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■2024年美術展ベスト10

*当ブログに書かれた美術展から最良の10展を選出. 並びは開催日順. 映画は除く. ■ 見る前に跳べ   東京都写真美術館 ■ プリピクテ、HUMAN/人間   東京都写真美術館 ■ 豊嶋康子、発生法ー天地左右の裏表   東京都現代美術館 ■ シナジー、創造と生成のあいだ   東京都現代美術館 ■ MUCA展、バンクシーからカウズまで   森アーツセンターギャラリー ■ 遠距離現在 Universal/Remote   国立新美術館 ■ 記憶、リメンブランス   東京都写真美術館 ■ 高田賢三、夢をかける   東京オペラシティアートギャラリー ■ となりの不可思議   東京オペラシティアートギャラリー ■ アレックス・ソス、部屋についての部屋   東京都写真美術館 *今年の舞台は,「 2024年舞台ベスト10 」. *今年の舞台映像は,「 2024年舞台映像ベスト10 」. *今年の能楽は,「 2024年能楽ベスト3 」.

■手塚雄二、雲は龍に従う

■そごう美術館,2024.10.19-11.17 ■作家:手塚雄二 ■天台宗「東の比叡山」寛永寺に奉納する天井絵 「叡嶽双龍」 完成記念展です。 作品は 6mx12mの大きさ、だが会場照明が暗いし観客台の立ち位置も低い。 このためか作品全体が一気に迫ってきません。 制約は多々あるとおもうが 今回はもっと照明を当てるべきでしょう。 同作家の日本画50作品も展示されています。 章立ては四季の庭に始まり、2章荘厳なる景色、3章光とともに、4章清けし・幽けし(きやけし・かそけし)、と続く。 どれも夢をみているような朧げな風景画が多い。 また描かれた海をじっとみていると山々に見えてくる。 画中に収束対象物が少ないので掴みどころがありません。 気が抜けたような作品群です。 遠方の草を立体化して存在感をだした「水風」(2001年)が気に入りました。 他に「風宴」(2004年)「花尋」(2003年)もです。 漫画ぽい「雷神雷雲」「風雲風神」と比較すると今回の「叡嶽双龍」は骨があります。 奉納された後の根本中堂天井を是非見たいですね。 *寛永寺創建四百周年根本中堂天井絵奉納記念展 *美術館、 SOGO MUSEUM OF ART|西武・そごう

■アレックス・ソス、部屋についての部屋 ■現在地のまなざし ■光と動きの100かいだてのいえ

■東京都写真美術館,2024.10.10-2025.1.19 *下記の□3展を観る. □アレックス・ソス,部屋についての部屋 ■「・・親しみを感じるのは室内の写真だ」。 ソスの言葉です。 親密さというより<静かな演劇>です。 乾いた劇的さが一瞬みえる。 加えて乾いたアメリカの空気を感じる。 部屋の家具や小物に親近感が無いためか乾いているように見えるのかもしれない。 初めての作家ですが気に入りました。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4820.html □現在地のまなざし,日本の新進作家,vol.21 ■作家:大田黒衣美,かんのさゆり,千賀健史,金川晋吾,原田裕規 ■静物、風景、社会、生活、人生などに5人の作品をざっくり分類できる。 でも分類不可能な作者の味がその奥に見えてきます。 人物か入るか否かで味も濃厚と薄味に分かれる。 前者では「明るくていい部屋」後者は「New Standard Landscape」が印象に残りました。 後者は薄味だが塩味が強い。 先日、保管してある写真の整理をしました。 近頃はクラウドに残すのでモノとしての写真は激減したが古い写真はすべて物理アルバムで保管してある。 一枚一枚をジッと見つめてしまい取捨選択に時間がかかった。 と言うことで「写真が山になるまで」は感慨深く見ました。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4822.html □光と動きの100かいだてのいえ,19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ ■作家:岩井俊雄,エミール・レイノー,エドワード・マイブリッジ,エティエンヌ=ジュール・マレー,橋本典久ほか ■子ども連れの家族で凄い混雑です。 作品よりも子供の遊ぶところを見てきたと言ってよい。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4818.html

■ルイーズ・ブルジョワ展

■森美術館,2024.9.25-25.1.19 ■六本木ヒルズの巨大な蜘蛛の彫刻を見るたびに作者はどんな人なのだろうか?と想像していました。 その思いとはかけ離れていましたね。 なんと!トラウマの塊りを持つ人だった。 展示会の帰りに再び蜘蛛を見上げながら、なるほど、そういうことだったのか・・。 場内はある種の緊張感が漂っている。 不気味な静寂です。 神妙に作品と対峙してしまった。 「魔法・謎・ドラマは決して失わない」。 ルイーズの言葉が作品に内包されている。 彼女の経歴映像からトラウマが何であったのかが朧気ながら見えてきました。 それは世界共通ともいえる家族に集約されていく。 母との蜜月、父の特異な性格、繁盛したタペストリ修復業の家庭、そして家庭教師と父の関係、姉妹のこと、従弟の突然の侵入、結婚してからは夫や子供の存在、これらの関係を全ての作品に塗り込めていく。 「私を見捨てないで!」。 「地獄から帰ってきたところ、言っとくけど、素晴らしかったわ」。 素晴らしかったかどうか?は分かりません。 でも母の子供として子供の母として充実した人生だったことに最期は納得したはずです。 「蜘蛛の巣」はルイーズの傑作だと再確認しました。 それは母親の象徴でもあったのですね。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/bourgeois/index.html

■松谷武判 ■抽象の小径 ■ナカバヤシアリサ

■東京オペラシティアートギャラリー,2024.10.3-12.17 *以下の□3展を観る. □松谷武判 ■「具体」と言えば吉原治良の黒地白丸の「円」が先ずは脳裏に浮かびます。 その具体美術は20世紀後半には立体から平面に移行している。 その後は平面に合うドロッとした液体こそが具体元になったのでは?  松谷武判の作成過程を撮った映像が流されていた。 はたして、行きつくところは単純・率直・素朴な液体そのものでしたね。 ドロッ、ズズッ、デロッ、ボタッ、・・具体の元に至った。 それは正解だった、と映像に写っていた松谷の顔がそう言っていました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh279/ □抽象の小径 ■作家:加納光於,堂本尚郎,山田正亮ほか ■ギャラリー4階まで松谷武判が占めたので寺田コレクションは少ない。 白髪一雄に目が留まりました。 白髪も具体でしょう。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=305 □ナカバヤシアリサ ■速度のある描き方です。 そして風景が激しく揺れ動く。 風景の中から得体の知れない何かが出現する瞬間かもしれない。 それは風景の元かもしれない。 先の具体元に合わせて風景元とでも言いますか。  *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=306

■カナレットとヴェネツィアの輝き

■SOMPO美術館,2024.10.12-12.28 ■カナレットが人名とは知らなかった。 当初はカナル・グランデ(大運河)に関することかな?と思っていました。 舞台美術家の父カナルと区別する為に「小さなカナル」つまりカナレットと呼ばれたらしい。 カナレットはヴェドゥータ(景観画)を描き続けた。 今なら名所絵ハガキに該当するのでしょう。 ヴェネツィアは行ったことがあります。 カナレットの絵を観ていると旅行のことが甦る。 今でも景観画の役割は立派に果たしていますね。 旅行者の思い出に残る風景を描いているからです。 でもカプリッチョ(綺想画)のように空想まで取り入れない。 実際の風景の構図を整える程度です。 そこに舟や人々を華麗に配置する。 版画も1章を割いて展示されていたが素晴らしい。 建物の線はビシッと決まり、人物は活き活き描いている。 カメラ・オブスキュラという機器も使っていたらしい。 彼はグランド・ツアー客に作品を売って大儲けしたようです。 その関係で後半はイギリスへ渡り景観画を描いた。 その作品も展示してあるがヴェネツィアのような親しみさは無い。 たぶん気候なども関係したはずです。 後半の章では同時代の画家たちの作品が展示されている。 でもカナレットには敵わない。 その一人ウィリアム・ジェイムズの絵は「硬質で味気ない」と言われたらしい。 まったくその通り。 比較するとカナレットの豊かさを再認識します。 終章にあった印象派画家が描いたヴェネツィアはまったくの別世界です。 比較できない。 今回の展示を観てヴェネツィアへまた行きたくなってしまった。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/canaletto/

