■杉本博司、ロスト・ヒューマン

■東京都写真美術館,2016.9.3-11.13
■古びたトタンバラックに囲まれて作品が置いてある。 戦後の東京下町を歩きながら観ているような錯覚に陥る。 政治家・生物学者・自由主義者・ジャーナリスト・ロボット工学者・宗教者・漁師など30人が登場し、彼らの書いた人類滅亡理由の文章「今日、世界は死んだ・・」とともに関係する物々が展示してある。 日本的廃墟の風景が会場に広がっていて想定外の驚きと言ってよい。
これはしかし「はじまりの記憶」と対になる作品かもしれない。 まさに「おわりの記憶」である。 緊張感溢れるエントロピーの極小を目指し、無機物から有機体が発生するその瞬間を捕らえたはじまりの記憶とはまったく逆である。 エントロビは極大化し人類が無機物に帰っていこうとしている。 これだけの物語文章が展示してあること自体が極大局面を表している。 なんと、2階展示室も物語が床にへばり付いているのだ! 作者もエントロピを食べ過ぎて無機物に帰っていこうとしているのか!?
■館サイト、https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html