■諏訪敦、眼窩裏の火事

■府中市美術館,2022.12.17-23.2.26
■府中まで足を延ばす。 諏訪敦をまとめてみるのは初めてである。 写実絵画と言われているが少し違う。 たとえば1章「捨民」は彼の家族の歴史が語られる。 それは祖母や父が体験したであろう旧満州日本人の過酷な姿が作品に滲み出ているからである。 彼は何度も現地取材をしたようだ。 1945年の満州の風景が作品に重ね合わされて迫ってくる。 
2章は静物画を再解釈しながら描く。 食器や果物、植物や魚介類が並ぶ。 水や豆腐もある。 ここで副題の「眼窩裏の火事」が何であるかを知る。 彼は「閃輝暗点」という症状に悩まされていたらしい。 なんと脳内に現れた現象を作品上に描いているのだ。 ・・。
3章は舞踏家大野一雄に焦点をあてている。 大野一雄や川口隆夫の舞台は何度か観ている。 しかし舞台と絵画の身体を結びつけるのには違和感がある。 流れている時間と止まっている時間の違いかもしれない。 舞台の身体は今から未来へ微分していく。 絵画の身体は今から過去へ積分していくからだろう。 「わたしたちはふたたびであう」の3章タイトルはとても絵画的だ。
*川口隆夫が大野一雄の身体性を踊る「DUOの會」(2022.11)