■魂のまなざし、ヘレン・シャルフベック

■監督:アンティ・ヨキネン,出演:ラウラ・ビルン,ヨハンネス・ホロパイネン,クリスタ・コソネン他 ■配信(フィンランド&エストニア,2020年作) ■ヘレン・シャルフベックを描いたドキュメンタリー風ドラマです。 でも彼女の絵画は未だ観ていない。 フィンランド20世紀前半の日常世界を楽しめる内容でした。 電気も水道もない生活だが、豊かな自然やパリと比較して小柄なヘルシンキが描かれる。 木枠のガラス窓から入る太陽光と夜の蝋燭の光、どちらも暖かさがあります。 女性達の日常着が質素だが素晴らしい。 雑誌ヴォーグを見る場面が何度かある。 当時は雑誌をみて自作するのが普通だったのでしょう。 また男性が三つ揃えの背広で登場することが多い。 この映画はフィンランドで大ヒットしたようです。 このため服装は恥ずかしくないようにしたのかもしれない。 それとも監督の衣装好みかも? 当時の人間関係のありようも分かる。 母と娘ヘレン、兄の力、そしてエイナル・ロイターとの出会い。 そうそう、ヴェスターの立ち位置がよく分からなかった。 単なる女友達ではないはず。 この作品はヘレンのエイナルへの恋愛感情の流れが中心になる。 そしてお互いの成長を肯定して幕が閉じる。 ヘレンの作品が何枚か映し出されたが真実を捉えています。 次回の展示会は見逃さないようにします。 *原題:HELENE *ヘレン・シャルフベック(1862-1946)生誕160年記念作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96307/

■生きた全体 A Living Whole

■作家:大西麻貴,百田有希 ■ギャラリー・間,2024.9.4-11.24 ■T.S.エリオットの詩の概念「生きた全体」を引用している。 そこから「建築をつくることは、物語を紡ぐことと似ている」と作家は言う。 会場に入ると、童話の世界からやってきたような建築模型が多くみられます。 物語を塗り込んでいく。 「<ある>というより<いる>」「重力から生まれる自然な姿」「質感をともなう形」・・、具体に近づいていきます。 また何を一つとするか?も問うている。 そこから「道としての建築」「外皮を纏う建築」など建築を世界へ、世界を建築に浸透させていく。 ヒトの細胞や組織と同じように呼吸する建築を目指している。 外庭には模型「熊本地震災害ミュージアム」と小枝屋根のあるベンチが置いてある。 4階へ上がると、一部が深紅色のカーテンで覆われた展示になっている。 そして覗くように作品を観る。 まさに童話の世界を覗いているようです。 写真でしか見ていないので実建築の内側を覗いてみたくなりました。 先日観た「平田晃久、人間の波打ちぎわ」展の「からまりしろ」や当展の「生きた全体」などの概念はどれも人間の精神面まで取り込もうとしている。 より荒々しくなりそうな自然に持ちこたえることができるのか? 技術が進んでいるので問題ないはずだが不安も感じられます。 *美術館、 https://jp.toto.com/gallerma/ex240904/index.htm

■ポール・マッカートニー写真展

■東京シティービュー,2024.7.19-9.24 ■ポール・マッカートニーが撮影した1、000枚の中から250枚を選んだ写真展です。 時期は1963年後半から1964年前半とある。 ビートルズのデビューが1962年後半、つまり英国内に名前が広がった頃ですね。 会場に入るとポールのカメラが展示してある。 ペンタックスSV(1962年製)でした。 「いいタイミングでいい場所にたまたま居合わせたその時だけの写真を撮りたい」。 ポールの言葉です。 ビートルズの親密空間が覗けます。 彼らの家族や公演の裏舞台なども多く入っている。 しかし多くのビートルズ写真を過去から見ている為か全ての写真に既視感がある。 そのなかでマイアミのバカンスは初めての写真が多かった。 パリではポールがカメラを向けても意識しない通行人がいる。 ビートルズが未だ知られていないことが分かります。 「オール・マイ・ラヴィング」がどこからか聴こえる・・。 アメリカ公演での空港インタビュー、エド・サリヴァン・ショー、この映像から流れていた。 アメリカ公演(1964年2月)は成功するか? ポールを含め関係者たちの不安が見て取れる。 「ハード・デイズ・ナイト」の中で当時のカメラを操作するのは大変なこと、でも、さすがにポール、まあまあに撮れていました。 1964年以降も続けたのでしょうか? アーカイブを隅々まで探せばまた出てくるかな? *「ナショナル・ポートレイト・ギャラリ」リニューアル・オープン記念展 *美術館、 https://tcv.roppongihills.com/jp/exhibitions/paul-photo/index.html

■田名網敬一、記憶の冒険

■国立新美術館,2024.8.7-11.11 ■これでもか!!と続いていく作品に圧倒されました。 でも、あっけからんとした雰囲気もみえる。 エントロピーだけが大きくなっていく。 増大する現代の情報社会に通じるものがあります。 ・・天井を見上げるとB29爆撃機の大きな模型がぶら下がっている。 襲いかかる艦載機も至る所で目に入る。 目黒の焼け野原から始まり、遊んだ雅叙園、学んだ美術学校、そしてPLAYBOY・11PMなどの仕事世界へ,中国旅行、結核を患い、記憶の旅へ、アンダーグラウンドに出会い、記憶の迷宮、記憶の修築へ、ピカソの悦楽を知り、コラボレーションで幕が閉じる・・。 作家のインタビュー映像を見て謎が解けました。 「・・作成過程で作品はどんどん変化していく」と言っている。 次々と素早く描き足し、次第に画面は詰まっていき身動きが取れなくなる。 映画のコマを画空間にばら撒いたようなものです。 結果、各作品が同じような構造になってしまう。 大病を患った後から<記憶>が前面に出てきますね。 「記憶とは死を意識すること」と本人が言っていた。 この夏に亡くなったことを会場で知りました。 作家の圧倒的記憶で出来たこの展示会を天国から見守っていることでしょう。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/keiichitanaami/index.html

■英一蝶 ー風流才子、浮き世を写すー

■サントリー美術館,2024.9.18-11.10 ■英一蝶(はなぶさいっちょう)は17世紀末に江戸で活躍した都市風俗画家です。 師は狩野探幽の弟の安信、また芭蕉に俳諧を学んでいる。 しかし47歳(1698年)に三宅島へ流罪、理由の真意は不明と書かれていましたね。 「島一蝶」の意味がわかりました。 島で描いた作品を指すらしい。 1709年の恩赦で江戸再帰後は英一蝶と改めたようです。 作品番号1の「立美人図」を見て記念切手を思い出しました。 あっ、一蝶だったのか! 一度見たら忘れられない姿顔立ちです。 顔も姿も平凡ですが凛々しい。 気に入ったのは作品番号21「吉野・龍田図屏風」。 山や川、そこに松と桜、家々に人々、美人図をそのまま自然に適用したような作品です。 彼は対象物を小さく描く。 このため単眼鏡が必要です。 メトロポリタン美術館所蔵の3枚「地蔵菩薩像」「舞楽図・唐獅子図屏風」「雨宿り図屏風」はどれも素晴らしい。 何冊もの俳句集が展示されていたが当時の字は読み難い。 一蝶に統一感が無いのは狩野派だが風俗画家、絵師であり俳諧師、11年の流罪による不連続しかし、この寄せ集めこそ一蝶でしょう。 遊郭通いを好み、太夫衆でもあり、将軍に盾を突く。 まさに江戸の遊歩者ですね。 *英一蝶没後300年記念 *美術館、 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2024_4/index.html

