投稿

4月, 2021の投稿を表示しています

■アイノとアルヴァ、二人のアアルト  ■驚異の三人、高松次郎・若林奮・李禹煥  ■追悼、安齋重男

■世田谷美術館,2021.3.20-6.20 □アイノとアルヴァ二人のアアルト ■1年前の「 アルヴァ・アアルト、もう一つの自然 」展は印象が薄かった。 その理由が分かりました。 二人のアアルトが揃わなかったからです。 今回の展示は、二人でアアルトの全体像を語っています。 会場は豊かな建築関連作品が一杯で満足しました。 ・・リビング、ダイニング、キッチンは中産階級家庭の匂いがする。 豪華でもなければ貧弱でもなく一言でいうなら機能実用的でしょう。 そこにイタリアの影響が混ざり合って精神がより高まる。 木材加工を曲げる技術が家具に入り込んで身体と自然が直に繋がるのもいいですね。 自然を装飾にしたのがバウハウスとの違いかもしれない。 二人が言う「暮らしを大切にする」ことが人生を楽しくする一番です。 *美術館、 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00202 □驚異の三人!!高松次郎・若林奮・李禹煥 ■高松次郎のの「アンドロメダ」シリーズは線と色が波のようなリズムになって身体を刺激し脳味噌を喜ばしてくれます。 *美術館、 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00110 □追悼,安齋重男 ■写真家でした。 上記の李禹煥(リ・ウーハン)との出会いからカメラを持ったようです。 ポートレートはイサム・ノグチ、ヨーゼフ・ボイス、滝口修三などを展示。

■片山利弘、領域を越える造形の世界  ■スカルプチャーズ、彫刻となる場所

■武蔵野美術大学美術館,2021.4.5-6.20 □片山利弘,領域を越える造形の世界 ■「片山利弘の全貌を紹介する初めての展示」とチラシに書いてあった。 彼の名前を聞かないのは海外の仕事が多かったこともある。 日本での本格的な仕事は1980年代からだ。 展示は4期に分けられる・・ 第1期 日本での(初期の)仕事(ー1962) 第2期 スイスでの仕事(ー1966) 第3期 アメリカでの仕事(ー1995) 第4期 領域を越える活動(1977-2013) スイス時代のコラージュ作品から片山独自の形態が登場する。 金属結晶を画像処理で拡大したような精密画が並ぶ。 数学の影響も感じられるが、当時はコンピュータも発達していない。 語学不足のため仕事に制約があったと言っているが、それだけ狭く深く研究していたのだろう。  アメリカ時代はグラフィックを引き続き発展させトポロジーなどを取り入れている。 同時に温かみの有る作品もでてくる。 どれも「Less is more」に向かっているのは確かだ。 第4期に入ると物を扱う作品が多くなる。 それは抽象から具体への流れでもある。 建築装飾や公園設計、彫刻、舞台美術、文房具などに広げていく。 この中で気に入ったのはキャンバスに糸を張ったミクストメディア。 純粋美術に近い作品群だが緊張と弛緩が混ざり合って何とも言えない感覚が訪れる。 同時代の田中一光は展示会などでみていたが、こんかい片山利弘を知って日本のグラフィックデザイナーたちの位置関係がまた少し分かった。 *館サイト、 https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/16441/ □スカルプチャーズ,彫刻となる場所 ■作家:戸谷成雄,船越桂,伊藤誠,青木野枝,三沢厚彦,西尾康之,棚田康司,須田悦弘,小谷元彦,金氏撤平,長谷川さち ■11人の作家が5点前後の作品を展示する内容。 素材や技法、作風は皆違う。 タイトルにあるように作品間の場所の関係性などを考慮しているようだが、どれも傑作ぞろいで気楽に観て回った。 *館サイト、 https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/16432/

