR・ワーグナーもS・ディアギレフも苦労したことが書いてあった。 外国の作曲家はそれを乗り越えてオペラ座での地位を獲得していったのね。 面白い話はいくらでも探せる。 でも草臥れた展示だった。 *美術館、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/545

■諏訪敦、眼窩裏の火事

■府中市美術館,2022.12.17-23.2.26 ■府中まで足を延ばす。 諏訪敦をまとめてみるのは初めてである。 写実絵画と言われているが少し違う。 たとえば1章「捨民」は彼の家族の歴史が語られる。 それは祖母や父が体験したであろう旧満州日本人の過酷な姿が作品に滲み出ているからである。 彼は何度も現地取材をしたようだ。 1945年の満州の風景が作品に重ね合わされて迫ってくる。  2章は静物画を再解釈しながら描く。 食器や果物、植物や魚介類が並ぶ。 水や豆腐もある。 ここで副題の「眼窩裏の火事」が何であるかを知る。 彼は「閃輝暗点」という症状に悩まされていたらしい。 なんと脳内に現れた現象を作品上に描いているのだ。 ・・。 3章は舞踏家大野一雄に焦点をあてている。 大野一雄や川口隆夫の舞台は何度か観ている。 しかし舞台と絵画の身体を結びつけるのには違和感がある。 流れている時間と止まっている時間の違いかもしれない。 舞台の身体は今から未来へ微分していく。 絵画の身体は今から過去へ積分していくからだろう。 「わたしたちはふたたびであう」の3章タイトルはとても絵画的だ。 *川口隆夫が大野一雄の身体性を踊る「 DUOの會 」(2022.11) *美術館、 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/.html

■マリー・クワント、スィンギング・ロンドンの伝説 ■マリー・クワント展、丈も時代も変えたミニの女王

*マリー・クワントの映画と美術展の□2品をまとめて観る。 □マリー・クワント,スウィンギング・ロンドンの伝説 ■監督:サディ・フロスト,出演:マリー・クワント,ケイト・モス,ヴィヴィアン・ウェストウッド他 ■Bunkamura・ルシネマ,2022.11.26-(イギリス,2021年作品) *映画com、 https://eiga.com/movie/97458/ □マリー・クワント展 ■主催:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館ほか ■Bunkamura・ザミュージアム,2022.11.26-2022.1.29 *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_maryquant/ ■マリー・クワントは1930年生まれで20世紀後半に駆け上がった一人です。 でもブランドアイコン「デイジーマーク」以外の彼女をこれまで知らなかった。 このドキュメンタリー映画は彼女の仕事を余す所なく描いています。 解説と映像が1960年代と共鳴しているからでしょう。 そしてマーケティング担当になる夫のアレキサンダー・グリーン、経営担当アーチー・マクネアの出会いが彼女の感性を開花させた。 しかし1970年代に入るとヒッピーの出現など生活が多様化し、ともにデイジー商品も多角化していくが、最後は会社をまとめきれず退いてしまう。  6階映画館を出て地下1階の美術館に入る。 目の前にある作品は大人びた子供服のような感じが先ずはしました。 映画の冒頭で「クリスチャン・ディオール(?)に無視された・・」と言っていたことが分かります。 しかし時代が後押した。 型紙を売りそれを消費者自身でデイジー服を作ることもしていたからです。 色も形もシンプルで取っ付き易い。 ファッションを大衆に広げた功績は素晴らしい。 当時と比べて解放の質は違うが、現在のユニクロ文化と似たようなところもあるかもしれない。 映画の終幕にヴィヴィアン・ウエストウッドが衣服の大量消費に異議を唱えていたがマリー・クワントはこれらをどう見ているでしょうか?

■川内倫子、M/E ■連作版画の魅力 ■䑓原蓉子 だいはらようこ

*下記の□3展を観る。 ■東京オペラシティアートギャラリー,2022.10.8-12.18 □川内倫子,M/E,球体の上,無限の連なり ■光が眩しい。 川内倫子の写真はいつも朝日が当たっている。 新作はアイスランドでの撮影作品。 その映像「M/E」は氷河や流氷、そこに住む人々やアザラシを映している。 車内からみた山脈は壮大です。 近隣の人々を地球規模まで広げたようです。 ますます忙しくなりそうですね。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh255/ □連作版画の魅力,収蔵品展074 ■版画家19名の連作集です。 これは楽しい。 相笠昌義、船越桂、林孝彦、加納光於、北側健次、小泉淳作、西内利夫、山下清澄が気に入りました。 過去にみている作品も多いのですが見飽きない。 ここに多くの時間を割いてしまいました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=281 □ 䑓 原蓉子(だいはらようこ),糸でえがく ■カーペットがズラリと吊るしてある。 タフティングという技法らしい。 我が家にも2・3枚欲しい。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=282 *2022.10 投稿者名を「黃虎青狐」から「かえる」に変更しました.

■ヴァロットン、黒と白

■三菱一号館美術館,2022.10.29-2023.1.29  ■版画展と言ってよい、油絵も数枚あったが。 <黒と白>の線と面をみているとグラフィクアートの先駆者にみえてくる。 有名人肖像画やアルプスの力強い線は見応えがある。 山々や雲の形が面白い。 4章「アンティミテ」の1890年代後半に入ると親密がより増しているが、それは彼の版画技工に磨きがかかった為だと思う。 髪型を含め人物周辺の装飾性も向上している。 しかし顔の細かい表情などは版画では描けない。 少しでも逸れれば漫画になってしまうだろう。 そのギリギリで止めている。 ヴァロットンはナビ派や親密派と呼ばれている。 絵画では納得するが、しかし版画では無理やり派閥に入れているように聞こえる。 彼の版画はそこからはみ出すほど多彩だ。 グラフィカルはもとより漫画アートにも通じている。 *美術館、 https://mimt.jp/vallotton2/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ヴァロットン ・・ 検索結果は5展 . *2022.10 投稿者名を「茶熊赤狸」から「かなへび」に変更しました.