■サイドコア展、コンクリート・プラネット

■作家:SIDECORE(高須咲恵,松下徹,西広太志) ■ワタリウム美術館,2024.8.12-12.8 ■副題「コンクリート・プラネット」から内容が想像できます。 都市がテーマらしい。 「SIDECORE」は初めて聞くアートチームです。 先ずは2階にいくと、車のヘッドライト、工事中パネルなどが目に入る。 都市らしき絵画や花瓶のような彫刻も置いてある。 「コンピュータとブルドーザの為の時間」(2024年)は鉄管のなかを鉄玉が転がり落ちていく作品です。 転がる鉄音は都市の叫びと言ってよい。 音が響くと2階は夜の都市空間に変貌する。 3階はビデオ作品が多い。 「untitled」(2021年)は羽田空港トンネル内を一人の青年が歩道を歩いていく映像です。 コンクリートの感触やヘッドライトの眩しさが観る者の肉体をも痛く傷つける。 生き物としての肉体に響いてきます。 「emptyspring」(2020年)は観た記憶がある。 渋谷の夜の街でモノやゴミやがひとりでに動いていく。 傑作と言ってよい。 4階の「undercity」(2024年)は暗闇の地下を3人の若者がスケードボードで走り回る映像作品です。 地下こそ都市の裏側でしょう。 ヘッドライトでその裏側=肉体が垣間見える作品でした。 我々はコンクリートを見てガラスを感じ鉄を聴く。 その暗闇へ降りて行き都市の肉体を触ったような感覚が持てる、このような展示会だった。 都市への想像力が活性化しました。  *美術館、 http://watarium.co.jp/jp/exhibition/202408/

■ロートレック展、時をつかむ線

■作家:トゥールーズ=ロートレック ■SOMPO美術館,2024.6.22-9.23 ■「日本初上陸」! フィロス・コレクションのことです。 チラシ文句に誘われて行ってきました。 特徴は素描作品にあるらしい。 副題にも表れている。 1章はその「素描」がズラッと並んでいる。 ロートレックの制作過程に興味がある人には最高かもしれない。 素描のような小さく細かい作品をみる時は観客の少ない日時を選びたい。 今日は休日に重なり珍しく混んでいたのが残念。 素描の続きのような2章はロートレックを取り囲む世間を話題にしている。 カフェ・コンセール、ダンスホール、キャバレー・・、ここに出入りする人々が実名で多く登場するので雰囲気が伝わってきます。 3章は「出版」。 でも当時の書籍・雑誌の位置づけはよく分からない。 4章は「ポスター」です。 普段の展示会はここが中心になる。 よくみる作品が多い。 当コレクションは状態の良いものを厳選していると書いてある。 ポスターなら少しくらいの汚れは気にしないが。 5章は「私的生活と晩年」です。 ロートレックは少年時代に足を怪我している。 この傷が私生活にも作品にも大きく影響している。 「騎手」(1899年)はまるでドガのようです。 また母への手紙も2通あった。 馬や母にロートレックの裕福な生い立ちが感じられます。 またパリ世紀末を想像させてくれる。 会場で配られた小冊子「新宿のムーラン・ルージェ」は新宿の劇場文化を紹介している。 1927年の宝塚歌劇団から始まり、1929年劇団浅草カジノ・フォーリー、ここから新宿へ行き1930年の蝙蝠座、1931年ムーラン・ルージェ新宿座、1934年新宿歌舞伎座、1956年コマ劇場、1964年紀伊国屋ホールまでが簡素に描かれている。 2011年頃の新宿3丁目の地図が載っているが現在との繋がりが想像できて楽しい。 気に入りました。 *フィロス・コレクション所蔵品展 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/#now *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ロートレック展 ・・ 検索結果は3展 .

■平田晃久、人間の波打ちぎわ

■作家:平田晃久 ■練馬区立美術館,2024.7.28-9.23 ■<からまりしろ>をつくる・・。 建築家平田晃久のコンセプトらしい。 <からまりしろ>とは<絡まる>と<余白>からできている。 ヒトとヒトが絡まりあう建物を造る。 絡まってできる襞のような見通せない空間、その余白も大事にする。 この一体現象が身体の波打ち際で響きあって、共感・共鳴が現れる手助けをする・・。 建築物を造り込んでいく作家に拘りがみえます。 それは利用する人たちを巻き込み対話を深める。 絡まり方を多義にわたり検証していく。 この過程が展示に現れています。 「練馬区立美術館」(案)のシェルタ・シェルフ・シェイド、「小千谷市図書館ホントカ」(2024年)のフロー・アンカ・ルーフの各概念の実装も面白い。 「太田市美術館・図書館」(2017年)は実物を観ていないがこれを取り入れているようです。 ところで建物表面に木々をばら撒くと廃墟のように見えてしまう。 <樹>の重要性を説いているが自然との調和に安易さを感じます。 自宅ならともかく大きな建物と植物の融合は難しい。 生きているから管理も大変でしょう。 東急プラザ原宿「 ハラカド 」が廃墟感から脱することができたのは木々を集約した為でしょう。 「仙台市役所」「台湾大学」(案)は作家の総決算でしょうか? どちらも概念の組合せが高度化している。 ぜひ完成したところを見たいものです。 *美術館、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202402101707551005 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、平田晃久 ・・ 検索結果は3展示 .

■ウェルカム・トゥ・ダリ Daliland

■監督:メアリー・ハロン,出演:ベン・キングズレー,バルバラ・スコバ,クリストファー・ブライニー他 ■配信(米仏英,2022年作) ■ドキュメンタリーではなくドラマ映画だった。 主人公は画商の若者でサルバドール・ダリが命名した聖セバスティアン。 彼はダリの元で仕事をすることになる。 時代は1974年から1985年の間を描いているようです。 ・・ダリに「生活難」「ガラとの仲違い」「肉体の衰え」が迫る。 「バカ騒ぎ」を催してもダリは寂しい! 彼はガラと出会った時代を回想する・・。 聖セバスティアンはダリとガラのマスコットのような存在でしょう。 芸術家ダリとしてではなく日常の彼を事実とし描いているようです。 ダリの真面目さもみえる。 映画としては並みです。 イタリア系のF・フェリーニが撮ったらどうなるだろうと考えながら観てしまった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/99193/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サルバドール・ダリ ・・ 検索結果は3作品 .

■高田賢三、夢をかける ■となりの不可思議 ■田口薫

■東京オペラシティアートギャラリー,2024.7.6-9.16 *以下の□3展を観る. □高田賢三,夢をかける ■作家:高田賢三 ■高田賢三の服は気軽に手に取れそう、着たことは無いが。 それは「木綿の詩人」と「フォークロア」が緩やかに結びついているからです。 どこか懐かしさがある。 そこに「衣服から身体の解放」をテーマにして古さを新しくした。 これが高田賢三のイメージです。 しかし21世紀も四半世紀を過ぎるとやはり歴史に組み込まれていきますね。 それでもファッションは人間身体が変わらない限り、古さも新しさも更新されていく。 今も高田賢三は古くて新しい。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh276/ □となりの不思議,収蔵品展080寺田コレクションより ■作家:相笠昌義,長谷川健司,加藤清美ほか ■いつもの収蔵品展とは違います。 作家数を減らして一人当たりの点数を多くしている。 このため作家により近づくことができた。 落田洋子、川口起美雄はじっくり観ました。 河内良介の鉛筆画もです。 落ち着いて観ることができるのは10人前後ですか。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=302 □田口薫 ■作家:田口薫 ■木製パネルに絵具を塗っているが近づいてみるとなんと彫もある。 コクがある大地の色と影はキリスト教を受け入れるのが容易です。 抽象画ですが物語が見えます。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=303

■TRIO、パリ・東京・大阪のモダンアートコレクション

■作家:長谷川利行,松本俊介藤島武二,R・デュフィ,P・ボナール,M・ブランシャールほか ■東京国立近代美術館、2024.5.21-8.25 ■「鏡台の前の裸婦」(R・ドローネー)が迎えてくれる。 安井曾太郎と佐伯祐三に挟まれるとパリらしいほんわかした自由が一層感じられる。 パリ市立近代美術館蔵の作品が会場を華やかにしていました。 小出楢重、藤田嗣治などパリ派の支援もある。 前半は東京と大阪の違いがはっきりしていたが後半は混ざり合ってしまった。 これはしょうがないでしょう。 思っていた以上に気に入った作品が多い。 日本とフランスの有名画家が満遍なく出揃っていたからです。 映像作品もあったが絵画・彫刻と同じ部屋だと観る気が起きない。 映像の会場レイアウトは頂けない。 7つの章と多くの節で範囲を狭めてトリオで迫ってくるのは窮屈ですが、これに身を委ねてしまえば楽しく観ることができる展示会です。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/exhibitions/558

