■式場隆三郎「脳室反射鏡」

■練馬区立美術館,2020.10.11-12.6
■式場隆三郎の名前は聞いたことがある。 でも何者か? 主催者挨拶文にも「彼を知ってほしい・・」と書いてある。 これが彼の活動経歴書のような展示にしたのね。
若い時は白樺派精神科医のような人だった。 文学に突っ込み過ぎて医学生として疎かになったと彼自身振り返っている。 でも専門の精神科は文学と相思相愛の時代だった。 ゴッホや山下清への接近は天才や狂気としての病理学と白樺精神の融合かな。 三島由紀夫が彼の隠れファンだったのも興味津々ね。 「イット解剖学」の章にもあるように文学者にとっては性の科学的知見は必須だから。 「草間彌生デビュー」章で彼女を「分裂性女性天才画家」と紹介しているのは当時の病理学として言い当てている。
「可視(科学)と不可視(芸術)の両極を往還した」と解説されていたけど、<医学と芸術の結婚>を求めていたのではないかしら? 彼は不断の生活が重要だったはず。 それは民藝への接近でも分かる。 自宅や病院の間取りや家具などから生活の質の良さが窺えるからよ。
会場は共時的に作品が並べられていたけど、式場の脳内構造に近づけたとおもう。 彼の脳の動きに合わせて観ていくようで戸惑いと眩暈があってとても楽しかった。
ところでホールに組み立てられていた「二笑亭の光2」の建物入口はとても劇的にできていた。 灰色が不気味を持ち込んでいる。 これは舞台美術として使える。 物語が湧き出てくるようだわ。 見ながら色々な舞台作品を当て嵌めてしまった。