■ベルナール・ビュフェ回顧展、私が生きた時代

■Bunkamura.ザミュージアム,2020.11.21-2021.1.24
■関心が遠のいていたビュフェ。 タイミングの良い回顧展だと思う。 副題の通り彼の通史が簡素だけど親密に20世紀に写像されている。 これで彼の全体像がはっきりと見えるのね。 そして他者との出会いで作品の流れが非連続になるのが興味深い。
一つ目は、ピエール・ベルジェとの出会い。 「椅子」(1950年)から画風が変化したのでわかる。 素人から玄人画家へ飛躍したようだわ。 「籠のある静物」「コトドリのある静物」、太い線の「食堂」「拳銃のある静物」「百合の花」。 やっとエンジンがかかったようね。
二つ目は、アナベルとの出会い。 でも愛が創作を遠ざけたのかな? 作品がつまらなくなったからよ。 「ニューヨーク」(1958年)は<実存の具象化>が見えなくなってしまった。
そして1960年代。 昆虫で子供の頃が甦った彼の姿がみえる。 でも昆虫で実存を蘇らせることはできない。 人間が造った対象でないと駄目みたい。
1970年代は名声が、でもアルコール中毒とは・・。 マンネリの中「ペロス・ギレック」(1973年)のように切れ味の良いのもある。 「楽器」(1988年)も気に入る。 写実は数枚あったけど<ビュフェ>らしくない。
アナベルと出会って得たものは多いが迷いも深くなった。 彼の性格にも原因がありそう。 三度目の他者との出会いはなかったようね。 1999年に自死。 20世紀の不安を見事に表現したとおもう。