■梅津庸一、エキシビション メーカー

■作家:梅津庸一,金子光晴+中林忠良,猪熊弦一郎,瀧口修造ほか ■ワタリウム美術館,2024.5.12-8.4 ■作家梅津庸一の挨拶文の一部を掲載します。 「おびただしい数の展覧会が開催され続けている。 ・・しかし、その多くの営みは既存のインフラの上で平準化されたコンテンツとして消費され忘れ去られていく」。 近頃はそう思うことがよくあります。  「ワタリウム美術館にはいつも制度化される以前のアートの気配が漂っている。 それは「未然のアート」と言い換えることもできるだろう」。 他館との違いにいつも感じます。 「昨今の「キュレーション」の流行により展覧会づくりの方法や落とし所はあらかじめ規定・拘束されるようになった」。 すでにここまで来ていますか? 「アーティストキュレータとして振る舞うのではなく「エキシビションメーカ」の精神に立ち返りたい」。 エキシビションメーカとは? 会場には当美術館で開催した展示会履歴が掲載されていました。 20世紀の当館を私は知りません。 今回は所蔵作品とゲスト作品を会場にばらまき梅津庸一作品を間に挟む構成らしい。 知っている作家は約40名中10名くらいしかいない。 いつもですが知らない作家が多いので楽しい。 そして会場が狭いので作品と親密になれる。 作品の呼吸や囁きまで感じられる。 エキシビションとしては、どうしようもなく最適な美術館です。 今回の展示を見て、エキシビションメーカとはキュレータ=企画者・管理者とは違いプレイングマネジャに近いように感じられる。 具体的には新人・新物・新事を発見・発掘しながら自身がそこに入っていき新しい関係を形造る・・。 *美術館website、 http://watarium.co.jp/jp/exhibition/202405/

■ブランクーシ、本質を象る ■清水多嘉示

■アーティゾン美術館,2024.3.30-7.7 *以下の□2展を観る. □ブランクーシ,本質を象る ■作家:C・ブランクーシ,A・ロダン,F・ピカビア,A・モディリアーニ他 ■「日本で初めてのブランクーシ展」とある。 ブランクーシの名前は知っていました。 作品も時々観ていた(気がする)。 でもブランクーシを<集めて展示>するのは大変らしい。 作品の多くは黄金色です。 洗練された抽象化にこの色がよく似合う。 怪物ジュエリーですね。 「プライド」(1905年)「苦しみ」(1907年)などは作品名を見てからナルホドと思える。 そのタイトルが無ければそう見えない。 「眠れるミューズ」(1910年)は分かる。 より抽象へ進むと想像したタイトルと略一致します。 「雄鶏」(1924年)が気に入りました。 具体と抽象が見事同期している。 ブランクーシは20世紀初頭美術の流れに沿い、かつ現代を見据えていた。 今では多くのブランクーシ風を見慣れてしまっている。 そのため素人がみると、こんなもんだろう、という感想が先に立ってしまうのです。 *美術館website、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/572 □石橋財団コレクション選,清水多嘉示 ■作家:清水多嘉示,中村彜,A・マティス,P・セザンヌ他 ■清水多嘉示(しみずたかし)は初めて聞く彫刻家・画家です。 彼は「洋画家中村彜(なかむらつね)を尊敬し絵画を学んだが、プールデルの作品に衝撃を受け彫刻に目覚めた」とある。 同時代人からの影響を強く受ける人と見ました。 中村彜、A・プールデルはもとよりA・マティス、P・セザンヌからもです。 セザンヌの影響を受けた作品には脳ミソが喜びました。 「すわる女」(1923年)はセザンヌ的感動が押し寄せてくる。 滞欧期の集大成「憩いの読書」も観応えがある。 この展示はプランクーシの付録だが大満足です。 *美術館website、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/573

■豊洲市場

■設計:日建建設,施工:水産仲卸売場棟=清水建設ほか,水産卸売場棟=大成建設ほか,青果棟=鹿島建設ほか ■開業,2018.10- ■豊洲市場へ行くのは初めてである。 開業から既に6年が経っている。 建物は4棟からなり、「青果棟」「管理棟」「水産卸売場棟」「水産仲卸売場棟」の順で歩く。 どの棟にも見学通路がある。 これが頂けない。 周囲から完全に分離されている。 ガラス越しから観る切り取られた風景では市場の雰囲気が伝わってこない。 外へ出ても立ち入り禁止範囲が厳しい。 市場というより会社見学の雰囲気である。 レストラン街が3ケ所、物販店街は一ケ所ある。 これらは従業員や業者用だろう、もちろん見学者で占められていたが。 「水産仲卸売場棟」の屋上へ上る。 芝生が張ってあり草原にいる気分だ。 一か月前に見学した「 晴海フラッグ 」がよく見える。 帰りに「千客万来」へ寄る。 無機質な市場から一転して華やいだ飲食街になる。 食の駄菓子屋が並んでいる感じだ。 ちょっと詰め込み過ぎかな? 通路も狭い。 観光客向けテーマパークと言える。 埋立地の豊洲は新しくなったが人工的な錆びもみえる。 一見客からみて、市場も人々が行き交う場所に感じられない。 舞浜・有明から続くテーマパークが似合う地域だ。 *豊洲市場、 https://www.toyosu-market.or.jp/

■ホー・ツーニェン、エージェントのA

*開催中の□3展を観る. ■東京都現代美術館,2024.4.6-7.7 □ホー・ツーニェン,エージェントのA ■作家:ホー・ツーニェン,YCAM山口情報芸術センター ■映像展は事前準備が必要です。 ホーム頁で上映条件などを調べる。 ヴァーチャル作品もあったが予約制でしたね。 長時間作品はチケット付き自宅配信を考えても良いでしょう。 多くの美術館では展示し難いからです。 同じような作品名があり混乱したが全展示の7割以上は観ました。 ホー・ツーニェンはシンガポールを拠点に活動している。 虎が登場するのでシンガポールを拡大した戦後マラヤ連邦をイメージしたほうがよい。 作者はマラヤの歴史・文化・生活なども考えているからです。 「時間のT」は新作らしい。 西欧時間概念や現代物理学における時間をテーマにしている(ようにみえる)。 画家のキリコやダリの絵が何度も映る。 作者は西欧哲学に興味があるようです。 東南アジアの時間は少ない。 易経や水時計や暦ぐらいですか。 ちょっと寂しい。 しかも何故か小津安二郎の作品が多く登場する。「晩春」「秋日和」の遅い結婚や林檎のトポロジーが語られる。 「秋刀魚の味」の軍隊礼もある。 作者の拡張パワーに圧倒されるが観ていて混乱しました。 手前がアニメ、奥が実写の二重スクリーンは深みが出ますね。 「ヴォイス・オブ・ヴォイド」は驚きです。 西田幾多郎の弟子三木清や戸坂潤などを描き、彼らの「支那事変の世界的意義」「平和論の考察」など幾つかの論文・講演を解説している。 戦場になった東南アジアに興味があるのは分かります。 でも、この時期この場所で京都学派を論じる理由は何でしょうか? 作者の全方位的行動力には驚きます。 何が飛び出すか分からない。 ここが面白いところですが、表面をなぞるだけのようにも感じられます。 *美術館website、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/HoTzuNyen/ □I WAS MADE FOR LOVING YOU & 人生はちょっと遅れてくる ■作家:サエボーグ,津田道子 ■駆け足で観る。 津田道子は映像と鏡を使って遅延現象を利用している作品群を展示。 サエボーグはビニール製の大きなウンコやハエの置物を展示。 これら作品を使って芝居を上演するようだが今日は休演らし...

