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■竹中工務店400年の夢、時をきざむ建築の文化史 ■アーティスト・コロニ・セタガヤ、「白と黒の会」「砧人会」「自由が丘文化人会」

■世田谷美術館,2016.4.23-6.19 ■竹中工務店400年の夢-時をきざむ建築の文化史- ■建築は設計ならともかく施工には関心がないのが普通よ。 しかも建築物をみても施工の特徴はよく見えない。 会場を回ると、あれもこれも竹中工務店が担当していたのね! 工務店も力が入るから充実した展示会になっている。 模型や写真・映像で建物とその社会背景まで切り取っているから半分は広告だけどとても面白い。 建物から当時の時代を想像できる。 初代竹中藤兵衛正高は織田信長の家臣だったらしい。 刀を捨て大工道具に替えたことからも、古い道具には日本刀の魂が宿っているようにみえる。 神社や寺を建築していた時代から展示が始まるのも頷けるわね。 大阪が本拠地だから関西地区に作品が多い。 東京では現代美術館やワタリウム美術館がある。 よく行く新国立劇場や国立劇場、あと代官山サテライト*1もね。 建築は日頃歩いて心身で感じないとわからない。 この展示会で東京の有名建物はすべて覚えたから立ち寄った時には竹中工務店を思い出すわね。 *1、 「槇文彦、時・姿・空間、場所の構築を目指して」(2015年) *館サイト、 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/past.html ■アーティスト・コロニー・セタガヤ-「白と黒の会」「砧人会」「自由が丘文化人会」- ■画家などの芸術家が世田谷で緩やかなコロニー=グループを作って活動していた紹介展示なの。 世田谷は関東大震災で下町から移り住んだ人が多い。 このため副題の3つの会も戦前・戦中あたりから活動し始めたようね。 駅でいうと経堂駅から宮の坂駅、成城学園駅周辺、自由が丘駅周辺よ。 馴染みの作家もいるけど知らない名前も多いからバラエティとしての面白さがある。 池袋モンパルナス*1とは違う。 それは作品をみてもわかる。 前者が東京下町から後者は地方から来た人が多い為じゃないかしら?  *1、 「池袋モンパルナス」(2015年) *館サイト、 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/past_cllct.html

■三分一博志展、風・水・太陽

■ギャラリー間,2016.4.15-6.11 ■会場に入ると雷が遠くで鳴っています。 時々蜩の声も聞こえてくる。 雷蜩晩夏は都会を離れると今でも体験できるのでしょうか? 三分一博志の建築作品は瀬戸内海に多い。 この海にはまだ風景が残っているのでしょう。 「その場所にある動く素材を見ることから始める」とある。 それは空気や水、太陽の動きなどです。 会場では建築に影響する空気流や温度差の実験や分析が展示されています。 必要な設計図までは出すことがありますが、その基礎となる流体力学や熱力学の実験結果などは表にしない。 しかし今回は違います。 建築と風・水・太陽など自然との関係は重要だとわかります。 でも素人からみるとこれらの実験や分析をおこなうのは当たり前だと思っていました。 「その地域ならではの固有の文化を育みたい」と書いています。 例えば正倉院校倉造などはその気候風土に合わせ且つ当時の文化も育てたと聞いたことがあるが、このようなことを目指すということでしょうか? 瀬戸内の風景に浮かぶ作品を見ていたら今年の芸術祭(*1)に行きたくなってしまいました。 *1、「瀬戸内国際芸術祭2016」は、 http://setouchi-artfest.jp/ *館サイト、 http://www.toto.co.jp/gallerma/ex160415/index.htm

■ヨーロピアン・モード、特集イヴ・サン=ローラン

■文化学園服飾博物館,2016.3.8-5.17 ■18世紀初頭のロココ・スタイルから1970年頃までを13分割して代表的衣装の展示と簡単な解説だけからなるシンプルな構成です。 1階には同じような展示構成でイヴ・サン=ローランを21作品で特集しています。 どちらも常設展の延長で学生の教育用も兼ねているのでしょう。 1800年代は20年単位に1900年代は10年単位の分け方が時代を上手く捉えている。 ファッションは足が速いので時代をどのように分割するのかはとても大事ですね。 そしてサン=ローランのイヴニングドレスはいつ見ても最高です*1。 先日の「ファッション史の愉しみ」*2を要約したような展示でとても分かり易かった。 *1&2、 「PARISオートクチュール」(2016年) *館サイト、 http://museum.bunka.ac.jp/exhibition/

