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7月, 2014の投稿を表示しています

■現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展-ヤゲオ財団コレクションより-

■ 東京国立近代美術館,2014.6.20-8.24 ■普通、値段を気にしながら作品はみません。 でも美術を仕事にしている人は気にするでしょう。 今回は芸術で飯を食っていると想像して作品をみたらどうか?、と言っているようです。 しかし陳列の初めからM・レイやR・リキテンスタイン、A・ウォーホル、F・ベーコンを並べられると市場価格的にシラケますよね。  それよりも初めてみる20世紀初頭生まれの中国(台湾?)画家サンユウ、ユン・ジ、グォ・ボーチュアンは当時の時代や中国の歴史など多くの影響がみえて面白い。 そして20世紀中頃生まれの画家は面白くないのは何故か?  中国・台湾の政治影響力があるのでしょうか? もちろん中国系以外でも現代モノは初めてみる作品が一番ですね。 D・ホックニ「学位のための人物画」は解説と共に記憶に残りました。 *館サイト、 http://www.momat.go.jp/Honkan/core/index.html

■フィオナ・タン-まなざしの詩学-

■ 東京都写真美術館、2014.7.19-9.23 ■チケット売場で全てが映像と聞いて迷ってしまったわ。 8作品のうち2本は上映時間が既に決められているの。 きょう一日のスケジュールの組み直しが必要ね。普通にみて4時間はかかる。 「ディスオリエント」は引きこまれてしまった。 映像は2本あるのに音声は一つ。 しかし映像は中東からアジア一帯の貧困と環境汚染なの。 前者は映像と音声、後者は過去と現代の落差が激しい。 人間の豊かさとは何かを問うている作品ね。 長編作品「興味深い時代を生きますように」でフィオナ・タンが女性だと知ったの。 華僑の父とオーストラリア人の母を持っていることもね。 これで「ディスオリエント」の謎が解けた。 この自伝作品と「影の王国」の写真論とで彼女の全体像が見えてきたわ。 フィオナ・タンに出会えて楽しい一日だった。  「プロヴィナンス」も細かい質感で日常生活の人物像を描いていて意味深かったことを付け加えておくわね。 *館サイト、 http://syabi.com/contents/exhibition/index-2248.html

■建築家ガウディX漫画家井上雄彦-シンクロする創造の源泉-

■ 森アーツセンターギャラリ,2014.7.12-9.7 ■ ガウディの建築関連資料を見たのは初めてだ。 「パラボラアーチ」は崇高の中にもユーモアがある。 「平曲面」は生物的親しみがある。 「トランカディス」は死と再生の表現だ。 「人間は創造しない、発見がある・・」と彼は言っている。 「自然=師」と認識していることが展示を見てもわかる。 カサ・ミラの平面図は蜂の巣を変形しているようだ。 もし館内を歩いたら楽しさと目眩が襲ってくるだろう。 サクラダ・ファミリアは総勢300人の作業で2026年の完成らしい。 映像や模型をみてなるほどこれは凄いと再感激してしまった。 ところで漫画家井上雄彦がなぜ登場するのかよくわからなかった。 彼の漫画はとても控えめである。 このためガウディの資料や写真に跳ね飛ばされてしまっている。 逆にガウディの 内面にノッソリと迫っているようにもみえる。 黒子に徹しているようだ。 *美術館、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/2014/

■オルセー美術館展-印象派の誕生、描くことの自由-

■ 国立新 美術館,2014.7.9-10.20 ■ 思っていた以上に量があったわね。 オルセーでもこれだけの作品はジックリ観られないんじゃないかしら? 静物画が少なかったけどその分風景が多いし、歴史画や裸体もありバラエティに富んでいた。 マネを入口と出口の二つに分けたのも凝っていて面白い。 初めてみたモネの「草上の昼食」も考えさせられるわね。 セザンヌの同名も展示されていて満足よ。 気に入ったのはモネ「かささぎ」、マネ「婦人と団扇」。 印象派を越えた作品も混ざっていて19世紀後半のパリがそのまま乃木坂に来たみたいだった。 楽しかったわ。 *美術館、 http://www.nact.jp/exhibition_special/2014/orsay2014/index.html