■渋谷サクラステージ ■原宿ハラカド

□渋谷サクラステージ ■設計: 古谷誠章ほか,構造:日建建設,施工:鹿島建設,戸田建設,開発:東急不動産ほか ■竣工,2023.11.30 ■井の頭線渋谷駅から一度も地上に降りずに東急プラザ「 渋谷フクラス 」の脇を通りサクラステージまで歩いていくことができた。 サクラステージが駅周辺では四半世紀最後の高層ビルと聞いている。 旧東横線ホーム跡地が未だ工事中だが周辺の全貌がみえてきた。 当ステージはオフィス系「渋谷タワー」とホテル・住居系「桜タワー」の高層2棟が低層の「セントラルタワー」と連携されている。 工事中の部分も有るが店舗数は少ない。 幼稚園も入居していて公園も2か所が確保されている。 閑静なビル群と言ってよい。 渋谷では駅周辺を容易に歩き回れるか?にかかっている。 今回はステージからJR渋谷駅を越えて「 渋谷ストリーム 」に行けるようになった。 これは便利で楽しい。 JR線と国道を如何に消すことができるか? これが渋谷開発の要だろう。 次に、新しくできた東急プラザ「ハラカド」に向かう。 *サクラステージwebsite、 Shibuya Sakura Stage □東急プラザ原宿ハラカド ■設計:日建建設,乃村工芸社,平田晃久,施工:清水建設,開発:東急不動産ほか ■開業:2024.4.17 ■表参道はハイブランド旗艦店とカジュアル系店が互いに拮抗している。 その境界上に東急プラザがある。 「ハラカド」は兄になる東急プラザ表参道「オモカド」の向かいにある。 「ハラカド」は他プラザとは趣が違う。 若者向けファションとレストランで溢れている。 「 渋谷パルコ 」などをもっとチープにしたような感じだ。 そして各階の店舗や通路の配置、階上の緑地のどれもに既視感がある。 この全体構造は今の流行りかもしれない。 4階に「原っぱ」があるのは嬉しい。 ところで新しい試みとして壁や窓、仕切りに絵画を貼ったり映像を写して色彩豊かにしていることだ。 これは先ほど見てきた「サクラステージ」にも言える。 歩き回ったので6階でイタリアンジェラートを食べる。 映画「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーン演じる「アン王女」が頬張っていたジェラートと同じ店だ。 うま!っ *ハラカドwebsite、 東急プラザ原宿ハラカド

■未来のかけら

■ディレクター:山中俊治,参加作家:荒牧悠,舘知宏,遠藤麻衣子ほか ■21_21 DESIGN SIGHT,2024.3.29-8.12 ■専門領域が異なる7組のデザイナ・クリエイタと科学・技術者のコラボによる「未来のかけら」を紹介している。 ざっとみて感じるのは身体に直接・間接に関係するもの、例えば乗り物、衣服、ロボットなどなどが多い。 素材は骨のような物質、金属・繊維・プラスチックなど多種に及んでいる。 小学生時代のクラブ活動を思い出してしまった。 展示物を見ているとウキウキしてくるからです。 デザイナーは子供時代の心をそのまま維持しているのかもしれない。 しかし作品は古いですね。 どれもどこかで10年前から見ているものばかりです。 近頃は保護法等々が煩くなっている為ですか? 身体への対応はAIや量子力学と違い遅々として進まないはずです。 生物(学)が絡み、しかも感覚を含めた肉体が対象のためです。 今のままの身体を維持していくのか? これを議論する時代もやってくるかもしれない。 *美術館、 企画展未来のかけら

■晴海フラッグ

■設計:光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所ほか,施工者:東京都,建築者:三井不動産,三菱地所ほか ■開業:2024.1.19(マンション入居開始) ■久しぶりに晴海へ行く。 東京国際見本市会場があった場所だ。 仕事でここに足を運んだ時期があった。 会場が東京ビッグサイトに移転した後は一度も来ていなかった。 オリンピック選手村から分譲・賃貸ビル群になったが人通りは少ない。 工事現場も一部に残っている。 木々も新しくスカスカな感じがする。 入居はこれからなのか? 中央に商業施設棟と小中学校、奥には晴海ふ頭公園がある。 公園から港を望むが昔と略変わらない。 遠くに見えるビル群が海と空に挟まれている。 周囲を一回りする。 商業施設は1階にスーパーマーケット、2階はレストラン、3階には診療所や幼稚園が入っている。 並みの店屋が多い。 この場所は交通の便も悪い。 今日は都バスで入り帰りはBRTで新橋に出たがバスだけでは心細い。 入居が一段落したら酷く混むだろう。 そして2棟の高層ビルが工事中だったが高層は似合わない。 ここ「東京の最前列」は中低層で統一し豊かな緑の木々で満たして欲しい。 *晴海フラッグ、 晴海フラッグ特設サイト

■デ・キリコ展

■東京都美術館,2024.4.27-8.29 ■「日本では10年ぶり・・」とチラシにある。 それは「 デ・キリコー変遷と回帰ー 」(汐留美術館、2014年)の展ですか? ともかく、今回も沢山のキリコに会えて嬉しい。 彼には二度のインスピレーションがあったらしい。 その都度画題や画風が変化している。 しかしそれは直線的には進まない。 「過去作の再制作や引用」が多い為でしょう。 例えば1970年の「ヘクトルとアンドロマケ」は完成度が高い。 このため先に観た(描いた)1924年の同名は未完にみえてしまう。 作家の思想的完成度はどちらか分かりません。 技術的な到達点である1970年前後の再制作品を観る者は優先してしまうからです。 次へ進んだ<新形而上絵画>も頂けない。 黒い太陽やグニャグニャした紐のような描き方は形而上からズレている。 結局は<再制作と引用>によって彼の後半は前半を再確認しているだけに見られてしまう。 ところで分散展示されていた「神秘的な水浴」、「彫刻」、「舞台美術」の3トピックはどれも面白かった。 「神秘的な水浴」はJ・コクトー「神話」の版画連作だが、どこか謎めいていて楽しい。 「彫刻」は「・・柔らかく、暖かくなければいけない」と彼は言っている。 なかなかの科白です。 ブロンズ像だが観応えもある。 「舞台美術」は舞台情報が少なくて何とも言えない。 大回顧展のため量は十分だが脳味噌がビビッとする作品があと数点加わればより満足したでしょう。 *美術館website、 デ・キリコ展

■時間旅行 ■記憶、リメンブランス ■木村伊兵衛、写真に生きる

■東京都写真美術館,2024.4.4-7.7 *以下の□3展を観る. □時間旅行,千二百箇月の過去とかんずる方角から ■作家:宮沢賢治,小川月舟,大久保好六,宮本隆司ほか ■写真は時間旅行の入口です。 それは観る者と作品の間に生まれる。 大久保好六「新宿」(1931年)はラッシュアワーの新宿駅プラットホームを写している。 通勤客の衣装もホームの形も現在の姿とそう違わない。 90年という時間が不思議に滞留しています。 田沼式能「渋谷駅前広場」(1948年)は少し違う。 忠犬ハチ公もいますね。 広場を取り囲む店舗群、その左上に井の頭線渋谷駅の入口が見える・・。 当時と今の風景を重ねると70年が長いのか短いのか眩暈がしてきます。 恵比寿ビール工場の歴史写真を見ながら当時の写真美術館(1990年頃)を思い出してしまった。 周囲が工事中で美術館は仮店舗(プレハブ?)だったはず。 観る者は写真の前ではいつも時間の旅へ飛び立つことができます。 宮沢賢治「春と修羅」との関係は無視しました。 *美術館website、 時間旅行 □記憶,リメンブランス ■作家:篠山紀信,米田知子,グエン・チン・ティ他 ■最初の篠山紀信「家」(1972年ー)は作品の隅々まで嘗め回してしまった。 カレンダーや会社名、家具や置物などなど。 沁みついた生活の重みが迫ってくる。 マルヤ・ピリア「カメラ・オブスクラ」(2011年)は家の内と外を同時に収めている。 両者の色彩の落差と老人の姿は何故かデヴィット・リンチの映画作品を連想させます。 グエン・チン・ティ「パンドゥランガからの手紙」(2015年)。 ベトナムの記憶が伝わってくる。 チャム人は初めて聞きます。 淡々とした映像の流れがメコン川と同期しています。 *美術館website、 記憶 □木村伊兵衛,写真に生きる ■作家:木村伊兵衛 ■上記2展と違い会場が混んでいますね。 さすが木村伊兵衛。 ところで「時間旅行」と「記憶」を比較すると後者が重かったですね。 前者は回想で留まるが、後者は意識に刻みを入れるからです。 木村伊兵衛をまとめて観るのは久しぶりです。 気に入ったのは1章「夢の島ー沖縄」(1936年)。 沖縄の豊かさが画面から溢れている。 日常が充実している。 街での散策と買物、人々の挨拶や会話が聞こえくる。 沖縄は戦前に戻りたいと言っているようで...

