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6月, 2012の投稿を表示しています

■トーマス・デマンド展

■東京都現代美術館,2012.5.19-7.8 ■会場は紙の模型で一杯だとおもいながら行ったらなんと写真展だった! 実物そっくりの模型を作りそれを写真に撮って展示しているの。 夢のなかで眠っていてそこで又夢をみている、SF小説や映画によくある構造よ。 芝居でいうと劇中劇ね。 この構造は二つのことを反省的に考えてしまう。 一つはリアルとは何か、もう一つは物語とは何かをね。 だからデマンドもこの答えを作品に取り込む為に腐心しているわ。 ひとつは高感度特殊カメラを使うこと。 実物そっくりの模型を撮る時は、これを使わないとリアルに到達できない。 もう一つは物理学を正確に導入すること。 コンピュータ等を駆使して模型の質量や位置や速度を把握しないとリアルにならないの。 <リアル>を獲得した時、そこに<物語>が生まれる。 美術の世界でリアルを獲得すると違和感不思議感と同時に物が有機的に変化し物語が成長していくの。 物語の故郷はリアルでリアルの故郷は観客の身体だから。 *館サイト、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/134/

■田渕俊夫展ーいのちの煌めきー

■松濤美術館,2012.6.5-7.22 ■ナイジェリアへの旅ではゴーギャンを思い出すような作品ですね。 しかし70年代に入って描かれた植物の間からは幽霊が登場しそうな雰囲気です。 チラシに書いてある「生命のたくましさ」は感じられません。 雑草類の絡み合いは神秘性が漂っていますがこれも徐々に作品から失われていきます。 そして名古屋やベトナムの都市風景へ行き着くのですがしかし面白い作品とはおもえません。 ところで機内からみた地上の風景画は、いつも羽田空港が見えなくなるまで見続ける<絶対窓側席でなければ嫌!>の人には嬉しい作品ですね。 今の時期、日本上空は水分たっぷりの白雲と真っ青な夏空。 窓側席派には居ても立っても居られません。 会場最後の室の水墨画は一度初心に戻って生命を描き直す作業にみえました。 「緑溢れる頃」は薄桃色の夕焼、「爛漫」の桜は満開です。 自然が戻ってきたようです。 *館サイト、 http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/152tabuchitoshio/

■アラブ・エクスプレス展

■森美術館、2012.6.16-10.28 ■ http://www.mori.art.museum/contents/arab_express/index.html ■アラブ世界と言えば砂漠、石油、宗教、戦争が頭に浮かぶはずよ。 これは日本のフジヤマ、ゲイシャと同じだとこの展示会は言っているの。 でも「神の御名において止めよ」では汝の敵を隣人を愛せと言っているのにデモや戦車の映像ばかり。 ムニーラは「ラワーンの歌」の中でわざわざ戦争の話はしないと言っているのは日常が戦争状態なのよ。 もちろんアラブには十数ヶ国もあるから一緒くたにはできないけど。 そして美術の位置づけがまったく見えないから美術展というよりアラブ生活展ね。 四つん這いになって街の中を歩き、これを見た市民が抗議をしている映像作品があったけどやはり宗教?の影響は想像以上よ。 他作品をアラブの人々はどうみているかもっと知りたいわ。 会場をあとにしても結局は砂漠、石油、宗教、戦争しか残らなかった。 というよりこれらがごちゃまぜになっちゃったの。 どうしましょう?

■吉川霊華展

■東京国立近代美術館、2012.6.12-7.29 ■ http://www.momat.go.jp/Honkan/kikkawa_reika/index.html ■スケッチ集をみると漫画家の下絵のようである。 漫画は線だから吉川は手塚治虫の先駆者といってもよいかもしれない。 線の滑らかさはみていても気持ちがいい。 女性の描き方も美人というより自然の美しさがある。 だが人物を除き、樹木などの植物はぎこちなさが所々みうけられる。 自分の眼で自然をあまり観察しなかったのだろう。 物語は描いたが背景に描くものがなくなり余白ができてしまった。 そこで書で背景を埋めるという方法を取った、という感じだ。 20年代後半の線に滑らかさがなくなったのも書を優先させようとした為では? 気に入ったのは素直さが一杯詰まっている「稚児文殊」など00年代の初期作品。 

■琳派・若冲と雅の世界

■そごう美術館,2012.5.26-7.16 ■「 都の遊び・王朝の美 」の続きで雰囲気も同じです。 タイトルの琳派と若冲に焦点をあてています。 其一の子守一を初めて見ました。 下手ですね。 やはり子供です。 若冲の子若演は上手いですね。 つまり作品から判断すると若演は子にはみえません。 若演は赤の他人です。 ところで有名画家の割には渋い絵の多いのがこの細見美術館の特徴ようです。 蔵の中に入ってみているようです。 *京都細見美術館所蔵Part2 *美術館、 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/12/0526_hosomipart2/