■特別展アリス、へんてこりんな世界

■主催:ビクトリア・アンド・アルバート博物館ほか ■森アーツセンターギャラリー,2022.7.16-10.10 ■この数年に出会ったアリスと言えば「アリス・イン・ワンダーランド」(ティム・バードン監督)、「不思議の国のアリス」(ロイヤル・バレエ団)の2本かな。 この映画とバレエはピカイチよ。 展示会でもこの2作品の比重が高い。 見所は1章「アリスの誕生」。 V&A所蔵の作品がずらりと並ぶ。 ドジソンのことが一杯ね。 博物館の面目は十分、でも資料が多くて子供たちは飽きるかも。 2章「映画になったアリス」でジョナサン・ミラー監督のアリスを上映していたがこれは観たい! 彼の演出舞台をよくみていたから。 3章「新たなアリス像」ではサルバドール・ダリまでがアリスを描いているの。 シュルレアリストもアリスがお好きなのね。 4章「舞台になったアリス」。 ここは勿論ロイヤル・バレエの舞台衣装や装置がずらりと並ぶ。 そして終章は「アリスになる」。 現代の科学やファッションにもアリスは負けない。 どの時代でも親和性が強い。 アリス最高! *美術館、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/alice/index.html *2022.10 投稿者名を「白犬黒猫」から「しろいぬ」に変更しました.

■地球が回る音を聴く、パンデミック以降のウェルビーイング

*以下の□4展を観る。 ■森美術館,2022.6.29-11.6 □地球が回る音を聴く ■16名の作家が登場し各自のウェルビーイングを披露してくれる。 オノ・ヨーコの詩から始まり絵画、彫刻、映像など揺れ幅の大きい作品が並ぶの。 日常のガラクタや新聞紙、被災家具、DV議論等々など日常からみた世界を描いている。 観客はまさに地球が回る音を聴いているような感じかな? その音は楽音・騒音・雑音・無音など数えきれない。 作品を作ることによって作家自身と世界の健康をなんとか保とうとしている。 それだけ危機が迫っている。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/earth/index.html □仙境へようこそ ■やなぎみわ、小谷元彦、ユ・スンホ、名和晃平の4人で代表作を1点ずつ展示。 「俗世を離れた山水画のような大自然のなかで、不老不死の仙人が住むとされる仙境・・」の気配を感じるわね。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection015/index.html □ツァオ・フェイ曹斐 ■ツァオ・フェイ(曹斐、1978年、中国)の映像作品2点を上映。 今日は「霞と霧」(2013年)を20分ほどみる。 高層住宅の住民がどういう生活をしているのか? もちろんドラマだが分かるのが面白い。 日本より都市化が進む中国だが貪欲に生活している。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen016/index.html □正義を求めて-アジア系アメリカ人の芸術運動- ■「1960年以降のアジア系アーティスト、音楽家、活動家や芸術団体の文化活動、近年の作品やプロジェクトを紹介」。 アフリカ系アメリカ人の公民権運動にアジア系は複雑に反対していた。 またアジア発のベトナム戦争も自ずと過敏になる。 混沌とした60年代がみえてくる。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamresearch009/index.html

■キース・ヴァン・ドンゲン展、フォーヴィスムからレザネフォル

■パナソニック汐留美術館,2022.7.9-9.25 ■作品は何点か見た記憶があるが名前は忘れていた。 調べたが彼の美術展も記録が無い。 副題にあるレザネフォル(狂乱の時代)に名声を得てパリやドーヴィルで描き、ヴェネツィアやアフリカへも足を延ばしたことで作品に余裕ができたようにみえる。 描いた女性は解放されたフォーヴィスムの肉体と表現主義の顔を持っている。 20年代のF・W・ムルナウやF・ラングの映画に登場する女の顔だ。 つまりヴァン・ドンゲンも彼らと同じ青春を歩んだのだろう。 そこにパリ特有の「狂乱の時代」が被さってくる。 人物画では「モンマルトルのパリジェンヌ」ほか数点が気に入る。 女性を描くときは時代への義務感が見え隠れしている。 風景画では「乗馬(アカシアの道)」「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ」。 前者は描くことを楽しんでいる。 後者は遠くから観ると解放感がある。 会場が入り組んでいるので多くの作品を一望できなかったのは残念。 フォーヴ系のコクのある絵はこれで観たい。 *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/220709/

■フィン・ユールとデンマークの椅子 ■芸術x力、ボストン美術館展

*下記の□2展を観る。 □フィン・ユールとデンマークの椅子 ■東京都美術館・ギャラリーABC,2022.7.23-10.9 ■フィンランド展はときどき出会える。 でもデンマークは少ない。 フィン・ユールの名前もね。 彼を中心にデンマーク家具を俯瞰した展示会なの。 緩やかで繊細な曲線を持つ木材の脚や肘掛、骨太の座面や背もたれが気に入ったわ。 とくによかったのは作品に座れるエリアがあったことかな。 椅子は座らないと分からない。 座ることにより、椅子の思想を己の身体がちょくせつ感じ取ることができる。 デンマークは椅子に座らせてくれる。 フィンランドもこれを見習わなくちゃ。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_finnjuhl.html □芸術X力,ボストン美術館展 ■東京都美術館,2022.7.23--10.2 ■タイトルの<力>は権力者を指しているの? でも暑いと気乗りがしない。 しかもヨーロッパ・エジプト・インド・中国・日本が混在しているのでタイトルや分類を意識するのもカッタルイ。 冷房が効いているなか、絵巻物をツラツラとみるのが最高ね。 「平治物語絵巻、三条殿夜討巻」と「吉備大臣入唐絵巻」が面白かった。 阿倍仲麻呂の亡霊が吉備真備に会いに来て、二人で空を飛び、囲碁勝負で碁石を飲んでしまう話は支離滅裂でまるで漫画ね。 会場出口の増山雪斎「孔雀図」で終わり良ければ総て良し。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_boston.html

■ガブリエル・シャネル展

■三菱一号館美術館,2022.6.18-9.25 ■喪服と同じ黒を選んだシャネルは凄い。 作る時も着る時も緊張感が伴う。 会場を進んでデイアンサンブルからイブニングドレスの5作品が並んでいる黒は見事です。 素材の選択も柔軟性がある。 ヨーロッパの正装の厳しさに耐える力を持っている。 映画「 ココ・アヴァン・シャネル 」で彼女が初めての黒を着てカペルと踊る場面を思い出します。 黒以外のドレスをみても隙がない。 職人気質丸出しですね。 白系ドレスでは「去年マリエンバードで」しょう。 そして女性用スーツとも言えるジャケット&スカートも。 沢山のポケットは勇気がいる。 このジャケット、特にピンク系をみるとダラスのジャックリーンの姿が浮かんでしまう。 でもジュエリーは好きになれない。 シンプル&エレガンスの対極に位置付けたいのは分かりますが。 シャネルの作品をみていると20世紀の映像が次々と浮かんでくる。 そして何よりも驚きなのは彼女がクリスチャン・ディオールより20年も前に生まれていたことです。 シャネルの黒はディオールの衝撃に劣りません。 *美術館、 https://mimt.jp/exhibition/#chanel

