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■大エルミタージュ美術館展、世紀の顔・西欧絵画の400年

■国立新美術館,2012.4.25-7.16 ■エルミタージュ展は3年に一度は開催されていますね。 ロシアにもいい収入源になっているはずです。 でも400年の期間を集めたのはひさしぶりですか?  ルーベンスの2枚が気に入りました。 「虹のある風景」と「ローマの慈愛」です。 他にもダイク、ランクレ、ドラクロアなど数枚です。 目玉の「赤い部屋」はあまり良くないですね。 なんというかペンキ絵のようで。 平面的のため尚更です。 多くは小粒でしたがバラけていたので車窓から移り変わる景色を見ているようでした。 絵画の流れから湧き起こるリズムに乗れて楽しかったです。 *展示会サイト、 http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/

■東洋絵画の精華

■静嘉堂文庫美術館,2012.4.14-5.20 ■「平治物語絵巻信西巻」が最初に展示されている。 しかし第二段はじめの信西自害のところで以降は次回のお楽しみになっている! 週刊連載マンガの続きと同じだ。 しかも仏画が多くて部屋全体が暗いせいもあり調子が狂ってしまった。 後半になって抱一の楽しい「絵手鑑」や「四条河原遊楽図屏風」の踊っている老若男女をみてやっと元気が出てきた。 作品の質は十分だが量の少ない展示であった。 ここは陸の孤島で来るのに大変だから次回のお楽しみではなく一度に展示してくれ。 *館サイト、 http://www.seikado.or.jp/publication/leaflet.html#leaflet_01

■三都画家くらべ

■府中市美術館,2012.3.17-5.6 ■江戸の画家(作品)かどうか? 生まれも育ちも東京のワタシが見てもわからないわ。 大坂と京都はなおさらね。 もし江戸時代に江戸に住んでいればわかるかもしれない。 それは人・物・情報の流れに意味を見いだせる余裕があるはずだから。 たとえば<笑い>の章で大坂は人を笑わせる、京都は深みある和み、江戸は明確・理屈の笑いとあったけど、これに沿って作品が展示されているから納得してしまうの。 でも仮定に合わせた作品のみを集めているかもしれないという疑問が付きまとうわね。面白いけれど答えはいくらでも変えられる企画ね。 後期展示の「人物画くらべ」だったけど気に入った作品は十点くらい。 なかでも応挙の「楚蓮香図」、月岡雪鼎「見立牡丹花肖柏図」の女性が素敵ね。 *館サイト、 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/goriyo/H23Nenkan_schedule.html

■バルビエxラブルール展

■練馬区立美術館,2012.4.8-6.3 ■どこかで見た作品があります。 でも名前を声に出すのは初めての二人です。 どちらも挿絵画家ですから本と同じ大きさの作品が多いですね。 前半の展示では単眼鏡も欲しいところです。 バルビエは1909年にロシアバレエ団を観たのが人生での決定的体験と言っています。 彼の作品にある豊かさは、G・クリムトの影響もチラッと感じますが、舞台が持っている総合芸術への指向性を含んでいるからでしょう。 ラブルールの線はスッキリしていて嫌味がなくていいですね。 動植物などは日本美術を思い起こさせてくれます。 でも観終わった時にはやはりヨーロッパを感じます。 二人の作品は静かな自宅で挿絵の入った本を捲りながら当時のフランスを自由に思い巡らすのが一番いい鑑賞方法です。 と、鹿島茂もそう言っているように聞こえます。 倉庫のような練馬美術館でウロウロしながら観るのは合いませんね。 *館サイト、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=m10225

■シャルロット・ペリアンと日本

■目黒区美術館,2012.4.14-6.10 ■ペリアンはコルビュジエに出会う前からコルビュジエ風だったのよ。 子供時代にガランとした室内が気に入っていたことからもわかる。 コルビュジエはスッキリが一番だから。 でもペリアンは女の眼を通してリビングやキッチンを見てしまったの。 だからコルビュジエよりバウハウスに近づいてしまった。 物を無くするより物を沢山持ってそれを隠そうとしたのよ。 それは当時の社会から支持されたはず。 ペリアンと日本で関わった人々の話や写真はとても面白かったわ。 グローバル化以前の暖かさがみえる。 当時は人を通して物と情報が繋がっていたからよ。 この展示会は神奈川近美からの巡回だけど、解説や作品の陳列方法をみると大学生の卒業研究のような会場ね。 だから時間をかけて観る必要がある。 このような展示会には閑人しか来ないから救われるけど、悪いのは神奈川近美ね。 *館サイト、 http://mmat.jp/exhibition/archives/ex120414

