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■マーグ画廊と20世紀の画家たち―美術雑誌「デリエール・ル・ミロワール」を中心に-

■国立西洋美術館,2018.2.24-5.27 ■マーグ画廊は時々聞くから上野へ行ったついでに寄ってみたの。 連休だけど常設展は混んでいない。 版画刷師エメ・マーグは妻マルグリットと1945年に画廊を設立、46年雑誌「デリエール・ル・ミロワール」を刊行。 その意味は「鏡の裏」よ。 新美術館で昨年開催した「 ジャコメッティ展 」はマーグ財団美術館のコレクションだった。 覚えてる?  1936年ボナール、43年マティス、45年ブラック、47年ミロ、50年シャガール、カンディンスキは亡くなっていたので妻がマーグと出会っている・・。 雑誌の表紙も画家達が描いているけど大らかさを感じさせる。 版画だから? それにしてもマーグはどんな人だったのかしら? 興味が湧くわね。 摘み食いの常設展といっしょに観るのにはちょうどよい企画ね。 *館サイト、 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018marg.html

■ターナー、風景の詩

■損保ジャパン日本興亜美術館,2018.4.24-7.1 ■展示会の特徴は英国各美術館所蔵の水彩画が郡山市立美術館所蔵の版画と対で展示されていることです。 ターナーが版画を重視した理由に以下3点が場内に貼られていた・・。 1.彼自身の絵を普及させたかった 2.自分の絵を旅ガイトとして使ってもらいたかった 3.彼は版画の価値を知っていた 当時の版画の位置付けが分かります。 しかも彼は版画職人への注文指示も厳しかったらしい。 水彩画をじっくりみると看板の数ミリの文字まで読める。 地誌的風景への力の入れようも並大抵ではない。 版画に対しても五月蠅いことが分かります。 水彩画と版画を交互に見比べると版画の良さを再認識できる。 同時に水彩画の線や色の躍動感が素晴らしい。 ターナーの水彩画を近くに寄って舐めるように見たのは初めてです。 もちろん版画もです。 「崇高さ」とは違ったターナーを楽しめました。 ところでこの館で音声ガイドが付くのは記憶にない(利用しなかったが)。 特設サイトもそうです。 今回は「贅沢な時間」にする為の演出が行き届いていました。  *展示会サイト、 https://turner2018.com/ *「このブログを検索」語句は、 ターナー

■横山大観展

■東京国立近代美術館,2018.4.13-5.27 ■「夜桜」と「紅葉」は5月からの展示だった。 残念だけど、観る機会がよく有るから平気よ。 それより「朝陽霊峰」や「菊花」は多分初めてかも。 三の丸尚蔵館では常設展示しているのかしら? それにしても大観の人物や動物は漫画だわ。 「白衣観音」のキャプションに「デッサンが不得意・・」と書かれてあったけど笑っちゃった。 でも単純化された富士山に面白い作品が多い。 それと海の波もね。 色彩系では 「秋色」や「柿紅葉」が気に入ったわよ。 「生々流転」は「みる人を驚かせてやろう」(大観)という遊び心に連なる作品だとおもう。 これだけの数をまとめて時系列で観ることができる展示会はめったにない。 楽しかったわ。 *生誕150年記念展 *展示会サイト、 http://taikan2018.exhn.jp/ *「このブログを検索」語句は、 横山大観

■プーシキン美術館展-旅するフランス風景画-

■東京都美術館,2018.4.14-7.8 ■つくられた風景から在るが儘の風景へ、都市の風景から近郊の風景へ、南の風景へ海の向こうへ・・、旅をするかのように風景が広がっていく。 そんなことは気にせず1枚1枚楽しみながらみていく。 いつものように近くからみたあと5メートルくらい離れてみると絵の素晴らしさが倍増する。 離れたシスレーの3枚がとても良かった。 緑の多さと対照的なマルケのパリの街2枚が逆に清涼剤になっているのが面白い。 風景の広がり方は鉄道の発展と歩調を合わせていることに気付く。 鉄道と印象派の関係はよく話題になるし会場の解説にも載っていたからだ。 5章は「南へ」だが「北へ(ノルマンディー)」は省いたのかな? やはりロシアは太陽が恋しいのだろう。 クロード・モネ「草上の昼食」は目玉であるだけにじっくりみる。 木の葉や人物にあたる光が重いので空気が濃く感じられ湿度の量までわかる。 初夏のパリ郊外に居るようだ。 ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、ボナールも納得できる1枚があり満足。 *展示会サイト、 http://pushkin2018.jp/

