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■田根剛、未来の記憶 Search&Research

■TOTOギャラリー・間,2018.10.18-12.23 ■作品22点の手作り模型や材料・部品が3階に展示されている。 壁には関連写真が一杯。 ギャラリーが狭いから庭も使っていて密度の濃い内容にみえる。 4階は作品映像のみ。  田根剛は「エストニア国立博物館」と「新国立競技場古墳スタジアム」しか知らないの。 飛行場がせり上がる写真は宇宙時代を感じるわね。 緑に包まれた山のようなスタジアムも言うことなし。 この2作品だけでも未来と過去の時間差がとても大きい。 彼の建築に対する考え方が分かった。 「・・考古学のように遠い時間を遡り、場所の記憶を掘り起こすことから始める」。 土器の破片や古いレンガ等々が多く展示されている理由がみえてきた。 「記憶は過去のものではなく、未来を生み出す原動力へと変貌・・」。 どの作品をみても時間と場所の記憶が染みている。 50文字前後の一息で説明しているキャプションも面白い。 4階の映像は挨拶程度の内容ね。 遠い時間と場所を考えている建築は多々あるけど、その完成品をみると結局は今の時間と場所を修飾しているだけ。 でも田根剛の作品はそれが深層まで届いている感じがする。 記憶から過去=未来にまで作り上げることが出来るか?にかかっているようね。 オペラシティ・アートギャラリーでも同企画展が開催されているらしい。 両館の関係がよく分からないわね。 ということで初台へGO!! *館サイト、 https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm

■全員巨匠!フィリップス・コレクション展

■三菱一号館美術館,2018.10.17-2019.2.11 ■2005年の「フィリップス・コレクション展」も素晴らしかったことを覚えています*1。 何故ダンカン・フィリップスは納得のいく作品を蒐集できたのでしょうか? 今回はこの疑問に近づけそうな展示会です。 というのも章ごとに彼の蒐集へのアプローチが書かれていたからです。 しかも作家作品についての感想も並べられている。 彼の考えや好みがわかります。 フィリップスは言っている。 「芸術は・・、楽しい時は肯定する気持ちに、苦しい時は逃避する気持ちに、・・解き放してくれる」と。 具体的効用を求めています。 先ずはドーミエを集めたのは財を成した祖父(の時代と生き方)に近づく為ではないでしょうか? 彼の祖父ジェームズ・ラフリンとドーミエは生年が2歳しか違いません。 「新聞」(ヴュイヤール)では「住んでいた住居に似ている」。 日常世界への親しみやすさとして親密ですね。 ボナールも同じだと思います。 蒐集時期が遅いセザンヌとカンディンスキーは現実世界との関係が見出せなかったからでしょう。 「セザンヌは孤高の中で挑戦する眼差しを持っている」。 なんとセザンヌの目つきを論じているのが面白い。 ピカソよりもブラックを好んだのも分かります。 ブラックは元々室内装飾ですしピカソは五月蠅過ぎる。 でもピカソ6点中の3点が会場最後にまとまって展示されていたのは嬉しいですね。 フィリップスに少し近づけました。 彼は欲しい絵を求めるため資金繰りで持絵も手放した。 芸術に対しても現実的な人とみました。 ところで会場は照明が暗かった。 この狭い部屋を明るくしていたのは「画家のアトリエ」(ラルフ・デュフィ)と「サン=ミシェル河岸のアトリエ」(アンリ・マティス)のアトリエ2室でしょう。 またボナールの4点は開催中の「 ボナール展 」の特別ボーナスですね。 ミュージアムショップでは気に入ったセザンヌの「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」絵ハガキを1枚購入しました。 今ハガキを眺めながらこのブログを書いています。 *1、森アーツセンターギャラリー、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/2005/ *「 モダン.アート-アメリカン,珠玉のフィリップス.コレクション- 」(国立新美術館,201

■ルーベンス展ーバロックの誕生ー

■国立西洋美術館,2018.10.16-2019.1.20 ■「イタリアとのかかわりに焦点を当てる」と書いてあったけど、具体的にはギリシャ・ローマ時代の彫刻を指すみたい。 「古代彫刻は石のように描いてはいけない」。 これがルーベンスが描く豊穣な肉体の原点だったのね。 また一つ彼の謎が解けた。 しかもイタリア時代の作品は空気が澄んでいて清々しい感じがする。 空気が人物の輪郭を浮き出させている。 うーん、最高! でも工房を設立してからは出来不出来の差が激しい。 例えば聖人の死を描く場合に顔は灰色だけど体はまだ血の気がある。 たぶん顔だけをルーベンスが描き体は工房画家なの。 死の事実かもしれないけど絵としては調和が崩れている感じにみえる。 工房以外の画家と共同制作していたのも驚きね。 これがルーベンスの恐るべきところかもしれない。 現代社会なら彼は芸術監督、ブロデューサー、コンサルタントのようだわ。 後半はこれに外交官も熟しているのがすごい。 有能な画家であり外交官は彼しかしらない。 レオナルドもミケランジェロもアルチンボルドも外交官としては劣るからよ。 2月に開催した「 プラド美術館展 」でベラスケスとルーベンスの関係が語られたけど今年の西洋美術館はバロックの年と言ってもいいわね。 *館サイト、 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018rubens.html *「このブログを検索」語句は、 ルーベンス

