■吉田博展、美が摺り重なる

■東京都美術館,20201.1.26-3.28
■吉田博の全体像を初めて知ることができて、いやー!楽しかった。 故ダイアナ妃執務室の写真や瀬戸内海集の帆船くらいしか知らなかったからだ。 ダイアナ妃は版画にターナーの光を見たのかもしれない。
彼の成功はフランスではなくアメリカに向かったことだろう。 「それはアメリカから始まった」をみて、これなら米国で売れる!と確信できるからである。 浮世絵を発展させ現代的に甦えらせている。 しかも人文主義的美学から距離を置いているのもグローバル向けとして相性が良い。 マッカーサーが厚木に降りた時「吉田博はどこだ?」と聞いただけのことはある。
九州男児の活きの良さもいい、黒田清輝をぶん殴ったのはやりすぎだが。 しかし作品はそれを感じさせない。 工数がかかる、しかも共同作業の版画は精神と肉体の抑制が必要だからだろう。
東南アジアやインド旅行は羨ましい。 20世紀前半にこれだけ綿密な計画を立てパワーのある旅をしているのが凄い。 その力を戦争中は従軍画家として大陸に向けている。
しかしこれだけ作品をみると最後は飽きる。 後半、安定感はあるが自然の揺らぎがすくなくなってしまった。 満腹感は120%である。 
*吉田博没後70年展