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■2021年美術展ベスト10

□ 没後70年、南薫造   東京ステーションギャラリー □ モンドリアン展   SOMPO美術館 □ アイノとアルヴァ、二人のアアルト   世田谷美術館 □ ファッション・イン・ジャパン1945−2020   国立新美術館 □ GENKYO横尾忠則   東京都現代美術館 □ マン・レイと女性たち   Bunkamura・ザミュージアム □ 山城知佳子、リフレーミング   東京都写真美術館 □ 諸星大二郎展、異界への扉   三鷹市美術ギャラリー □ 小早川秋聲、旅する画家の鎮魂歌   東京ステーションギャラリー □ 川瀬巴水、旅と郷愁の風景   SOMPO美術館 *並びは開催日順。 選出範囲は当ブログに書かれた展示会。 映画は除く。 *「 2020年美術展ベスト10 」

■ユージーン・スタジオ、新しい海 ■クリスチャン・マークレー、トランスレーティング(翻訳する) ■久保田成子展 

*以下の□3展を観る。 ■東京都現代美術館,2021.11.13-2022.2.23 □ユージ-ン・スタジオ,新しい海 ■会場に入って真っ白なカンバスに先ずは目が吸い付く。 でもこの作品「ホワイトペインティング」は説明を読まなければキス跡を想像できない。 「レインボーペインティング」も同じ。 「目にみえる/みえないものがある・・、異なる認識を受け入れて現実を再認識する・・」。 変化球を投げる画家にみえる。 これが「共にあること」に繋がっていくの。 共生という見方を広げないといけない。 でも言葉が飛躍し過ぎる。 「レインボーペインティング」は何も考えずにじっとみるのがいいわね。 作品「海底」は規模の大きさに驚いてしまった。 鏡を使うから余計に広く感じる。 水槽の枠を目立たないようにすれば水に囲まれているようにみえたはずよ。 次に何がでるか? ドキドキ感があるわね。 そして「善悪の荒野」も。 部屋の焼け跡が素晴らしい。 「2001年宇宙の旅」を題材にしたらしい。 タイトルも意味深い。 多くの作品に複雑な背景が感じられるが素直に観るのが一番かも。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/the-eugene-studio/ □クリスチャン・マークレー,トランスレーティング(翻訳) ■これは面白い。 音楽をダイレクトに文字に変換した作品を前にすると、その変換された文字から音(音楽)が再生するように感じられるから。 これを翻訳と言うらしい。 たぶん再変換が大事なの。 聴覚→視覚→聴覚の流れね。 漫画はこの流れに近い。 そして音と音楽との関係も論じている。 社会から発生する雑音を音楽に変換する作品も多い。 でも、どちらも古臭く感じるのはマルチメディア時代前の作品だから? その為か音楽の表象化・物質化・商品化が直截に展示されていて気持ちがよかった。 「・・言語を信用できない」と彼は言っている。 これも直截に貢献していたかな。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/christian-marclay/ □VivaVideo!久保田成子展 ■ベールを剥がした久保田成子。 彼女の気配は感じていたけれど表立っては登場してこなかった。 「フルクサス」時代から小野洋子やナム

■記憶は地に沁み風を越え ■松江泰治、マキエタCC ■fire/火

■東京都写真美術館,2021.11.6-2022.1.23 □記憶は地に沁み,風を越え 日本の新進作家vol.18 ■作家:吉田志穂,潘逸舟,小森はるか+瀬尾夏美,池田宏,山元彩香 ■記憶・地・風から内容を想像できるが作家6人6様ですね。 科学風、災害ドキュメンタリー、ポートレート、私小説風とバラエティ豊かです。 解説を読んでから作品をみるよりその逆が面白い。 まずは写真からいろいろ感じ取り後に解説を読む。 作者との乖離の大きさが面白い、作品内に言葉があれば別ですが。 次にその乖離を縮めていく。 作者との仮想対話のようなものです。 納得したところで次の作者へ会いにいく。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4033.html □松江泰治,マキエタCC ■「地平線や空を含めない。 被写体に影が生じないように順光で撮る・・」。 これだけでは分からないが作品を見たとたん唸ってしまった。 連なるビルは模型をみているのか!? しかしこれは実物だと自身を説得する自分がいる。 「奥行きが取り除かれあらゆるものが等しく存在する・・」。 平面の謎が浮き出てきます。 写真は奥深い。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4031.html □fire/火 ■プリピクテ賞は初めて聞く。 スイスの投信投資会社ピクテグループが2008年に創設した写真賞です。 今年のテーマは「Fire(火)」で13人の作家が選ばれた。 川内倫子の「花火」は花火と観客の姿が絶妙です。 ファブリス・モンテイロ「ザ・プロフェシー(予言)」はアフリカの公害汚染・環境災害を背景におどろおどろしい衣装を着た預言者が登場する。 世紀末を感じさせます。 ブレント・スタートン「やけどの都」は毎年600万人も火傷するインドの現状を写している。 多くは灯油が原因だが治療設備が少ないため悲惨な状態が迫ってくる。 他にも見応えある作品が並ぶ中身の濃い展示会でした。  *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4035.html