■JR新宿ミライナタワー

■建築主:国土交通省,東日本旅客鉄道,設計:東日本旅客鉄道,JR東日本建築設計事務所,施工:大林組ほか ■3月に竣工したミライナタワーに行く。 新宿を通るときは遠くから眺めていたが中をグルグル見て回るのは初めてである。 このビルはJR新宿駅に張り付いている為オフィスとして最高の建物だとおもう。 5階エントランスも天井が高くて気持ちがよい。 オフィスは8階から32階だが入居企業名が掲示されていなかった。 これからかな? どのような企業が入っているのかは興味の一つである。  タワーと直結している新宿駅4階にはバスターミナルもある。 降車は3階でおこなう。 とても静かなターミナルだ。 バス情報は電光掲示板だけにして放送が無いからだと思う。 屋上庭園にも登る。 低層階はどちらも商業店舗が入っているがゴチャゴチャした雰囲気だ。 店舗当たりの面積が小さい。 階段やエレベータも不規則な位置にあるため出入りも大変である。 店舗数の詰め込み過ぎだろう。 高級店は一つも無い。 安っぽい新宿らしい雰囲気が漂っている。 この新店舗がエキナカまで続いているので駅構内もより使いやすくなった。 しかし新幹線が走っていないのが店屋からみて致命的なことに変わりはない。 これも安っぽい理由の一つである。 *写真、 http://www.eonet.ne.jp/~building-pc/tokyo-kensetu/tokyo-168shinjyuku.htm

■空へ、海へ、彼方へ、旅するルイ・ヴィトン

■紀尾井町・特設会場,2016.4.23-6.19 ■ルイ・ヴィトンがファッション界の中で他とは違う感じがしていた謎が解けたの。 それは家具屋だったから。 会場が木工製造の歴史から始めているのは驚きね。 欧州ファッション史は革が多いでしょ。 鉋などの木工工具をみると鞄というより箪笥職人という感じかしら。 そして移動の20世紀は旅行用トランクや鞄への流れは必然だわ。 振り返ると20世紀は旅行の時代だったのよ。 旅行用鞄を見るとそわそわしだすのは20世紀に生まれた宿命かもね。 会場にはこのソワソワ感が一杯よ。 あとセレブリティやスーパースターのトランクやバッグもなるほどすごい。 それは中身に何を入れるかを先に決める。 大きさや量は無視だから鞄持ちが周りに必要ということなの。 絵画用トランクの顧客はピカビアやマティスだから何も言えない。 有名女優の化粧道具ケースも同じ。 日本文化との繋がりも論じていたけど、モノグラム・キャンバスは日本的ともいえるデザインだとおもう。 ダミエもストライプも同類に感じる。 ルイ・ヴィトンの歴史が見える展示会だったわ。 *館サイト、 http://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/heritage-savoir-faire/tokyo-expo#/home

■複製技術と美術家たち、ピカソからウォーホルまで ■横浜コレクション展2016年度第1期

■複製技術と美術家たち-ピカソからウォーホルまで- ■横浜美術館,2016.4.23-6.5 ■富士ゼロックス版画コレクションとのコラボらしい。 ゼロックスは初めての作品が多いので新鮮です。 横浜美術館所蔵品と並んで展示されています。 W・ベンヤミンの言葉が随所にみられる会場です。 展示タイトルも彼の作品に直結している。 彼はアウラの喪失について良くも悪くも両方を論じているようです。 まず写真の登場ですが、そこで「肖像写真は長時間露光のためアウラが発生する」。 次には「ガラスにはアウラが無い」。 頷いてしまう言葉が並んでいます。 アウラは衰退しているが無くなったのではない。 キャプション文は分かり易いが奥がある。 途中M・エルンストが待ち伏せています。 横浜美術館はエルンストが得意のようですね(*1)。 ゼロックスはハードを通した作品もあるので非連続にみえます。 ゼログラフィーの章では岸田良子の作品が目に留まりました。 後半終わりはウォーホルと一緒に荒川修作・吉田克朗など日本の作品まで登場するので疲れました。 途中でベンヤミンを見失ってしまったようです。 ところでベンヤミンで好きな作品は「モスクワの冬」。 *1、 「マックス・エルンスト-フィギアxスケープ-」(2012年) *館サイト、 http://yokohama.art.museum/special/2016/mechanicalreproduction/index.html ■横浜コレクション展2016年度第1期 ■女性画家の作品集のようです。 知らない名前もあるが見た絵が多い。 気に入ったのは常盤とよこの写真集です。  *館サイト、 http://yokohama.art.museum/exhibition/index/20160423-469.html