■フェルメール展

■上野の森美術館,2018.10.5-2019.2.3 ■入口で配られた豆本のような解説書はいいですね。 1頁1作品で字が大きく、暗く混んでいる会場でもダイレクトで読むことができる。 音声ガイドも無料で配布していたが、豆本が良くできていたので使いませんでした。 場内はフェルメールの部屋まで関連作品が続きます。 「肖像画」「神話・宗教画」「風景画」「生物画」「風俗画」そしてやっと「フェルメール」が登場! しかし最後にドカッとまとめて観るのも疲れます。 感動が薄れる。 しかもフェルメール9作品と定型的な章の組み立て方が交じり合っていかない。 もったいない展示順序だと思います。 「マルタとマリアの家のキリスト」は初めて観た気がします。 でもフェルメールらしさが未だ発酵していない。 やはり一番は「牛乳を注ぐ女」ですか。 牛乳、パン・・全てが光で微振動していますね。 灰色っぽい作品の前ではハンマースホイを急に思い出してしまった。 フェルメール以外では「捕鯨をするオランダ船」(A・ストルク)が楽しい。 鯨だけではなく北極熊に槍を向けたり、泳いでいる海象も描かれています。 細かいためジックリ隅々まで見てしまった。 「港町近くの武装商船と船舶」(C・V・ウィーリンヘン)の海の色はブリューゲルの「バベルノ塔」の海と同じです。 「野兎と狩りの獲物」(J・ウェーニクス)の兎の毛並みはホカホカで気持ちよかった。 そして「海上のニシン船」(S・D・フリーヘル)の大気は素晴らしい。 他に数点気に入った作品がありました。 フェルメールの故郷デルフトであるハーグには行ったことがない。 ということでアムステルダム国立美術館を訪れた時のことや、アムスの街並み運河風景を思い出しながら会場を後にしました。 *館サイト、 http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=857636

■京都・醍醐寺ー真言密教の宇宙ー

■サントリー美術館,2018.9.19-11.11 ■老翁が飲んだ水を「醍醐味」と表現したのが寺名の由来だと初めて知った。 今回は展示約80点全てが醍醐寺所蔵しかも多くが国宝・重文というのが素晴らしい。 会場に入ると先ずは「如意輪観世音坐像」が出迎えてくれるのも嬉しい。 思っていたより小さな像だ。 次の「聖宝坐像」も寺の開祖ということで順当。 そして空海の開題や曼荼羅が続き副題通りの宇宙を形成していく。 快慶の「不動妙坐像」を見た後の「五大明王像」は少し漫画チックな感じがする。 スカッとしたロボットのような足が仏像に見えない。 日記、書状など古文書も多く展示されている。 これをみると寺院内外での派閥争いも多かったようだ。 時代の権力者から支援を得られ続けた理由はよく分からない。 権力者が好む未来を読む企画・提案力が高かったのだろう。 松涛美術館「 醍醐寺展 」(2014年)は「過去現在絵因果経」を中心にして展開したが、今回はエピローグを「醍醐の花見」にしてより華麗な寺に仕上がっていた。 *館サイト、 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_4/index.html

■ピエール・ボナール展

■国立新美術館,2018.9.26-12.17 ■ボナールの絵には生活の余裕が見えます。 他の画家とは違います。 と言うのも先日ゴーギャンの映画*1を観てしまったからです。 そして若い時はヴュイヤールと影響しあっていたのですね? 会場では彼の名前が目に付く。 それ以上に両者の作品は似ています。 2章「ナビ派時代のグラフィック・アート」で、彼が版画でデビューしたことを忘れていた。 3章「スナップ・ショット」で、コダックのカメラに興味を持っていたのも初めて知りました。 ボナールを知っているようで知らない。 さすが大回顧展だけあり全体像がみえてきます。 いやー、楽しいですね。 4章「近代の水の精たち」の肌色と包み込む青、5章「室内と静物」の黄金色の日常、6章「ノルマンディー風景」の溢れる緑色・・。 なんとも言えない色々、何とも言えない空間・・。 彼はシャルダンに心酔していたようです。 シャルダン*2の<時間の静止>をそのまま空間に星屑のように散らかしたのがのがボナールでしょう。 どちらも静止が「親密さ」となって表れ人生の豊かさが何であるかを感じさせてくれます。 やはり他画家とは違う余裕がみえます。 *1、「 ゴーギャン-タヒチ,楽園への旅- 」(2017年作品) *2、「 シャルダン展-静寂の巨匠- 」(2012年,三菱一号館美術館) *オルセー美術館特別企画展 *館サイト、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/bonnard2018/