■名作誕生-つながる日本美術-

■東京国立博物館・平成館,2018.4.13-5.27 ■「國華」は近頃見たことが無い。 「世界最古」の美術雑誌というとギリシャ・ローマ時代から続いているようでカッコイイ。 「つながる」を合言葉に先ずは鑑真や渡来仏師が木材を介して日本の仏教彫刻につなげていく。 会場で立像を両側にみながら歩いていくのは壮観である。 次に南宋・元画家が雪舟へ、鎌倉時代絵画が宗達へ、元・明画家が若冲へとつながっていく。 文正、若冲、探幽の鶴が並べられていたが若冲の光り輝く羽羽フサフサ感は素晴らしい。 そして伊勢物語・源氏物語が江戸の画や工芸につながっていく。 4章から山水をつなぐ、花鳥をつなぐ、人物をつなぐ、古今をつなぐ等々になり人物同士の直接の繋がり方が見えなくなる。 具体的には富士山や蓮などを介して多くの画家が繋がったと言うことらしい。 近代は岸田劉生の「野童女」が寒山とつながる。 「剽窃、模倣、継承、その上で創造・・」(佐藤康宏)。 美術作品が出来上がっていく過程では「つながる」のがあたりまえだと言ってよい。 *創刊記念「國華」130周年・朝日新聞140周年特別展 *館サイト、 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889

■日本の四季-近代絵画の巨匠たち-

■汐留ミュージアム,2018.4.2-15 ■この美術館でこのようなタイトル展は珍しい。 しかも松下幸之助が収集したようね。 彼は絵については何も語らなかったらしい。 展示作品をみても彼の好き嫌いは抜きにして集めた感じだわ。  春・夏・秋・冬で章が組み立てられているの。 しかも違う作者の「椿」や「薔薇」を並べて比較できるようにしている。 自ずと比べてしまう。 「ツバキ」なら林武より中川一政のほうが、「バラ」も林武や梅原龍三郎より中川一政が気に入る。 もし中川一政の作品だけならここまで気に入るかしら? 面白い展示方法だわ。 「スイセン」なら上村松篁より山口華楊が断然いい。 「ミカン」なら速水御舟より福田平八郎ね。 「ツル」だと杉山寧や上村松篁より川端龍子だわ。 人それぞれだと思うけど楽しいわね。 そして大好きな小倉遊亀が6点もある。 「メロン」と「モモ」は一つの果物と陶器を描いているけどメロンも桃もとても硬く感じるの。 つまり陶器の硬さに迫っているけど柔らかい。 この微妙な差が、最高! 松下幸之助と意見が合ったわね。 *パナソニック創業100周年特別記念展 *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/18/index.html

■中平卓馬「氾濫」

■渋谷アイビスビル B1,2018.3.10-4.14 ■森山大道の作品を粗くしたような画面である。 粗さは粒子もそうだが被写体そのものをも貫通している。 二人は「生涯のライバル」だから影響を受け合ったのだろう。 「氾濫」は1974年国立近代美術館「15人の写真家」の一人として48点をまとめたインスタレーション作品として出展している。 今回は写真集「氾濫」の刊行に合わせての展示会らしい。 会場壁面には作品が再現されている。 1970年頃の匂いが漂っているが日常の風景とは違う。 都市深層の断片のようだ。 しかし東京に深層などあったのだろうか? 都市の過去はいつも深層があるようにみえるからだ。 あるのは表層の裂け目だけかもしれない。 写真は新しい過去=裂け目をいつも見せてくれる。 *exciteサイト、 http://ism.excite.co.jp/art/rid_E1520298838238/