■バンクシー・ダズ・ニューヨーク

■監督:クリス・モーカーベル ■吉祥寺オデヲン,2016.3.26-4.21 ■ニューヨークで落書きといえば地下鉄グラフィティだ。 これを見た時は唸ってしまった覚えがある。 バンクシーは文章の意味はともかく文字は下手にみえる。 でも無彩色系の絵は鋭い。 ユーモアが都市の汚さと混ざり合って落ち着いた光を放っている。 しかしこんなに騒ぎ立てたり作品が高値で売れているのが不思議だ。 美術系とパフォーマンス系の鬩ぎ合いの為か? 特に日本では街中に広告が溢れているので落書きのインパクトが薄くなっているのかもしれない。 サイトに投稿しそれを探しだすゲームになっているのも騒ぎを大きくしているようだ。 「見物人も作品の一部」と言っていたが観客も多彩だと落書きも活きる。 資本の論理も動いているのは確かだが、それをも巻き込んで街頭演劇にまで繋げる余裕がニューヨークにはまだあるということだろう。 2014年作品。 *作品サイト、 http://www.uplink.co.jp/banksydoesny/

■ライアン・マッギンレー、BODY LOUD! ■はなのなかへ ■タナカヤスオ展

■ライアン・マッギンレー,BODY LOUD! ■東京オペラシティアートギャラリー,2016.4.16-7.10 ■ライアン・マッギンレーは初めて聞きました。 みずみずしい作品ですね。 Cプリントとゼラチンシルバープリントの差が大きい。 前者は新鮮で後者はしっかりしています。 安定感が有ります。 両輪を保ち続けているから「アメリカで最も重要な写真家」と言われるのでしょう。 *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh187/ ■はなのなかへ ■今が一番の季節ですね。 最初を飾る落田洋子の作品は豊かな五感の世界に入りこんだようです。 続く筧本生、大谷有香、港信夫、川口起美雄・・。 至福の時間が訪れました。 そして近藤弘明の幻想的な春の夜に満喫できます。 再びの満開の桜は最高でした。 沢山の画家を丁度良い枚数でみる喜びはめったにできない。 その意味でもここの収蔵品展は貴重です。    *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh188.php ■タナカヤスオ展 ■メタリックな黒と銀と白が静かで舐めるようなインパクトを与えてくれます。 書に通じているようにもみえました。     *館サイト、 https://www.operacity.jp/ag/exh189.php

■黒田清輝、日本近代絵画の巨匠

■東京国立博物館・平成館,2016.3.23-5.15 ■これだけの黒田清輝をまとめて観たのは初めてかもね。 師ラファエル・コランに出会ったのは正解よ。 二人の作品をみていると先ほどの「 カラヴァッジョ展 」が重たい夢のなかに居たように思える。 いま日常世界に戻って来たのね。 裸体画では「智・感・情」が一番かな。 タイトルの三文字はいらない。 コランとは一味違うミレーやシャヴァンヌ(*1)に刺激を受けたようだけど消化不良にみえる。 多忙が原因ね。 それよりも柔らかい光に覆われている作品の方が素敵よ。 特に女性が寝っ転がったり遠くをみつめたりボケっとしている絵が最高。 「舞妓」「湖畔」「読書」がとても素敵にみえたけどLEDライトの効果もあるのかしら? そして「昔語り」が神戸須磨別邸(*2)を飾っていたのを初めて知ったの。 人生後半は政治世界に入ってしまい小さな作品ばかりで残念ね。 生誕150年特別展。 *1、 「シャヴァンヌ展-水辺のアルカディア-」(2014年) *2、 「バロン住友の美的生活-邸宅美術館の夢-」(2016年) *展示会サイト、 http://www.seiki150.jp/