■ライアン・ガンダー、われらの時代のサイン ■ライアン・ガンターが選ぶ収蔵品展 ■黒坂祐

■東京オペラシティアートギャラリー,2022.7.16-9.19 ■会場はガランとしています。 作品が少ない? 最初に目に入ったのは「タイーサ」像。 ペリクリーズの妻を演ずる役者です。 床をみると腰掛くらいの黒い立方体が30近く並んでいる。 一つ目は、取り付けられているLCDがゴドーを待つ時間を表示しているらしい。 芝居好きには嬉しいですね。 しかし舞台との関係は複雑です。 マッチ箱くらいの作品もある。 よーく見ないと見落としてしまう。 チラシにあったネズミも壁から顔を出していましたね。 ネズミの言葉は映画「独裁者」から引用している。 車椅子に乗った人が会場内で客?を相手に動き回っている。 ホールで上映していたビデオをみて彼が当作家だと知りました。 来日していたのですね。 それにしても作品が捻ってある。 情報社会と如何に付き合っていくのか?試行錯誤しているように見えました。 イギリス国民向け?広告「何でも最後のつもりでやりなさい」は人生の一回性を言っています。 情報が持つ繰り返しを否定している。 次に「彼が選ぶ収蔵品展」の4階へ・・。 右壁に作品を展示して、その対となる左壁に作品の寸法線とタイトルが描かれている。 選んだ絵はモノクロが多い。 本展の作品もほぼ全てがモノクロだったことを思い出しました、この理由は見落としたが。 今回の2展でガンダーがサインを出していることは分かりました。 作品からはサインの方向が隠れているように感じます。 最期に「黒坂祐展」を観る。 これは目が和む。 中間色の呆けた色が心も和ませてくれる。 大和絵を思い出させる春霞の風景です。 心地よい温度と湿度が伝わってきます。 作者はD型2色覚だがこれを積極的に受け入れている。 「生きるために見る」ことがあらゆる眼を肯定にします。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh252/ *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh252/j/collection.php *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh254.php

■末光弘和+末光陽子/SUEP.展

■TOTOギャラリー・間,2022.6.8-9.11 ■地球温暖化に如何に対処していくのか? 作品を作り込んでいく過程で日光や風、温度や湿度にとても敏感に振舞っている。 ここまで温暖化を前面に出している小さな建築展は少ないはずよ。 でも、そこまで追い詰められているの。 太陽の傾きから建築の形、木々の配置まで考える。 地下や水も利用する。 植物の壁、屋根瓦の形にも凝る。 十数年後には北海道まで亜熱帯気候に入るらしい。 方向性としては南アジアの建物に近づいていくようだわ。 好む好まないにかかわらず自然エネルギーの最大限の活用は必須ね。 一つ一つの作品(模型など)の説明がとても分かり易い。 専門と素人の融合が上手にできている。 映像を含めた展示量もちょうどよい。 私のような素人でも消化できた。 疲れないでみることができたわよ。 建築展を重視するのは<衣・食・住>の三つはどれも譲れないから。 *美術館、 https://jp.toto.com/gallerma/ex220608/index.htm

■クリストとジャンヌ=クロード、包まれた凱旋門

■2121デザインサイト,2022.6.13-2023.2.12 ■パリの凱旋門を布ですっぽり覆ってしまう・・! ほぼ映像展です。 すべてを観ると2時間かかる。 大画面で「設計」「実装」「完成」の各フェーズの記録を、中画面で「担当者へのインタビュー」、小画面で「プロジェクト総括」の計5画面で構成されている。 最初に門の構造調査から骨組みの構成、布や綱の強度、水や煙の通気性などなどを設計・実験していく。 実装では数十人もの作業員がロッククライミングのようにして門を包み込んでいく。 そして完成後は観客や街の光景を映し出す・・。 インタビューでは「銀色の布がパリの風景に合う」こと、「いかに門の形を表現できるかに腐心した」ことが語られます。 門が彫刻のようにみえる。 「布で隠すと根本的な形が現れる」からです。 「クリストは未来に目を向けた力強い思想の持主」「現実に根差していないと作品は作れない」。 このような人物です。 昨年にドキュメンタリー「 ウォーキング・オン・ウォーター 」を観ているが、今回は作品が街の中に造られたことで社会へのインパクトは十二分にあります。 但し行政との調整や法律問題などは省いていましたね。 展示会だからでしょう。 *美術館、 https://www.2121designsight.jp/program/C_JC/ *「ブログ検索🔎」に入れる語句は、クリスト ・・ 検索結果は4展示 .

■スイス プチ・パレ美術館展、印象派からエコール・ド・パリへ

■SOMPO美術館,2022.7.13-10.10 ■見かけない画家が多くて新鮮ね。 2章「新印象派」は点描画で一杯。 点描画は雪や霙、氷菓子を思い出させてくれるから暑い夏には最高ね。 自然のクーラーと言ってよい。 次の3章は「ナビ派・ポン=タヴァン派」。 派内の理論家モーリス・ドニの「休暇中の宿題」が気に入る。 この作品は初めてだわ。 4章「フォーヴィスムまで」はマンギャンとカワモン、5章「キュビスムまで」はロートとマレヴナが目に留まる。 6章「エコール・ド・パリ」はキスリングの4枚が素敵ね。 「サン=トロペのシェスタ」は近年みた記憶がある。 でもどこで観たのか思い出せない。 グランではなくプチしかもスイスらしく小粒でもピリリと感じる作品が多かった。 こういう展示会は気持ちが解れる。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2021/petit-palais/

■ルートヴィヒ美術館展、20世紀美術の軌跡

■国立新美術館,2022.6.29-9.26 ■「発見!ナチス略奪絵画執念のスクープの舞台裏」をテレビで観た直後に乃木坂へ行ったのだが、そこには「市民が創った珠玉のコレクシヨン」が展示されていた。 しかも「ブリュッケ」「青騎士」から始まる20世紀初頭のドイツ絵画が並んでいて久しぶりに堪能できた。 線も色も力強く激動の世紀の幕開けに相応しい。 次に「ロシア・アヴァンギャルド」が続き流れとしては申し分ない。 当時のロシアは活き活きしていたのにウクライナ侵攻を重ねると複雑な気分だ。 副題「20世紀美術の軌跡」にもあるように後半は「シュルレアリスム」「ポップ・アート」「1960年代」「1970年代」と続く・・。 しかし時代が上るにつれて感動は徐々に薄れていく。 ルートヴィヒ美術館展はいつも100年間をだらだらと展示するが、100年前に的を絞ったほうが今回は集中できたと思う。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/ludwig/

