■もしも建築が話せたら、世界の名監督6人が描く6つのストーリ

■監督:W・ヴェンダース,R・レッドフォード,M・マドセン,M・グラウガ,M・オリン,K・アイノズ
■UPLINK,2016.2.20-
■6人の監督が思い入れのある建物を語るオムニバス・ドキュメンタリー映画である。
なんと言ってもW・ヴェンダースの「ベルリン・フィルハーモニー」のまとめ方が巧い。 建築と人々の関係が過剰にも過小にもならず観る者へ伝わってくる。 オーケストラ舞台を室の中心に置き客席が囲む構造もここから世界に広まったようだ。
次に気に入ったのが、切れ味はイマイチだがM・グラウガの「ロシア国立図書館」。 <ソビエト>がそのまま残っている感じだ。 職員の多くが女性ということもある。 しかも<ソビエト>を突き抜けて図書館の古層まで見えてくる映像である。
K・アイノイズ「ポンピドゥー・センター」は唯一行ったことのある建物である。 その為か月並みで驚きの無い映像だ。 この建物はやはりパリには似合わない。
期待していた「ソーク研究所」は最悪である。 R・レッドフォードは何を考えているのか!? 中央空間と両端建物のコントラストは素晴らしいが、ただそれだけである。 まるでゴーストタウンだ。
M・マドセン「ハルデン刑務所」も悪くはないが建物より刑務所の機能を説明し過ぎている。 M・フーコーの「監獄の誕生」を引用していたがこれに縛られてしまった。 ところで受刑者が家族と一日過ごせる家が務所内にあるとは驚きだ。
M・オリン「オスロ・オペラハウス」は建築家スノヘッタの平等思想を言っているようだがよく分からなかった。 ベルリンやポンピドゥと機能が重なるので違った建物を選んで欲しい。 しかも建物内で上演する舞台や美術展の扱い方はヴェンダースを除いて皆失敗していた。
監督たちは相当な自由度が与えられていたようだが、面白さとツマラナさが入り交じっている作品であった。
*作品サイト、http://www.uplink.co.jp/tatemono/