■毛利家の至宝

■サントリー美術館,2012.4.14-5.27 ■毛利には無関心だったので、元就や秀吉、家康の対策書・起請文・注進状などの事務文書が最初に展示されていて嬉しい。 しかも現代語訳も付いている。 これで毛利たちの性格や人間関係が見えてくる。 史記や古今和歌集などもあり元就は経営能力ばかりか歌や画・茶・能などを嗜んでいて武士の鏡のようだ。 毛利博物館の存在も初めて知った。 戦国大名の総合力が表れている展示構成である。 しかしちょっと持ち上げ過ぎではないのか? 目玉は「山水長巻」である。 出足の春はいいが、しかし冬に近づくと建物の壁ばかりが目立ち単調になる。 雪舟も途中で飽きてしまったようだ。 宗達や探幽、応挙、芳崖も一点だけなので記憶に残る。 このように広く浅い展示もたまにはよい。 この赤坂の外れに長州藩毛利家屋敷があったそうだが当時は二千名も常駐していたとは驚きである。 帰りに檜町公園を歩いたが防衛庁のため近づかなかったせいかこの一帯は都心部でも記憶の少ない場所の一つである。 *館サイト、 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_02/

■アンリ・ル・シダネル展

■損保ジャパンン東郷青児美術館,2012.4.14-7.1 ■初めて聞く画家です。 「悪くはないが・・」という感じです。 こんな感じですから多分知らない人が多いはずです。 点描画を崩したようなタッチも見うけられます。 水分が多く湿って重たい感じがします。 穏やかな人生を過ごしたらしく思想を前面に打ち出しません。 エタプル時代に受けた象徴主義も影響しているようです。 アンティミスムです。 ですから印象派への拘りや描かれた多くの窓明かりも「光の帝国」のような緊張感はありません。 晩年に描いた一連の不在の食卓が一番です。 人のいないテーブル上のポットやカップは人の気配を感じさせます。 運河や建物の風景とテーブルや椅子と見えない人との関係が微かに漂っています。 「悪くはないじゃん・・」。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/past/2012/  

■KATAGAMISTYLE

■三菱一号館美術館、2012.4.6-5.27 ■ http://katagami.exhn.jp/ ■ビデオ「江戸小紋記録」を見て型紙の作り方が分かったわ。 道具や作業は言葉で表現し難いからよ。 現代商品への適用はもっと詳しくしりたかった。 ルイ・ヴィトンなどのデザインとの関係やコンピュータシステムとの繋がりもね。 展示は国別に章が分かれていて目新しかったけど隅々まで日本の型紙の浸透が強調しすぎていてしつこい感じがしたわ。 「世界が恋した」とはズレた雰囲気を感じるわよ。 ところで日本の型紙史から見て生活用品にもっと素敵なデザインがたくさんあってもよさそうにみえるけど何故少ないのかしら? ヨーロッパのブランド・デザインなど容易に越えられそうだけど。 結局はマーケティングなどの経営全般に差があるのかしら? 

■ONEPIECE展

■森アーツセンターギャラリー、2012.3.20-6.17 ■ http://onepiece-ten.com/ ■小学生高学年が読者だとおもっていた。 しかし会場は大学生前後が多い。 冒険と仲間がテーマだから読者層が広いようだ。展示は原画が大部分だ。 色付きは素晴らしい。 茶色系が多く暖かみがある。 近年の画は背景に沢山の物が描かれているので長くみていても飽きない。 最初のシアタービデオは白黒だが立体感もあり冒険の楽しさが表現されていて一番面白かった。 これ以外はたいしたことはない。 静かさのある会場である。 原画の展示が多すぎるからだ。 物足りない客も多いはずだ。 しかし物語にどっぷりと浸かっている愛読者なら脳味噌はシンバルが鳴りっぱなしかもしれない。 好みが分かれる展示構成である。

