■はじまりの記憶

■監督:中村祐子,出演:杉本博司
■イメージフォーラム,2012.3.31-6.22(2011年作)
■「劇場」の杉本博司の姿を初めて映像で見る。 彼の要をわかりやすく丁寧に紹介している素晴らしいドキュメンタリだ。
杉本博司は芸術家にはみえない。 事物への思いや接近方法が周囲によく居るオジサンと同じだからである。 時を忘れて顕微鏡で生物を望遠鏡で天体をみる時のワクワク感を持ちながら緻密な計画を立て感性を研ぎ澄ませて対象に向かう仕事人である。
思いは無機物から有機物が発生する過去へ遡る。 作品はすべてこれに集約していく。 神は無機物から有機物に転換する<気配がある>時に現れる。 剥製が生き物に変わる「ジオラマ」や「肖像」も、そして「海景」や「放電」もこの気配を持っている。 彼の作品に感動する理由がここにある。 この気配に感動するのだ。 生物は40億年前の無機物から生まれた始まりの記憶を持っている。 そして人はこの微かな記憶に思いを寄せる。
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