■坂本龍一、設置音楽展

■ワタリウム美術館,2017.4.4-5.28
■新作「async」の音楽展である。 2階は作品の再生、3階はNYで作成中の映像、4階はアピチャッポン・ウィラセタクンが新作から2曲を映像に取り込んでの上映。
まずは2階へ。 枯草を踏む、鐘の音も、風景に向かい合う、英語や仏語の喋り、コル・レーニョ・・。 新作はまるで<映画>を聴いているようだ。 制作にインスピレーションを与えた資料が展示されていた。 中谷宇吉郎全集、A・タルコフスキ「鏡」「惑星ソラリス」・・、L・サスキンド「宇宙のランドスケープ」、L・ワトソン「水の惑星」、P・ボウルズ「シェルタリング・スカイ」、中谷芙二子「霧」、P・K・ディック「ユービック」などなど。 なるほど。 「シェルタリング・スカイ」はもちろん映画を意識しているはず。
次に3階へ。 制作のNYスタジオや作者の住まい?の映像が簡単に紹介されている。 制作場所を意識しているせいかこじんまりしている。 でも坂本龍一の全仕事に興味を持っている者なら満足だろう。
そして4階へ。 映像になんとKAATで上演した「フィーバー・ルーム」の場内が映し出されていた。 次にウィラセタクンの好きな眠りの映像が続く。 犬も猫も眠る。 しかし何とも言えない東南アジアの怠さが曲と合わない。
坂本龍一の投げた変化球をウィラセタクンは見逃し三振、対して2階の高谷史郎*1は制作過程を紹介しながらも邪魔しないように作られていたからバントヒット成功と言ったところか。 
このニューアルバムは「あまりに好きすぎて、 誰にも聴かせたくない」と作者自身言っている。 映画好きならこの曲から<映画>への想像が幾らでも湧き起こる。
*1、「明るい部屋」(写真美術館,2013年)
*館サイト、http://www.watarium.co.jp/exhibition/1704sakamoto/index.html
*2017.4.19追記、NHKクローズアップ現代「坂本龍一、分断された世界」を見る。 作者が新作「asyns」の思いを語る番組。 この作品には彼が病のため死と対峙したことが含まれているのを知る。
*NHKサイト、http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3963/
*2017.4.24追記、書店雑誌棚を流したら「美術手帳」と「SWITCH」が坂本龍一特集を出していた。 SWITCH「もの探しニューヨーク」は遊び心があるので買う。