■石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか  ■透明な力たち MOT ANNUAL 2020

■東京都現代美術館,2020.11.14-2021.2.14
□石岡瑛子展
■作家:石岡瑛子,レニ・リーフェンシュタール,アーヴィング・ペン,ヴェルナー・ヘルツォーク,フランシス・フォード・コッポラ,ターセム・シン,チャン・イーモウ他
■会場には石田瑛子の声が響いている。 安定感ある渋い声だ。 政治家が話しているように聞こえる。
瑛子と言えば資生堂とパルコだろう。 前田美波里のデッカデカ、リサ・ライオンのムッキムキ、沢田研二のアァアアア、アップ全盛の野生時代である。 そこにはタイムレス、エイジレス、ジェンダーレス、クラスレスに沿いながら副題の通り、血が、汗が、涙が息づいている。 しかしレニ・リーフェンシュタールの「ヌバ」を最後に彼女の動向は追っていない。
今日、初めて1980年以降の彼女の活動を知った。 なんと音楽、映画、演劇、オペラ・・。 あらゆる分野に進出している。 粗さが目立つのはデザイナー領域を広げ過ぎた為かもしれない。 それにしてもこのパワーはどこから湧き出てくるのか? 野生時代の精神は失っていない。
しかしターセン・シムは凝り過ぎ、ミシマや忠臣蔵は象徴過ぎ、シルク・ドゥ・ソレイユは三宅一生に似過ぎ、指輪はキャラ化し過ぎ、・・・。
過剰はデザイナーとしての組織との葛藤の現われか?  癖の強いヘルツォークやコッポラとのコラボや、三島由紀夫遺族からの上映拒否を知れば彼女の声や喋り方が政治家に聞こえたのも不思議ではない。 パワーとは政治力かもしれない。
□MOT ANNUAL 2020 透明な力たち
■作家:片岡純也,岩竹理恵,清水陽子,中島佑太,GohUozumi,久保ガエタン
■これは変わった展示会だ。 「不可視の力に着目する・・」って? 科学技術を取り入れたものが多い。 電磁気はもちろんDNAも普段は見えない。 実行中のプログラムにも言える。
刺激されたのは久保ガエタンの声に関する作品。 蓄音機や電話を前にして声とは不思議な現象だとあらためて考えてしまった。 エジソンは死者の声と言ったらしいが、当時の人々にとってその人がまさに眼前に蘇ったと思う。 現在の最新科学を前にして狼狽えることができるか? もしできれば芸術としても成り立つようだ。