■朝倉摂展

■練馬区立美術館,2022.6.26-8.14 ■朝倉摂の名前は芝居のチラシでよく見ていた。 会場に入ると1960年代のポスターが10枚ほど貼ってあり、2階に上がり「舞台美術の世界」の章でその仕事がまとめてある。 50ほどの舞台が紹介されていたが彼女の名前の記憶ほどには観ていない。 数えると「近松心中物語」「下谷万年町物語」「タンゴ冬の終わりに」の3本だけだ。 展示以外を含めても20本はないと思う。 前半の青芸や青俳時代は知らないし、後半は芝居の好みが違った為だろう。 演出家としての唐十郎はよく観ていたが蜷川幸雄は殆どない。 展示1階の「画家としての出発」、2階の「日本画と前衛」そして「挿絵の仕事」では朝倉摂の多彩な仕事ぶりがみえる。 上村松園初期の頃を力強くしたような作品が多い。 線に切れ味があるのは彫刻家の父朝倉文夫の影響か? 前衛時代に入ると松本俊介に社会派を取り込んだような画風に一変する。 ベン・シャーンも重なる。 その傾向はそのまま舞台美術に繋がっていく。 久しぶりに昔の舞台を思い出させてくれた。 「下谷万年町物語」が「唐版滝の白糸」を再構築した(?)のも初めて知った。 *朝倉摂生誕100年展 *美術館、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202204071649324799

■ゲルハルト・リヒター展

■東京国立近代美術館,2022.6.7-10.2 ■ピンボケ骸骨などの「フォト・ペインティング」の何枚かは見た記憶があります。 映画監督だと長いあいだ勘違いしていた。 ドイツの画家は馴染みが薄い。 たぶん冷戦分断の影響が長かった為でしょう。 「カラー・チャート」「グレイ・ペインティング」そして「アブストラクト・ペインティング」をまとめてみたのは初めてです。 「ビルケナウ」は強制収容所の写真で背景がわかる。 作者の不安や苦しみは感じられるが、解説が無ければここまで深読みはできない。 抽象画の前に立ったときは意味不要の絵画的感動がやってくるか否かが問題です。 彼の作品を前にすると背景(=意味)があるのではないか?と考えてしまう。 絵をみる喜びが湧き起こらない。 気に入ったのは、やはり「フォト・ペインティング」です。 しかも写真と絵画の関係の不思議さを考えさせられる。 そして「ガラスと鏡」も。 周囲の歩く・止まる人や照明がガラス空間の中で無機化されたリズムとして感じとれる素直な作品です。 竹橋を歩くと梅雨明け特有の痛くなるような暑さが襲ってきました・・。 コンクリートの竹橋はアツイ! *リヒター生誕90年画業60年展 *美術館、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

■ボストン市庁舎

■監督:フレデリック・ワイズマン ■DMM・配信(アメリカ,2020年作) ■ワイズマンの作品はどんどん長くなっていきますね。 今回は4.5時間で40シーケンスから構成されている。 つまりボストン市役所の40の日々の出来事を覗き見ることができる。 会議や公聴会、職員の仕事風景などなどをです。 ボストンには150カ国の人々が住んでいる。 いつもですが彼の作品には人種差別を無くそうとする強い意志が読み取れます。 ボストン市もそれに沿っているのがわかる。 マーティ・ウォルシュ市長の思想や行動も影響している。 市民の立場で観ることができます。 記憶に残る場面が3つあります。 一つは「退役軍人会」会場で市民たちの経験談を語り合う場面です。 両大戦は勿論ですが、朝鮮戦争・ベトナム戦争・アフガン紛争、イラク戦争からの帰還兵が沢山いる。 やはりインパクトがあります。 二つめは「コミュニティカレッジ」のラテン系女性が人種と女性、2重差別の中での仕事処世術を語る。 交渉能力が強くないと世間を渡れない。 厳しい時代と社会がみえます。 そして三つめは「コミュニケーションセンター」での大麻店開設計画の公聴会です。 市職員・企業担当・住民の意見が熱を帯びる。 これは驚きです。 麻薬の店が自宅の近くに建てられる状況は考えられない。 (日本とは)スケールが違います。 市役所の機能・組織の詳細は知らない。 でも職員と住民のコミュニケーションは対面が多く健全にみえました。 ワイズマン行政3部作の一つと言ってよいでしょう。 他の2つは「 ニューヨーク公共図書館 」「ジャクソンハイツ」を選びました。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94410/

■ボテロ展、ふくよかな魔法 ■バーニー・フュークス展 ■渋谷・小町通りー百美人画展

■Bunkamura・ザミュージアム他,2022.4.29-7.3 ■「ボテロ展」はボッテリしているところがいいわね。 日本にはアンパンマンがいるけど、作品に漫画精神を取り入れているようにもみえる。 でもこの比較は画家に怒られそう。 <ふくよか>に描くと角が取れる。 これも魔法ね。 「枢機卿」「大統領」そして「キリスト」などを批判しても何とか納まる。 日本の神々にはこの体形が多いが、一神教のトップは見栄えが必要かもね。 楽しかったわよ。 *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/ ギャラリーで「バーニー・フュークス」に出会う。 彼の作品を眺めているとアンドリュー・ワイエスの緑を思い出すわね。 ワイエスに逆光や暈しを入れたようなところがある。 空気の程良い温もりや湿り気が気持ち良い。 散歩系画風と言える。 「渋谷・小町通り」は若手女流作家?の美人画展。   *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/220525berniefuchs.html *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/box_220529hyakubizin.html

■写真と絵画、柴田敏雄と鈴木理策 ■越境から生まれるアート ■石橋財団コレクション選、ピカソとミロの版画

■アーティゾン美術館,2022.4.29-7.10 ■「柴田敏雄と鈴木理策」は楽しく観ることができました。 鈴木理策は絵画への接近が特に強いようですね。 でも写真と絵画を並べられると気が散ってしまう。 この二つは観るときの意識の流れが違うのかもしれない。 写真はこの世がギッシリ詰まっているので現実に揺れる一瞬がある。 絵画はそこから自由です。 写真と絵画を交互にみる時にはこの違いがリズムを狂わせてしまう。 柴田敏雄の風景にはシャッターを押すまでの被写体との息詰まる遣り取りが感じられる。 その過程が静かに結晶化され昇華した風景となり現前する。 鈴木理策の「サンサシオン」ではセザンヌを語っています。 でも気配が誰であっても豊かな感触は失わない。 写真をみる喜びが湧いて来る。 面白い作品は「ミラーポートレイト」(2016年)の十数枚。 これはハーフミラーを使って裏から人物を撮影している。 目の焦点が鏡面のため人物の<鏡の主観>が<レンズの客観>に入り混じって顔写真ができあがる。 ポートレイトの核心に一歩近づいたようにみえます。 *美術館、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/539 ■他の2展示を観て回る。 この館の量とその質にはいつも満足です。 *美術館、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/540 *美術館、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/541

