■不染鉄-没後40年幻の画家-

■東京ステーションギャラリー,2017.7.1-8.27
■変わった名前不染鉄は一度聞けば忘れない。 でも作品は見た記憶がない。 チラシの富士山を眺めていたらギャラリーへ行きたくなってしまった。 そんな訳でいそいそとでかける・・。
展示は1章「郷愁の家」で始まる。 青春時代から思い出に浸っていたような作品が並んでいる。 しかも大正時代のセピア色である。 次の2章「憧憬の山水」では墨画を取り込んでいる。 山河でやっと開眼したようにみえる。 白黒をはっきり描き出している「冬」「雪景山水」(1935年頃)は気に入った。 そして3章「聖なる塔・富士」)で再度対象が移動する。 ここでチラシの富士山に出会う。 <俯瞰と接近>を同時に描いていて面白いが感動は少ない。 4章「孤高の海」は展示一番の出来である。 海の波がいい。 「南海之図」(1955年頃)は波と岩石の抽象化した繰り返し模様がリズムを奏でていて心地よい。 そして5章「回想の風景」は再び青春時代の思い出に戻っていく。
「芸術はすべて心である。 芸術修行とは心をみがく事である」と彼は言っている。 それにしても心寂しい情景が多い。 家々から漏れる光には人々の生活がみえない。 不染鉄の回顧展は21年前に一度あっただけらしい。 彼は心を磨けたのだろうか? 作品を見た限りでは磨き過ぎのようだ。
*館サイト、http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201707_fusentetsu.html