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■発掘・植竹邦良、ニッポンの戦後を映す夢想空間

■府中市美術館,2023.520-7.9 ■植竹邦良(うえたけくによし)の絵は初めてかもしれない。 何枚か展示されている同志の池田龍雄・中村宏は知っていたが・・。 60年代・70年の政治の時代をどう描くか藻掻いていた様子がうかがえます。 政治を描く場合、写真や映画と違い絵画だと抽象へ進んでしまう。 次第に心象比率が多くなっていく。 その気配は次第に隠れてしまう。 当時のアバンギャルドの影響もある。 副題「ニッポンの戦後を映す夢想空間」は作者を的確に表しています。 池田龍雄や中村宏との違いは夢想がより偏執に向かっていることでしょう。 虚無僧や列車が印象的です。 「スピナリオ電車」(1977年)を描いた80年代前後は失調症的な感じもプラスされる。 90年代に入ると好みの工事現場が多くなる。 「タワー記」(1994年)などは晴れやかに感じます。 50年前後の作品が一番気に入りました。 40年代の人物、50年代の工事現場、風景スケッチは生き生きとしている。 戦後の解放感がある。 まだ政治が彼に届いていないからでしょう。 *美術館、 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakutenkaisai/exhibition_2023_1_uetake.html

■マティス展

■主催:ポンピドゥー・センター,朝日新聞,NHK他 ■東京都美術館,2023.4.27-8.20 ■「20年ぶり・・」とあったが2004年西洋美術館での「 マティス展 」以来ということですね。 マティスの一生を網羅した内容にみえます。 1869年生まれと聞いて作品との差異に驚きます。 時代をいつも越えようと描いていた。 会場では彼の「自画像」(1900年)が出迎えてくれる。 元気のよい複雑な色彩が気に入りました。 探求時代の「金魚鉢のある室内」(14年)「アトリエの画家」(17年)もいいですね。 建物と室壁の黄ばんだ白がなんともいえない。 今回の展示では油絵が最高です。 後半には「赤の大きな室内」(48年)も展示されている。 彼は1941年に十二指腸癌に罹っている。 体力が減退し、これが切り絵に向かった理由と聞いています。 日本の工芸を身近でみていると「切り絵」は未完成にみえる。 「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」をまとめて観られたのは嬉しい。 でも、やはり未完成にみえる。 彼にとっては精一杯の出来栄えだったのでしょう。 「私が選んだのではなく、運命によって選ばれた仕事・・」と言っている。 切り絵と宗教に包まれてマティスは子供に戻っていったのでしょう。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_matisse.html

■常盤橋タワー

■設計:三菱地所設計,施工:戸田建設 ■2021.6.30竣工 ■東京駅八重洲の大丸を通り呉服橋へ歩いていくと常盤橋タワーが見えてくる。 「新丸の内ビル」をこじんまりさせた感じだ。 どちらも三菱地所のため設計を似せたのだろう。 37階建てだが全てオフィスになっているのでツマラナイ。 入居会社名をみると古川電工系が目につく。 解体している東京海上ビルの引っ越先にもなっているらしい。 地下1階から3階まではレストランだ。 都心サラリーマン向けの店舗が並んでいる。 3階には「食堂」らしきエリアがある。 入居している社員向けらしい。 ビルの裏へ回る。 川沿いの緑が気持ちよい。 トーチタワーが建つ場所は旧ビルの解体工事をしている。 2027年竣工予定だ。 まだ4年もある。 常盤橋タワーは待っていられなかったのだろう。 それにしても呉服橋や常盤橋は歩いて渡ったことがない。 三越や室町へ行くときは地下鉄に乗ってしまうからだ。 このあたりは江戸城の入り口だったと聞いている。 今は線路と川に挟まれた陸の孤島のような場所にみえる。 次に来るのはトーチタワーが完成する4年後だろう。 *常盤橋タワー、 https://tokyotorch.mec.co.jp/about/

■大阪の日本画

■東京ステーションギャラリー,2023.4.15-6.11 ■知らない作家ばかりです。 見覚えのある作品もありますが。 中之島美術館所蔵が多い。 この美術館も行った覚えがない。 別世界ですね。 先ずは北野恒富の生活慣れしている美人が並んでいる。 衣装も凝っている。 絞り染めが多い。 「いとさん、こいさん」の意味を初めて知りました。 大阪漫才も連想させます。 画家の名が広まらなかった理由が分かりました。 それはパトロンがついていたからです。 つまり食うには困らない。 作品にどこか余裕があるのはそのためでしょう。 それは船場派の花や鳥、魚そして虎などをみてもわかる。 矢野橋村の象のようにボッテリした新南画にもです。 生田花朝の繊細で躍動感ある祭りの背後に商人の活気まで見て取れる。 そして最後を飾る池田遙邨「雪の大阪」は素晴らしい。 朝日に輝く雪が眩い。 近頃は大阪に行っていない。 旅する時が再び来たようです。 *美術館、 https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202304_oosaka.html

■今井俊介、スカートと風景 ■寺田コレクション、ハイライト ■山口由葉

■東京オペラシティアートギャラリー,2023.4.15-6.18 ■作家今井俊介は女性が着るスカートから発想を得たと言っています。 でも作品からスカートは連想できない。 女性身体もです。 スカートも女性も昇華させている。 そこからファストファッションが生まれる瞬間に立ち会っているような新鮮さがあります。 しかし思ったほど動きがみえない。 これから動くのか? 先ほど寄り道してきた練馬区立美術館で「(抽象で)緑色は扱い難い・・」と言っていた大沢昌助を思い出してしまった。 今井の緑も目に残りますね。 それよりも桃色が難しく感じます。 桃は慎重に配しても軽率に向かう。 でも今井はそれを上手く宥めている。 今日は、大沢昌助と今井俊介の抽象を比較できて楽しかった。 作風はまったく違いますが、今井は原因(はじまり)を大沢は結果を描いていると言えるでしょう。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh261/ *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=287 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=288

■大沢昌助展

■練馬区立美術館,2023.4.29-6.18 ■「水浴」(1941年)をみて美術館へ行くことにしました。 ギリシャ彫刻と昭和時代の水遊びが不思議とマッチしていたからです。 風景もキュビスム的でスカッとしてますね。 この作品は入口に展示してあった。 1940年代前後はセザンヌを意識している。 シュルレアリスムに距離を置いていたことも気に入りました。 「白い家」(1950年)もいいですね。 1階会場をみて、このまま物の質感や不思議さを描いていくと予想しました。 2階に上ると、なんと!抽象画で埋め尽くされている。 これは驚きです。 「モダン、シンプル、自由、軽やか」に描いた結果でしょうか? 抽象のなかに精神的安定感が見られます。 生活からくる安定と同質のものです。 彼が目指していたものは抽象民芸と言ってもよい。 幾つかの作品はこれに到達している。 絵をみる楽しさが沸いてくる展示会でした。 *美術館、 https://neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202302021675300347