■牧歌礼讃/楽園憧憬、アンドレ・ボーシャン+藤田龍児

■東京ステーションギャラリー,2022.4.16-7.10 ■アンドレ・ボーシャンと藤田龍児の二人は40代後半に絵画を人生の伴侶にしたようです。 どちらも画風はアンリ・ルソーを思い出させます。 木々や花々を対象にした素朴派の仲間でしょうか? 藤田龍児に近づくとスクラッチで細かい線が描かれている。 例えば木々の葉脈や建物の煉瓦などに。 離れると線が面にグラデーションとして溶けていく。 ここに微妙な自然が現れます。 ポーシャンは園芸家だけあって花には自信がありそうですね。 抽象に画いても生命が宿っています。 二人の決定的な違いは人物描写でしょう。 藤田の描く人は孤独です。 画面には寂しさが隠れています。 時々それがヒョッと現れる。 彼のそばにはいつも犬が寄り添っている。 犬好きの私にはホッとします。 ボーシャンにはそのような孤独は感じない。 安心してみていられます。 感情が薄いのでツマラナイとも言える。 でも二人の絵は会場の煉瓦の壁と微妙に共振し活き活と震えていました。 *美術館、 https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition.html#section01

■スコットランド国立美術館、美の巨匠たち

■東京都美術館,2022.4.22-7.3 ■ルネサンス期以降の幅広い作品が集められているわね。 でも有名作家の作品はロンドンに劣るのは免れない。 寄贈寄付で収集を広げてきたから多種多用になるのは致し方ない。 1章・2章のルネサンス・バロックでは「卵を料理する老婆」(1618年)が<目玉>よ。 ヴェロッキオ、グレコ、ルーベンスはまあまあかな。 3章グランドツアーと4章19世紀開拓者はフランス画家が目立つ。 ここでは英国の画家に出会えたのが一番。 ゲインズバラ、レノルズ、ラムジ・・。 ターナーとミレイは1枚だけ。 この2枚は光っていた。 さすがね。 知らない英国画家も入り混じりエディンバラの地で常設展を観ているような内容だった。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_scotland.html

■吉阪隆正展 ■井上泰幸展 ■TCAA受賞展、藤井光と山城千佳子 ■光みつる庭/途切れないささやき

*以下の□4展示を観る。 ■東京現代美術館,2022.3.19-6.19 □吉坂隆正展,ひげから地球へパノラみる ■ヒゲ顔は写真で知っていたが吉阪隆正の展示会は初めてだ。 作品に個人住宅が多いことと都市計画の為だろう。 どちらも美術展に似合わない。 会場は文章や表が多い。 彼の全体像を描こうとしているのがわかる。 というのも建築以外の活動が派手だからである。 彼は 今和次郎 とル・コルビュジエに師事していた。 この組み合わせは新鮮だ。 彼の作品はシルエットがコルビュジエ的だが、そこに民俗学的要素が散りばめられている。 特に内装は後者に偏っていく。 <乾燥ナメクジ><歩きテクト>と言われていたようだが、ナメクジのように地をごそごそ這いまわり、辺境を歩きまわり肌で感じる。 住むとは何かを身体と生活を通して考える・・。 そしてもう一つ、彼は登山家としての実績も凄い。 むしろ登山家が職業ともいえる。 建築と登山を二つの焦点として「地球規模の活動」を目指したと言えよう。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/takamasa-yosizaka/ □生誕100年特撮美術監督井上泰幸展 ■円谷英二のスタッフの一人として井上泰幸の名前があったのだが現役当時は誰も気が付かなかったろう。 ラドンやモスラ、そしてゴジラ・・、すべての怪獣に彼の手が入っていたことを知ったのはずっと後だ。 当時の怪獣たちはリアルそのものだった。 今みると安っぽさはあるがリアルとは違う存在感が迫ってくる。 モノとしての模型はホンモノとは違うオーラが出ている。 終章に「岩田屋ミニチュアセット」が展示されていたが映像に撮られた以上に圧倒感が押し寄せてくる。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/yasuyuki-inoue/ □TokyoContemporaryArtAward2020-2022受賞記念展,藤井光&山城千佳子 ■どういう賞だか知らない。 藤井光の作品はそれ自体は面白くないが背景を知ると興味深い。 「・・戦後、日本人絵画をめぐる議論をアメリカ占領軍が残した公文書から考察する」作品である。 特に占領軍の音声が状況を教えてくれる。 ただし本物の絵画は展示していない。 絵画を梱包した

■マルジェラが語る「マルタン・マルジェラ」

■監督:ライナー・ホルツェマー,出演:マルタン・マルジェラ(声),ジャン=ポール・ゴルチエ,カリーヌ・ロワトフェルド他 ■DMM・配信(ベルギー&ドイツ,2019年) ■マルジェラ本人が自身の声?でたっぷりと語ってくれる。 でも一度も姿は現さない、手は見えるけどね。 「人前に出たがらないのは戦略ではなくて本心・・」、「仕事を語るのがきらい」と言っている。 彼の作品が嫌いな人も多かった。 批判に耐えかねて性格がそうさせたかも。   過去資料を持ち出して子供のころから引退までを彼は淡々と話すの。  履歴物語ね。 淡い色と白を基調にしていているがカウンターカルチャーは抜群よ。 シュルレアリスムを取り込んでいることもその理由かしら? 地下足袋を参考にした靴、モデルの顔を布や長髪で隠すのもマルジェラ同郷のルネ・マグリットやポール・デルヴォーに繋がる。 「自由にみて感じてもらいたい」と言っている。 現代美術をみている感覚でファッションを語れるのがマルジェラだと思う。 前回の「 マルジェラと私たち 」と今回の作品でまた一歩マルジェラに近づけたわね。 *映画com、 https://eiga.com/movie/92459/