■岡村昭彦の写真-生きることと死ぬことのすべて-

■東京都写真美術館,2014.7.19-9.23 ■岡村昭彦の作品は「ベトナム戦争」しか知らない。 これをベースにして世界の紛争地域を関連付け取材していることを初めて知った。 ベトナム戦争から世界の全てを掴もうとしている。 彼の行動としてのベクトルは、 ①ベトナム戦争からアジア周辺国へ・・カンボジア→マレーシア→韓国。 ②アジア周辺国から環太平洋植民地へ・・ハワイ→タヒチ→ニュージランド→オーストラリア。 ③環太平洋から合衆国へ・・ボストン、ベトナム戦争を開始したJ・F・ケネディ。 ④J・F・ケネディの故郷へ・・アイルランド→英国→ナイジェリア→ビアフラ→エチオピア。 彼の作品は1960、70年世界史の<見える化>を進めていることに気付く。 <見える化>は「何が問題なのか?」を把握する為の経営手法だが、彼の強い行動力がそれを可能にしている。 これで世界の全てを捉えようとしている。 好奇心を満たす展示会であった。 *館サイト、 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2242.html

■ボストン美術館-華麗なるジャポニスム展-

■世田谷美術館,2014.6.28-9.15 ■タイトル通りの展示でした。 外国作品の横に日本の作品を並べて、どれだけ日本の作品から影響があったかを解説していきます。 影響の度合い、つまり日本文化を直接用いたか又は間接的かで二種類に分けられます。 前者はモネの「ラ・ジャポネーズ」などです。 後者はゴッホ「子守唄、・・」などですが、細かい部分まで影響力を論じているので眉唾物に聞こえてしまう場合が多々ありました。 例えば、木々のざわめきや配置、雪の景色や街路を見下ろす風景が、浮世絵の俯瞰構図・前景遮蔽・近接拡大・画面端対象切断・格子状画面と類似性が語られます。 しかし画家は浮世絵だけを見ていたわけではないはずです。 ところで「ラ・ジャポネーズ」は布柄の武者が飛び出てくるような立体感があり面白いですね。 数点を除き小粒の作品が多かった感じです。 *館サイト、 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00171

■ゴー・ビトゥイーンズ-こどもを通して見る世界-

■森美術館、2014.5.31-8.31 ■ http://www.mori.art.museum/contents/go_betweens/index.html ■展示内容を想像できなかった。 しかし行ってみたら呆気なかった。 大人からみる世界の中の子供の姿であった。 でも移民や貧困・収容所・国際養子縁組・国籍結婚など子供たちにとっては大変に違いない。 作品構成を図にすると、 ①オトナ→世界→コドモ 次に生活の場の中の子供を作品にしたもの、つまり自分の子供たちを描いている。 これは、 ②オトナ→コドモ(→世界) ①と②はうまく分けられない。 ①に吸収されそうだ。 強引に世界が間に入ってしまう。 最後は子供の作品で、 ③コドモ→世界(→オトナ) 作品の90%以上が①と②である。 「コドモがわかったつもり」から逃げられないオトナの展示会に見えるが、③もあることから会場は親子連れが多い。 夏休み向けである。 この季節はこの種の展示会が多くなる。 森美術館は「LOVE展」や「アウト・オブ・ダウト展」など予想のつかない企画展が多い。 今回も何が出るか楽しみだったが、残念ながら驚きは少ない。

■イメージメーカーズ

■2121デザインサイト,2014.7.4-10.5 ■ J=P・グード、R・ウィルソン、D・リンチ・・。 ネームバリュウはあるけど少し保守的な感じがするわね。 グードの機械仕掛の人形は三宅純の曲を重ねても20世紀に戻ったみたい。 ウィルソンは動物のビデオインスタレーションがいいわね。 犬やハリネズミをじっと見ていると生命の鼓動が乗り移る感じよ。 リンチのリトグラフは全作品の中で最高。 表現に境界が無いことはわかるけど、やっぱりウィルソンの舞台、リンチの映画を観たい! ウィルソンは「ヴォイツェク」、リンチは「インランド・エンパイア」が最後だった。 「ピータ・パン」は日本で公開するかしら? リンチも新作を早く作ってちょうだい! 当分はビデオアートやリトグラフで我慢するしかないのね。 ところでホドロフスキの新作「リアリティのダンス」が公開されるって聞いた? 「エル・トポ」を超えられたら凄いわね。 *美術館、 http://www.2121designsight.jp/program/image_makers/

