■話しているのは誰? 現代美術に潜む文学

■作者:北島敬三,小林エリカ,ミヤギフトシ,田村友一郎,豊嶋康子,山城知佳子
■国立新美術館,2019.8.8-11.11
■6人の作品展です。
□田村友一郎「Sky Eyes」
ハンバーガー店の模型、液晶モニターの空箱やナンバープレートが別室に置いてある。 映像ディスプレイ周辺には船を漕ぐ櫂が並べられ、壁にコーヒーカップの写真が2枚。 これらモノ同士の形や発音からくる類似性・関係性を映像の声は強調します。 でも作品全体を上手くまとめられません。 最初から迷路ですね。
□ミヤギフトシ「物語るには明るい部屋が必要です」
沖縄で撮った?写真と映像が30枚弱、でも映像は動かないので写真に近い。 スピーカから声が聞こえる。 セクシュアリティを話題にしているようだが長く集中しないと話が繋がらない。 館内放送のような音源では目と耳の志向が別々になってしまうのでしょう。
□小林エリカ「ドル」「私のトーチ」「私の手の中のプロメテウスの火」「彼女たち」
彫刻・写真・映像・素描の4作品を繋げて、ウランの発見からベルリンオリンピック、中止した東京オリンピック、広島長崎原爆投下までを物語ります。 薄暗い会場と作品が効果的です。
□豊嶋康子「パネル」「棚」「グラフ」
キャンバスの裏に角材を張り付けたような作品です。 他も似たような作品が並ぶ。 深読が必要かもしれない。  
□山城知佳子「チンビン・ウエスタン<家族の象徴>」
基地施設で働くと同時に自然が失われていく沖縄の現状を、二つの家族を通して描いている。 家族の日常風景、マカロニではなくウドンのオペラ、風変わりな女流画家の登場、劇中劇「天船」もあり賑やかです。 楽しい映画でした。 
□北島敬三「EASTERN EUROPE 1983-1984」「USSR1991」「UNTITLED RECORDS」
3作品70枚程のポートレイト写真で構成されています。 ベルリンやソビエト連邦の体制崩壊前後の写真は饒舌ですね。 人々の表情、服装や胸の勲章、履いている靴、背景のモノや風景、隅々までその時代を物語っています。
あらゆる表現方法を取り込んだインスタレーションは物語るのに便利です。 作品の中に入っていける面白さがありました。 気に入ったのは小林エリカの作品群です。 でも言葉での解説が多いため文学との関係は逆に見えなくなってしまった。 北島敬三の写真だけ、山城知佳子の映像(と音響)だけの作品は強いですね。 言葉や文字が少ないほど<文学>を意識します。
*館サイト、https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/gendai2019/