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■百花繚乱  ■花鳥の美

■山種美術館、2011.4.27-6.5 ■ http://www.yamatane-museum.jp/doc/exh/110427jp.pdf ■散歩がてら覘くのにちょうどよい作品ばかりです。 小林古径と奥村土牛が交互に飾ってあります。 比較して観るのは初めてです。 古径の古伊万里があるとピーンと空気が張ります。 これで土牛のガーベラやチューリップのソフト感がとても生きていました。 しかし古径の「白華小禽」の泰山木は頂けません。 庭に泰山木があるので毎日見ているのですが、毎日何気なしにみることで植物の心がわかってくるようです。 作品に良し悪しがあるのは草木を日常生活として付き合っているか?時として感動してみることができるか?の二点だとおもいます。 今回は館自慢の速水御舟と酒井抱一が多いようでした。 収穫は趣が違う西田俊英の、初めてみたのですが「華鬘」です。 ■花鳥の美 ■出光美術館、2011.4.23-6.19 ■ http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/point.html ■山種美術館と同じ日比谷線のため寄り道しました。 こちらは重たいですね。 山崎と出光の違いですかね。 散歩のついでにとはいきませんでしたがしかし、中国陶磁器の花鳥をジックリ観てきました。 連休の中、どちらの館も全て所蔵作品展だから入場料はワンコインくらいにしてほしいですね。

■白洲正子

■世田谷美術館、2011.3.19-5.8 ■ http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html ■白洲正子は未知なので行く前にCD「白洲正子の世界」を図書館で借りる。 メリハリのある文章を書くようだ。 美術館は混んでいた。 絵画では曼荼羅が半数を占めている。 山や月を背景に川・家そして参道を歩く仰山の人々が描かれている。 決して美しいとは言えない。 これらは見るより読むものに近い。 正子の文章も掲示されているので余計に読むことに傾く。 曼荼羅を自然界に拡張した「日月山水図屏風」は日本四季の言語化である。 これが彼女の選んだ絵画の到達点だったのでは? 彫刻では丸みのある古面、多くの坐像や十数点もの十一面観音像の膨よかな体付き。 彼女が手元に置いた勾玉、楕円球の鈴や蓮弁もそうだ。 これら丸みのある形は日本文化の基本型かもしれないが選択に無理が無いようにみえる。 絵画は何かの義務感で、しかし彫刻は好みで入ったように感じる。 著名人に囲まれ育った環境も影響しているのだろう。 五十台半ばで巡礼に出たのもこれらを統合したかったのでは? 「歩くことが宗教」と言っているが何かに追いかけられているような人だ。

■森と芸術

■東京都庭園美術館,2011.4.16-7.3 ■平地にあっていつも緑で覆われていて光を通さない深い場所が森。 日本の平地には雑木林しかない、そして森の多くは山そのもの。 日本には森が無いことがわかるわ。 作品を眺めていて違和感がある原因はこれよ。 岡本太郎の登場には驚き。 巌谷國士のお友達? でも縄文土器は落葉広葉樹林の生まれで深緑の森とは異質にみえるわ。 そして「もののけ姫」は山の物語、「赤ずきん」や「眠れる森の美女」は森の物語ね。 主人公の足の強さにこの違いがでているわ。逆にエミール・ガレの「草花文花器」は日本的なものから少しズレているけど、これがヨーロッパ人からみた日本との森の差異かも。カール・ブロスフェルト「芸術の原形」のトリカブトの芽やシダの葉などを見ていると下手な作品より面白い。 森の原点ね。 巌谷國士お得意のテーマが並び過ぎてまとまりが無かったけど楽しかったわ。 ところでゴーギャンは少年期にペルーで過ごしたことを知ったけど彼の謎がまた少し解けたみたい。 瀧口修造が生涯一度しか欧州旅行へ行かなかったこともね、関係ないけど・・ *館サイト、 http://www.teien-art-museum.ne.jp/archive/exhib/2011/mori.html

■ホンマタカシ、ニュー・ドキュメンタリー

■東京オペラシティアートギャラリー,2011.4.9-6.26 ■携帯も入れてカメラを数台持ち、PCの中は写真データで一杯の現代人ばかりだ。 作品は我がアルバムから引き抜いてきたような写真が多い。 今の素人写真家は最初から「ニュー・ドキュメンンタリー」なのでは? むろん意識などしていないが。 解説の「写真の横に文章を貼りつければ見方が大きく作用する・・」、「写真が伝える現実がいかに曖昧か・・」は当たり前だと答えるしかないだろう。 S・ソンダグの「写真とは何よりも一つの見方であり、見ることそれ自体ではないのだ・・」も一つの見方におもへる。 会場は写真専攻の学生らしき観客で賑わっている。 「美術手帖」が特集も組んでいる。 もちろん買わなかったが・・。 ホンマの写真はホンマに良いが、この流行りの凄さとは何か?誰か教えてくれ。 えっ!「美術手帖」に答が出てるって? じゃあ買うか・・ *美術館、 http://www.operacity.jp/ag/exh129/index.html