■篠田桃紅展 ■1960-80年代抽象 ■諏訪未知

■東京オペラシティアートギャラリー,2022.4.16-6.22 □篠田桃紅展 ■篠田桃紅の書→絵はゆらゆらゆらぐ柳の木を描いているかのようです。 しかし棘らしき線にも見える。 柔らかさのなかに厳しさがある。 どっしりとした四角い太い面に先鋭な線はもはや華道ですね。 和紙に花器を描き花を生けている。 空白が気にならないのは書が原点にあるからでしょう。 それにしても円や曲線が無い。 息が抜けない。 「抽象は無秩序か空疎な形状に陥りやすい」から気を緩めなかったのでしょうか? 書から入った彼女は「文字の制約から自由になりたい」一心でニューヨークに渡り抽象絵画に近づいていったようです。 会場内で上映していた「日本の書」(ピエール・アレシンスキー監督、1957年制作)のドキュメンタリーは面白い。 江口草玄が筆を買う場面で以前に観ていたことを思い出しました。 後半に篠田桃紅が滑らかな肢体で柳のような線を描く姿は芸術と言えます。 あらためて日本は書↔絵に囲まれていると認識させられました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh249/ □1960-80年代の抽象 ■画家30名強の抽象画が並んでいる。 これだけの作者に出会えるとは、2階のコレクション展はいつも裏切らない。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh250.php □諏訪未知 ■ほんわりな色と形そしてリズムは時間と空間を移動して美術館まで来た観客を歓迎しているかのようです。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh251.php

■ピエール・ボナール「プロヴァンス風景」 ■没後50年、鏑木清方展

■国立近代美術館,2022.3.18-5.8 □ピエール・ボナール「プロヴァンス風景」 ■ボナールはこの1枚しかなく、その周りには関連画家の作品十数枚が並んでいる。 初めてみる絵です、たぶん。 色も筆使いもボナールですが抽象が進み過ぎている。 視神経の冒険!? いつもの黄金に輝く生活空間が見えない。 ボナールをみる喜びがやってきません。 ところでマティスとピカソのボナール評は真逆と知りました。 「未来まで偉大な画家・・」に対して「ボナールを語るのは止めてくれ・・」。 ピカソのボナール嫌いの詳細は追いませんでしたが・・。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/pierrebonnard2022/ □没後50年鏑木清方展 ■明治時代に戻った雰囲気が会場に漂っています。 しかも沢山の美人(画)に囲まれて楽しいですね。 衣装や髪型も最高です。 どちらも知識は持っていないが惚れ惚れします。 昭和初期までの湾岸沿いの匂いがする「生活をえがく」章は気に入りました。 しかし「物語をえがく」と同様に演技している顔表情です。 単眼鏡は必要。 画家の言う「小さくえがく」、つまり「卓上芸術」と「床間芸術」の違いも知ることができた。 前者は会場で後者は自宅で鑑賞するものらしい。 清方の小さな絵は自宅でくつろぎながらみるのが良い。 なぜなら物語が多いからです。 ビデオのようなものでしょう。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kiyokata/

■表現の不自由展

■くにたち市民芸術小ホールギャラリー,2022.4.2-4.5 ■作家16人で約20作品が展示されている。 知っている作家は赤瀬川原平、小泉明郎の二人で作品も見覚えがある。 対象は朝鮮・広島・沖縄・福島・天皇・憲法・LGBTがほとんどだが、多くは真当にみえる。 なぜ公共施設での展示が不可なのか?ひと目みてもわからない。 たぶん右翼が五月蝿いからだろう。 裁判沙汰もあるが多くは作者側が勝訴している。 このような権力批判をともなう美術展はどんどん開催すればよい。 観客が判断すればよい。 でないと日本もロシア国民のようになってしまう。 *美術館、 https://fujiyuten.com/

■シダネルとマルタン展

■SOMPO美術館,2022.3.26-6.26 ■二人の名前はあまり聞かない。 2012年に当美術館で「 シダネル展 」が開催されたくらいです。 象徴派からも印象派からも中途半端なため展示会から漏れてしまうのでしょう。 会場で名前を隠すとどちらの絵なのか指摘できない。 技法も多彩です。 19世紀末フランスの何人かの画家を思い出させる画風です。 時系列の変化が激しかったともいえる。 マルタンは壁画にも手を出していますね。 「ここに私の後継者がいる」とシャヴァンヌに言わせている。 裕福になった頃の二人の作品はつまらない。 金儲けに忙しかったのでしょうか? それも一段落して、余裕ができた晩年は「北のシダネル」「南のマルタン」として無事に収まっていました。  *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/#now

■本城直季(un)real utopia

■東京都写真美術館,2022.3.19-5.15 ■本城直季の作品を初めて見た時は衝撃というより不思議な驚きがやってきました。 風景の被写体は模型か? と、見えたからです。 展示されている200点はこの模型方法で撮られている。 「アオリ」と呼ばれる技法らしい。 しかし模型に合わない風景もある。 それは夜景、雪景色、高層建物、細かい複雑な風景、人物が小さすぎる、・・これらは模型が発揮できない。 そしては展示方法でも違いがでます。 作品を壁(垂直)に掛けるより机(水平)などに置いて見るほうが模型が強調される。 世界が不思議な楽しさに染まりますね。 「small planet」の「東京駅」など初期作品が面白い。 昨年末に観た「 松江泰治、マキエタCC 」も驚きでしたが何度でも言います。 いやー、写真は奥が深い! *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4043.html

■奇想のモード、装うことへの狂気またはシュルレアリスム

■東京都庭園美術館,2022.1.15-4.10 ■1章「有機物への偏愛」の黒髪の「ジャケット」(ジョージ・ニーズ)に先ずはビックリ! 思えば黒髪の上着は有るようで無いから。 でも猿の毛なの。 比して3章「髪へと向かう、狂気の愛」の作品群は人毛だが小さすぎて驚きがない。 2章「歴史にみる奇想のモード」では纏足靴に目がいく。 10cmの丈が思った以上に小さくみえるからよ。 靴を知ったのはパール・バックの「大地」だった。 隣のコルセットとともに奇想の慣習ね。 5章「鳥と帽子」と違って肉体改造の凄さが伝わってくる。 4章「エルザ・スキャパレッリ」では「ブローチ・イヤリング・ブレスレット」(1950年代)が気にいる。 ガラスと人工真珠等の組み合わせに彼女の目の鋭さが現れている。 真似したくてもできない微妙な割形だとおもう。 主題となる6章「シュルレアリストとモード」では「分断された身体へ」「裁縫とシュルレアリスム」「物言わぬマネキンたち」の分解→結合→再構成で進む身体改造が面白い。 途中にあった「ヘクトールとアンドロマケー」(ジョルジュ・デ・キリコ)の青い空が素敵ね。 同じ部屋の「室内または静物+部屋」(マン・レイ)もなかなかだわ。 8章「和の奇想」では花魁の奇想の深さを再認識できる。 帯留は自然を取り込んだ強みがでている。 別館に行き・・、9章「ハイブリッドとモード」では舘鼻則孝の代表作群、永澤陽一のパンツ3点、串野真也の沢山の靴をみることができ現代に繋がる奇想モードの状況が分かる。 モードとシュルレアリスムは愛相が良い。 楽しかったわよ。 *美術館、 https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/220115-0410_ModeSurreal.html

