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1月, 2018の投稿を表示しています

■クインテットⅣ、五つ星の作家たち

■出品作家:青木恵美子,竹中美幸,田中みぎわ,船井美佐,室井公美子 ■損保ジャパン日本興亜美術館,2018.1.13-2.18 ■中堅作家5人の企画展です。 年代が近づくに従って作品の出来が良くなっているのがわかる。 昨年2017年の作品が一番です。 さすが上り坂の作家たちですね。 例えば青木恵美子では「INFINITY」シリーズが、田中みぎわの「玉響」「呼び声」特に「波間の子守唄」(4枚)は空気感にも張りがある。 室井公美子の「Shadow」以降は立体感が加わり見応えがあります。 また竹中美幸の35mmフィルムを使った作品は気に入りました。 中でも「titles2017-2」は黄緑っぽいフィルムが竹林のようで面白い。 船井美佐は新作が2点だけなのでなんとも言えない。 でも全作品を一部屋に集めると爽やかさが広がりますね。 「具象と抽象の狭間」というテーマは分かり易いので作品と繋げることができました。 名前を知らない作家たちを手頃な規模でまとめて観るのは楽しいものです。  *館サイト、 http://www.sjnk-museum.org/program/5165.html

■DOMANI・明日展-寄留者の記憶-

■出品作家:雨宮庸介,猪瀬直哉,田中麻記子,中谷ミチコ,中村裕太,西尾美也,増田佳江,mamoru,三宅砂織,盛圭太,やんツー ■国立新美術館,2018.1.13-3.4 ■「新進芸術家海外研修」を終えて日の浅いフレッシュマン11人の作品展なの。 絵画・彫刻・陶芸・メディアなど多義にわたるけど油絵がとても良かった。 田中麻記子の「PORTRAIT」の5枚、増田佳江の6枚、猪瀬直哉の何枚かが。 それと盛圭太の糸を使った作品かな。 でも副題との関係は分かり難い。 面白かったのは西尾美也の服の交換ビデオ。 道で行きかう他者と服を交換して記念写真をとるパフォーマンスよ。 あなたは見ず知らずの人と服を交換できる? そして最後の中谷ミチコは最高。 透明樹脂を型に流し込んで平面彫刻のような作品にしているの。 不思議で深みのある視覚感覚が持ててとても新鮮よ。 ところで雨宮庸介は一所懸命作品を作っていたけど出来たかしら? *館サイト、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/20thdomani/

■石内都、肌理と写真

■横浜美術館,2018.12.9-2018.3.4 ■石内都の全体像をみることが出来る展示会です。 「横浜」「絹」「無垢」「遺されたもの」の4章17シリーズから構成されている。 後の3章は断片ですが時々みています。 「横浜」は初めてですね。 でも、その「横浜」は若さだけで撮っています。 作品内に看板文字や人影が写っていると読み込んでいくことができる。 しかし無文字無人の建物や廃墟の作品はどうしようもない。 直球で押し切っています。 「絹」へ来て世界が広がります。 絹の質感が何とも言えない。 光り輝いている素材の素晴らしさを発見できます。 しかも絹は昭和と大正時代を連れてくる。 それは衣服となりそのまま皮膚へ向かいます。 皮膚は再び時代に帰っていく。 行き来する時間が作品にこびり付いていくのです。 肌理という言葉が見事に作品を表していました。 *展示会サイト、 http://yokohama.art.museum/special/2017/ishiuchimiyako/ *「このブログを検索」欄に入れる語句は、 石内都

■横山大観展-東京画壇の精鋭-

■山種美術館,2018.1.3-2.25 ■この美術館は会場が狭いので混んでいると落ち着いて観ることができない。 しかも地下へ降りていく階段が広いのでアンバランスにもみえる。 (作品搬入出の為かな。) ロッカーやトイレも狭い。 喫茶店も迫り窮屈を感じる。 ・・都心の美術館に無理を言ってもしょうがない。 久しぶりの横山大観に浸る。 今回気に入ったのは「作右衛門の家」「喜撰山」。 しかしいつ見ても大観の絵は漱石の言うとおりだ。 「間の抜けた、無頓着な、・・」*1。 大観は言う、「写生とは、その裏に潜むモノの精霊を表現するためにある」。 彼の絵はこれと格闘した連敗跡にみえる。 意識を向けたら精霊は消えてしまう。 気に入った2枚と「霊峰不二」は意識を押さえて精霊が現れている。 *1、 「横山大観展」(横浜美術館,2013年)  *館サイト、 http://www.yamatane-museum.jp/exh/2018/taikan.html

■神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展

■Bunkamura・ザミュージアム,2018.1.6-3.11 ■昨年の「 アルチンボルド展 」は強く印象に残ったことを覚えている。 アルチンボルドを通してルドルフ2世がどのような人物か?ハッキリと見えたからである。 今回はルドルフ本人の展示会だからその先へ行けるのかと期待したが、残念ながら外れた。 展示されている作品をみてもルドルフの世界観が断片的にしか見えない。 作家たちはルドルフから命じられた内容を描いているだけにみえる。 アルチンボルドのようなディレクター能力が無いのかもしれない。 それをただ並べていてはルドルフから遠ざかるだけである。 「驚異の部屋」の圧倒的迫力を会場で体感できたら最高だったのだが・・。 *館サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_rudolf/