■ボストン美術館・日本美術の至宝

■東京国立博物館・平成館,2012.3.20-6.10 ■浮世絵が出品されていないのは「浮世絵名作展」を去年開催したからでしょうか? 2年前の森アーツセンター「西洋絵画の巨匠」展は素晴らしかった記憶があります。 質と量の伴う展示が多いボストンに、圧倒され通しです。 絵画以外特に着物を多く出品できるのも底力が有る証拠です。 そして今回、「蕭白といえばボストン」の言葉を初めて理解できました。  「雲龍図」の口の周りの髭だとか爪の回りの毛の描き方は漫画のルーツに出会ったようです。 「吉備大臣入唐絵巻」は空間と時間の空白が生かされていて面白いですね。 これも漫画です。 ぎっしり詰まった「平治物語絵巻」よりホンワカした気持ち良さがあります。 気に入ったのは土佐光起の「王昭君図」。 親しみさが有り顔も最高です。 そして快慶の「弥勒菩薩立像」。 どこか人間の思いを持っている顔です。 光琳の「松島図屏風」は期待していたのですがイマイチでした。 光琳には大事な何かが不足しています。 若冲を含め漫画的要素の濃い作品が多いですね。 フェノロサやビゲローは漫画を楽しむノリで作品を収集したのかもしれません。 二人が戦後の日本漫画をみれば平安時代からの日本文化の痕跡がちりばめられていると言うでしょう。  *東京国立博物館140周年展 *館サイト、 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1416

■ハダカから被服へ

■原美術館,2012.3.31-7.1 ■桜吹雪の中を御殿山に登る。 最初の部屋には鏑木清方風の「千人針」、ダゴティの「女性背筋図」などがロラン・バルト並の解説とともに飾ってある。 展示会名も文学的である。 これは期待できそうだ! ・・しかしその後が続かなかった。 原始人や歴史人物の解説が月並で作品を錆びつかせている。 現代ファッションも同じである。 この文学的テーマをまったく消化できていない。 今回は具体的言語的すぎた感がある。 バルト好きの杉本博司でも息切れのようだ。 またこの館は私邸だったため展示が難しい。 廊下も狭いし部屋も狭い。 朝香宮邸に漂っている部屋のリズムも無い。 解決するためにレストランを無くすのも一案だが。 作品数の制約から毛色の違うアルミニウムや能装束を省くと分かりやすくなったろう。 *館サイト、 https://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/332/

■はじまりの記憶

■監督:中村祐子,出演:杉本博司 ■イメージフォーラム,2012.3.31-6.22(2011年作) ■「劇場」の杉本博司の姿を初めて映像で見る。 彼の要をわかりやすく丁寧に紹介している素晴らしいドキュメンタリだ。 杉本博司は芸術家にはみえない。 事物への思いや接近方法が周囲によく居るオジサンと同じだからである。 時を忘れて顕微鏡で生物を望遠鏡で天体をみる時のワクワク感を持ちながら緻密な計画を立て感性を研ぎ澄ませて対象に向かう仕事人である。 思いは無機物から有機物が発生する過去へ遡る。 作品はすべてこれに集約していく。 神は無機物から有機物に転換する<気配がある>時に現れる。 剥製が生き物に変わる「ジオラマ」や「肖像」も、そして「海景」や「放電」もこの気配を持っている。 彼の作品に感動する理由がここにある。  この気配に感動するのだ。  生物は40億年前の無機物から生まれた始まりの記憶を持っている。 そして人はこの微かな記憶に思いを寄せる。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/57734/

■ロベール・ドアノー

■東京都写真美術館,2012.3.24-5.13 ■「牛乳を買いに行く子供たち」でブレッソンの「ムフタール街」を思い出してしまったの。 戦争という特異点の中では差別化ができないのよ。 だから同じにみえてしまう。 レジスタンス時代の偽造パスポートを作品としてズラっと並べるしかないわね。 内気な性格の為か初期作品には対象との間に微妙に震える空間が漂っている。 これが戦争終結前後の作品を生き生きとさせているのね。 特に二人が収まっているポートレートは面白いわ。 でも撮影場所を友人が探してくるのも写真家としてどうなのかしら? 55年後半以降の作品はツマラナイ。 「パリ祭」も祝祭の異空間が見えなくなっている。 80年代のパリ地区を撮影したのも公務員の仕事だとして責任を転化しているのは情けないわね。 *美術館、 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-1545.html