■2121年FuturesInーSight展

■ディレクター:松島倫明,グラフィクデザイン:上西祐里,会場構成:中原崇志 ■21_21DESIGN SIGHT,2021.12.21-2022.5.8 ■「なぜ22世紀を想像できないのか?」(ウィリアム・ギブスン)。 ディレクター松島倫明は「現在から未来を想像するより、未来から今がどう見えるかをバックキャストで想像してみよう・・」と言っている。 つまり「2121年を想像するとはいかなる行為でどんな視座と洞察が込められているか?」を作品として展示したようです。 会場で幾つかの気になった文章を書き留めました・・。 「西洋中心的な単数形の未来から文化的多様性の複数系未来は始められるか?」。 「恩送りを始めよう。 恩を他者に贈り、贈られた人もまた他者に贈る。 助ける助けられる負い目を気にしなくなるから」。 「日常のなかに、起きていたかもしれないが幸運にも回避できた破局を、想像することができなければいけない」。 「なるべく人との繋がりを切り、自分一人で生きていけるという幻想を植え付け、その為にお金が必要だと信じ込ませる。 人々は従順に働き、お金を手に入れようとする。 ・・未来もまだ、お金で楽しさを購入しているだろうか? そのために働いてお金を手に入れようとしているだろうか?」。 ・・。 関連するSF小説が展示されていたが、その中に「三体」がでんと置いてあった。 じつはまだ読んでいない。 読みたいがスケジュールに入らない・・。 *美術館、 http://www.2121designsight.jp/program/2121/

■ダミアン・ハースト、桜

■国立新美術館,2022.3.2-5.23 ■これは酷い桜だ! でも花見はできるから良しとしよう。 八重桜かな? 作者は「自然の模写ではない」と言っている。 桜は写実も抽象も区別し難い。 青空が濃い作品ほど気持ちがいい。 コロナが無ければ館内を花見会場として開放してもいいだろう。 作者へのインタビュービデオをみると「ベーコンの技法を使いポロックで完成させた」らしい。 水平と垂直の違いはあるが「筆を垂らすのではなく投げている」とは驚きだ。 ベーコンとの関係は聞き漏らしてしまったが。 東京の開花より先に開催されたので注目度が上がったと思う。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/damienhirst/

■ミケル・バルセロ展 ■水戸部七絵

■東京オペラシティアートギャラリー,2022.1.13-3.25 □ミケル・バルセロ展 ■「子供の頃は沢山のタコを捕って遊んだ・・」。 羨ましい! しかも子供時代の母の影響で美術界に進むとは! でも作品に自然賛歌はみえない。 美術学校時代にシュルレアリスムそしてアール・ブリュットに影響を受けた為ですか? ミクストメディアは地そのものが激しいこともある。 彼は1988年からアフリカのマリで制作を初めます。 「・・故郷マジョルカ島にいる時いじょうに大地の接触が身体的である」。 東京に住んでいる者にとってはマジョルカからマリの変化は想像できない。 「小波のうねり」「飽くなき厳格」「恐れと震え」などマジョルカの海は題名に現れている。 その青い海をそのまま白い砂漠へ移した。 白は生と死がより身近にみえる。 彼は陶芸にも興味があるらしい。 手を動かすのが好きなのでしょう。 「大地を描くガラス」は楽しんでいるのが分かる。 こねこねし過ぎてパフォーマンスまで行ってしまった。 「幻影」そして行き着いた先は「パソ・ドブレ」。 振付家ジョセフ・ナジと共演の粘土ねりねり遊びです。 タコ捕りから粘土遊びへ、最高ですね。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh247/ □水戸部七絵展 ■日本のバルセロですか? *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=273

■上野リチ、ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展

■三菱一号館美術館,2022.2.18-5.15 ■荒さ有る筆使いと色使いで描かれた草木花・・。 リチの作品を前にすると目が楽しんでいるのが分かる。 子供が描いたようにもみえる。 でもちゃんと収まっている。 草花の線がいいわね。 マティスやデュフィも感じられる。 上野リチの素直な遊び心が表れている。 琳派に近づけた作品は上野伊三郎からの影響かな? 今回と違って2009年展は伊三郎を強く出していたことを覚えている。 彼女は七宝も沢山作ったのね? でも探究心は小柄になっている。 たぶん戦争の影響かしら? 展示会も後半は萎んでしまった。 教育者に収まってしまったこともあるわね。 もっと日本美術へ入り込んでほしかった。 室内装飾はウィーン工房からの総仕上げにみえる、人間関係からみても。 *美術館、 https://mimt.jp/lizzi

■メトロポリタン美術館展、西洋絵画の500年

■国立新美術館,2022.2.9-5.30 ■天窓から自然光を通すMET改築工事による退避展らしい。 「西洋絵画の500年」と副題にあるように時系列に沿って表層だけを眺める感じだ。 フラ・アンジェリコ「キリストの磔刑」(1420年)で始まりクロード・モネ「睡蓮」(1919年)で終わる。 ちょうど500年だ。 しかし展示数が65作品でも結構疲れた。 自ずと観るのに集中力を高めたからだろう。 METは近ごろご無沙汰している。 館内で迷ってしまい、気がついたら十数点のクラーナハに囲まれていて度肝を抜かれたことを覚えている。 「パリスの審判」を観ながら昔のことを思い出してしまった。 旅行も当分無理だろう。 5月末まで開催しているので毎月行ってもよい。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/met/

