■遠距離現在 Universal/Remote

■作家:井田大介,シュ・ビン,トレヴァー・パグレン,ヒト・シュタイエル他,地主麻衣子,ティナ・エングホフ,チャ・ジェミン,エヴァン・ロス,木浦奈津子
■国立新美術館,2024.3.6-6.3
■「個人と社会の距離感について考える」。 わかり難いテーマです。 距離=情報の量と質や影響を論じているのは想像できる。 9人(組)の作家が登場します。 衝撃的な作品が多い。
シュ・ビン「とんぼの眼」(2017年)はその一つです。 監視カメラ映像11、000時間を編集し物語を被せている。 ドキュメンタリーとも違う。 男性主人公が行方不明の恋人を探す内容だが、中国日常の裏側が不気味に現前してくる。 監視社会を超えてしまう作者のパワーを感じます。
トレヴァー・パグレンは「米国安全保障局(NSA)が盗聴している光ファイバーケーブルのカルフォルニア上陸地点」(2016年)を写真で展示。 国家間に敷設しているインターネット・ケーブルを国家が盗聴していることは常識(と聞いている)。 人類はたった90億人しかいない。 国家は一人一人の情報を容易に膨大に収集している(はず)。 もう一つの作品も衝撃的です。 雑音(嘘)を混ぜたAIの出力を正規AIに取り込み処理し出力した画像(2018年)を展示している。 「男」「ポルノ」「軍人のいない戦争」「蛸」・・、どのタイトルも歪んだ恐ろしい画像になる。 ちょっとした誤りを入力したAIの怖さがでています。
ヒト・シュタイエル他の映像「ミッション完了」(2019年)も面白い。 ファッション・ブランドの有名人を話題にするが、その背後にある政治的・経済的な仕組みを暴いていく討論会です。 資本主義の行き詰まりを描いているのか?
デンマークのティエナ・エングホフ「心当たりあるご親族へ・・」(2004年)は孤独死した人の室や家具、持ち物を写真に撮っている。 死亡場所や日時、年齢が記載されているキャプションにも必ず目がいってしまいます。
他にも考えさせられる作品が多い。 時代が大きく転換する時代を生きている。 そう確信させる展示会でした。
*美術館、遠距離現在