■カラヴァッジョ展、ローマを熱狂させたドラマチック

■国立西洋美術館,2016.3.1-6.12 ■「カラヴァジェスキ」でカラヴァッジョの全体像を描きだしている展示会なの。 継承者という意味らしい。 カラヴァッジョが1~2枚とカラヴァジェスキの5~6枚を一つの章にして全8章で構成されている。 このため彼の影響力が対抗宗教改革からバロック美術まで広く及んでいるがよくわかる。 特に1606年に殺人を犯してからの作品は深みがでている。 光と闇の深さとともに死を意識した静寂が漂っているからよ。 「エマオの晩餐」を含め描かれているキリストは劇的な存在感がある。 エル・グレゴのついぞ動きのあった劇的とは逆に静けさからの劇的とでも言うのかしら。 演劇の一場面を観ているようで背筋がゾクゾクするわね。 前半で気に入った絵は「マッフェオ・バルベリーニの肖像」。 彼の肖像画は高値で売れた理由がわかる。 後半では「法悦のマグダラのマリア」。 うーん、最高! マリアの涙にはカラヴァッジョの波乱の一生も溶け込んでいるようだわ。 日伊国交樹立150周年記念。 * 「カラヴァッジョ-天才画家の光と影-」(2015年) *展示会サイト、 http://caravaggio.jp/

■バロン住友の美的生活、邸宅美術館の夢

■泉屋博古館,2016.2.27-5.8 ■バロンと聞くとスタジオジブリのあの猫を思い出してしまう。 バロン住友春翠の略歴をチラッとみただけでも、住友銀行・住友金属・住友電工・住友化学・住友海上火災・日本板硝子・住友商事・住友林業・日本電気・住友信託銀行の設立に関与している。 しかし会場を見回しても経営者の姿が見えない。 「君臨すれども統治せず」なのだろう。 前半は「神戸須磨別邸」が後半は博覧会と文人との交流が描かれている。 須磨別邸は西欧諸国が南米植民地に建築するようなテラスを持っているのが印象深い。 英国コンノート王子の邸来訪映像も面白い。 上演6分だが1918年頃の人々の振る舞いや別荘周辺の様子がわかる。  美術品は当時の情報網をフル活用していることがわかる。 しかし春翠の好みがよく見えない。 彼は複雑な美観を持っているようである。 周時代の青銅器もそうだが客の評判の良し悪しも参考にしている。 やはり重厚長大を優先しているのかもしれない。 いま新聞に連載中の「マダム・ツツミ」を読んでいる為か、バロン住友と時代差以上に違う堤清二を思い出してしまった。 *館サイト、 http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

■安田靫彦展

■東京国立近代美術館,2016.3.23-5.15 ■「いざ、竹橋」「待ちかねたぞ」。 頼朝と義経の再会はなかなかです。 「黄瀬川陣」は戦争との関係を弁明していたが、当時は立場上止むを得なかったのでしょう。 展示は靫彦15歳から入りますが、10代もすばらしい。 人物がイキイキしています。 そして53歳から56歳頃が絶好調にみえる。 構図に無駄がなく単純な線と澄んだ色で感情の奥底まで描けているのはこの時期でしょう。 「花づと」「良寛和尚図」「観自在菩薩」「曽呂利」「菊慈童」「上宮太子御像」等々です。 そして着物の柄や身に付ける小物意匠は素晴らしい。 また複数人より一人のほうが良い。 複数人だと人と人との関係が粗くみえます。 「黄瀬川陣」は一双として分かれているので緊張感が保たれている。 また歳を取ってからの作品も乱れていません。 さすがです。 彼の作品は多くをみると感動が散ってしまいます。 2,3枚を他画家と一緒にしたほうが映える。 車で例えるなら安田はスポーツカーです。 他画家のゴッツイ車が隣にいるとスピードが上がります。 *美術館 、 https://www.momat.go.jp/archives//am/exhibition/yasudayukihiko/index.htm