■川瀬巴水、旅と郷愁の風景

 ■SOMPO美術館,2021.10.2-12.26
■作品リストの番号が279まで続いている。 版画だからできる展示数ですね。 この量から川瀬巴水の全体像がみえてくる。 旅に始まり旅に終わる作家、旅情詩人だったことを初めて知りました。
東京を起点として「塩原三部作」「旅みやげ第一集」「東京十二題」・・「旅みやげ第二集」「日本風景選集」「旅みやげ第三集」「東京二十景」「東海道風景選集」「日本風景集関東篇」「日本風景集関西篇」「新東京百景」・・「朝鮮八景」「続朝鮮風景」・・。 つまり東京を出発して全国を飛び回り東京に戻り、東京を描き、再び旅に出る。 この繰り返しを強調した展示構成になっています。
版画は絵師、彫師、摺師、担当・工程が別れている。 版元である渡邉庄三郎の存在も強調されている。 チームワークが大事ですね。 巴水は旅先でも版元といつも連絡を取り合っている。 手紙等ではカネの工面などを含め現実的なやり取りをしています。
巴水の作品は後期になると活気のない繊細さが現れてきた。 それを跳ね除けダイナミックさを取り戻すのが朝鮮旅行だった。 40年も描いてきたから不調もあるでしょう。 夏空の雲と木々の緑、遠くの山々、雪の白と欄干の赤、早朝の光に夕暮れどき・・、なんとも言えない、どこか懐かしさもある風景が、どこまでも続く会場でした。