■新しき土

■監督・脚本:アーノルド・ファンク,伊丹万作,出演:原節子,小林勇,早川雪洲ほか ■東京都写真美術館,2012.4.7-30 ■日本の荒々しい自然が画面から流れ出てくるようだわ。 それが物語の中にもこれでもか!と入ってくるからキツイ。 でも火山撮影の凄さを見ると世界中でヒットしたのもわかる気がする。 原節子は若い。 16歳という年齢以外でもね。 チラシが原節子オンリーだったから恵比寿まで出向いたんだけど。 これからという感じね。 それと当時の風景がたくさん撮影されていて面白い。 鉄工所や繊維工場、繁華街・帝国ホテル・飲み屋・国技館、そして全国の有名観光地・・。 商品名が書かれているネオンや提灯もね。  新しき土とは何かが終幕にわかったの。 それは満州よ。 作品が作られた1937年は日中戦争の幕開け、しかも監督はナチスから逃げられない。 戦後の原節子しか知らなかったけど初めて戦時の作品に出会えたのが収穫ね。 *作品サイト、 http://www.hara-eiga.com/

■ひっくりかえる展

■ワタリウム美術館,2012.4.1-7.8 ■ヴィデオが11台くらいあったかしら。 チン↑ポムが半分を占めているわ。 なぜ「ひっくりかえる」かわかったの。 それは「スーパーラット」のネズミ狩の場面でエリイがネズミを見てキャーキャー叫んでいるの。 精神的には完全にひっくり返っていたからよ。 「BLACK OF DEATH」はカラスの声を拡声させて車で走るんだけど国会議事堂周辺にいる沢山のカラスが車に集まってくるの。 ヒッチコクの「鳥」のようね。 この鼠と烏の作品が一番面白かったわ。 都会でも狩ができるなんて考えてもみなかったからよ。 でも過激なVOINAや写真のJR、そして福島原発の作品も衝撃力は無いわ。 同じようなパフォーマンスを見せられると観客も慣れてしまうのかもしれない。 鼠や烏は遺伝子を共有する同士ではなくて種が違う理解不能な他者だから面白いのよ。 *館サイト、 http://www.watarium.co.jp/exhibition/1204hikkuri/index2.html

■レオナルド・ダ・ヴィンチ-美の理想-

■監修:アレッサンドロ・ヴェッツオージ ■Bunkamura・ザミュージアム,2012.3.31-6.10 ■「ほつれ髪の女」はいいですね。 髪の先にまで異様な生命が宿っているようです。 ダ・ヴィンチ好みの顔です。 しかし展示目玉が他に無いせいか宣伝のし過ぎにみえます。 同じ系譜の「岩窟の聖母」「レダと白鳥」が展示されていました。 ついでですからこの顔をテーマにしてもっと突っ込んでも面白かったかもしれません。 ところで「レダと白鳥」に会えて幸せです。 足のまわりの花や虫、鳥もジックリみてきました。 ダ・ヴィンチの入門書をそのまま会場に広げたような展示会でした。 たくさんの「モナ・リザ」は春休み用ですね。 この6階で映画「 レオナルド・ダ・ヴィンチ展inシアタ 」も上映しています。 館サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_davinci/index.html

■セザンヌ-パリとプロヴァンス-

■国立新美術館,2012.3.28-6.11 ■初めて見知ることばかりだ。 セザンヌの故郷がプロヴァンスだったこと、父親が裕福だったこと、彼と自然の有機的な結びつきがとても濃いこと、初期作品を初めて観ること、などなど。 「四季」がセザンヌの作品だとは信じられない。 人物画と静物画の部屋ではみる喜びが押し寄せてくる。 「赤い肘掛け椅子のセザンヌ婦人」は素晴らしい。 これは人物画と静物画が融合しているようだ。 服や椅子はもはや静物画である。 スカートの襞を見ていると目眩がおそってくる。 ところで「サン・ヴィクトワール山」はいいとは思えない。 その理由がわかった。 山の多くは晩年の作品だからだ。 晩年の絵は感動が少ない。 これはすべての画家にいえる。 ともかく6月まで開催しているからあと数回は行ってもよい。 *館サイト、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/cezanne2012/