■理由なき反抗

■ワタリウム美術館,2018.4.7-7.29 ■アンディ・ウォーホルの「理由なき反抗」はいいですね。 映画は並みの出来でしたが記憶に残ってます。 ジェームス・ディーンだからでしょう。 展示構成は1章レジスタンス、2章デザイン革命、3章理由なき反抗。 ・・でもここで何故デザイン革命なのか? それはともかくバックミンスター・フラーが「・・人類は太陽エネルギーだけでも生きていける」と1982年に言ってますが流石フラー先見の明がある。 それでも原発に固執し再生可能エネルギーを送る余裕が送電線に有るのに無いと反抗しているのは利権維持が理由でしょう。 理由が有るのに無いかのように反抗している森友問題も同じです。 理由なき反抗が清々しくみえます。 *館サイト、 http://www.watarium.co.jp/exhibition/1804rebelwithoutreason/index.html

■「光画」と新興写真  ■写真発祥地の原風景/長崎  ■原点を、永遠に。

■東京都写真美術館,2018.3.6-5.6 ■「光画」と新興写真-モダニズムの日本- ■同人雑誌「光画」が発行された1930年頃を背景に絵画主義を脱し新即物主義へ移行した新興写真の展示会である。 シュルレアリスムの影響もみえる。 当時の少ない情報を試行錯誤しながら作品を高めているのが分かる。 それにしても日本的新興である。 客観志向や機械優位、フォトグラムやフォトモンタージュ利用は分かるが生活記録や人生教訓なども方針に入っているのが面白い。 この新興写真は前衛と広告に引き継がれていく。 宣伝雑誌「FRONT」や「NIPPON」をみてもその記憶がみえる。 たとえプロパガンダでもカメラの冷たさが芸術性を招き寄せている。 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2964.html ■写真発祥地の原風景/長崎 ■「長崎づくし」でゲップがでてしまった。 長崎港がこれでもかと続くのには参りました。 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2960.html ■原点を,永遠に。-2018- ■この展示会が一番面白かった。 観客も沢山入っているのに納得。 作品の陳列方法もいい。 著名写真家の35歳までの作品を年代降順で左壁に、公募で選んだ35歳以下の作品を年代降順で右壁に展示している。 撮影時期は1886年から2016年。 計95人409点だから一人4点前後になる。 次から次へと変化していく写真から目が離せなくなる。 作品の質も申し分ない。 4月17日から並び替えを作家順に変えて展示される。 また行ってもよい。 *清里フォトアートミュージアム(K★MoPA)収蔵作品展 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3000.html

■ヌード、英国テート・コレクションより

■横浜美術館,2018.3.24-6.24 ■人物でも特にヌードは独特な雰囲気があります。 作品を目の前にしたときの集中度が自ずと強くなるからでしょう。 風景画は分散していくし静物画は分散に向かう集中だからです。 集中し過ぎることが出来る、ということはヌードの力はやはり凄い。 しかもコレクション展の面白さがでていますね。 知らない画家や作品が多い為です。 時折有名画家がリズミカルに出てくる。 英国18世紀以降のヌードの見方もよく分かる。 ビクトリア朝時代は作品の一部を隠して展示していた。 20世紀後半では「平等な世界は女性のヌードが問題となることは無い」(リンダ・ノックリン)。 「見る側の所有欲を打ち砕く!」(シンディ・シャーマン説明文)。 デイヴィッド・ホックニーなど男性作品をみているとヌードの深みと複雑さが増していきます。 キャプションにはISM用語が多いのも特徴です。 この中で「ヴォーティシズム」は初めて聞きました。 「渦巻派」とも呼ばれているらしい。 あと絵画からみた「ブルームズベリー・グループ」。 どちらも英国20世紀初頭に起きた運動やグループです。 チラシに「そのヌードには、秘密がある」と書いてあったが、自身の身体が絵の中の身体と秘密のある対話をするので特別な面白さがありました。 *美術館、 https://yokohama.art.museum/exhibition/archive/2018/20180324-496.html