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■ユベール・ロベール-時間の庭-

■国立西洋美術館,2012.3.6-5.20 ■若かった頃のイタリアが一杯詰まっている人生なのね、ロベールは。 歳をとってからイタリアを思い出す時、そこに彼の青春がピッタリと張り付いているから結局は彼は歳を取れないのよ。 だからいつまでもイタリアから戻った時のままなの。  廃墟や洞窟が暗く重く迫ってくるのかと胸をドキドキさせて上野へ向かったけど明るさと軽さが思っていた以上ね。 それは茶色のサンギーヌの為よ。 ピラネージやサン=ノンのエッチングの黒とは逆だし、そして油絵も水彩画のような質感のある薄味だから。 時の市民生活も描かれていて今でいう近未来絵画にもみえてしまう。 出口近くの「アポロンの水浴の木立」は現実と空想がごちゃまぜね。 でも革命へ向かう時代に彼のアルカディアが当時の人々の共感を得たのもわかる気がする。 *美術館、 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/past/2012_231.html

■フェリーチェ・ベアトの東洋

■東京都写真美術館 ■建物の壁の文様に目が釘付けになります。 写されている細かな部分まで当時の時間を持ったまま止まっているようです。 二昔前の1860年代のインドや中国は微かな懐かしさもあります。 20世紀後半に日本人がインドや中国へ旅行した時、そこでみたのは19世紀の建物でした。 残念ですがソビエト崩壊前後にその19世紀の風景は取り壊されてしまい今は見ることができません。 香港や江戸のパノラマ写真はやはり圧巻です。 視野の広さ=量が質に転化するからでしょう。 そして朝鮮とビルマへ彼は足を延ばしています。 これでアジアの全てを俯瞰できたはずです。 今のマンダレー王宮などはハリボテの建物しか残っていません。 ベアトの写真をまとめて観たのは今回が初めてです。 やはり量が質に転化するだけの作品量を観る必要があると確信した展示会でした。 *館サイト、 http://syabi.com/upload/3/1538/beato.pdf

■幻のモダニスト堀野正雄の世界

■東京都写真美術館 ■初めて聞く写真家です。 入場した途端イエーツやチェーホフ、石井漠や崔承喜でこれはいけると感じました。 実験写真は船や橋などの鉄を対象にしています。 ロシア構成主義の躍動感はありませんが、工業生産物への関心度や存在表現は十分です。 雑誌「犯罪科学」に掲載された写真群は生活の奥へ直進していきます。 「玉川ベリ」は多摩川を散歩する人々→河原の砂利採取で働く人々→人々は内地人(日本人)だが多くは鮮人→1日30銭の日雇い→河原のバラックで生活している様子。釘付けです。 しかし1930年中頃から体制側へ与していきます。 アサヒグラフの表紙を飾った「姑娘の鉄道警務手」「盛装の蒙古婦人」は社会の面白い断片を掬い上げています。 30年代の風景を他写真家と違う分節化をした堀野の作品は印象的でした。 *館チラシ、 http://syabi.com/upload/3/1540/horino.pdf

■フェルメール光の王国展

■フェルメール・センター銀座 ■入場した途端違和感が襲った。 どれも赤みがかった絵にみえたから。 表面は版画のようだ。 多くは本物を見ていないのでなんともいえないが。 慣れてくるといつものフェルメールのようにみえてきた。 気に入った作品は「デルフト眺望」「フルートを持つ女」「ヴァージナルの前に立つ女」の3点。 桃色の雲と輝きのある屋根がいい。 平面から立体へ動く小作品がいい。 窓と人物と壁絵の下手な距離感が現代的でいい。 しかし37作品もみるとゲップが出る。 「RE-CREATE」は複製でもなければ模倣でもない。 画家が描いた時点を再現するのが目的のようだ。 つまり350年前の絵を現前させることにある。 これを再創作と言っている。 これが商売になる時代に入ったことのほうが興味がでる。 フロアガイドになんと館長福岡伸一の部屋がある! 彼とフェルメールの関係がよくわからない。 フェルメールに関しての本も書いているようだ、読む気はしないが。 それより「動的平衡」の次作が置いてあった。 こちらは早く読みたいものだ。 *館サイト、 http://www.vermeer-center-ginza.com/

■ピーター・ブルックとシェイクスピア  ■つかこうへいの70年代展  ■日活向島と新派映画の時代展

■早稲田大学演劇博物館,2011.11.3-12.3.25 ■企画展と聞いて行ったのですがガッカリです。 シェイクスピア常設展に数十枚の写真とパンフレットそして過去の新聞評を飾っただけですから。 3月に埼玉で上演する「魔笛」の一部をビデオ上映していました。 いつもながらのシンプルな舞台です。 「つかこうへいの70年代展」「日活向島と新派映画の時代展」も同時開催です。 つかこうへいは「蒲田行進曲」しか観ていないのでどうも興味がわきません。 大掛かりな企画展と言えるのは日活だけです。 この展示で日活の知識がだいぶ増えました。 松竹より8年も早く1912年(大正元年)に創立して新派の俳優で映画を撮ったのは驚きです。 新派や新劇との関係が深いのでこの館での開催になったようです。 きょうはピーター・ブルックが日活映画に替わってしまいました。 *館サイト、 http://www.waseda.jp/enpaku/ex/1206/ 、 http://www.waseda.jp/enpaku/ex/1167/ 、 http://www.waseda.jp/enpaku/ex/1285/