■遠距離現在 Universal/Remote

■作家:井田大介,シュ・ビン,トレヴァー・パグレン,ヒト・シュタイエル他,地主麻衣子,ティナ・エングホフ,チャ・ジェミン,エヴァン・ロス,木浦奈津子 ■国立新美術館,2024.3.6-6.3 ■「個人と社会の距離感について考える」。 わかり難いテーマです。 距離=情報の量と質や影響を論じているのは想像できる。 9人(組)の作家が登場します。 衝撃的な作品が多い。 シュ・ビン「とんぼの眼」(2017年)はその一つです。 監視カメラ映像11、000時間を編集し物語を被せている。 ドキュメンタリーとも違う。 男性主人公が行方不明の恋人を探す内容だが、中国日常の裏側が不気味に現前してくる。 監視社会を超えてしまう作者のパワーを感じます。 トレヴァー・パグレンは「米国安全保障局(NSA)が盗聴している光ファイバーケーブルのカルフォルニア上陸地点」(2016年)を写真で展示。 国家間に敷設しているインターネット・ケーブルを国家が盗聴していることは常識(と聞いている)。 人類はたった90億人しかいない。 国家は一人一人の情報を容易に膨大に収集している(はず)。 もう一つの作品も衝撃的です。 雑音(嘘)を混ぜたAIの出力を正規AIに取り込み処理し出力した画像(2018年)を展示している。 「男」「ポルノ」「軍人のいない戦争」「蛸」・・、どのタイトルも歪んだ恐ろしい画像になる。 ちょっとした誤りを入力したAIの怖さがでています。 ヒト・シュタイエル他の映像「ミッション完了」(2019年)も面白い。 ファッション・ブランドの有名人を話題にするが、その背後にある政治的・経済的な仕組みを暴いていく討論会です。 資本主義の行き詰まりを描いているのか? デンマークのティエナ・エングホフ「心当たりあるご親族へ・・」(2004年)は孤独死した人の室や家具、持ち物を写真に撮っている。 死亡場所や日時、年齢が記載されているキャプションにも必ず目がいってしまいます。 他にも考えさせられる作品が多い。 時代が大きく転換する時代を生きている。 そう確信させる展示会でした。 *美術館、 遠距離現在

■マティス、自由なフォルム

■作家:H・マティス,A・マルケ,A・ドラン他 ■国立新美術館,2024.2.14-5.27 ■想定外の内容でした。 切り絵の展示会と思っていたからです。 マティスの全体像を描き出していますね。 昨年の「 マティス展 」(都美術館)と比較してしまった。 今回はその簡略版でしょう。 でもマティスファンだから気にしません。 「ニース市マティス美術館」所蔵が9割を占めている。 残りは「オルセー美術館」と「モンテカルロ・バレエ団」です。 前半はマティス30代頃のA・ドランやA・マルケとの出会いを強調している。 途中、バレエ「ナイチンゲールの歌」の衣装や映像で変化を付けています。 彫刻もある。 後半は50代からの線や色彩を純化させた印刷や切り絵が並ぶ。 そして「ロザリオ礼拝堂」で締める。 ニースの気候風土が作品に影響していることがわかります。 でもニースへ行ったことがない。 ニースを感じる展示会と言い直しても良い。 しかも国立新美術館は明るい。 ニースやカルフォルニアがここは似合います。 *美術館、 マティス自由なフォルム

■MUCA展、バンクシーからカウズまで

■作家:バンクシー,オス・ジェメオス,ジェイアール,バリー・マッギー,スウーン,ヴィルズ,インベーダー,リチャード・ハンブルドン,カウズ,シェパード・フェアリー ■森アーツセンターギャラリー,2024.3.15-6.2 ■ミュンヘンの美術館MUCAを初めて知る。 「U」はアーバンのこと。 ストリート・アートに永続性を付加するとアーバン・アートになるらしい。 その境界は微妙に動きそう。 バンクシーやカウズそしてJRは時々見かけるが、知らないアーティストも多く展示されています。 現代アーバン・アートが一望できる。 建物や道路、橋などの公共場所に描いていくがその手段が多彩で激しい。 コンクリートに描くヴィルズは爆薬を使う時もある。 リチャード・ハンブルドンのシャドウ・シリーズは強烈ですね。 ストリートのゴッド・ファーザーと呼ばれるだけある。 ところで「その椅子使ってますか?」は「ナイトホークス」のパロディですがバンクシーにしてはスピリットが直截過ぎる。 気に入ったのはシェパード・フェアリーです。 枯れた赤色を基調に20世紀激動期の政治を現代に甦らせているような作品が刺激的です。 世界のアーバン≒ストリートの動向が追える展示会でした。 MUCAの存在は心強い。 *テレビ朝日開局65周年記念展 *美術館、 https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/muca/index.html

■シアスター・ゲイツ展、アフロ民藝

■作家:シアスター・ゲイツ ■森美術館,2024.4.24-9.1 ■作品が地味で広い会場が寂しい。 観客もまばらです。 でも気持ちがいい。 心身にゆとりが生まれます。 副題に民藝とある。 柳宗悦らの活動や作品を想像させます。 それらしき関係はあるようだがシアスター・ゲイツとは何者なのか? 会場途中まで見てもよく分からない。 彼の収集ライブラリや関係施設の写真をみて米国公民権運動、それに続くBLM(ブラック・ライブズ・マター)で活躍しているのを知る。 ジャンルを横断していますね。 常滑焼に興味を持っているようだが彼の陶器はアフリカを思い出させる。 屋根職人の父の影響もあり屋根材料の作品も展示されている。 しかし瓦や壁は興味が無い? アフロ藝術とは何か? 「ブラック・イズ・ビューティフルと日本の民藝運動を融合した」と言っている。 これもよく分からない。 ということで、雑誌「GQ」を売店で購入する。 ゲイツの記事が載っていたからです。 彼は何者なのか? 結局は今も分からない。 ブログはここまでにして雑誌を読むことにします。 そうそう、日本酒も展示されていました。 「門」つまりゲイツという名前です。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/index.html *追記・・雑誌「GQ」を読む。 「・・陶芸の不完全な美に惹かれた」「豊臣秀吉の朝鮮出兵時に陶工を日本に連れて帰ったが、アフロ・アメリカンの歴史に重ねてしまった・・」。 印象に残るゲイツの言葉です。

■宇野亞喜良展 ■難波田史男、没後50年 ■大城夏紀

■作家:宇野亞喜良,難波田史男,大城夏紀 ■オペラシティーアートギャラリー,2024.4.11-6.16 *以下の□3展を観る. □宇野亞喜良展 ■宇野亞喜良の描く少女のイラストは神秘性がある。 ここに理性的なエロティズムが加わる。 寺山修司の演劇ポスターや流行雑誌の挿絵もこの方向を崩さない。 近頃は作品に出会っていません。 この展示会で彼の全体像を知ることができました。 宇野を調べると、日本のイラストレーターやグラフィックデザイナーの殆どが関係しあっていたことが分かる。 1960年代の喧騒が伝わってきます。 しかし彼は影が薄い。 その理由がインタビュー映像を見て分かりました。 「一般人を意識していない」「前衛ではない」。 企業人として仕事をしていた為でしょう。 そして<日常の女性>を<非日常の女性>に進化させた。 企業広告時代のプロ意識をそのまま維持しながら作品を作り続けていった。 イラストレーター名誉職人ですね。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh273/ □特別展示没後50年難波田史男 ■難波田史男の履歴をみて驚く。 瀬戸内海でフェリーから転落死、とある。 享年32歳。 夕焼色の連作「題名不詳」(1963年)が気に入りました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=299 □大城夏紀 ■これは楽しい。 春に包まれた贈答品です。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=300

