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■福沢一郎絵画研究所

■板橋区立美術館,2010.11.20-11.1.10 ■以前、福沢の同志である瀧口修造の「瀧口修造夢の漂流物」展を観た時は作品そのものに感動したけど、今回は歴史的な位置づけや影響から見てどうなの?を強調する展示のようね。 彼の絵画研究所で学んだ画家たちの絵では戦中・戦後より戦前の絵が生き生きとしていて一番だわ。 そしてこの影響が後の紙芝居「黄金バット」や学校美術教育まで広がっていることがわかるの。 その一人高山良策の東宝怪獣映画に係わったビデオを上映していたけどウルトラマンにまで影響を与えていたのは凄い! 当時の若者はこのシュルレアリスムの反自然主義的視点で戦争に対抗・解放するしかなかったのね。 今回は作品としてはあまり感動しなかったけど、板橋美術館の得意とする昭和初期の絵画を別の角度から観れて満足よ。 *館サイト、 http://www.itabashiartmuseum.jp/art-2013/schedule/e2010-06.html

■2010年美術展ベスト3(その1)

・ルノアール伝統と革新(国立新美術館)・・パリでルノアールを観るのと互角以上の内容。 ・ボストン美術館展西洋絵画の巨匠たち(森アーツセンターギャラリー)・・静物画以外はとてもよかった。 ・ポスト・フォッシル展(東京ミッドタウン21_21デザインサイト)・・毛色が違う展示会を一つ。 忘れていた古代の記憶が戻って来るようだ。

■2010年美術展ベスト3(その2)

・「愛のヴィクトリアン・ジュエリー展」(Bunkamuraザ・ミュージアム)・・いろいろと想像できる演出がよかったわ。 ・「ルーシ・リー展」(国立新美術館)・・日本の陶器とはまったく違うところがいいわ。 日本では女性の陶芸家は少ないしね。 ・「美しき挑発レンピッカ展」(Bunkamura)・・レンピッカと上記のリーは生まれた時代もほぼ同じでウィーンとワルシャワの良家出、そしてロンドンとパリからニューヨークへの亡命。 二人の比較は興味が尽きないわ。

■2010年美術展ベスト3(その3)

・内井昭蔵の思想と建築(世田谷美術館)・・一人の建築家を深く広く掘り下げる展示会はとても面白い。 ・生誕120年小野竹橋展(東京国立近代美術館)・・竹橋の全体像を初めて知った。 ・オルセー美術館展2010ポスト印象派(国立新美術館)・・本場オルセー美術館に劣らない内容 但しゴーギャンとボナールは少し劣っていたけど。 (開催順)

■かがやきの瞬間

■東京都立写真美術館,2010.12.11-11.2.6 ■この館は常設展がない。 今回もスナップショットで2展が開催されているが一つは常設展のようなものだ。 そのひとつに当たる収蔵品展ではマーティン・ムンカッチの心地良い風が観る者にも感じさせる写真が素晴らしい。 臼井薫の1950年代の子供達の屈託のない風景、ポール・フスコのケネディの遺体をNYからワシントンへ列車で移動させる時の車窓からみえる人々の写真。 この2点は心に残る。 深瀬昌久のNY・ケネディ空港をみると、見知らぬ国への一人旅で空港に到着した時のあの不安が甦ってしまった。 もう一つの新進作家展では中村ハルコの「光の音」が一番である。 作品内の人々と心を通じ合えたような気持ちになれる不思議な力がある。 そして色と光の感性の良さは抜群だ。 年末の忙しい時期だったが以上の写真家に会えて満足である。 *美術館、 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-348.html

■高瀬省三・石橋聖肖展

■平塚市美術館,2010.11.9-12.23 ■高瀬省三展は病魔に侵され亡くなる年の作品のみで構成されています。 それは作者自身の記憶や意味や人生を移行した分身のようです。 荒さが目立つのは体力の衰えからでしょう。 素材は流木などの自然の形です。 この形と鬩ぎ合いながら最後には自然と調和した姿にしています。  ランニングシャツ姿の「少年の夏」や「遠い思い出」の蝉をみると子供時代こそが人生の宝だったと言っているようです。 観る者の思い出も甦る内容でした。 石橋聖肖展はヨットや桟橋・灯台など海をテーマにした銅が主の彫金です。 そこに広がる海や空はとても静かです。 感情が昂っていても時間のかかる金属が相手ですから完成する時には心静かな作品になってしまうのでしょうか。 両者の作品はいっしょに陳列してありましたが違和感がなく、どちらも心に深く静かに響いた展示会でした。 *館サイト 、 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/exhibit2.htm

