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■拡大するジュルレアリスム 日常を変える、世界を変える。 ■幻想の景色と不思議ないきものたち ■大上巧真 OueTakuma

*以下□の3展示を観る. ■東京オペラシティーアートギャラリー,2026.4.16-6.24 □拡大するシュルレアリスム 日常を変える,世界を変える ■作家:マルセル・デュシャン,マン・レイ,フランシス・ピカビア,サルバドール・ダリ,アンドレ・ブルトン他 ■日本各地の美術館から作品を集めた展示会である。 過去に観た作品も多く、新鮮味という点ではやや欠けるものの、シュルレアリスム入門としての性格が強く感じられた。 第一章「オブジェ」の解説には、シュルレアリスムの目指す方向性が示されていた。 そこでは「客観と超現実の関係」が語られ、主体の意識を客体へと移し、客体そのものが立ち現れる瞬間を待つという態度が強調されている。 客体が超現実的に変容していく過程を作品化する。 つまり、シュルレアリスムとは幻想や夢を初めから語るのではなく、客観を徹底して扱うことで超現実へ到達しようとする運動なのだ。 展示はその後、「写真」「絵画」「広告」「ファッション」「インテリア」へと続いていく。 二次元から三次元へと領域が広がり、客体の“本丸”へ向かっていくようにも見えた。 今日は第一章の解説に沿って作品を鑑賞したが、これは作家の制作過程を追体験する行為も含まれるので、なかなかに疲れる作業でもあった。 それでも、久しぶりのシュルレアリスム展を十分に楽しむことができた。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh297/ □幻想の景色と不思議ないきものたち,収蔵品展086 寺田コレクションより ■作家:落田洋子,川口起美雄,望月通陽,池田龍雄ほか ■1階の企画展を観終え、2階の収蔵品展へ向かった。 どちらも幻想や夢を主題とした作品が多いが、2階に並ぶ作品は1階とは対照的に、作家の主観から直接生まれた世界が強く前面に出ている。 これは日本独自の流れなのか、それとも時代的な傾向なのか? おそらく前者だろう。 チラシには古今和歌集の一首が引用されていた。 「世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ」。 夢と現実が主客分離しないまま境界で溶け合う、この感覚こそ日本的な幻想の源泉なのだと感じた。 企画展と収蔵品展を続けて観ることで、客観的に構成された幻想と、主観から立ち上がる幻想という対照が際立ち、その組み合わせが特に興味深かった。 *美...

■ウジェーヌ・ブーダン展 瞬間の美学、光の探求

■作家:ウジェーヌ・ブーダン,エミール・ヴェルニエ,ロイス・デルテイユ ■SOMPO美術館,2026.4.11-6.21 ■日本では30年ぶりとなるブーダンの回顧展だという。 印象派展では脇役として扱われがちなブーダンだが、今回は100点もの作品をまとめて鑑賞できる貴重な機会となった。 ブーダンの絵画は、空と海が画面の大半を占める。 まさにコローが評した「空の王者」という言葉が腑に落ちる。 派手さはないが、眺めているうちに心が静かにほどけていくような癒しがある。 彼の描く雲や波は、自然の変化を忠実に写し取っているようだ。 今回の展示で知ったのだが、船乗りの父の影響もあり、ブーダンは「天候を読む漁師の目」を持っていたという。 だからこそ、印象派の画家たちのように色彩に溶け込ませるのではなく、雲や波が現れては消えていく、その一瞬の相貌を確かに捉えている。 ボードレールが述べた「気象学的な美しさ」という表現が、これほど似合う画家も珍しい。 海景から陸景へ移ると、画風は一気にバルビゾン派へ近づく。 トロワイヨンの影響が強いと解説されていたが、そこにコロー風の柔らかなタッチも感じられる。 後半になると、ヴェネツィアの建物の壁には雲の質感が塗り込められ、牛の量感には雲を固めたような重さが宿っていく。 湖や池の水面は不思議なほど静まり返っている。 陸では、彼の“天候を読む力”が対象物に付着しているかのようだが、モノとして力が立ち上がってこない。 やはりブーダンは、何もないようでいて無限の変化が潜む空と海にこそ帰るべき画家なのだと、改めて感じさせられた。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/#now