■ゴッホとヘレーネの森、クレラー・ミュラー美術館の至宝  ■永遠の門、ゴッホのみた未来

□ゴッホとヘレーネの森
■監督:ジョヴァンニ.ピスカーリオ,脚本:マッテオ.モネータ,案内人:バレリア.ブルーニ.テデスキ
■(イタリア,2018年)
■「コレクターであるヘレーネ・クレラー・ミュラーを通してゴッホを描いたドキュメンタリー・・」とある。 クレラー・ミュラー美術館は行ったことがないしヘレーネもよく知らない。
ヘレーネの生い立ちやゴッホの出会いなどを挿入しながら作家や研究者の解説で進んでいく前半は面白い。 「ヘレーネのベッドは質素で小さかった」「大戦では看護に従事した」。 彼女にゴッホの影響が見える。 宗教の疑問からくる信仰の危機も同じだ。
しかし後半はヘレーネから離れていく。 ゴーギャンとの共同生活以降は死に急ぐゴッホを後押しするかのような流れになっていく。 それはゴッホの言葉で満たされながら終幕まで続く。 なかなか劇的だ。
ゴッホと人生観を重ねていたヘレーネのことをもっと知りたかった。 ヘレーネと後半の結びつきがぼやけていた。 美術館も遠くなってしまった。 最期まで彼女に寄り添えば統一感のある作品になっていただろう。
□永遠の門
■監督:ジュリアン.シュナーベル,  出演:ウィレム.デフォー,ルパート.フレントド,オスカー.アイザック他
■(イギリス.フランス.アメリカ,2018年)
■先日、レンタルで観た「マザーレス・ブルックリン」に登場していたウィレム・デフォーが今回のゴッホ役だ。 どの役も同じにみえる役者だから気にならない。 「永遠の門」は1886年のパリから始まるが直ぐにアルルへ飛ぶ。
ゴッホの喋る言葉はしっかりしている。 この為か後半に入ってからのゴッホと4人の対話が面白い。 それは、耳を切り落とした直後の医者との問答、サン=レミ療養所入浴場面の兵隊との昔話、療養所を出る直前に交わす神父との論争、そして「医師ガシェの肖像」を描きながらのガシェとの会話。
ゴッホをイエス・キリストに近づけようとしているのが分かる。 ゴッホはキリストのように未来を語る。 彼の死姿は十字架から降ろされた時のようだ。  作品タイトルもそれに呼応している。 変わった映画だ。
ところで「リチャード三世」を読むゴッホの持つ本が小さ過ぎて気になった。 7センチくらいの本でシェイクスピアを読むとは・・!
*追記 上記2本と5月に観た「炎の人ゴッホ」「ゴッホ、真実の手紙」の中では「真実の手紙」が一番真面だった。 4作品を通して多くのゴッホに出会えて楽しかった。