■レンブラント、光の探求闇の誘惑

■国立西洋美術館,2011.3.12-6.12 ■版画は疲れますね。 混んでいると他観客にも気を遣うし、作る側の時間や労力もそのまま伝わってくるようです。 ステートや紙質の違いを強調する解説にはナルホドと納得しますが身心からの感動は湧き出てきません。 途中の絵画がオアシスになります。  レンブラントの肖像画はいつもながら作品に漂っている16世紀?独特の感情が邪魔をしていて純粋世界へ行けません。 しかし衣服の色合いや輝きは素晴らしいですね。 中でも「音楽を奏でる人々」が記憶に残りました。 ところでチラシに「光と影の真の意味を再検討する」とありました。 残念ながら真の意味などわかりませんでした。 今回は局所変化を微分的な方法で捉えて近ずこうとしているようですが、真の意味の検討結果をHPにそろそろ出して欲しいですね。 *日テレ、 http://www.ntv.co.jp/rembrandt/

■夢に挑むコレクションの軌跡

■サントリー美術館、2011.3.26-5.22 ■ http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol02/index.html ■この美術館は常設展ってあったんだっけ? 開館50周年記念だから美術館の宣伝のはず、だから企画展はやり過ぎっ。 気に入ったのは江戸時代のガラスと陶器「薩摩切子藍色被船形鉢」、「色絵五艘船文独楽形大鉢」、 エミール・ガレの栓付瓶「葡萄」、イワタ・ルリの「NO.981204」の4点。 常設展レベルだからサントリービールのサービスぐらいしてくれっ!

■牛島憲之展

■松濤美術館,2011.4.5-5.29 ■初期の作品を初めて観る。 「芝居」(1927年)、「山の駅」(1935年)で彼が芝居と旅が趣味だったのがわかる。 「赤坂見付」(1940年)でスタイルが確定したと自身が言っているが、戦争が終わった1940年代後半が彼の絶頂期だとおもう。 「残夏」(1946年)は府中美術館に行くと時々みることができるが、これと同じ「炎昼」(1946年)と共に夏が好きでなければ描けない絵だ。 まだ車が少なかった頃の日本の夏のエッセンスが詰まっている。 1950年代からはヨーロッパの知識に侵され始めたようだ。 円錐、立方体、直線・・、対象への眼は冷静・知的になるが40年代の感性はもはやそこには無い。 70年代以降の「並木」シリーズは若い頃に戻ろうとしている想い出の作品だ。 牛島作品を年代順に観ることができてとても満足である。 ところでこの美術館は白井晟一作だと聞いたのでじっくり建物もみてきた。 独特な重厚さを感じる。 ただし周りの建物が密集していて全体を見渡せないのが残念である。 *館サイト、 http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/146ushijimanoriyuki/

■アーティスト・ファイル2011

■国立新美術館,2011.3.16-6.6 ■展示室に一歩踏み入れた時のいちばんの感動はクリスティン・ベイカーです。 躍動している立体感と色彩感が一瞬間停止しているような作品です。 「ペルセウスの筏」はまるで津波が押し寄せて来たような作品で迫力があります。 松江泰治の街の低空写真はジックリ見ていると面白さが膨らんでいきます。 東京のビルや家の俯瞰風景は決して外国に劣らないということを教えてくれます。 何が劣らないかというと増大するエントロピーの規則性です。 中井川由季の作品は女性陶芸家にしては珍しく大きく、物質量が黙って迫って来るところが気に入りました。 しかし全体をみると偶然の積み重ねから出てきたところで止まっている作品が多いですね。 それを作者のチカラと感性で必然に持っていけるかどうか!で、世界の今を表現できたか否かが決まるのではないでしょうか。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2011/af2011/

■HEROINES、ベッティナ・ランス写真展

■銀座・シャネルネクサスホール,2011.3.26-4.24 ■背景は薄灰色の壁や大きな石で統一、そして衣装は抑えの効いた色。 乳房のまわりの大理石色の肌に青い血管。 被写体とランスがより観る者の身近に来たようね。 写美*1との差異が素敵よ。 でもそれは表層のみで物語の大味な感は拭えない。 ランスの限界も見えてくるわ。 エルメス、ルイ・ヴィトン*2、そしてこのシャネル。 やっと揃ったのかな。 森美*3とは違ったフレンチ・ウィンドウがこれからは楽しみね。 *1、 「ベッティナ・ランス写真展」(写真美術館,2011年) *2、 「グサヴィエ・ヴェイヤン展」(ルイ・ヴィトン,2011年) *3、 「フレンチ・ウィンドウ展」(森美術館,2011年) *館サイト、 http://chanelnexushall.jp/program/2011/br_2011/

