■吉阪隆正展 ■井上泰幸展 ■TCAA受賞展、藤井光と山城千佳子 ■光みつる庭/途切れないささやき

*以下の□4展示を観る。
■東京現代美術館,2022.3.19-6.19
□吉坂隆正展,ひげから地球へパノラみる
■ヒゲ顔は写真で知っていたが吉阪隆正の展示会は初めてだ。 作品に個人住宅が多いことと都市計画の為だろう。 どちらも美術展に似合わない。
会場は文章や表が多い。 彼の全体像を描こうとしているのがわかる。 というのも建築以外の活動が派手だからである。
彼は今和次郎とル・コルビュジエに師事していた。 この組み合わせは新鮮だ。 彼の作品はシルエットがコルビュジエ的だが、そこに民俗学的要素が散りばめられている。 特に内装は後者に偏っていく。
<乾燥ナメクジ><歩きテクト>と言われていたようだが、ナメクジのように地をごそごそ這いまわり、辺境を歩きまわり肌で感じる。 住むとは何かを身体と生活を通して考える・・。
そしてもう一つ、彼は登山家としての実績も凄い。 むしろ登山家が職業ともいえる。 建築と登山を二つの焦点として「地球規模の活動」を目指したと言えよう。
□生誕100年特撮美術監督井上泰幸展
■円谷英二のスタッフの一人として井上泰幸の名前があったのだが現役当時は誰も気が付かなかったろう。 ラドンやモスラ、そしてゴジラ・・、すべての怪獣に彼の手が入っていたことを知ったのはずっと後だ。 当時の怪獣たちはリアルそのものだった。 今みると安っぽさはあるがリアルとは違う存在感が迫ってくる。 モノとしての模型はホンモノとは違うオーラが出ている。 終章に「岩田屋ミニチュアセット」が展示されていたが映像に撮られた以上に圧倒感が押し寄せてくる。
□TokyoContemporaryArtAward2020-2022受賞記念展,藤井光&山城千佳子
■どういう賞だか知らない。 藤井光の作品はそれ自体は面白くないが背景を知ると興味深い。 「・・戦後、日本人絵画をめぐる議論をアメリカ占領軍が残した公文書から考察する」作品である。 特に占領軍の音声が状況を教えてくれる。 ただし本物の絵画は展示していない。 絵画を梱包した木枠?がずらっと並べられてあるだけである。
山城千佳子は数本の映像を上映していたが「肉屋の女」を選んで見る。 沖縄の肉屋の話である。 豚肉を切り刻み、食い、海に浮かばせる・・。 人間の本能に近い何かが滲み出てくる映像である。 彼女の作品は何本か過去にみているがいつも沖縄の歴史をジューシーに語ってくれる。 今回は肉汁としてである。
□MOTコレクション,光みつる庭/途切れないささやかき
■第一部「光みつる庭」には作家10名前後の絵画が並べられている。 広い空間で気持ちよく見ることができた。 最初の中西夏之が印象に残る。 第二部「途切れないささやき」の多くは過去に出会っている。 どれも忘れられない作品である。 船越桂、クリスチャン・ボルタンスキー、アピチャッポン・ウィーラセタクンなどなど。 会場は独特な空気が流れていた。