■鉄斎

■出光美術館 、2014.6.14-8. 3 ■ http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/highlight.html ■ 80歳になると作品の質は落ちるのが普通である。 ボケーとしてしまうからだ。 しかし水墨画というのは年齢を感じさせない。 それとも鉄斎だから? 彼の80歳代の作品はボケーではなくトゲーの感じだ。 木々などが刺々しい描き方になっている。 これが水墨画だと新しい領域に入った感じに見えてしまうから不思議である。 よーくみると雑なのだが・・。 抽象画に近づいているようにもみえる。 これもメリットである。 今回の展示は多くの漢文が訓読で表示されているので有難い。 絵と文から鉄斎の生き方がわかる。 儒教を中心にして人生を遊びきったという感じであ る。

■ジャン・フォートリエ展

■東京ステーションギャラリー,2014.5.24-7.13 ■「人質」の数点は観たことがあります。 でも初期の作品を含めこれだけの点数は初めてですね。 戦前の厚塗りや「黒い裸婦」「黒い花」など黒への傾向はとても面白く観ることができました。 1940年前後に「醸造用の林檎」などの果物を潰したような作品を描いています。 これが「人質」の形を生み出したのですね。 そして人質の顔は抽象的ですが自画像に似ていることも今回発見しました。 ジャン・ポランとの対談「怒り狂う者フォートリエ」では<怒り狂う者>にはみえませんでした。 彼はナイトクラブを経営して、しかもダンサーだったようです。 ポランのアンフォルメルに反論していたのも印象的ですね。 彼の作品には現実世界が凝縮しています。 この凝縮したドロッとしたものがアンフォメルというものでしょうか? もしそうなら彼がアンフォルメルの画家と呼ばれても十分納得できます。 *館サイト、 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201405_JEAN_FAUTRIER.html

■描かれたチャイナドレス-藤島武二梅原龍三郎まで-

■ブリジストン美術館、2014.4.26-7.21 ■ http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/ ■副題の時代29点を展示。 藤島武二は6点で一番多い。 日本女性に服を着させて描いた作品もある。 でも中国人を直に描いたほうが、時代の雰囲気は充満している。  女性人物画のため静かである。 当時の両国間の密度の濃さが表れている。 実のチャイナドレスも飾られている。 ほとんどが旗袍である。 映画などでよくみるが旗袍は満州族の衣装らしい。 漢民族衣装を問われてもイメージが浮かばない。 ほんの少しの間20世紀前半にタイムスリップでき た。

■台北國立故宮博物院

■東京国立博物館、2014.5.17-7.31 ■ http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1647 ■「白菜」だけは本館展示のようね。 でも100分待ち。 短気だから10分でも待てない! 平成館だけにしよ。 えっ?、「肉形石」は九州のみ!? ・・豚肉や白菜の無い中華料理なんて! しょうがないわね。 北宋徽宗も清乾隆帝も民族統一に文化財の必要性を感じていたということね。 作品をみると神秘性が無い。 欧州なら一神教でまとめるから容易なのかもしれない。 仏教系も少ない。 だから皇帝の苦労が滲み出ているの。 これで技巧に走るのよ。 でも神秘性の無い儒教圏のお陰で芸術が日常生活と直接に繋がるから楽しいのね。 豚肉や白菜もそう。 磁器類は食器として使うし、書はコミュニケーションの道具よ。 乾隆帝お気に入りの紫檀多宝格も日本で探せば二・三個は出てきそうな代物じゃない。 NHKスペシャル「故宮」を見て行ったから20世紀の歴史も考えてしまったわ。 「國立」を付けたのも必死なのがわかる。