■百日紅-Miss HOKUSAI-

■原作:杉浦日向子,監督:原恵一
■シネリーブル池袋,2015.7.25-
■葛飾北斎の娘お栄が主人公である。 杉浦日向子は読んだことがない。 この作品は科白の面白さにある。 親子の核心を突いた淡泊な台詞が江戸の町並みに響いている。 お栄の人生を江戸末期の風景として描いた作品である。 その空は百日紅の色に染められていて美しい。 
心=脳で見たことも真であると言っている親子である。 目で見たことと心で見たことの一致を描くのが絵画であり、近代以前の豊かさの根源もそこにある。
しかも絵師の裏世界にいる盲目の妹猶を登場させ音の世界を同列にして物語を完結させている。 橋は五感世界が交差する場所でもある。
お栄の人生に悲壮感が無いのは彼女の性格も一因だが、近世世界の豊かさを彼女が享受していたからだろう。 なかなか面白かった。 2014年作品。
*作品サイト、http://sarusuberi-movie.com/index.html