■ルート・ブリュック、蝶の軌跡

■東京ステーションギャラリー,2019.4.27-6.16
■入場して最初の作品「心のモザイク」を見ても分からなかったのですが、次の繊細に描いた花々をみてルート・ブリュックが女性だと知りました。
1章「夢と記憶」のズグラフィート(掻き落とし技法)の陶板絵は水彩画のようにみずみずしい。 2章「色彩の魔術」のスリップキャスティング(鋳込成形技法)になると実生活や思い出から離れていく。 それは具体から抽象になるが新鮮さは失われません。 3章「空間へ」は蝶学者の父の影響を受けてタイルに蝶を描いていく。 蝶の壁や床の中を歩き回ってみたくなるような素晴らしタイルです。 4章「偉業をなすのも小さな一歩から」。 タイルがより小さくなりその組み合わせに苦心している章名です。 小さなタイル作品は都市を俯瞰しているようにもみえます。 若い時に志した建築の夢が描かれているのでしょうか?
それにしても作風が変化していく流れは見事です。 芸術を取り巻く社会的人間としての成長がみえます。 「ルート・ブリュックは美術と工芸の区別を取り払った・・」と挨拶文にもありましたが、これはアラビア製陶所での職業人としての立ち位置もあるはずです。 また日本の工芸や民芸とは違ったあやふやな分類で美術世界を分節化している。 これが作品の持っている自由を活き活きさせているのだと思います。
*館サイト、http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201904_rutbryk.html