■モンドリアン展、純粋な絵画をもとめて

■SOMPO美術館,2021.3.23-6.6 ■モンドリアンの全体像を知ることができた。 会場構成は、ハーグ派様式→象徴主義・神智学傾倒→キュビズム影響→コンポジションの流れかな? 特に初期作品の風景画40点が充実していたようにみえる。 作者の考え抜いた痕跡が風景に現れていて久しぶりに見応えを感じたわよ。 後半はモンドリアンが唱えた「新造形主義」を雑誌「デ・ステイル」で展開したことが述べられているの。 「コンポジション」は過去の表現を積み重ねてできていると思う。 メンバーが要素主義を提唱した時にステイルから彼は脱退したのも頷けるわね。 斜線だけの問題ではなかったはず。 でも年を追うごとに作品に多くを詰め込み過ぎてしまった。 未来を詰め込もうとした初期風景画が過去を詰め込んだ後期抽象画より面白い理由がこれね。  会場は若い人が多かったけど美術系学生かしら? ところでキャプションの説明文は読み応えがあったわよ。 的確な言葉で作品と密に繋がっていて刺激的だった。 *生誕150年記念展 *館サイト、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/mondrian/

■渡辺省亭、欧米を魅了した花鳥画  ■小村雪岱スタイル、江戸の粋から東京モダンへ

■東京藝術大学・大学美術館,2021.3.27-5.23 ■三井記念美術館,2021.2.6-4.18 (タイトル順) ■二人の名前は聞いたことがない。 ということで先ずは芸大へ出かけました。 渡辺省亭(せいてい)は美術展や美術団体から距離を置いていたようです。 名前が広がらなかった理由でしょう。 省亭の師匠は菊池容斎。 容斎の指導は書道と写生を徹底したそうです。 「書道は、・・筆の運びが自由自在になる」。 特に動物画にそれが野性味として現れている。 この味が「欧米を魅了した」のかもしれない。 植物画や人物画はそれを抑えていますが。 美人画は一度みたら顔は忘れない。 独特な顔形です。 指形が変わっている。 でもなかなかでした。  単眼鏡は必須。 さて次は、上野から日本橋へ・・。 小村雪岱(せったい)は江戸っ子ですね、生まれは東京っ子ですが。 彼の着座の写真をみても分かります。 肉筆画もあるが木版画・装丁・挿絵・舞台美術など多岐にわたりデザイン分野が得意のようです。 溝口健二監督の美術を担当していたのは古映画ファンとして嬉しい。 それ以上に舞台美術を手掛けたことは演劇ファンとして最高です。 作品はどれもサッパリしている。 コクが無いのはヨクが無かったのでしょう。 省亭とおなじ主流派から外れていたのも理解できます。 *東京藝術大学・大学美術館、 https://seitei2021.jp/ *三井記念美術館、 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

■ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男ピエール・カルダン

■監督:P・デヴィッド・エバーソール,トッド・ヒューズ,出演:ピエール・カルダン,ジャン=ポール・ゴルチエ,シャロン・ストーン他 ■WEB配信,(アメリカ・フランス,2019年作) ■ピエール・カルダンが持つ違和感の答えをみつけた。 師匠ディオールから離れた新未来派のようなデザイン、どこかパゾリーニ監督に似ている容姿や性格、そう、彼の身体には20世紀イタリアが染みついていたのだ。 オートクチュールからプレタポルテへ、メンズへ、家具へ、貴金属へ、パリから飛び出ることができたのはイタリアの力だと思う。 作品が冷たい印象を与えないのはイタリアの情熱だと思う。 カルダンは子供の時から演劇に憧れていたらしい。 コクトーやマレーとの付き合い、モローとの同棲、劇場や映画館の開設、・・こうなると支離滅裂だが。 そして当時の映画、たとえばヌーベルバーグでさえ今から振り返ると彼の影響があったことを感じる。 このドキュメンタリーはなんと!カルダン自身が登場しフィルムが進んでいく。 既に98歳だがしっかりしている(昨年末に亡くなってしまったが)。 さすが!「未来をデザインする男」だ。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93369/