■桑原甲子雄の写真-トーキョー・スケッチ60年-  ■陶芸家・吉田喜彦展  ■鼻煙壺の魅力-沖正一郎鼻煙壺コレクション-

世田谷美術館,2014.4.19-6.8
桑原は都市を歩きまわるのが好きなのだ。 そして都市の中にある人・物・事のどれも差別しない。 だから30年代の作品は面白い。 看板やバス停に書かれた文字、本屋の雑誌の記事名や著者、新聞の見出しや広告文章に釘付けになる。
プロマイド屋の写真を一枚一枚見ていく楽しさは劇中劇と同じ写真中写真である。 浅草では劇場の上演時間表を見ているだけで役者たちの生活が想像できる。 この時代の桑原はベンヤミンのごとく遊民になれたので都市の真髄を撮れたのだ。
しかし戦後はその生き生きした写真が消えていくようにみえる。 たとえばパリ。 「人間都市パリ」はパリの人間を撮ってしまった。 そこに都市を歩きまわる喜びは無い。 撮るための使命感や都市が分解してしまった興味が漂っているだけだ。
陶芸家・吉田喜彦展
これは素晴らしい。 チラシに「・・もの静かで、温かみのある、自然で、品格のある形」とあったが、まさにその通り。 会場を入ってすぐに80年代の作品が並んでいたが、作品の安定感というものに惚れ惚れしてしまった。
また指描文大皿の柔らかさのある感触もふっくらとした美味しいパンのようだ。 このような感覚を持てる陶磁器はめったにない。
鼻煙壺の魅力-沖正一郎鼻煙壺コレクション-
これも面白い。 嗅ぎたばこを入れる容器を鼻煙壷と言う。 調味料の容器だと勘違いしていまった。 煙草を入れるので大人が楽しめるデザインになっている。 と言っても大人のオモチャではなく芸術作品として作られているのがいい。
陶磁器やガラス工芸をみているようである。 今日は連休だったが混んでいなかった。 砧公園の新緑も素晴らしかった。