■全員巨匠!フィリップス・コレクション展

■三菱一号館美術館,2018.10.17-2019.2.11
■2005年の「フィリップス・コレクション展」も素晴らしかったことを覚えています*1。 何故ダンカン・フィリップスは納得のいく作品を蒐集できたのでしょうか? 今回はこの疑問に近づけそうな展示会です。 というのも章ごとに彼の蒐集へのアプローチが書かれていたからです。 しかも作家作品についての感想も並べられている。 彼の考えや好みがわかります。
フィリップスは言っている。 「芸術は・・、楽しい時は肯定する気持ちに、苦しい時は逃避する気持ちに、・・解き放してくれる」と。 具体的効用を求めています。 先ずはドーミエを集めたのは財を成した祖父(の時代と生き方)に近づく為ではないでしょうか? 彼の祖父ジェームズ・ラフリンとドーミエは生年が2歳しか違いません。 「新聞」(ヴュイヤール)では「住んでいた住居に似ている」。 日常世界への親しみやすさとして親密ですね。 ボナールも同じだと思います。 蒐集時期が遅いセザンヌとカンディンスキーは現実世界との関係が見出せなかったからでしょう。 「セザンヌは孤高の中で挑戦する眼差しを持っている」。 なんとセザンヌの目つきを論じているのが面白い。 ピカソよりもブラックを好んだのも分かります。 ブラックは元々室内装飾ですしピカソは五月蠅過ぎる。 でもピカソ6点中の3点が会場最後にまとまって展示されていたのは嬉しいですね。 フィリップスに少し近づけました。 彼は欲しい絵を求めるため資金繰りで持絵も手放した。 芸術に対しても現実的な人とみました。
ところで会場は照明が暗かった。 この狭い部屋を明るくしていたのは「画家のアトリエ」(ラルフ・デュフィ)と「サン=ミシェル河岸のアトリエ」(アンリ・マティス)のアトリエ2室でしょう。 またボナールの4点は開催中の「ボナール展」の特別ボーナスですね。 ミュージアムショップでは気に入ったセザンヌの「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」絵ハガキを1枚購入しました。 今ハガキを眺めながらこのブログを書いています。
*1、森アーツセンターギャラリー、https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/2005/
*「モダン.アート-アメリカン,珠玉のフィリップス.コレクション-」(国立新美術館,2011年)
*館サイト、https://mimt.jp/pc/