■ベルリン国立美術館展

■国立西洋美術館,2012.6.13-9.17 ■15世紀以降のイタリアと北方美術を比較できるようになっているようね。 副題「学べるヨーロッパ美術の400年」のとおり会場は勉強を強いられる雰囲気が一杯。 それは作者と作品が散らばっていて集中すべきところがわからないから。 絵画と彫刻は混ざり合っているし、彫刻は木、石膏、大理石、ブロンズと多彩、そしてトドメは素描。 エントロピーは増大しっぱなしね。 15世紀前後の木製の聖母とそれを囲む人々の像が多かったけど当時の北方庶民の好みがわかるわ。 ジックリみると味があるけど頭が疲れる展示会ね。 でもベルリンはいつもこうなの。 ボーデ博物館の前で疲れてしまい運河の深緑の水を眺めていた暑い夏のベルリン旅行を思い出してしまったの。 *美術館、 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/past/2012_233.html

■紅型

■サントリー美術館,2012.6.13-7.22 ■紅型を初めてまじまじと眺めた。 「黄色地鳳凰蝙蝠宝尽くし・・」は鮮やかな黄色が、花の蜜を吸っている蝙蝠のつぼめた口元が面白い。 柄と柄の間が離れすぎているところに南の海や空を思い出させてくれる。 それにしても蛇はみなかったな。 青系統の地は想像以上に濁っている。 色落ちしてしまったようだ。 残念。 子ども着も何点か出品されていた。 子供時代に鮮やかな色と形に囲まれていると感性が豊かになるだろう。  しかし紅型は王族貴族階層の衣装らしい。 ビデオ「紅型の作り方」を観たが膨大なテマヒマをかけてできている。 多くの人にとっては今も昔も観賞だけのものである。  *美術館、 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2012_03/index.html

■マックス・エルンストーフィギアxスケープ-

■横浜美術館,2012.4.7-6.24 ■作品を前にするとマックス・エルンストだとわかるけど、観終わったら忘れてしまう画家だった。 でも今回はジックリ観たの。 フロッタージュ、グラッタージュ、デカルコマニーは新しく覚えたけど今までの記憶にあるエルンストはこれだったのよ。  でも新しい発見はコラージュ・ロマンよ。 「百頭女」、「カルメル修道会・・」、「慈善週間・・」や「完全な歌」などとても演劇的ね。 ひさしぶりに作品の前で想像力が羽ばたいた。 コラージュ自体が現代演劇に深く関与しているからよ。  またL・ブニュエルの「黄金時代」に出演していたとは驚きだわ。 そして「彫刻は両手を使う。 愛撫のときと同じように・・」と言っているけど思った以上にエルンストは身体重視なの。 ところで展示会の副題が「フィギュアxスケープ」だったけど意味不明ね。  *館サイト、 http://yokohama.art.museum/special/2012/ernst/index.html

■ルーヴル美術館の秘密

■監督:ニコラ・フィ リベール ■(フランス,1990年作) ■ルーヴル美術館で働く人々を撮っています。 職員は1200名。 消防士や看護婦もいるようです。 彼らの一番の仕事は資料管理です。 作品数は30万点ですから。  資料の取り扱いは雑にみえます。 職員もオットリしていますね。 これでも組織の階層と指示系統が明確化されているので職務が回るのでしょう。 日本の事務効率の悪さの原因が逆に浮かび上がります。   日常の裏側を見ることができてルーヴルが少しですが近くなりました。 ところでタイトルに秘密を付けるのは大げさです。 *映画com、 https://eiga.com/movie/52060/

■中世人の花会と茶会

■根津美術館、2012.06.2-7.16 ■ http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html ■こんなの観に行くより茶会に出席しなきゃ! ところで「無一物」は軽さが有り赤黄土の色が音として響いてくるような作品。 形や寸法は女性ならちょっと大きいわね。 

■福田平八郎と日本画モダン

■山種美術館、2012.05.26-7.22 ■ http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html ■会場入口の「筍」をみて福田繁雄を思い出してしまいました。 形からくるユーモアがあるからです。 「漣」は川面を長時間眺めていると暗示にかけられたように自然に溶け込んでいく時の感じですね。 気に入った作品は1930年中頃の「游鮎」や「花菖蒲」。 この時期の作品が一番です。 彼は色を優先しているようです。 しかも「マッチ棒を6本上からばら撒いたのが鮎の位置である」と言っているように偶然や自然に囚われすぎています。 一部作品で空間の捉え方にぎこちなさがあるのはこの為です。 前半は福田の22作品、後半は日本画モダンと称して他画家46作品が展示されています。 山口逢春の戦後の3点が印象に残りました。 「とう上の花」「夏の印象」「卓上」です。 青系統のすっきりした構図で初夏に相応しい作品でした。