■ミロ展、日本を夢みて

■Bunkamura・ミュージアム,2022.2.11-4.17 ■油絵はなかなか見応えがあります。 コクがある。 テンペラ「花と蝶」もみえる。 横浜美術館所蔵で私が一番好きな作品です。 1917年の油彩「シウラナ村」では浮世絵の影響が解説されている。 すべてが日本に繋がっている展示会ですね。 ミロがシュルレアリストに会わずに以後も油絵を描いていたら別の意味で面白かったはず。 初章ではミロの油絵に感動しました。 次章からはミロの抽象へ進んでいく。 彼は日本の自然観、木々や草花そして身近な動物を見る目に憧れたようです。 これに書道や民芸が肉付けされ、誰でも楽しめる抽象画になり、日本経済の上昇期と合致して素直に日本に受け入れられたのでしょう。 「祝毎日」(1966年)も書道風抽象画のためスンナリ納まる。 他の作品をみても書道の影響が大きい。 揮毫での身体の振動つまりリズムを作品に取り入れようとしている。 「見るミロを見る、見るミロを見ろ・・」。 瀧口修造です。 ここまで日本の文化や人間関係に接近した画家は珍しい。 *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/

■特別展ポンペイ

■東京国立博物館,2022.1.14-4.3 ■住居を具体的に再現しているところが今回の見所ね。 それは「ファウヌスの家」「竪琴奏者の家」「悲劇詩人の家」の3軒なの。 家の見取り図をみると部屋数が20から30もある。 裕福な家庭らしい。 住居の壁や床そして絵画や装飾品の色と形に囲まれていると喜びが迫ってくる。 フレスコ画の霞んでしまった青緑や赤茶の(漫画のような)写実的な動植物を見ていると心が落ち着く。 モザイク画も同じように多くの自然界を描いている。 馴染みの魚介類が多いのも身近に感じる。 「イセエビとタコの戦い」などはタイトルが美味しそう。 この動植物や魚介類を材料にして、数々の料理道具、例えば保温器や湯沸かし器、大きな壺などから新鮮な料理が想像できる。 ポンペイの上流層の日常生活がみえてくるわね。 でも市民生活はよく分からない。 奴隷の出世物語を含め中・上流層に近づくことができたと解説にあるが本当かしら? 人口1万人で600軒の店や工房と公共施設、例えば浴場、劇場、闘技場、下水道などから想像するしかない。 パン屋が30軒あったこともね。 台所が粗末なことから外食やテイクアウトも多かったようね。 たぶん江戸時代の落ち着いていた頃の江戸庶民の生活に似ていたような気がする。 ポンペイ展は過去に何回か観ているが、いつも新鮮な観後感がある。 「2000年前にタイムスリップできる空間演出を・・」とあったが「そこにいた」気分を今回も持てた。 楽しかったわよ。 *ナポリ国立考古学博物館主催 *博物館、 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2128 *「ブログ検索🔎」に入れる語句は、ポンペイ  ・・ 検索結果は3展 .  

■フェルメールと17世紀オランダ絵画展

■東京都美術館,2022.1.22-4.3 ■「窓辺で手紙を読む女」をじっくり観てきたわよ。 修復前は・・、静けさがあり手紙を読むには最適な空間だった。 女と手紙に集中できた。 修復後は・・、ざわめきが感じられる。 このため手紙以外のことがよぎる。 でも作品に安定感が増し完成度が高くなった。 修復後の方が気に入ったが修復前が好きな人もいるはずよ。 修正した人の意図はレンブラントに近づける為だけではなかったと思う。 「欺瞞や良心の欠如に打ち勝つのは誠実な愛のみである」。 描かれたキューピットの寓意らしい。 これで説明が増えて作品が騒がしくなったのね。 手前の果物がとても輝いていたのも目に残る。 周辺も清掃されたのかしら? うん、上野に足を運んだ甲斐があった! 他の70点も初めて観る作品が多い。 満足度の高い展示だった。 小さい肖像画が多いから単眼鏡を持っていると安心。 *ドレスデン国立古典絵画館所蔵展 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_dresden.html   *「ブログ検索」に入れる語句は、フェルメール  ・・検索結果は7展。     

■楳図かずお大美術展

■東京シティービュー,2022.1.28-3.25 ■「楳図かずお27年ぶりの新作」! 作品名は「ZOKUーSINGO 小さなロボット シンゴ美術館」。 101枚の絵画がズラリと並んでいる。 漫画ではなく絵画と言ってよい。 ・・横尾忠則を思い出してしまった。 二人は生まれも同じ1936年。 漫画家と画家の違いはあるが深層のどこかで繋がっているように感じます。 「わたしは真悟」の続編らしい。  さとるとまりん、 二台のロボットが人間に生まれ変わろうとする話のようです。 前半はリズムがあり冴えた流れで引き込まれます。 しかし後半はロボット類の大進化と戦争の勃発そして人類は天上へ避難・・。 詰め込みすぎですね。 作者は急ぎ過ぎたのでしょう。 そして世界を広く耕し過ぎた。 このため作品が完結したのかどうか定かではありません。 ロボットが人間に近づくのは20世紀の見方です。 「ブレードランナー」を含め多くの作品がこれです。 しかし21世紀は人間がロボットに近づいていく時代でしょう。 人体の一部がアンドロイド化しロボット化していく・・。 やはり人間は<死>、それに<老>や<病>を避けたい。 自己の意識が繋がれば良しとするところまで行ってしまう気がする。 加えて20世紀的<愛>も案じなければいけない。 このようなことを考えながら新作をみてきました。 いやー、21世紀は忙しくなりそうですね。 作者が後半に急いだのも分かります。 *美術館、 https://tcv.roppongihills.com/jp/exhibitions/umezz/

■HOKUSAI 北斎

■監督:橋本一,企画:河原れん,出演:柳楽優弥,田中泯,阿部寛ほか ■アマゾン・配信(日本,2020年作) ■4章から構成されています。 青年期は柳楽優弥、老年期は田中泯が葛飾北斎を演じる。 面白いのは他者との関係が描かれている1章と4章で、前者は蔦屋重三郎・喜多川歌麿・東洲斎写楽、後者は柳亭種彦が登場し北斎を挑発し続けます。 2章と3章は内容を思い出せない。 この空白が青年期と老年期を分断してしまった。 ショット内のアップが多く動きも派手で俳優に依存し過ぎてしまった。 「超豪華キャスト集結!」が裏目に出ましたね。 シーケンス間でも断絶がみえる。 観終わったときは散らばった画面しか残らなかった。 絵画に関しても無頓着と言ってよい。 「描きてえと思ったことを好きに描く!」。 北斎の何を描きたかったのか? 見えない作品でした。 *映画com、 https://eiga.com/movie/91658