■デ・キリコ展

■東京都美術館,2024.4.27-8.29
■「日本では10年ぶり・・」とチラシにある。 それは「デ・キリコー変遷と回帰ー」(汐留美術館、2014年)の展ですか? ともかく、今回も沢山のキリコに会えて嬉しい。
彼には二度のインスピレーションがあったらしい。 その都度画題や画風が変化している。 しかしそれは直線的には進まない。 「過去作の再制作や引用」が多い為でしょう。 例えば1970年の「ヘクトルとアンドロマケ」は完成度が高い。 このため先に観た(描いた)1924年の同名は未完にみえてしまう。 作家の思想的完成度はどちらか分かりません。 技術的な到達点である1970年前後の再制作品を観る者は優先してしまうからです。
次へ進んだ<新形而上絵画>も頂けない。 黒い太陽やグニャグニャした紐のような描き方は形而上からズレている。 結局は<再制作と引用>によって彼の後半は前半を再確認しているだけに見られてしまう。
ところで分散展示されていた「神秘的な水浴」、「彫刻」、「舞台美術」の3トピックはどれも面白かった。 「神秘的な水浴」はJ・コクトー「神話」の版画連作だが、どこか謎めいていて楽しい。 「彫刻」は「・・柔らかく、暖かくなければいけない」と彼は言っている。 なかなかの科白です。 ブロンズ像だが観応えもある。 「舞台美術」は舞台情報が少なくて何とも言えない。 大回顧展のため量は十分だが脳味噌がビビッとする作品があと数点加わればより満足したでしょう。
*美術館website、デ・キリコ展