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11月, 2020の投稿を表示しています

■建築と時間と妹島和世

■監督:ホンマタカシ,出演:妹島和世 ■建築ユニットSANAAは知っています。 今回はユニットから離れて、大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎を設計・施工から完成までを追った妹島和世のドキュメンタリー映画にしています。 妹島が仕事をしているところを映像で観るのは初めてです。 彼女は模型を重視している。 紙で作り続ける。 模型が身体を納得させないと先へ進まない。 現場で違和感があっても模型に戻り良し悪しを判断する。 視覚と触覚の統合が重要にみえます。 でも「ロレックス・ラーニング・センター」(2009年)では模型だけでは見落としがあったらしい。 それだけ複雑だったのでしょう。 出来上がった新校舎は自然体が素晴らしい!、・・実際に見学していないので中身は何とも言えないのですが。 周囲環境との融合を重視している。 今回はコンペとは違い予算処理がいつもと違ったようです。 このため1枚屋根から数枚屋根に変更したことも語られる。 師匠伊藤豊雄よりしなやかな作品が多い。 曲がりくねった薄い屋根と柱に重量感が無いからでしょう。 弱々しくみえてしまう時もある。 同時期の作品では西武鉄道「ラビュー」(2018年)があります。 丸みのあるシルバー色で蜻蛉のような大きな青目の運転窓を持つ列車は親しみがある。 その姿は風景にピッタリ納まる。 新校舎も同じです。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93612/

■石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか  ■透明な力たち MOT ANNUAL 2020

■東京都現代美術館,2020.11.14-2021.2.14 □石岡瑛子展 ■作家:石岡瑛子,レニ・リーフェンシュタール,アーヴィング・ペン,ヴェルナー・ヘルツォーク,フランシス・フォード・コッポラ,ターセム・シン,チャン・イーモウ他 ■会場には石田瑛子の声が響いている。 安定感ある渋い声だ。 政治家が話しているように聞こえる。 瑛子と言えば資生堂とパルコだろう。 前田美波里のデッカデカ、リサ・ライオンのムッキムキ、沢田研二のアァアアア、アップ全盛の野生時代である。 そこにはタイムレス、エイジレス、ジェンダーレス、クラスレスに沿いながら副題の通り、血が、汗が、涙が息づいている。 しかしレニ・リーフェンシュタールの「ヌバ」を最後に彼女の動向は追っていない。 今日、初めて1980年以降の彼女の活動を知った。 なんと音楽、映画、演劇、オペラ・・。 あらゆる分野に進出している。 粗さが目立つのはデザイナー領域を広げ過ぎた為かもしれない。 それにしてもこのパワーはどこから湧き出てくるのか? 野生時代の精神は失っていない。 しかしターセン・シムは凝り過ぎ、ミシマや忠臣蔵は象徴過ぎ、シルク・ドゥ・ソレイユは三宅一生に似過ぎ、指輪はキャラ化し過ぎ、・・・。 過剰はデザイナーとしての組織との葛藤の現われか?  癖の強いヘルツォークやコッポラとのコラボや、三島由紀夫遺族からの上映拒否を知れば彼女の声や喋り方が政治家に聞こえたのも不思議ではない。 パワーとは政治力かもしれない。 *館サイト、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/ □MOT ANNUAL 2020 透明な力たち ■作家:片岡純也,岩竹理恵,清水陽子,中島佑太,GohUozumi,久保ガエタン ■これは変わった展示会だ。 「不可視の力に着目する・・」って? 科学技術を取り入れたものが多い。 電磁気はもちろんDNAも普段は見えない。 実行中のプログラムにも言える。 刺激されたのは久保ガエタンの声に関する作品。 蓄音機や電話を前にして声とは不思議な現象だとあらためて考えてしまった。 エジソンは死者の声と言ったらしいが、当時の人々にとってその人がまさに眼前に蘇ったと思う。 現在の最新科学を前にして狼狽えることができるか? もしできれば芸術として

■生きている東京展

■作家:島袋道浩,張洹,寺山修司,齋藤陽道,JR(ジェイアール),オラフ・ニコライ,デイヴィッド・ハモンズ,ファブリス・イーベル,ナウィン・ラワンチャイクン,バリー・マッギー,マリオ・ボッタ,ナムジュン・パイク ■ワタリウム美術館,2020.9.5-2021.1.31 ■ワタリウムは開館30周年記念を迎える。 この期間の活動をまとめた展示会のようです。 作家12人(組)を選んでいますが過去の展示会映像が多い。 4階には当館を建築したマリオ・ボッタの資料がナムジュン・パイクのインタビュー映像などを交え展示されています。 ここの館は独特の形をしている。 銀色ストライプ模様の特徴あるファサードを持っているが急激に収束してく奥行きの無さに戸惑います。 それはチケット購入後わき目もふらず棺桶のようなエレベータに乗る忙しさに表れている。 ・・にもかかわらず喫茶店が2点(半地下と地下1階)、売店が2点(1階と地下1階)も有るとは驚きです。 東京の美術館の中では窮屈さで1番でしょう。 この狭さが逆に観客身体に密着するような乾いた下町感覚を呼び覚ます。 現代美術がこの感覚に染まっていく・・。 奇妙な混沌が現れる。 これこそが<生きている東京>かもしれない。 今回の12人(組)もこの線に染まり易い作品を展示しているのが分かります。 *館サイト、 http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202009/

