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7月, 2017の投稿を表示しています

■AMBIENTー深沢直人がデザインする生活の周囲展-

■汐留ミユージアム,2017.7.8-10.1 ■深沢直人がデザインした家具や電気製品、食器はその周りに「いい雰囲気を醸し出す」力がある。 だから奇を衒わないデザインが多い。 これが「究極の普通」つまり「スーパー・ノーマル」ということになるのね。 彼は落ち込んだ時に高浜虚子「俳句への道」からヒントを得たらしい。 そこにある「客観写生」は身体も思考も自然としての対象に含めてしまう見方かしら? 彼が火鉢のような模型にあたる姿は絵になっていた。 絵になることは道具と人の関係が良好と言える。 お互いが自然体で接しているということ。 天井から下がっている丸い電灯も同じよ。 月が浮かんでいるようだわ。 これこそスーパー・ノーマルね。 そして壁掛式CDプレーヤーの紐を引っ張るのも楽しいわね。 これがボタンスイッチだと絵にならない。 「生活の周囲」は絵になるかどうかで決まりね。 でも個室のような会場には周囲が無かった。 生活の周囲は想像してくれと言うことね。   *館サイト、 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/170708/index.html

■不染鉄-没後40年幻の画家-

■東京ステーションギャラリー,2017.7.1-8.27 ■変わった名前不染鉄は一度聞けば忘れない。 でも作品は見た記憶がない。 チラシの富士山を眺めていたらギャラリーへ行きたくなってしまった。 そんな訳でいそいそとでかける・・。 展示は1章「郷愁の家」で始まる。 青春時代から思い出に浸っていたような作品が並んでいる。 しかも大正時代のセピア色である。 次の2章「憧憬の山水」では墨画を取り込んでいる。 山河でやっと開眼したようにみえる。 白黒をはっきり描き出している「冬」「雪景山水」(1935年頃)は気に入った。 そして3章「聖なる塔・富士」)で再度対象が移動する。 ここでチラシの富士山に出会う。 <俯瞰と接近>を同時に描いていて面白いが感動は少ない。 4章「孤高の海」は展示一番の出来である。 海の波がいい。 「南海之図」(1955年頃)は波と岩石の抽象化した繰り返し模様がリズムを奏でていて心地よい。 そして5章「回想の風景」は再び青春時代の思い出に戻っていく。 「芸術はすべて心である。 芸術修行とは心をみがく事である」と彼は言っている。 それにしても心寂しい情景が多い。 家々から漏れる光には人々の生活がみえない。 不染鉄の回顧展は21年前に一度あっただけらしい。 彼は心を磨けたのだろうか? 作品を見た限りでは磨き過ぎのようだ。 *館サイト、 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201707_fusentetsu.html

■吉田博展-山と水の風景-

■損保ジャパン日本興亜美術館,2017.7.8-8.27 ■吉田博の版画は見たことがある。 でもこの展示会で初めて全体像を知ることができた。 米国旅行で成功したのは小山正太郎に弟子入りして切磋琢磨した結果だとおもうの。 それに湿度ある日本風景は東洋の神秘的な雰囲気を持っているから受けたんじゃないかしら? ここで「三四郎」が登場するとは驚き! 「ヴェニスの運河」を美禰子や三四郎といっしょに観た気分がしたわ。 そして日本アルプスの山々はG・セガンティーニを連想してしまう。 作品に漂う空気の希薄さが同じだからよ。 関東大震災前後から木版画に入っていくけど米国での評判も加味しているのはさすが。 でも版画にのめり込むほど油絵は雑になってきているようね。 水彩画や油絵の自身の持ち味を全て版画に注ぎ込んだ為かもよ。 摺数も極端に多くなっていることで分かる。 ケンジントン宮殿執務室のダイアナ妃の写真も楽しい。 W・ターナーとは違った大気や光だから気分転換に効き目がありそうね。 それにしても米国や欧州、印度や中国での作品をみると旅の楽しさが出ている。 最初の旅行で自信が持てたのね。 太平洋画会の設立を含め彼の行動力に脱帽! *館サイト、 http://www.sjnk-museum.org/program/4778.html

■川端龍子-超ド級の日本画-

■山種美術館,2017.6.24-8.20 ■代表作と木版、俳句などで川端龍子の全体像が簡素にまとめられています。 彼は1907年(22歳)洋画家の道へ、1913年(28歳)日本画に転向、1928年(43歳)画壇から離れ「青龍社」を設立し独自の道を歩みます。 「・・多くの人々に展覧会の場で身近に鑑賞できるようにする」と言う彼の「会場芸術」は時代の先取りをしていますね。 初期には質量感ある光や空気、燃えるような草花を描いています。 しかし筆致は時代とともに変わっていく。 1930年前半の作品群が気に入りました。 微妙な色合いの淀んだ水と淡水魚としての存在感が出ている「鯉」(1930年)。 トビウオの目が面白い「黒潮」(1932年)。 東南アジアの自然と女性の大らかな空気が伝わってくる「羽衣」(1935年)等々をです。 それにしても30年代の筆のバラエティは素晴らしい。 そのまま戦争に突入しますが妻や子供の死も重なり戦後の作品は見えなくなってしまった。 展示数が少ない為もあります。 彼は1910年代に出版社で子供向けの表紙絵などを描いています。 その巧さは「花鳥双六」(1917年)をみてもヒット商品を予感させます。 戦後の象花子を描いた「百子図」(1949年)にもそれが表れている。 「会場芸術」を考えたのも当時の仕事から社会をみる目を養った結果でしょうか?  没後50年記念特別展。 *館サイト、 http://www.yamatane-museum.jp/exh/2017/kawabata.html