■北欧の神秘、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画

■作家:ガーラル・ムンチ,テオドール・キッテルセン,アウグスト・ストリンドバリ,アクセリ・ガッレン=カッレラ,フーゴ・シンベリ他 ■SOMPO美術館,2024.3.23-6.9 ■北欧3国が入り混じって見分けがつかない。 遠国からみれば日本・韓国・北朝鮮がどれも同じに見えるのと似ている。 フィンランドは平地でノルウェーに向かうほど険しい山々になるはず・・、風景画では実際そうみえます。 ただし作品タイトルに「ノルウェー」とあるにも関わらず所蔵館はスウェーデンやフィンランドが多々ある。 やはり混乱しますね。 3国の関係がまったく掴めない。 長閑な自然風景を期待していたが最初だけでした。 19世紀末からはフランス美術界の影響が強くなるからです。 もちろん印象派の存在は大きい。 でもゴーギャンの名前がよく登場しますね。 北欧は総合主義から象徴主義に向かったようにみえる。 これに神話や民話が結びついていく。 展示は「都市」で締めくくっている。 雪が止んだ一時の都会風景が多い。 「そり遊び」は楽しいでしょうね。 しかし貧困も目立つ。 ムンク「ベランダにて」の二人は都市の身体を感じます。 19世紀後半以降の北欧は西欧(フランスなど)の影響を受けっぱなしにみえる。 3国の位置づけが朧気に見えた展示会でした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/magic-north/

■中平卓馬、火・氾濫

■東京国立近代美術館,2024.2.6-4.7 ■中平卓馬の写真が載っている雑誌をそのまま展示している! つまり1960・70年を会場へ一緒に連れてきたのだ! 雑誌「現代の眼」と寺山修司を通して彼が写真の道に入ったことを知った。 「現代の眼」は読み易い雑誌だった。 タイトルは「朝日ジャーナル」のようで、内容は「文芸春秋」を左翼化したようなものだった。 彼の写真は当初から雑誌向けだろう。 切り取り方は斬新だが世間・報道の匂いが強い。 いま見てもそう思う。 会場前半は「アサヒグラフ」「朝日ジャーナル」「アサヒカメラ」などアサヒ系がズラッと並ぶ。 それと「映画批評」も。 文章は読む気がしない。 写真だけ摘まみ食いをしていく。 後半の「4章 島々・街路」あたりからやっと写真展らしくなっていく。 壁に並んだ作品群はやはり迫力がある。 会場の終わりに八戸市での映像(2005年)を見たが彼は1970年頃の姿のままだった。 この時代はもはや凍結してしまったのかもしれない。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/exhibitions/556

■安井仲治、僕の大切な写真

■東京ステーションギャラリー,2024.2.23-4.14 ■未知の写真家です。 いちど観ておきたい。 ということで東京駅に行ってきました。 安井仲治は若い頃に写真を始めたが、1931年に国内で開催した「独逸国際移動写真展」を観て変わっていく。 新興写真の洗礼を受けたのです。 ピクトリアリスムから離れてフォトモンタージュ技巧を取捨しながらシュルレアリスムに近づいていき「半静物」を考案しデペイズマンに取り組んだ。 「物自体、事自体に潜む驚異と秘密を探る・・」。 彼の言葉です。 初期の「クレインノヒビキ」(1923年)はまるで絵画です。 魚介類の干物には豊かさがある。 中期以降はシュールな静物画より風景や肖像作品が気に入りました。 たとえば労働者のポートレイトや演劇役者、デモ隊、サーカス芸人等々・・。 また20世紀前半の日本写真界動向を安井の作品から推測できる展示になっている。 この激動の中を彼は疾走したのが見えてきます。 *美術館、 https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202402_yasui.html

■豊嶋康子、発生法ー天地左右の裏表 ■シナジー、創造と生成のあいだ ■歩く、赴く、移動する1923→2020

*以下の□3展を観る. ■東京都現代美術館,2023.12.2-2024.3.10 □豊嶋康子,発生法-天地左右の裏表 ■木片を組み合わせた画板のような作品が並んでいる。 授業の木工製作? そして、くす玉!? 混乱します。 超長算盤や反転マークシート、二色碁石をみて作者の意図が少し見えてきました。 曲がった定規や削った鉛筆をみると小学生時代の悪戯を思い出します。 なんと!作者の義務教育時代の通知書や表彰状、卒業証書、そして預金通帳、株式取引、株券などなど本物?がそのまま展示されている。 これは衝撃ですね。 誰もが同じ書類を同じ量だけ家に保管してあるからです。 他人の小中学時代の通知書や学級委員証書を見ながら、久しぶりに自分の過去を振り返ってしまった。 変わった体験でした。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/ □シナジー,創造と生成のあいだ-MOT・ANNUAL2023 ■作家:荒井美波,後藤映則,(euglena)他 ■<生成>とはコンピュータやプログラムそして人工知能を利用して半自動で作品を創造する意味らしい。 半自動の残りは作家の創造ですか。 先ずは後藤映則の光と素材で人や物の動きを立体映像にする作品が面白い。 暗くて仕掛けが分からないのが残念。 UnexistenceGallery(原田郁ほか)の壁絵はリアルでないリアルさがある。 このグループの作品をもっと観たくなった。 花形槙のカメラを足につけてヘッドディスプレイをして歩き回る実験は楽しい。 目の位置が変わるだけで身体感覚がこんなにも違ってしまう不思議さを再認識させてくれる。 最後に日テレイマジナリウム2023でメタバースを体験した。 ゴーグルを付けた世界は目新しいがリアルには程遠い。 メタバースの日常化はもう少し先でしょう。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2023/ □歩く・赴く・移動する1923→2020MOT・Collection ,横尾忠則-水のように,生誕100年サム・フランシス ■作家:鹿子木孟郎,尾藤豊,麻生知子ほか ■関東大震災後の隅田川両岸を歩く。 戦後風景が残る20世紀半ばの清澄白河を歩く。 途中サム・フ...

■FACE展2024

■SOMPO美術館,2024.2.17-3.10 ■どれが受賞作なのか分からない、キャプションをみれば分かるのですが。 どれも同じように見えてしまいます。 作家たちの思い描くことが同じようになっているからでしょう。 接する情報量が増えている、それが同質のためかもしれない。 抽象画がグランプリのようです。 やはり会場を回っても抽象画が多い。 情報以外の人・物の体験比重が小さくなっているから? 今回は1200名の応募から80点を選んだそうです。 それでも、作品から作品へ目を移す時は別世界に飛べる。 そして作品の裏にある作家の環境を勝手に読み解く。 未知の作家ならではの楽しい見方です。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2022/face2024/ *追記・・新宿武蔵野館に寄り映画「J=L・ゴダール/遺言,奇妙な戦争」(J=L・ゴダール監督)を観る. 感想は 🐸のtwitter Xに投稿しました.

■ガラスの器と静物画 ■静物画の世界 ■宮林妃奈子

■東京オペラシティアートギャラリー,2024.1.17-3.24 □ガラスの器と静物画,山野アンダーソン陽子と18人の画家 ■「このような器を作って欲しい」。 画家から依頼されたガラス職人はその器を作り、それを画家が日常の中で描く・・。 そして本にする。 面白い流れです。 ガラスは色のある飲み物が似合う。 ワインやジュースは分かるが、牛乳が多いのは興味深い。 ガラスに乳色は特別にもみえる。 幼児・子供時代を思い出させるからでしょう。 実は厚みのあるガラス食器が好きなのですが一つも無かった。 自宅のコップやウイスキグラスなどは全てがゴツイ。 厚いガラスは唇が喜びます。 食の味も変化する。 薄いガラスは生活が繊細になる。 しかも会場には小ぶりが多い。 ガラス作家の意向が強く表れているようにみえます。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh270/ □静物画の世界,収蔵品展078寺田コレクションより ■静物画大好き人間にとっては最高です。 個性ある画家20人の饗宴ですね。 ここで五味文彦に会えるとは嬉しい。 窪田洋子を収蔵品展で見かけることは殆どない。 でも今日は10枚近く展示してある。 これも嬉しいですね。 常連の川口起美雄、他に川原朝生の作品が気に入る。 鉛筆画や版画もあったが、これらを含め満足度200%でした。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=296 □宮林妃奈子,projectN ■躍動感ある筆さばきに、ぼんやりと映える直線直面が全体を引き締めている。 見つめるほど味がでてきます。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=297

■池大雅、陽光の山水

■出光美術館,2024.2.10-3.24 ■「万巻の書を読み万里の路を行く」。 「瀟湘勝概図屏風」の岩の形、葉の移ろい、時雨の動き、どれも温かみある空気を通して伝わってきます。 抽象画へのベクトルも感じられて面白い。 富士山や浅間山の真景図をみていると旅好きがわかる。 独特な点描葉は日本の広葉樹林の優しさを鮮やかに表している。 「東山清音帖」は扇の形が大雅をより自由にさせている。 文字も絵の一部でしょう。 楽しんで描いている彼の姿が目に見えます。 憧れの中国への想像力が次第に膨らんでいったようですね。 「十二カ月離合山水図屏風」の背景の冬山はモコモコし過ぎて恐ろしいくらいです。 自由に動き回っていた頃は妄想が抑えられていたのかもしれない、四季のメリハリは効いているが。 生誕300年記念展の池大雅を久しぶりに楽しんできました。 *美術館、 https://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

