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■宮川香山、欧米を感嘆させた明治陶芸の名手

■サントリー美術館,2016.1.24-4.17 ■場内で最初に目にする「蟹花瓶」(1916年)はやはり唸ってしまう。 そして前半は高浮彫のオン・パレードである。 植物や昆虫・両生類・鳥類などを総動員させ表面にへばり付かせている。 猫や鶉など身近な生物は呼吸しているのがわかる。 香山は鶉を自宅で飼い観察していたらしい。 鬼や普段見られない生き物は漫画のようで落差がある。 輸出港横浜の工房は輸送で破損し易い高浮彫を優位にしたはずである。 後半は磁器が並ぶ。 一息つけた。 高浮彫は料理に例えれば肉料理である。 香山本人も胃がもたれたのではないだろうか? 陶器から磁器に切り替えた理由の一つだとおもう。 胃でなく目だが・・。 釉薬や釉下彩の研究にも興味があったのだろう。 完成に何年もかかる高浮彫は採算も合わない。 アールヌーボーを意識した「青華蟹図平花瓶」の蟹は一皮剥けている。 陶器と磁器どちらが欠けても宮川香山とは言えない。 香山の作品は海外流出が多く見る機会が少ない。 今回の出品150点の多くは田邊哲人コレクションからである。 没後100年展。 *館サイト、 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2016_1/?fromid=topmv

■ボッティチェリ展  ■新鋭美術家2016、都美セレクション

■東京都美術館,2016.1.16-4.3 ■うーん、なかなかの展示ね。 師匠のフィリッポ・リッピと弟子でライバルになるフィリッピーノ・リッピにサンドイッチされているボッティチェリの展示順序は上手く考えられている。 ボッティチェリが立体的に浮かび上がってくるの。 今回の作品では1480年前半(30歳後半)が一番かな。 それは「美しきシモネッタ」「書物の聖母」「胸に手をあてた若い男」の頃よ。 「シモネッタ」をみていると両目のシモネッタも見たくなるわね。 もう1枚描いて欲しかったわ。  そしてこれだけのフィリッポ親子の絵をみるのは初めてかも。 ボッティチェリの後にフィリッピーノをみるとホッとする感じね。 それはボッティチェリが理性的すぎるからだとおもう。 「聖母子と洗礼者ヨハネと天使」などをみてもライバルと言われていたのが納得できる。 サヴォナローラの影響に染まり「虚飾の焼却」でルネサンスが萎んでしまったのは残念ね。 今年は展示会にあまり行ってないけど近頃では一番の出来だった。 日伊国交樹立150周年記念展。 *展示会サイト、 http://botticelli.jp/ ■新鋭美術家2016-都美セレクション- ■ボッティチェリ展のついで寄ってみたの。 気に入ったのは武田司の作品かな。 錆漆は初めてかもしれない。 これに螺鈿、蒔絵を組み合わせた日本画は面白い。 戸田麻子と森美樹は女の両極端を描いていて心に残る。 西村大喜の大理石は植物の形を真似ているせいか生物的な親近感が現れているわね。 *館サイト、 http://www.tobikan.jp/exhibition/h27_newwave.html

■絵画のゆくえ2016、FACE受賞作品展

■損保ジャパン日本興亜美術館,2016.1.9-2.14 ■FACE2013から三年間に受賞した作家12名の近・新作80点の展示会です。 年齢・所属を問わないのがいいですね。 でも年齢の違いは大きい。 若い画家たちは内向的な作品が多い。 不安で一杯なのが分かります。 キャプションに画家の言葉が掲示されていて作家・作品が身近に感じられます。 これを読んでFACE展のような公募コンクールの必要性を考えてしまいました。 公募展への感謝の言葉が多かったからです。 やはり内向きにみえます。 この場では将来の計画や夢を多く語るべきでしょう。 観客も展示会の社会的位置付けなどに目を向けないといけませんが・・。 *館サイト、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/past/2016/

■創造と神秘のサグラダ・ファミリア

■監督:S・ハウプト ■恵比寿ガーデンシネマ,2015.12.12- ■建築家アントニオ・ガウディが構想し今も建築中の教会サグラダ・ファミリアの映像と関係者インタビューでまとめた作品である。 建設途中のため何とも言えないが、内部は明るく滑らかにみえる。 あらゆる驚きを拭き取ってしまった感じだ。 コンクリートが原因らしい。  建築家・彫刻家・現場監督そして教会関係者のインタビューは面白い。 特にガウディがモンセラート修道院の風景から着想を得た話しには納得。 あの岩山の形は教会に似ている。 工事中の建物内部に既に使用している教会が出来ているのも初めて知る。 そして土地問題や地下 鉄工事などの難題も持ち上がっているらしい。 しかし過去と現在は語るが未来がまったく見えない。 「神は完成を急いでおられない」の言葉通りである。 対象が未完のドキュメンタリー作品では未来が語られないと何か物足りなくなる。 教会完成像やスケジュールに関しては一昨年開催の「 ガウディX井上雄彦展 」にも展示されていた。 このあたりを議論していたら深みのある映画になっていただろう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/81607/