■フランコフォニア、ルーヴルの記憶

■監督:A・ソクーロフ
■ジャック&ベティ,2016.12.24-30
■ソクーロフを観るのは2012年の「ファウスト」以来だ。 彼の作品は独特のリズムというか呼吸を持っている。 しかし今回その呼吸は速い。 北海の荒海を突き進む貨物船やヨーロッパ戦線の実写、美術館の歴史、マリアンヌやナポレオン一世の亡霊など多くのシーンが目まぐるしく積み重なっていくからだと思う。
そこにルーヴル美術館館長ジョジャールとナチス占領美術担当メッテルニヒ伯爵の存在が徐々に現れてくる。 二人とも現代の俳優が演ずるが1940年当時のセピア色にしているためドキュメンタリー中の人物のようだ。 ルーヴル美術館やパリを俯瞰するシーンも同じである。 ソクーロフ好みの記憶の色彩で満たされている。 そして彼の短い言葉が美術品一つ一つを静かに浮かび上がらせる。
ヒトラーが「ルーヴルはどこだ?」と探し回り、「これは私だ!」とダ・ヴィンチの前でナポレオンは答え、「自由・平等・博愛・・」をマリアンヌは何度も口にする。 国家権力と美術館を論じるが速い呼吸の中で漂うだけである。 ナポレオンは叫ぶ、「美術品の為に戦った!」と。 これこそがヨーロッパ、いやフランコフォニアであるかのように。 そして館長と伯爵の戦後経緯が語られて映画は終わる。
*作品サイト、http://francofonia.jp/
*2017.1.8追記、「ミケランジェロ・プロジェクト」(監督:G・クルーニ,出演:M・ディモン)を正月休みにDVDで観る。 ヒトラーの「ルーヴルはどこだ?」の続きである。 ナチスに奪われた美術品を取り戻す米国軍隊の活動話である。 実話を基にした物語なので最後までみたが酷い出来の映画だ。 古き良きアメリカを描きたかったのだろう。
*作品サイト、http://miche-project.com/