■ボストン美術館浮世絵名作展

■山種美術館,2011.2.26-4.17 ■150枚も前にすると江戸時代にどっぷり浸かることができます。 しかし、もはや江戸は別の国です。 顔・髪型・衣装・行事どれを取っても一世代前のパリやローマの遠さと同じです。 今回は鮮やかな色彩が注目されているようですが、場内はしっとりとしておりこれが江戸の色なのか?と感心しました。 蛍光灯でもなくローソクでもなく電球色の明るさです。 清長はポーズを取っているのがありありで、着物も重い感じがして硬直さがあります。 大人絵よりも「子宝五節遊」などの子供がいいですね。 そして、やはり歌麿は安心感があります。 「難波屋おきた」のような作品を見ると元気もでます。 この二人は、上松松篁と母親松園の違いと比べてしまいました。 松篁の生物の硬さと松園の生き生きらしい柔らかさです。 もう一人の写楽は表情が渋くて且漫画的です。 前者二人のワサビのような位置づけですね。 他に鳥文斎の品川、両国と隅田川、調布の玉川なども散策でき、観終わった後は味わい深い外国、江戸へ旅行をしたようでした。 *館サイト、 http://www.yamatane-museum.jp/exh/archives/exh110226.html

■芸術写真の精華、日本のピクトリアリズム珠玉の名品展

■東京都写真美術館、2011.3.8-5.8 ■ http://syabi.com/upload/3/350/seikachirashi.pdf ■会場に入ると風景写真がずらっと並んでいる。 絵画に近づこうとしている想いが伝わって来る。 見る者はなにか中途半端な感覚に襲われる。 写真の人物や風景からいつもの歴史や物語、生活がよくみえない。 とくに物の実存にせまるような静物写真は静物画以上にある種の不思議感がある。 この感覚はどこからくるのか? 部分引き伸ばしの人物像もそうだ。 やはり現実に存在していた事物が持っている力のようだが? ヴェリト、ベス単、ゴム印画、雑巾がけ、そしてデフォルマシオンなどなど・・。 専門用語が並ぶが解説や作品からなんとか意味は理解できる。 想いは現代に飛ぶ。 写真と言わずハードやソフトで処理するため画像と言う人も多い。 先日「写真は死んでいくのか」という記事を新聞で読んだが、ある写真家が物語の深さを論じて写真の復権を説いていた。 このような単純回帰なら「写真は死んでいく」と答えたい。 もちろんこの世から無くならないが。 写真の未来を考えてしまう展示会だった。

■戦場カメラマン渡部陽一&紙の魔術師太田隆司展

■森アーツセンターギャラリー,2011.3.12-4.3 ■「絆の情景」がテーマです。 太田の作品は色紙を切り貼りして日常よく見る、たとえば恋人や家族のいる、結婚式や葬式の風景を作りだします。 車が好きらしく有名なスポーツカーが必ずみえます。 渡部の戦場の子供たちはとても明るい笑顔を振り撒いています。 イラクやアフガニスタンでこのような笑顔の写真は驚異です。 両作品を前にするととても楽観的な人間関係しかみえません。 二人は趣味と職業がピタリと一致したのではないでしょうか。 これほど人生で幸福な結合はありません。 この結合が楽観的な作品を作り出しているのです。 *美術館、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/2011/

■フレンチ・ウィンドウ展

■森美術館,2011.3.18-7.3 ■デュシャンからの窓がキーワードよ。 フランスの窓って夢があるわ。 でも現代美術の最前線の割にはなにか古臭い! いい意味でオットリしてるのね。 日本の現代美術のピリピリ感とは違うわ。 この感じは東京が一極集中から来ているためなの? それともパリがグローバル化してるから? ところでヴェイヤン*1は2作品を出品。 「四輪馬車」はヒルズの正面玄関に屋外展示。 大きな折り紙で作ったよう。 躍動感が有って何故か歴史や物語を感じさせるところがとてもいいわ。 ・・黒色はちょっとねぇ。コレクターのアパルトマンの実物大の部屋も展示されているの。 応接室、寝室、お風呂場にはコレクションが一杯。 でも人の温かさが感じられなくて住みたいとはおもわない。 どういうわけか台所がないの。 親しみさが無い原因はこれかも。 ところで場内にある解説文は難解だけど分かり易くてとても想像力のある文章なの。 これで作品を観る目が大きく変わってしまうみたい。 だから自身の感想を頭の中で一度まとめてから解説を読むようにしたけど・・。 でき過ぎも良し悪しね。 *1、 「グザヴィエ・ヴェイヤン展」(ルイ・ヴィトン東京,2011年) *館サイト、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/french_window/