■式場隆三郎「脳室反射鏡」

■練馬区立美術館,2020.10.11-12.6 ■式場隆三郎の名前は聞いたことがある。 でも何者か? 主催者挨拶文にも「彼を知ってほしい・・」と書いてある。 これが彼の活動経歴書のような展示にしたのね。 若い時は白樺派精神科医のような人だった。 文学に突っ込み過ぎて医学生として疎かになったと彼自身振り返っている。 でも専門の精神科は文学と相思相愛の時代だった。 ゴッホや山下清への接近は天才や狂気としての病理学と白樺精神の融合かな。 三島由紀夫が彼の隠れファンだったのも興味津々ね。 「イット解剖学」の章にもあるように文学者にとっては性の科学的知見は必須だから。 「草間彌生デビュー」章で彼女を「分裂性女性天才画家」と紹介しているのは当時の病理学として言い当てている。 「可視(科学)と不可視(芸術)の両極を往還した」と解説されていたけど、<医学と芸術の結婚>を求めていたのではないかしら? 彼は不断の生活が重要だったはず。 それは民藝への接近でも分かる。 自宅や病院の間取りや家具などから生活の質の良さが窺えるからよ。 会場は共時的に作品が並べられていたけど、式場の脳内構造に近づけたとおもう。 彼の脳の動きに合わせて観ていくようで戸惑いと眩暈があってとても楽しかった。 ところでホールに組み立てられていた「二笑亭の光2」の建物入口はとても劇的にできていた。 灰色が不気味を持ち込んでいる。 これは舞台美術として使える。 物語が湧き出てくるようだわ。 見ながら色々な舞台作品を当て嵌めてしまった。 *館サイト、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202008231598163149

■生命の庭、8人の現代作家が見つけた小宇宙

■作家:青木美歌,淺井裕介,加藤泉,康夏奈,小林正人,佐々木愛,志村信裕,山口啓介 ■東京都庭園美術館,2020.10.17-2021.1.12 ■8人の作家がジワジワと混ざり合っていく展示方法を取っています。 8人が何度も登場するような作品配列をしているからです。 小部屋を沢山持った館の特徴も巧く利用している。 各部屋に合う作家を選んでいる。 次の部屋は誰か? 旧館そして新館を観て回った後に、「生命の庭」の全体像が浮かび上がってくる。 作家たちの個性の違いをそのまにして複雑さや混沌を内包した一つの宇宙の姿です。 久しぶりにこのような面白い感覚を持つことができました。 副題は「8人の現代作家が見つけた小宇宙」のバラバラ宇宙より「8人の現代作家が混ざり合って作った一つの宇宙」が似合うでしょう。 8人も妥当でした。 6人では少ないし10人では多過ぎて一つの宇宙を造れなかった。 *館サイト、 https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html

■ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ

■ソニーミュージック六本木ミュージアム,2020.10.9-2021.1.11 ■会場は活気が無い。 ビートルズ4人が揃わない為かな? ジョン・レノンとオノ・ヨーコの出会いはよく語られる。 あの「YES」だ。 展示はそのあたりから始まる。 フルクサス系のヨーコの作品は(観客の)好みが激しくでる。 ジョンの芸術表現と似ているところがある。 二人は似た者同士だ。 顔も似ている。 そして実両親に育てられなかったジョンはヨーコの姉さん女房振舞いにすっかりイカレテしまったのではないだろうか? 「僕がそれまでずっと抑制していたイカレタ部分を引き出してくれた」とジョン自身も言っている。 会場は高校の文化祭のようだ。 ギターやベッドも置いてあるが会場は文字が多い。 二人の作品や行動は意味を重視している。 これを言葉に置き換えた為だろう。 その中でビデオは初めてのものが多くて楽しい。 20本以上はあった。 数分の長さが多いので残さず観てしまった。 ベトナム反戦の「ベッド・イン」以降はより過激な運動に二人は深入りしていく。 しかしヨーコは強い。 多くの非難中傷に耐えるどころか逆に社会へ立ち向かっている。 会場はこの頃のビデオが1本も無い(?)。 エルトン・ジョンとの共演など沢山有るはずだが。 終章近くにジョンのグリーンカードが展示されていた。 FBI監視や米国入国禁止などを経験してきた二人の喜ぶ姿がみえるようだ。 この愛と激動の70年代を乗り越えた矢先に彼は凶弾に倒れてしまった! 無念だったろう。 *展示会サイト、 https://doublefantasy.co.jp/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 ジョン・レノン、 オノ・ヨーコ *2020.12.28追記・・録画しておいた下記の2本を観る。  □オノ・ヨーコ&ショーン・レノン  ■NHK2020.12.23(2017.8作成)  ■オノ・ヨーコの出自は聞いてはいたが,この番組では彼女の兄弟従兄も登場し祖父母まで遡り家系を調べている. 興味あるファミリーヒストリーだ.  *NHKサイト、 https://www.nhk.jp/p/famihis/ts/57RY735RG4/episode/te/GQWWMW1LNN/  □イマジンは生きている ジョンとヨーコからのメッセージ  ■NHK2020.11.21