■DOMANI・明日展

■国立新美術館,2010.12.11-11.1.23 ■文化庁主催在外研修制度の成果発表で12名の作品が紹介されている。 既に遊学した人は900名を越えているらしい。 良い制度だとおもう。 しかし会場内をみると向こうからやって来るのを待っているかのような消極的な感じの作品が多い。 縮こまっている現代日本を象徴しているような内容だ。  遊学から年数がたっても展示会で紹介すると書いてあったが、これは成果発表の意味から外れてしまうのではないか?  このような「遡及」は役人が好むところだが、社会では「決算」で動くことを忘れないでほしい。  期間内で成果があった人だけを厳しく選別して展示してもらいたい。 これも芸術家への愛のムチである。 *館サイト、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/domani2010/

■羽田空港・国際線旅客ターミナル

■ http://www.haneda-airport.jp/inter/ ■今年10月21日にオープンした国際線ターミナルを見学してきました。 ターミナルは明るく軽い感じのする空間です。 4階は江戸小路・江戸前横町・歌舞伎小屋・江戸舞台などで構成され江戸時代の街並を歩いているようです。 レストランや店屋もこの景観に溶け込んでいます。 5階はポップタウンで玩具店やゲーム、プラネタリウムがあり現代東京の一端を覘かせます。 無駄なくコンパクトにできていて1時間で東京見物をした気分になります。 しかし江戸時代しか見せるものがない東京は本当に歴史の無い田舎ですね。 仕事でソウルや北京出身の外国人と話しをする機会がありますが、彼らの東京見物の一番は「ゆりかもめ」に乗ることだそうです。 港としての東京を見たいようです。 今回ひさしぶりに浜松町からモノレールで羽田へ行きましたが、車窓から見える幾つもの運河と建物が混ざり合った景色は「ゆりかもめ」とは少し違うので、彼らにモノレールも薦めようかとおもいます。

■モネとジヴェルニーの画家たち

■Bunkamura・ザミュージアム,2010.12.7-11.2.17 ■当時のジヴェルニーにアメリカの画家が7割も占めていたとは驚きね。 でもモネを真似た日曜画家に毛が生えたような作品ばかり・・。 アメリカ印象派という言葉が聞かれない理由も分かる気がしたわ。 おおらかさは有るとおもうの。 そこはアメリカかも。 後半の装飾的印象主義になるとやっと眼が喜んで来た。 フリージキーの「庭での朝食」「庭の婦人」「百合の咲く庭」がそれよ。 ボナールの絵から肉を削ぎ落したような若くて青々しい感じのする絵ね。 出展されていたボナール「にぎやかな風景」と比較すると深みやコクのある面白さに欠けるけど・・。 アメリカ人画家とモネよりもボナールとの関係を知ったことが今回の収穫だったわ。 *館サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/old/museum/lineup/10_monet/index.html

■小谷元彦-幽体の知覚-

■森美術館,2010.11.27-11.2.27 ■木の上に座っている少女が飛んでる蝿を長舌で取って食べる場面があるヴィデオ「ロンバース」を数年前に観た記憶が残っていたのですが、これが小谷作品だと知ってうれしくなりました。 生物の食・排泄・性・死・骨・血など、なるべく見ないようにしてきたものが作品に取り入れています。 ですから作品の前に立つと身体が痒くなるような気持ちになります。 シリーズ作品群「ニューボーン」「ザ・スペクター」「ホロウ」は作者の鋭い直感力や感性が出ていますがしかし、どこまで行っても表層だけをなぞっているような感じです。 中心に行けないもどかしさのある展覧会でした。 まさかこれが幽体の知覚だとは思いませんが・・ *館サイト、 https://www.mori.art.museum/contents/phantom_limb/info/index.html