■助教・助手展2021、武蔵野美術大学助教助手研究発表 ■牧野良三、舞台美術における伝達と表現

■武蔵野美術大学美術館,2021.11.29-12.21 □助教・助手展2021 ■助手は知っていたが助教は聞き慣れない言葉だ。 助教授かな? 「教授、准教授、講師の次の職階に位置する・・」(wiki)。 旧来の助手を二つに分けたらしい。 職位を細かくしても窮屈になるだけだと思うが。 展示会は以前の「助手展」が今年から「助教・助手展」になったということである。 研究発表とは大げさな感じがする。 絵画はもとより彫刻・デザイン・建築・映像・芸術文化・・、なんでもアリだ。 このため美術界の現状位置や今後の方向性がよくわからない。 挨拶文に「他研究室が何をしているのかを知る・・」とある。 組織内の風通しを良くする為もあるらしい。 しかし面白い作品が多いし気軽にみることができる。 新しい素材(材料)を扱っているので触ってみたい作品が多い。 作品の横に触れる小サンプルを置いてもらえれば有り難い。 *美術館、 https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/17292/ □牧野良三,舞台美術における伝達と表現 ■会場には実際の舞台模型やデッサン過程の資料が展示されている。 オペラ、バレエ、演劇など多くを手掛けてきているのが分かる。 劇場にはよく行くほうだ。 舞台美術にも興味はあるのだが美術担当の名前まで覚えていない(申し訳ない)。 チラシに「オペラとオペラコンチェルタンテの比較を論じたい」とあったが展示はそのようにはみえなかった。 オペラの欠点は演奏者がピットに隠れて観客からみえないことにある。 指揮者や演奏者も登場人物になりえる。 舞台に立つ必要はないが演者の身体がみえるのは大事だとおもう。 指揮者の頭だけをみても楽しくない。 オペラコンチェルタンテは展示会意図とは違う意味で興味がある。 能が面白いのは地謡や囃子も役者として等しく振る舞うからだろう。 演者の生の身体をフォーカスするのが舞台芸術と言える。 *美術館、 https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/17287/

■川瀬巴水、旅と郷愁の風景

 ■SOMPO美術館,2021.10.2-12.26 ■作品リストの番号が279まで続いている。 版画だからできる展示数ですね。 この量から川瀬巴水の全体像がみえてくる。 旅に始まり旅に終わる作家、旅情詩人だったことを初めて知りました。 東京を起点として「塩原三部作」「旅みやげ第一集」「東京十二題」・・「旅みやげ第二集」「日本風景選集」「旅みやげ第三集」「東京二十景」「東海道風景選集」「日本風景集関東篇」「日本風景集関西篇」「新東京百景」・・「朝鮮八景」「続朝鮮風景」・・。 つまり東京を出発して全国を飛び回り東京に戻り、東京を描き、再び旅に出る。 この繰り返しを強調した展示構成になっています。 版画は絵師、彫師、摺師、担当・工程が別れている。 版元である渡邉庄三郎の存在も強調されている。 チームワークが大事ですね。 巴水は旅先でも版元といつも連絡を取り合っている。 手紙等ではカネの工面などを含め現実的なやり取りをしています。 巴水の作品は後期になると活気のない繊細さが現れてきた。 それを跳ね除けダイナミックさを取り戻すのが朝鮮旅行だった。 40年も描いてきたから不調もあるでしょう。 夏空の雲と木々の緑、遠くの山々、雪の白と欄干の赤、早朝の光に夕暮れどき・・、なんとも言えない、どこか懐かしさもある風景が、どこまでも続く会場でした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/kawasehasui/

■ザ・フィンランドデザイン展、自然が宿るライフスタイル ■ファブリックの女王

□ザ・フィンランドデザイン展 ■Bunkamura.ザミュージアム,2021.12.7-2022.1.30 ■フィンランド系展示会が今年は他に(当ブログでは)2展あった*1。 少数の作家に焦点をあてた内容が多い。 でも今回は50人以上が登場するらしい。 はたして会場は暮らしの必需品で一杯。 家具や食器、衣服や装飾、絵画や本・雑誌、玩具までも・・。 総論と言ってもよいわね。 知っている作家は数人しかいない。 会場を見回して一言で表現すると<おおらかさがある>。 これをフィンランドの色と形は持っている。 「大いなる自然を忘れない」ライフスタイルをづっと貫いているのね。 *1、「 アイノとアルヴァ,二人のアアルト 」(世田谷美術館),「 サーリネンとフィンランドの美しい建築 」(汐留美術館) *美術館、 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_Finland/ □ファブリックの女王  ■監督:ヨールン・ドンネル,出演:ミンナ・ハープキュラ,ラウラ・ビルン,ハンヌ=ペッカ・ビョルクマン他 ■(フィンランド,2015年作品) ■上記展示会と同時にこの映画(配信)を観る。 ファションブランド「マリメッコ」の創業者アルミ・ラティアの伝記ドラマよ。 アルミは楽観的で直感的な性格のためか支離滅裂に描かれているの。 煙草と無駄が多く会社経営も放漫にみえる。 しかも酒癖で占いにも頼る。 「花束を集めるように人を集める」。 従業員の科白は彼女を言い当てている。 彼女がいろいろ苦しんでいたことは想像できるけどね。 でも世界の「マリメッコ」に成長した過程がぼやけている。 たぶん戦後世界に<おおらかさ>を提供したから? 映画の彼女はこの真逆にみえた。 実際のアルミ・ラティアはどういう人物だったのかしら? *「 マリメッコ展 」(Bunkamura) *映画com、 https://eiga.com/movie/83412/