■IS YOUR TIME,設置音楽2  ■オープン・スペース、未来の再創造

■NTTインターコミュニケーション・センター(ICC),2017.5.27-2018.3.11 ■IS YOUR TIME,坂本龍一with高谷史郎 ■「 坂本龍一、設置音楽展 」の第二弾で、ワタリウム美術館と同じ高谷史郎とのインスタレーションである。 大きな暗い部屋の壁周囲に十数台のスピーカと画面、奥に自動ピアノが置いてある。 音楽も空間もシンプルになっている。 東日本大震災で「近代を象徴する楽器を自然が物に返した」その後の一息ついた間奏曲風の感じがする。 それは年末に観た「 Ryuichi Sakamoto:CODA 」のその後でもある。 彼の音楽を越えた活動意欲は今年も衰えていない。 *館サイト、 http://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2017/sakamoto-ryuichi-with-takatani-shiro-installation-music-2-is-your-time/ *2018.3追記。 「津波ピアノ-坂本龍一と東北の7年-」NHKテレビでみる。 展示会の全体像が掴めた。 *NHKサイト、 http://www4.nhk.or.jp/P4785/x/2018-03-10/21/3529/2625207/ ■オープン・スペース2017,未来の再創造 ■出展者:ユェン・グァンミン,徳井直生+堂園翔矢,スグウェン・チャン,慶応義塾大学松川昌平研究室,鳴川肇研究室ほか ■展示サイクルが長いので1年以上も足が遠のいていた。 久しぶりに見て回る。 グレゴリー・バーサミアンの「ジャングラー」以外は初めての作品ばかりだ。 面白かったのはユェン・グァンミン「エネルギーの風景」。 これはドローンを飛ばして風景を低速度で撮影していくものだが、ゆっくりした動きを見ていると瞑想しているような感覚が得られる。 今は素人レベルだが技術的に向上すればより面白くなるだろう。 それと徳井直生+堂園翔矢「QOSMO」。 この予測系AI分野はもっと突っ込んでもよい。 鴨川肇の「オーサグラフ世界地図」は考案されて20年近く経つのに書店で見たことが無い。 今世紀に入り地図は断片化極小化されてしまったのだ。 しかし地図を持てば想像力を働かせて世界中を飛び回ることができる。 オーサグラフも手元に置いておきたい一つである。

■装飾は流転する

■出品者:ヴィム・デルヴォワ,ニンケ・コスター,山本麻紀子,山縣良和,高田安規子&政子,コア・ボア,アラヤー・ラートチャムルーンスック ■東京都庭園美術館,2017.11.18-2018.2.25 ■装飾とは何か? この展示は装飾を形容詞や副詞として位置付け作品本体の装飾性を感じ取ろうとしているのかしら? 7組のアーティストが出品しているけど先ず目にするヴィム・デルヴォワとニンケー・コスターは充実感が迫って来る。 作品に塗られている装飾性が光を放っているからだとおもう。 つまり装飾を感じるには本体のマッスが必要と言うことね。 例えば2階へ上って次に目にする山縣良和は装飾しかみえない。 楽しいけれど形容詞の塊のような作品だわ。 高田安規子&政子は作品が凝縮しているから装身具に近づいていく。 本体=名詞と装飾=形容詞が融合した装飾品のようにみえる。 そして最後にみたアラヤー・ラートチャムルーンスックの映像は凄い。 遺体安置所の花柄布を覆った死者たちの横で作者がタイ古典文学「イナオ」を詠唱するの。 これを見て日本の葬儀を思い出してしまった。 装飾とは死者を弔うために出現したのだとようやく分かった。 装飾とは何か?をいろいろ考えたので正月ボケが抜けたかな・・。 そして今回は各部屋を別の方向から眺めることができて楽しかったわ。 例えばバスルームは窓側から見ることができたし、普段閉じている窓も開いていて外の景色を楽しむことができた。 *館サイト、 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/171118-180225_decoration.html

■池田重子、横浜スタイル展

■そごう美術館,2017.12.13-2018.1.8 ■展示会チラシのコクのある色柄に目が留まり実物を観たくなって横浜へ足を運びました。 KIMONOの展示です。 等身人形に着付けした着物は素人にも入り易いですね。 池田重子は着物の製造過程から入っているのかと思っていたのですがその比重は小さいようにみえる。 収集家ですか。 これは彼女のコーディネート展示会です。 会場の解説に「50歳過ぎに、ある帯留をみて身震いしたのでこの道に入った・・」と書いてある。 いやー、凄い人だと感じました。 これで帯留もしっかり見てきました。 作品タイトルの付け方も面白い。 柄で4つに分けているようにみえる。 具体的な帯柄と抽象的な着物柄、その逆の抽象と具体、抽象と抽象、具体と具体です。 もちろん具体と抽象が一番多い。 分かり易い例だと帯に歌舞伎役者の似顔絵があれば着物柄は歌舞伎座の縦じま緞帳を持ってくる等々です。 抽象と抽象は同季節を重ね合わせる場合に使う。 全体的な色彩は彼女の感性でしょう。 「横浜で生まれた美意識」とあったが江戸と横浜が拮抗しているハイカラとでも言うのでしょうか? 彼女の私室写真が飾ってあったが中国風にもみえて混乱しました。 でもさすが横浜ですね。 正月を華やかにする展示会でした。 ついでにそごう横浜店内をうろうろと見物し食事をしてきました。 *館サイト、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/17/ikeda_shigeko/index.html