■印象派、モネからアメリカへ ■和食、日本の自然・人々の知恵

□印象派,モネからアメリカへ ■東京都美術館,2024.1.27-4.7 ■ウスターと言えばソースや劇団名を思い浮かべるが美術館は初めてです。 隣のボストン美術館と違い知名度は低いですね。 でも何が出るか?ウキウキしながら上野へ・・。 ・・フランスや日本の画家も入り混じるのでアメリカが目立たない。 クロード・モネの「睡蓮」(1908年)が気に入りました。 水面が春空の色で輝いている。 深みある水面が多い「睡蓮」の中では晴れやかな感じがするからです。 アメリカでは本展の中心人物F・C・ハッサムが、また印象派からは少し離れたJ・S・サージェントが網膜に残りました。 アメリカ印象派はどちらかというと地味ですね。 ハドソン・リバー派の色調主義(トーナリズム)のある淡い色彩が覆っている。 最終章「まだ見ぬ景色を求めて」でポール・シニャック「ゴルフ・ジュアン」(1896年)、ジョルジュ・ブラック「オリーヴの木々」(1907年)の目が覚める色彩を前にして、アメリカ印象派の辿った生涯が朧気ながら見えた気がします。 南北戦争の傷跡が一生付きまとったのではないでしょうか? *ウスター美術館所蔵展 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_worcester.html □和食,日本の自然・人々の知恵 ■国立科学博物館,2023.10.28-24.2.25 ■次に科学博物館へ・・。 「和食」展は去年観る予定が今日になってしまった。 食のことが一杯で、これは楽しい! 穀物と野菜、魚介類と海藻類が中心です。 口に入れる時は加工されていて個体像がみえない。 本物そっくりのレプリカでも、自然に生息している姿をみて感動しました。  後半では卑弥呼や長屋王から始まり、織田信長が徳川家康をもてなした膳、江戸庶民の屋台、天皇晩餐会そして昭和時代の食卓をみて日本風土の広がりが分かります。 卑弥呼や長屋王の食卓は今でも涎がでてくる、ただし味付けは塩などで単純ですが、ダイナミックナな自然の力が迫ってきます。 最後には現代に通ずるカレーやラーメンも登場する。 特にキノコ類、海藻類や貝類の充実が和食の深さですね。 加えて発酵と旨味ですか。 和食最高ですが、環境問題もあり安泰としてはいられない。 *博物館、 https://washoku2023.exhibit.jp/

■フランク・ロイド・ライト、世界を結ぶ建築

■汐留美術館,2024.1.11-3.10 ■会場が混んでいて入場を待たされたのは当館で初めてです。 建築展では珍しい。 場内はいつものとおり文章を読ませる展示だが苦にならない。 量と質、配分が適格だからです。 しかしライトの世界に入れない。 それは浮世絵が所々に飾ってあったからです。 もちろんライトは日本美術から影響を受けたことはわかる。 でもライトの作品と似合わない。 彼のプレイリー・スタイルから感じ取れるのはケルト系の自然崇拝や多神教、メキシコやアジアの古代遺跡、そしてアメリカに広がるプレーリーでしょう。 前半を過ぎるとライトの全容がみえてくる。 それは教育者としての顔です。 教育環境を作る! 教育学者ジョン・デューイと関連のある「自由学園」(1926年)は見学したことがある。 またライト自身もフリードリヒ・フレーベルの教育玩具で遊んでいたらしい。 映像「タリアセン・フェローシップ」(1933年)も初めて見ます。 途中に「帝国ホテル」(1923年)が登場。 当時の空中カラー写真をみるとまるで古代遺跡ですね。 大谷石の選択、すだれレンガの採用など建築途中の変更が並みでない。 なぜ関東大震災時でも無傷だったのか? その複数の理由を知ることができた。 そして次期帝国ホテル設計者田根剛の完成写真(2036年)を見るとまるで<未来遺跡>です。 古代遺跡から未来遺跡へ! これは楽しい! *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/240111/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、フランク・ロイド・ライト ・・ 検索結果は2ブログ . *追記・・WEBで本展示会オンライン講習会を観る。 講師は当展企画監修のケン・タダシ・オオシマ。 上演時間は90分。 解説が展示順のため会場の構成風景と作品を思い出しながらみることができました。

■梅田哲也展、待ってここ好きなとこなんだ

■ワタリウム美術館,2023.12.1-2024.1.14 ■美術館を旅する企画らしい。 ツアーの予約が事前に必要です。 今日の時刻帯では私を含めて客は4人、館内では3人のコンダクターが夫々必要に応じて登場する。 当館の歴史や建築は聞いていたが裏側をみるのは初めてです。 ここは美術館としては狭いし館内は歩き難い。 はたして事務室も厨房も同じように酷い。 本棚には整理されていない(?)山ほどのビデオ。 薄汚れた本や雑誌類。 開催中のホックニー展カタログの横にはゴダール特集の雑誌が無造作に置いてある。 このような雰囲気も嫌いではないが、コロナ渦を生き延びた日本の私設美術館の現状が伝わってきます。 というより、もはや隠すものは一つもないという諦めもあるのかもしれない。 ところで作者は美術館を船に見立てているらしい。 桟橋は信号を渡って向かいの空き地ですか(?)。 館2階の大窓が開き、先のツアー客は空き地から、後のツアー客は2階から道路を挟んで対面することになる。 船旅らしく互いに手を振ります。 桟橋からみると美術館壁が帆の形と色をしていて帆船にもみえる。 船旅に納得しました。 ちなみに当館の美術展ベスト3(開催順、当ブログ掲載から)は・・ 寺山修司展「ノック」 、 ルドルフ・シュタイナー展「天使の国」 、 ナムジュン・パイク展「 2020年笑っているのは誰?」 。 パフォーマンス系を取り込んだ境界美術の展示会が多いので目を離せません。 ここは異色の美術館です。 *美術館、 http://watarium.co.jp/jp/exhibition/202312/

■見るまえに跳べ ■即興、ホンマタカシ ■プリピクテ、HUMAN/人間

■東京都写真美術館,2023.10.27-24.1.21 *以下の□3展を観る. □見るまえに跳べ,日本の新進作家vol.20 ■作家:淵上裕太,夢無子,山上新平,星玄人,うつゆみこ ■5人の作家は初めてだが刺激的な作品に溢れています。 淵上裕太と星玄人を比べると上野公園と都心繁華街に屯するヒトの違いがわかる。 上野公園の人々は人間界から離れたい、繁華街で撮った人々は未だ生活の匂いと繋がりたいと言っているようです。 どちらも境界へ行きたい人々だが、誰を撮りたいのか?両作家の目線の違いも現れている。 危機から2年になろうとしているウクライナを夢無子が語っている。 キーウなどの都市を背景に写真・文章・音響を混ぜて一つの作品にしています。 ウクライナの荒廃した季節が感じ取れますね。 向日葵の立ち枯れた姿が不気味です。 戦争と束の間の平和が融合している日常とはこういうもなのか!? 写真と文章が澄んでいるので現地の空気が率直に伝わってきます。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4542.html □即興,ホンマタカシ ■ピンホールカメラで撮ったので作品の多くは逆さまです。 しかも表面は粗い。 即興の意味がなんとなく分かります。 人の手から離れた質感がある。 気に入ったのはクライスラービル(no16)、それと「mount Fuji17/36」。  *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4540.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ホンマタカシ ・・ 検索結果は4ブログ . □国際写真賞プリピクテ,HUMAN/人間 ■十数名の作家が展示されています。 賞で選ばれただけあり中身が濃い。 テーマは「Human/人間」。 気候・移民・鉱山・衣装・性差別に内在する問題を地球サステナブルへの行動に繋げようと作家たちはカメラを被写体へ注いでいる。 静かさのある世界報道写真展ですね。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4591.html