■ディン・Q・レ展-明日への記憶-

■森美術館,2015.7.25-10.12
■ハノイの飛行場でタクシーの老運転手にサイゴンを観光してきたと言ったら酷く怒られたことを思い出してしまった。 「サイゴンではなくホーチミンシティだ!」と。 昔のことですが。
第二次世界大戦後のベトナムの記憶をアートで再現したような会場です。 インスタレーションの粗い作品が多い。 あの戦争を描かざるを得ないからでしょう。 「インドシナ戦争」「ベトナム戦争」「カンボジア・中越戦争」。 もちろん作者の記憶にある「ベトナム戦争」に収れんしていきます。
その中で「フォト・ウィービング」は歴史が滲むように堆積しているのを感じます。 彼の唯一のアートらしい作品群です。 そしてヘリコプターはベトナム戦争の象徴ですね。 映像作品「農民とヘリコプター」の老婆の話を聞いて、グェン・ホン・セン監督「無人の野」が過ってしまった。 「南シナ海ピシュクン」は何回か見ていますがヘリコプターが海に落ちる驚きの意味を今回初めて知りました。 アメリカ人とベトナム人の犠牲者を比較する「戦争のポスター」ではイラク戦争帰還自衛隊員の自殺が異常に多い記事を思い出してしまった。 いつの時代でも自国の犠牲者しか頭にない。
アジアで初めての展示会のようです。 ひさしぶりにベトナム戦争を考えてしまいました。
*館サイト、http://www.mori.art.museum/contents/dinh_q_le/index.html